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コンパクショングラウチングによる既設アスファルト舗装の支持性能強化に関する研究

氏名 尾本 志展
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第171号
学位授与の日付 平成10年3月25日
学位論文の題目 コンパクショングラウチングによる既設アスファルト舗装の支持性能強化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 唐 伯明
 副査 助教授 下村 匠
 副査 北海道工業大学 教授 笠原 篤

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目次

第1章 序論 p.1
 1.1 本研究の背景 p.1
 1.2 本研究の目的 p.6
 参考文献 p.11

第2章 グラウチング材の材料特性 p.12
 2.1 総説 p.12
 2.2 既往研究にみる配合と施工性の関係 p.15
 2.2.1 粒度 p.15
 2.2.2 スランプ p.17
 2.3 配合と力学的性状の関係 p.19
 2.3.1 一軸圧縮強度 p.21
 2.3.2 弾性係数 p.24
 2.4 まとめ p.28
 参考文献 p.29

第3章 コンパクショングラウチングによる路床土の締固め効果 p.30
 3.1 総説 p.30
 3.2 路床改良工法の現況 p.32
 3.3 地盤改良における締固め効果に関する既往の研究 p.39
 3.4 土槽を用いた室内での圧入モデル実験による圧入量と締固め効果の検討 p.42
 3.4.1 実験方法 p.42
 3.4.2 圧入前のCBRと圧入量の関係 p.45
 3.4.3 圧入前のCBRと締固め効果の関係 p.47
 (1) CBRの増強範囲と程度 p.47
 (2) レジリエントモデュラスの増強範囲と程度 p.50
 3.5 屋外での圧入実験による締固め効果の検討 p.53
 3.5.1 関東ロ-ム地盤における圧入実験 p.53
 (1) 実験方法 p.53
 (2) 締固め効果 p.57
 3.5.2 砂質地盤における圧入実験 p.62
 (1) 実験方法 p.62
 (2) 締固め効果 p.65
 3.6 まとめ p.71
 参考文献 p.72

第4章 コンパクショングラウチングによる舗装支持性能の増強効果 p.75
 4.1 総説 p.75
 4.2 有限要素法による構造解析での検討 p.76
 4.2.1 解析方法 p.76
 (1) 力学的挙動と路床改良効果の影響要因に関する解析方法 p.76
 (2) 舗装支持性能の増強効果に関する解析方法 p.78 
 4.2.2 コンパクショングラウチングを適用した舗装の力学的挙動 p.81
 (1) 応力・ひずみの深さ方向分布 p.81
 (2) 表面たわみの水平方向分布 p.88
 4.2.3 路床改良効果に対する影響要因 p.90
 (1) 改良型式の影響 p.90
 (2) 柱体形状の影響 p.94
 4.2.4 舗装支持性能の増強効果 p.97
 (1) 路床改良効果 p.97
 (2) 舗装支持性能の増強効果 p.101
 4.3 屋外での圧入実験による舗装支持性能の増強効果に関する検討 p.103
 4.3.1 実験および解析の方法 p.103
 (1) 現場実験 p.103
 (2) 有限要素法による構造解析 p.110
 4.3.2 舗装支持性能の増強効果 p.111
 (1) 現場実験によるたわみ低減効果とその要因 p.111
 (2) 有限要素法による構造解析での評価 p.118
 4.4 まとめ p.122
 参考文献 p.124

第5章 路床改良型式に関する設計法の検討 p.126
 5.1 総説 p.126
 5.2 アスファルト舗装設計法と修繕設計の現況 p.128
 5.3 有限要素法による構造解析の妥当性の検討 p.146
 5.3.1 検討方法 p.146
 5.3.2 解析の妥当性 p.148
 5.4 有限要素法による構造解析とTA法を用いた設計法の提案 p.150
 5.5 まとめ p.155
 参考文献 p.156

第6章 修繕への適用に向けての検討 p.158
 6.1 総説 p.158
 6.2 他分野での施工法 p.159
 6.3 柱体形状の均一化に関する検討 p.161
 6.3.1 柱体形状に影響を及ぼす要因 p.161
 6.3.2 柱体形状の制御法 p.162
 (1) 検討方法 p.162
 (2) 袋詰め圧入法 p.163
 6.4 適用範囲の検討 p.167
 6.5 まとめ p.173
 参考文献 p.174

