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EEG Signal Classification Methods of Motor Imagery Tasks Based on Fractal Analyses(フラクタル解析に基づいた運動連想タスクに関する脳波信号の弁別法)

氏名 Montri Phothisonothai
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第451号
学位授与の日付 平成19年3月25日
学位論文題目 EEG Signal Classification Methods of Motor Imagery Tasks Based on Fractal Analyses (フラクタル解析に基づいた運動連想タスクに関する脳波信号の弁別法)
論文審査委員
 主査 教授 中川 匡弘
 副査 教授 渡邉 和忠
 副査 准教授 北谷 英嗣
 副査 准教授 岩橋 政宏
 副査 准教授 石原 康利

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List of Abbreviations p.XIII
List of Figures p.XV
List of Tables p.XIX
1. Chapter 1:Introduction p.1
 1.1 Research Theme p.1
 1.2 Motivation p.2
 1.3 The Basic Structure of the Human BCI System p.3
 1.3.1 EEG recording p.3
 1.3.2 Preprocessing p.3
 1.3.3 Feature extraction p.4
 1.3.4 Classification Methods p.4
 1.4 Research Backgrounds p.4
 1.5 Conventional Methods p.7
 1.5.1 Autoregressive(AR) Model as Feature p.7
 1.5.2 Band Power Estimation(BPE) as Feature p.8
 1.5.3 Linear Discriminant Analysis(LDA) as Classifier p.12
 1.6 Research Objectives p.15
 1.7 Contributions p.15
 1.8 Organizations p.15
2. Chapter 2:Proposed Method p.17
 2.1 Introduction p.17
 2.2 Basic Concept p.17
 2.3 Overview of the Proposed Method p.18
 2.3.1 Preprocessing p.19
 2.3.2 Feature Extraction p.19
 2.3.3 Classification p.19
 2.4 The Human Brain p.19
 2.4.1 Basic Structure of the Brain p.20
 2.4.2 The Neuron Structure p.20
 2.4.3 The Potential in the Neuron p.21
 2.4.4 Motor Cortex p.22
 2.4.5 Potentials in the Brain p.24
 2.4.6 Rhythmic Brain Activity in EEG p.24
 2.5 EEG Signal Acquisition p.27
 2.5.1 The 10-20 International System p.27
 2.5.2 Measurement Conditions p.30
 2.5.3 Tasks p.30
 2.5.4 Subjects Participated in This Study p.31
 2.5.5 Experimental Paradigm p.31
3. Chapter 3:Preprocessing of EEG Signal p.33
 3.1 Introduction p.33
 3.2 Independent Component Analysis(ICA) p.33
 3.2.1 ICA Modeling p.34
 3.2.2 ICA Algorithm p.35
 3.2.3 Optimization Process p.37
 3.2.4 Limitations of ICA p.38
 3.2.5 Performance Assessment with Artificially p.38
 3.2.6 Experiment with Recorded EEG Signals p.42
 3.3 Source Selection p.45
4. Chapter 4:Feature Extraction p.49
 4.1 Introduction p.49
 4.2 Time Series-Based Analysis p.50
 4.2.1 Box-Counting Method(BCM) p.50
 4.2.2 Variance Fractal Dimension(VFD) p.50
