本文ここから

電磁鋳造法によるアルミニュウム合金鋳塊の製造に関する基礎的研究

氏名 古井 光明
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第78号
学位授与の日付 平成5年3月25日
学位論文の題目 電磁鋳造法によるアルミニウム合金鋳塊の製造に関する基礎的研究
論文審査委員
 主査 教授 小島 陽
 副査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 宮田 保教
 副査 助教授 福澤 康
 副査 助教授 鎌土 重晴

平成4(1992)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次
第1章 序章 p.1
1-1 アルミニウム連続鋳造法の歴史 p.1
1-2 電磁鋳造法の歴史と現状 p.2
1-3 アルミニウム連続鋳造法の比較 p.4
1-4 電磁鋳造法の原理 p.6
1-5 本研究の目的 p.7
参考文献 p.10
第2章 電磁現象の調査 p.13
2-1 緒言 p.13
2-2 実験装置 p.14
2-3 測定方法 p.14
2-3-1 磁束密度 p.14
2-3-2 メニスカス形状 p.17
2-3-3 電流密度 p.18
2-4 結果および考察 p.19
2-4-1 無負荷時 p.19
2-4-2 負荷時 p.21
2-4-3 金属リングスクリーンによる磁場遮蔽 p.24
2-4-4 電流密度 p.29
2-5 小括 p.31
参考文献 p.31
第3章 スクリーンコイルと外部コイル抵抗器による磁場制御法の開発 p.33
3-1 緒言 p.33
3-2 実験装置 p.33
3-2-1 電磁コイル p.33
3-2-2 スクリーンコイル p.37
3-2-3 外部コイル抵抗器 p.40
3-3 結果および考察 p.43
3-3-1 無負荷時 p.43
3-3-2 負荷時 p.43
3-4 小括 p.44
参考文献 p.45
第4章 電磁連続鋳造装置の製作 p.46
4-1 緒言 p.46
4-2 鋳造装置の製作 p.46
4-2-1 磁場発生系 p.46
4-2-2 溶湯供給系 p.48
4-2-3 冷却系 p.49
4-2-4 引抜き系 p.49
4-3 鋳造条件の設定 p.51
4-3-1 メニスカス保持高さ p.52
4-3-2 冷却水量 p.53
4-3-3 鋳造速度 p.54
4-3-4 鋳造温度 p.54
4-4 小括 p.56
参考文献 p.57
第5章 異径円柱状鋳塊の製造 p.58
5-1 緒言 p.58
5-2 鋳塊の製造 p.58
5-3 結果および考察 p.59
5-3-1 鋳塊形状の制御 p.59
5-3-2 鋳塊品質 p.65
5-3-2(a) 凝固殻形状 p.65
5-3-2(b) マクロ組織 p.66
5-3-2(c) ミクロ組織 p.67
5-3-2(d) 溶質濃度分布 p.70
5-4 小括 p.71
参考文献 p.71
第6章 矩形断面鋳塊の製造 p.73
6-1 緒言 p.73
6-2 鋳造装置 p.73
6-2-1 磁場発生系 p.73
6-2-2 冷却系 p.75
6-2-3 引抜き系 p.75
6-3 電磁現象の測定 p.77
6-4 鋳造製造 p.78
6-5 鋳塊品質 p.81
6-6 小括 p.83
参考文献 p.83
第7章 マグネシウムへの電磁鋳造法の適用 p.85
7-1 緒言 p.85
7-2 実験装置 p.85
7-3 結果および考察 p.85
7-3-1 アルミニウム溶湯との比較 p.85
7-4 マグネシウム合金用電磁連続鋳造装置の構想 p.89
7-5 小括 p.89
参考文献 p.91
第8章 総括 p.92
8-1 総括 p.92
8-2 今後の展望 p.93
謝辞 p.95

