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アスファルト舗装の低温性状に関する研究

氏名 張 肖寧
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第114号
学位授与の日付 平成10年3月25日
学位論文の題目 アスファルト舗装の低温性状に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 唐 伯明
 副査 助教授 下村 匠
 副査 北海道工業大学 教授 笠原 篤

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要旨 p.1
第1章 序論 p.4
1.1 研究の背景 p.4
1.2 中国における温度ひび割れの現状 p.12
1.3 アスファルト舗装におけるひび割れの研究状況 p.17
1.4 本論文の構成 p.22
参考文献 p.23

第2章 粘性流動性状に基づくアスファルトの低温性能評価方法 p.27
2.1 はじめに p.27
2.2 2面せん断式粘度測定装置 p.28
2.3 低温時アスファルト粘度の測定 p.32
2.4 アスファルト混合物低温性状への関連 p.39
2.5 結論 p.42
参考文献 p.44

第3章 エネルギーバランス原理とアスファルト舗装の温度ひびわれ率の計算方法 p.45
3.1 エネルギーバランス原理 p.45
3.2 温度場の計算方法 p.49
3.3 アスファルト混合物の変形性状 p.54
3.4 相対温度ひび割れ率 p.60
参考文献 p.63

第4章 アスファルト舗装の温度ひびわれ率に影響する要因の分析 p.65
4.1 はじめに p.65
4.2 収縮性状の影響 p.66
4.3 舗装厚の影響 p.70
4.4 アスファルト混合物の力学性状の影響 p.72
4.5 アスファルト混合物の破壊性状 p.76
4.6 まとめ p.78
参考文献 p.81

第5章 容積によるアスファルト混合物配合設計方法 p.83
5.1 はじめに p.83
5.2 配合設計方法 p.84
5.3 寒冷地域に適用する配合 p.87
5.4 アスファルト混合物の容積設計法 p.92
参考文献 p.100

第6章 結論と今後の課題 p.101

附録1 緩和弾性係数マスタカーブ近似式の作成法 p.104
附録2 アスファルト混合物の一次元非線型粘弾性構成方程式に関する研究 p.110

謝辞 p.120

 通常のアスファルト舗装は、アスファルト自体の粘弾性的性質によって内部応力が緩和され、温度応力によるひび割れは発生しない。しかし、寒冷地おいては、低温時にアスファルトの粘性が大きくなって応力緩和能力が失われる。このためアスファルト舗装に温度ひび割れが多数発生し大きなダメージを与える。
 アスファルト舗装の低温ひび割れについては、すでに数多くの研究結果が発表され、温度ひび割れの発生原理、抑制方法に関する議論がなされている。これらの研究から、アスファルト舗装の温度ひび割れにもっとも大きな影響を与えるのはアスファルトの性状であるとされ、特定の規格を満たすアスファルトの使用が提案されている。
 しかし、このような優れたアスファルトは種類が少なく、低温性状は満足できても、高温性状も同時にその要求を満たすのは難しい。また、北アジア、北アメリカなどの寒冷地域では年間温度の変化が大きく、冬期の気温は極度に低いので、このような方法で温度ひび割れを完全に防ぐのは無理であろうと考えられる。このような地域には、アスファルト舗装の低温ひび割れを完全に防止することより、横断ひび割れの発生間隔を大きくして温度ひび割れ率を減少することがより重要な問題となる。
 本研究は、これまでの研究と異なり、横断ひび割れ発生時の温度条件を研究するだけでなく、アスファルト舗装の温度ひび割れ発生後のひび割れ間隔の予測を試みた。提案した計算方法は、アスファルト舗装の層中のエネルギーバランスから、舗装に発生する温度ひび割れ間隔を計算するものである。この方法を利用すると、アスファルト舗装の温度ひび割れ発生率に影響する材料要素と構造要素をより合理的に分析でき、温度ひび割れがアスファルト舗装に与えるダメージを減少させることができる。また、これらの分析結果を材料設計ないし構造設計に応用することができる。本研究では数種類のアスファルト舗装材の低温性能を測定すると同時に、供用中の舗装の追跡調査を行って、この計算方法の合理性を確かめた。本研究の方法で設計した試験舗装は温度ひび割れ発生率をかなり減少させることができた。
 本研究は第1章~第6章からなり、各章の要旨と得られた結論は次の通りである。
 第1章では、研究の背景として、アスファルト舗装の低温性能に関する研究の現状を概説し、残された問題点として、アスファルト鋪装の温度ひび割れ発生率はアスファルト舗装の低温性能のみに依存するのではないことを指摘した。
 第2章では、アスファルト舗装の深さ方向の一次元温度応力場におけるエネルギバランスの計算方法を示し、これを用いるアスファルト舗装の温度ひび割れ発生間隔計算方法を提案した。これによるとひび割れ間隔はアスファルト混合物の緩和弾性率と舗装の温度勾配から定められる。すなわち、温度ひび割れ間隔はアスファルト混合物の材料要因だけではなく、アスファルト舗装の構造要因にも依存する。計算例をいくつか示し、結果を試験舗装実測データによって検証した。
 第3章では、提案した温度ひび割れ発生率計算方法を利用して、アスファルト舗装の温度ひび割れ発生率に影響する材料要因と構造要因を分析するとともに、その影響程度も詳細に検討した。温度ひび割れ発生率に影響する材料要因として、数種類のアスファルトを用い、構造要因としてアスファルト混合物層の厚さ、路盤材料などを変化させた。アスファルトに対し、針入度、フラース脆化点、SHRPクリープ試験温度など従来の試験法を実施し、これらの結果から寒冷地の材料設計を行う方法を提案した。
 第4章では、低温時のアスファルトの粘度を測定するために、サンドイッチ式平板粘度測定装置を開発した。この結果、+10℃から-20℃までの温度範囲にわたるアスファルトの粘度測定を可能にした。数種類のアスファルトに対し低温粘度を測定し、これらのアスファルトを用いた試験舗装の供用性能と比較した結果、寒冷地のアスファルト舗装には感温性および低温粘度が小さいアスファルトを使用すべきであることを明らかにしている。
 第5章では、以上の分析結果と提案した材料設計方法に基づいて、数種類の試験舗装を舗設し、既設舗装の追跡調査と試験舗装の連続観測を行った。その結果、本研究で得られた分析結果および提案した設計方法の有効性を明らかにした。
 第6章では本研究の結論を述べている。
 本論文の研究結果として、寒冷地におけるアスファルト舗装の材料設計および構造設計の信頼性を大幅に向上させることができた。

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