 4.2.3 Higuchi's Method(HM) p.51
 4.2.4 Detreded Fluctuation Analysis(DFA) p.52
 4.3 Frequency-Based Analysis p.53
 4.3.1 Power Spectral Density Analysis p.53
 4.3.2 Critical Exponent Method(CEM) p.54
 4.4 Performance Assessment p.55
 4.4.1 Assessing with Artificially Generated Signals p.55
 4.4.2 Conditions for Assessing p.59
 4.4.3 Results of Performance Assessing p.73
 4.5 Time-Dependent Fractal Dimensions(TDFD) p.76
 4.6 Evaluation of Features by Kullback-Leibler Divergence p.79
5. Chapter 5:Neural Network Classifier p.84
6. Chapter 6:Experimental Results p.94
7. Chapter 7:Discussions p.96
8. Chapter 8:Conclusions and Future Study p.109
Bibliography p.111
Acknowledgements p.121
List of Publications p.123

 近年、次世代ヒューマン・マシンインターフェースとして、ブレイン コンピュータ インターフェース(Brain Computer Interface:BCI)技術が国内外で注目されており、神経信号や脳波、さらには、近赤外分光方式によるBCIが広く研究され、一部実用化が検討されている。とりわけ、脳波を用いたBCIは、可搬性、即応性の面から注目され、非拘束に近い状態で、高齢化社会への生活支援装置の観点からも精力的に研究されている。このようなブレインコンピュータインタフェースの研究は、1970年代に始まり、1990年代から現在にかけてその実用化を見据えて精力的に開発研究が推進されてきた。しかしながら、非侵襲・非拘束で高精度に脳活動を直接計測し、その特徴量によりロボット等を制御する次世代のヒューマンマシンインターフェース技術は未だ萌芽的段階にある。
 一方、EEG信号の計測から、脳の活動状態パターンが、被験者の思考状態、即ち、安静やタスクにより時空間的パターンを変動することがよく知られている。一般にこれらの動態は、ハイパーカオス的であり、予測不能で且つ複雑である。さらに、第1,2章で述べるように、最近の研究では、その複雑性がフラクタル解析によりフラクタル次元として定量化され、1990年初頭から国内外で精力的に研究されている。これらの技術の確立は、産業用ロボットだけではなく、医用・福祉ロボットや生活支援インターフェースとして非常に重要であり、その実用化が渇望されている。しかしながら、これまでの脳波のスペクトル特性や自己回帰特性を解析する手法では、実際の運動タスクに対してでさえ、十分な弁別性能が得られておらず、運動想起に関しては殆ど効果的な認識手法は報告されていない。
 そこで、本論文の第3章においては、詳細な脳波計測条件について述べ、第4章以降では、実際の運動タスクではなく、運動想起に伴うヒト脳活動の時空間特性をフラクタル次元で定量化し分離する新規弁別手法を提案し、従来の帯域制限型の解析手法との弁別性能を比較検討する。具体的には、EEG信号をフラクタル解析でその複雑性を定量化することにより、BCI技術への実用化に向けて、その弁別能力を論じた。
 まず、脳波信号の振幅や時間軸のスケーリングに依存しない普遍的な特徴量としてフラクタル性に注目し、高い弁別能力と即応性を両立し得る新規BCIシステムを提案した。具体的には、左手、右手、足、舌の各部位の動作(タスク)を想起し、脳波の大域的なトレンド除去を前処理としたフラクタル次元解析手法を導入した。その結果、実際のタスク同様に、想起タスクに関しても、フラクタル次元は脳の各部位において明瞭に変動することが見出された。
 さらに、カオス的で複雑な脳波のフラクタル解析に最適なフラクタル解析手法を議論するために、臨界指数法、パワースペクトル解析、分散のスケーリング解析手法等の種々の手法の推定精度を系統的且つ定量的に比較した。これらの結果を踏まえ、被験者の瞬き等の筋電信号を除去するため、独立成分分析を導入し、分離された脳波信号を解析することにより、EEG信号のより明瞭なタスクへの応答を確認した。また、時間依存するフラクタル次元の分布特性に注目し、各タスクに対するフラクタル次元分布のKulluback-Leibler(K-L)情報量とフラクタル次元値の期待値を特徴量とすることにより、高いタスク識別機能を実現した。さらに、分離能力の向上のため、ニューラルネットを独立成分分析と共に導入することにより、従来のBCIシステムでは実現困難であった高い弁別能力を実現することに初めて成功した。