 磁気圧利用技術の範疇に属する電磁鋳造法(EMC)はアルミニウムや銅ばかりでなく鉄鋼への適用・実用化も期待されている将来有望な鋳造法である。またNear Net Shapeを中心とする鋳造分野における研究開発がas-cast productsの優れた表面品質を必要としており、美麗な表面性状ならびに良好な機械的性質を有する鋳塊の製造が可能なEMC法に関心が高まりつつある。このような背景の中、EMC法における鋳塊断面寸法の可変制御については決定的な方法が現れていないのが実状であり、また鋳塊の小ロケット・多サイズへのニーズに対応するべく、より容易な磁場制御法の開発が望まれている。そこで本研究ではEMC法に適用でき得るアイデアとして「スクリーンコイルと外部コイル抵抗器による磁場制御法」を提案し、これらを組み込んだ電磁連続鋳造装置によりアルミニウム合金鋳塊を製造し、その断面寸法を制御することを最大の目的とした。
 第1章「序章」ではアルミニウム連続鋳造におけるEMC法の位置付けを他の鋳造法に対する優位性から述べ、研究の背景と従来の研究経緯に対する外観に基づいて磁場制御による鋳塊形状可変の必要性を明らかにし、本研究の意義ならびに目的について明確にした。
 第2章「電磁現象の調査」においてEMC法を理解する上で基礎となる交流磁場内でのアルミニウム溶湯挙動を調査し、金属リングスクリーンを用いた磁場遮蔽によりメニスカス挙動を鎮静化でき、垂直保持が可能であることを確認したが、また一方で金属リングスクリーンによる磁場遮蔽効果はその電気伝導度によって決定されるため、磁場の可変制御に関しては有効な手段でないことも併せて指摘した。
 第3章「スクリーンコイルと外部コイル抵抗器による磁場制御法の開発」では金属リングスクリーンよりも磁場の可変制御に対して優位であると考えられる『スクリーンコイルと外部コイル抵抗器による磁場制御法』を提案し、外部コイル抵抗器のインダクタンスを0.2μHから11μHに変化させることによって、垂直静立したメニスカス直径は20mmの可変が可能であることを実証した。また電磁圧とメニスカス直径に比例関係が成立することから、その制御性も明らかにした。
 第4章「電磁連続鋳造装置の製作」では得られた知見をもとに提案した磁場制御法を組み込んだ電磁連続鋳造装置を製作し、良好な表面性状を有する鋳塊が得られる最適な鋳造条件を設定した。
 第5章「異径円柱状鋳塊の製造」では磁場制御法、電磁連続鋳造装置ならびに鋳造条件に基づいて異径円柱状鋳塊を製造し、電磁パラメータを変化させることなく外部コイル抵抗器のインダクタンス(L0)変換のみによる展伸用アルミニウム合金鋳塊直径(di)の制御を行い、両者にはdi=-1.85L0+55の関係があることを明らかにした。製造した鋳塊の内部組織は均一な微細組織であり、5182合金鋳塊の表面部において6μmから8μmのDASが観察された。また溶質濃度分布は鋳塊表面から中心部にわたっていずれの合金成分についてもほぼ一定であることを確認した。
 第6章「矩形断面鋳塊の製造」では提案した磁場制御法が矩形断面鋳塊の製造にも適用でき、0.2μHから5.8μHヘインダクタンス変換することで約20%の鋳塊断面寸法の減少が可能であることを明らかにした。また製造したAl-3.5%Mg合金鋳塊は無面削圧延を施しても耳割れは観察されない。なおDC法によるAl-3.5%Mg合金鋳塊との機械的性質の有意差はなく、またおのおのの表皮部ならびに中心部での特性に大差はないことを示した。
 第7章「マグネシウムへの電磁鋳造法の適用」では交流磁場内での溶湯挙動がアルミニウムに類似していることから、アルミニウムの鋳造実績をふまえた連続引抜きへのステップアップとして、マグネシウム合金用電磁連続鋳造装置を提案した。
 第8章では本研究を総括した結論ならびに今後の展望を述べている。
 本研究における最大の成果は、スクリーンコイルと外部コイル抵抗器による磁場制御法がメニスカス形状制御に有効であることを明らかにし、その制御法を用いて電磁条件を変化させることなく、異なる断面寸法のアルミニウム合金鋳塊の製造に成功したことである。これらのことから稼働しているEMC実機への本制御法の適用は十分可能であり、またその良好な制御性より大きな利得をもたらすものと考えられる。

ページの先頭へ戻る