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画像解析による酒米心白の評価

氏名 秋山 征夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第152号
学位授与の日付 平成9年9月30日
学位論文の課題 画像解析による酒米心白の評価
論文審査委員
 主査 教授 山元 皓二
 副査 教授 松野 孝一郎
 副査 教授 福本 一朗
 副査 助教授 本多 元
 副査 神戸大学 教授 上島 脩志

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第1章 緒言 p.3
日本酒の歴史 p.3
酒米 p.4
酒米心白 p.6
画像解析について p.9
本論文の目的と構成 p.12
第2章 酒米における心白評価への画像分析の適用 p.14
2-1 緒言 p.14
2-2 材料および方法 p.14
2-3 結果および考察 p.15
第3章 標準画像の再現性と年次間差 p.27
3-1 緒言 p.27
3-2 材料および方法 p.27
3-3 結果および考察 p.28
第4章 酒米品種と心白 p.36
4-1 緒言 p.36
4-3 材料および方法 p.36
4-3 結果および考察 p.36
第5章 横断と縦断の比較 p.47
5-1 緒言 p.47
5-2 材料および方法 p.47
5-3 結果および考察 p.48
第6章 品種間の分類方法について p.65
6-1 緒言 p.65
6-2 材料および方法 p.65
6-3 結果および考察 p.66
第7章 標準画像の実用化に向けて p.71
7-1 緒言 p.71
7-2 検討の手順 p.71
7-3 検討 p.72
7-4 検討の結果 p.76
第8章 総合考察 p.83
摘要 p.93
謝辞 p.96
引用文献 p.97

 清酒の原料米として用いられる酒米にはその特性として、大粒、軟質性、低タンパク質、低脂肪であり、吸水が速く、心白を有することなどが求められている。そのうち心白は軟質性、吸水特性など他特性との関連性が高いために、重要であると考えられている。しかし、これには発現率の評価が主に行なわれており、粒中における形状、位置などの特徴に関しては客観的な測定方法がなく、熟練者の主観的な判断により評価が行われている。また、心白は精米特性との関係が強く、近年の醸造手法の発達に伴い、粒を大幅に削った高搗精米が用いられる機会が多くなったことから、酒米品種のもつ心白量やその位置情報などのより詳細な情報が求められるようになり、適切な評価方法の確立が望まれている。そこで、視覚情報に客観性を持たせることのできる画像解析の心白評価への適用は有効であると考えられた。
 本研究は画像解析を利用して客観的かつ精確に酒米の心白を評価する方法を確立するとともに、酒米品種の心白特徴を明らかにし、新たな知見を得ることを目的に行った。
 供試材料として一本〆と五百万石を用いて、粒の縦断面積中に占める心白部分の面積の割合を表す心白程度を調査した結果、同一品種内でも粒ごとに大きなばらつきがあることがわかった。一本〆と五百万石の平均心白程度の比較では一本〆が高い値を示し、心白含量が大きかったが、一本〆と五百万石の違いについてt検定による比較を行った結果、両品種間で有意な差は見られなかった。そのため、品種における心白について心白程度のみを用いた評価は難しいことがわかった。つぎに粒を4つの領域に分割し、それぞれの領域での心白程度について品種間でt検定を行ったところ明らかな品種間差が見られ、量的情報だけでなく位置情報も含めることで心白特徴の評価が可能であることがわかった。この結果から、平均粒サイズに変換した85粒の心白抽出画像の数値データを加算することにより、心白発現位置とその量の特徴を顕示する心白標準画像の作成手法を考案した。
 まず、標準画像作成時のサンプル数として85粒が適当かどうかについて検証を行った。同一条件のサンプルで2枚の標準画像を作成したところ、これらの図は平均粒長、粒幅、心白発現量・位置が同様であった。つぎに、両者の数値データをもとに統計検定を行った結果、平均粒長、粒幅、心白発現量・位置ともに有意差が無いことがわかった。このように高い再現性が得られたことから、標準画像作成のサンプル数として85粒が適当であることがわかった。
 心白は品種により遺伝的に定まってはいるが、環境の作用によって大きく影響を受けることが知られている。心白における栽培年度間、栽培条件の差について一本〆の標準画像を用いて調査した。その結果、心白発現に対する環境の影響は粒のサイズ、心白程度に現れやすく、発現位置は比較的安定している可能性を示すことができた。
 千粒重が大きくなると心白発現率が増すことはすでに知られているが、心白発現量と粒の大きさとの関連性は示されていなかった。そこで、粒厚と心白の関係を明らかにするために山田錦、五百万石、たかね錦の標準画像を粒厚別にそれぞれ作成した。これら3品種における粒厚と心白の比較の結果、粒厚に関らず粒内における心白の分布状況は品種特有であった。しかし、粒厚と心白程度には高い相関が得られ、粒厚が厚いものほど心白含量は高くなることが示された。
 心白の遺伝制御に関して明らかにする目的で、酒米品種における心白の品種間差を調査するために34品種の標準画像を作成し、調査を行った。34品種の標準画像を比較した結果、心白の発現量や心白の入る位置に基づいて品種を5つのグループに分類することができた。さらに育成過程がわかっている品種について比較検討を行った。系譜と心白は関連性が高く、近縁品種の心白特徴は高い類似性を示しており、心白が遺伝的に制御されていることが示唆された。また、育成の進んだ比較的新しい品種になるにつれて、心白発現量が大きくなる傾向が見られた。
 本研究では縦断面における標準画像を作成することで心白調査を行った。しかし、従来の心白調査は横断面で行なわれているため、横断面の標準画像も作成し、縦断面標準画像との比較を行った。その結果、両断面の標準画像における心白形状は整合性を持っており、いずれか一方の断面の標準画像を用いることで品種の心白特性評価が可能であることが示唆された。つづいて34品種における横断、縦断面上の平均心白程度の関係を調べたところ、両断面上の平均心白程度に高い相関が得られ、どちらか一方の断面図に基づいて心白発現量を測定できることが示された。しかし。厳密に品種に関する心白特徴を知るためには、両断面の標準画像を利用することが必要であることが分かった。
 以上のように本研究において酒米心白評価の新たな手法を考案、確立することができ、いくつかの新しい知見を得ることができた。

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