 以上の解析の結果、本論文で提案するフラクタル解析に基づく想起タスク弁別手法を従来の帯域制限信号の解析手法と比較では、20~30%程度の弁別能力の向上と認識率の改善が実現され、本手法の優位性を確認することができた。また、これらの技術はその非拘束性・即応性の高さから日常生活環境に近い状態で実用可能な未来技術として、その有用性が期待される。
 上記のように、本論文で提案する新規弁別手法により、脳波のフラクタル解析から得られる脳波のフラクタル特性の特徴量から、被験者の運動想起タスクの種類を高精度に識別可能であることが結論され、新規脳機能計測基盤技術としての有用性が示された。

 本論文は、次世代ヒューマン・マシンインターフェースとして、ブレイン コンピュータ インターフェース(Brain Computer Interface:BCI)技術についてその基盤技術を論じるものである。
 最近、神経信号や脳波、さらには、近赤外分光方式によるBCIが広く研究され、一部実用化が検討されており、特に、脳波を用いたBCIは、可搬性、即応性の面から注目されている。このようなブレインコンピュータインタフェースの研究は、1970年代に始まり、1990年代から現在にかけてその実用化を見据えて精力的に開発研究が推進されてきた。しかしながら、非侵襲・非拘束で高精度に脳活動を直接計測し、その特徴量によりロボット等を制御する次世代のヒューマンマシンインターフェース技術は未だ萌芽的段階にある。
 そこで、本論文では、脳波のフラクタル解析の手法を用いて、即応性と高弁別能力を兼ね備えた新規BCI技術を確立する手法について論じた。本論文は、8章から構成される。
 まず、EEG信号の計測から、脳の活動状態パターンが、被験者の思考状態、即ち、安静やタスクにより時空間的パターンを変動することを第1章で述べている。一般に、これらの脳波信号の動態はハイパーカオス的であり、予測不能で且つ複雑である。さらに、第2章で述べるように、最近の研究では、その複雑性がフラクタル解析によりフラクタル次元として定量化されており、1990年初頭から国内外で精力的に研究されている。これらの技術の確立は、産業用ロボットへの応用だけではなく、医用・福祉ロボットや生活支援インターフェースとしても極めて重要であり、その実用化が渇望されている。しかしながら、これまでの脳波のスペクトル特性や自己回帰特性を解析する手法では、実際の運動タスクに対してでさえ、十分な弁別性能が得られておらず、運動想起に関しては殆ど効果的な認識手法は確立されていない。
 そこで、本論文の第3章においては、詳細な脳波計測条件について述べ、第4章以降では、実際の運動タスクではなく、運動想起に伴うヒト脳活動の時空間特性をフラクタル次元で定量化し分離する新規弁別手法を提案し、従来の帯域制限型の解析手法との弁別性能を比較検討する。具体的には、EEG信号をフラクタル解析でその複雑性を定量化することにより、BCI技術への実用化に向けて、その弁別能力を論じている。
 まず、脳波信号の振幅や時間軸のスケーリングに依存しない普遍的な特徴量としてフラクタル性に注目し、高い弁別能力と即応性を両立し得る新規BCIシステムを提案した。具体的には、左手、右手、足、舌の各部位の動作(タスク)を想起し、脳波の大域的なトレンド除去を前処理としたフラクタル次元解析手法を導入した。その結果、実際のタスク同様に、想起タスクに関しても、フラクタル次元は脳の各部位において明瞭に変動することを見出している。
 さらに、カオス的で複雑な脳波のフラクタル解析に最適なフラクタル解析手法を議論するために、臨界指数法、パワースペクトル解析、分散のスケーリング解析手法等の種々の手法の推定精度を系統的且つ定量的に比較している。これらの結果を踏まえ、被験者の瞬き等の筋電信号を除去するため、独立成分分析を導入し、分離された脳波信号を解析することにより、EEG信号のより明瞭なタスクへの応答を確認した。また、時間依存するフラクタル次元の分布特性に注目し、各タスクに対するフラクタル次元分布のKulluback-Leibler(K-L)情報量とフラクタル次元値の期待値を特徴量とすることにより、高いタスク識別機能を実現している。さらに、分離能力の向上のため、ニューラルネットを独立成分分析と共に導入することにより、従来のBCIシステムでは実現困難であった高い弁別能力を実現することに初めて成功している。
 以上の解析の結果、本論文で提案するフラクタル解析に基づく想起タスク弁別手法を従来の帯域制限信号の解析手法と比較では、20~30%程度の弁別能力の向上と認識率の改善を実現しており、本手法の優位性を確認している。また、これらの技術はその非拘束性・即応性の高さから日常生活環境に近い状態で実用可能な未来技術として、その有用性が期待される。
 上記のように、本論文で提案する新規弁別手法により、脳波のフラクタル解析から得られる脳波のフラクタル特性の特徴量から、被験者の運動想起タスクの種類を高精度に識別可能であることを結論しており、新規脳機能計測基盤技術としての有用性を明示している。
 本研究の成果から、本研究成果は、脳波のフラクタル性に基づいた新規BCI技術の有用性を示し、また同手法は脳機能計測に新機軸をもたらすものと期待され、学術的及び工学的に貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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