第7章 研究成果の結論 p.176

 謝辞

 わが国でも本格的な大型補修時代を迎え,補修工事における舗装発生材の処分や沿道環境の悪化などの問題がより一層深刻化してきている.このため,今日では,補修工事の費用や回数の削減などを目的とした長寿命化技術の構築が強く求められている.
 こうした舗装の長寿命化を図るためには,路盤の支持力低下とこれを早める路床の支持力不足が構造的な破損原因であるという実態からみると,構造的には路床を強化することが舗装の新設や修繕とに関係なく特に必要となってくる.しかし,既設舗装の修繕では,従来工法により路床改良することは,大規模な打換えが必要となるため,今日の道路環境下では極めて困難な状況にある.
 そこで,本研究は,地盤改良における注入工法の1つであるコンパクショングラウチング工法を利用して,低スランプのグラウチング材を舗装表面から小径の注入管を通して路床内へ圧入して太い柱体を形成し,その際に期待される周辺路床土の締固め効果と形成される柱体の支持杭効果とにより,舗装を打ち換えることなく在来路床を強化し既設舗装の支持性能を高める工法を構築することを目的に行ったものである.
 本研究では,まずグラウチング材の強度特性と本工法における土の締固め効果を検討し,本工法の適用の可能性を見出した.そこで,次に路床改良効果と舗装支持性能の増強効果や施工法について検討し,FEMによる構造解析とTA法とにより適切な路床改良形式を設計し柱体形状の制御可能な方法で施工すれば,本工法により既設舗装の修繕後の寿命を新設時における設計寿命と同等以上にまで延ばすことが可能であることを明らかにした.
 本研究は,第1章から第7章で構成される.以下に,各章の概要と得られた知見を述べる.
 第1章では,研究の背景として,補修工事における問題と構造的な破損原因の実態などについ示すとともに,修繕後の既設舗装の寿命を延ばすためには,舗装を打換えることなく在来路床を強化して既設舗装の支持性能を高めることが不可欠であることを述べ,本研究の目的を明確にしている.
 第2章では,コンパクショングラウチングに使用するグラウチング材の力学的試験を行い,その強度特性を検討した.その結果,(1)路床の改良柱体としては十分な強度を有し,路盤削孔部の埋戻し材としても適用可能なこと,(2)その強度はスランプによって異なること,などを明らかにした.
 第3章では,室内や現場で圧入実験を行い,グラウチング材を路床内に圧入した場合の土の締固め効果(締固め範囲と改良程度)について検討した.その結果,(1)柱体周囲のある範囲内では当該効果によりCBRやレジリエントモデュラスが増強されること,(2)当該効果は締固め対象とする土のCBRや種類によって異なること,(3)室内圧入実験は現場での結果と概ね一致しており,当該効果の評価に適用可能であること,などを明らかにした.
 第4章では,まず有限要素法による構造解析により,本工法を適用した舗装の力学的挙動や,関東ロ-ムを対象とした場合の路床改良効果と舗装支持性能の増強効果について,その影響要因も含め検討した.次いで,現場実験と当該構造解析により,別途路床土(火山灰砂)に対する同様な検討を行った。その結果,(1)本工法により特に路床上面の圧縮歪が低減されること,(2)この低減効果(路床改良効果)により,どちらの路床土の場合でも,柱体の配置型式からみて最もクリティカルな箇所で評価しても既設舗装の支持性能を新設時断面と同等以上にまで増強させることが可能であること,(3)当該支持性能の増強効果は,柱体の配置型式や柱体頂部の路床内の位置に最も影響されること,などを明らかにした.
 第5章では,まず上述した現場実験での結果をもとに,有限要素法による構造解析の妥当性について検討し,次いで既設舗装の支持性能や在来路床の条件に応じた適切な路床改良形式の設計法について検討した.その結果,FWDによる実測たわみと当該解析による計算たわみがほぼ一致したことより当該解析が妥当であることを明らかにした.また,当該設計法は,当該解析により求められる路床改良後のCBRと現行設計法のTA式とを用いて算出される,改良断面と新設時設計断面との5tf換算輪数比により舗装支持性能の増強効果を評価して行う方法を提案した.
 第6章では,修繕への適用に向け,舗装に適した施工法や適用範囲について検討した.その結果,(1)グラウチング材を袋内に圧入すれば路床改良効果からみてもほぼ妥当な形状の柱体を形成することができること,(2)路盤以下の削孔は削孔水を使用せずに行えるオ-ガドリルを用いた方法が適していること,(3)本工法の適用範囲はC・D交通の既設舗装でCBR2から6の路床が適していること,などを明らかにした.
 第7章では,本研究の結論を述べている.
 本研究の成果は,ほとんど非破壊に近い型式で既設アスファルト舗装の在来路床を強化し支持性能を高めることを可能にするもので,資源や沿道環境の保全ならびに舗装の長寿命化に貢献できる.

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