本文ここから

高能率・高研削比多孔質ダイヤモンド砥石の開発

氏名 高田 篤
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第112号
学位授与の日付 平成10年3月25日
学位論文の題目 高能率・高研削比多孔質ダイヤモンド砥石の開発
論文審査委員
 主査 教授 石崎 幸三
 副査 教授 秋山 伸幸
 副査 助教授 福澤 康
 副査 助教授 田辺 郁男
 副査 新潟大学 助教授 堀田 憲康

平成9(1997)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

論文目次

第1章 緒論
1-1 研究の背景 p.1
1-1-1 研削工具の発達の歴史 p.1
1-1-2 最近の傾向 p.2
1-1-3 研削理論の現状 p.3
1-2 研削砥石 p.5
1-2-1 必要機能 p.5
1-2-2 構成要素 p.6
1-2-3 表示 p.10
1-3 脆性材料の加工に関する既往の研究 p.11
1-3-1 研削砥石による研削試験 p.11
1-3-2 研削条件と研削性能の関係 p.12
1-3-3 研削加工面 p.13
1-4 超砥粒砥石における問題点 p.13
1-4-1 一般砥石と超砥粒砥石における相違点 p.13
1-4-2 研削砥石の相反特性 p.14
1-4-3 既存砥石の評価方法 p.16
1ー5 本研究の目的と研究計画 p.16
1-5-1 研究の目的 p.16
1-5-2 研究計画 p.18
図 p.21
参考文献 p.27

第2章 高強度・高気孔率多孔質材料の作製
2-1 はじめに p.28
2-2 研削砥石中に含まれる気孔の役割 p.29
2-3 多孔質材料の作製方法 p.29
2-4 目的 p.31
2-5 試料作製前準備 p.31
2-6 焼結実験及び評価方法 p.33
2-7 実験結果 p.34
2-7-1 焼結実験結果 p.34
2-7-2 多孔質材料の機械的強度供試材料 p.35
2-8 気孔率、微構造に及ぼすHIP圧力の影響 p.35
2-9 機械的強度に及ぼすHIP圧力の影響 p.36
2-10 まとめ p.37
図 p.38
参考文献 p.46

第3章 電着砥石を用いたダイヤモンド砥粒の最大研削能力評価
3-1 はじめに p.47
3-2 ダイヤモンド砥石の研削性能 p.47
3-3 研削砥石の評価方法の問題点と本研究の目的 p.48
3-4 実験方法 p.49
3-4-1 電着砥石の作製 p.49
3-4-2 定圧研削試験条件 p.50
3-5 実験結果及び考察 p.51
3-5-1 砥粒率が電着砥石の研削性能に及ぼす影響 p.51
3-5-2 各種セラミックスの研削特性 p.52
3-5-3 引っ掻き試験結果を用いた最大研削能力の推定 p.53
3-5-4 研削砥石の周速の影響 p.53
3-6 まとめ p.54
図 p.56
参考文献 p.67

第4章 レーザー顕微鏡を用いた砥石表面トポグラフィー評価
4-1 はじめに p.68
4-2 各種トポグラフィー測定法の分類とその特徴 p.68
4-2-1 直接法 p.70
4-2-2 間接法 p.71
4-3 本研究で用いた砥石表面トポグラフィー評価 p.72
4-3-1 原理および特徴 p.72
4-3-2 レーザ顕微鏡による砥石表面トポグラフィーの測定法 p.72
4-3-3 研削抵抗比と被削材除去速度と研削エネルギーの理論的考察 p.73
4-4 実験方法 p.75
4-5 実験結果 p.75
4-6 ダイヤモンド砥粒の分担荷重の研削性能に及ぼす影響 p.76
4-7 まとめ p.77
図 p.78
参考文献 p.84

第5章 高能率・高研削比ダイヤモンド砥石の開発
5-1 はじめに p.85
5-2 高能率・高研削比砥石の条件 p.86
5-3 高能率、高研削比を同時実現するためのダイヤモンド砥粒の保持形態 p.88
5-4 高気孔率状態での研削砥石の高ヤング率化 p.90
5-4-1 窒化チタンボンドダイヤモンド砥石の開発 p.90
5-4-2 窒化チタンボンドダイヤモンド砥石の研削性能 p.92
5-5 まとめ p.93
図 p.95
参考文献 p.101

第6章 総括
6-1 本研究で得られた結論 p.102
6-2 今後の研究指標と本研究内容の利用方法 p.103

添付資料
本研究に関する研究論文リスト p.105
本研究に関する特許リスト p.106

謝辞 p.107

付録
セラミックス加工に及ぼす新しい物理特性
7-1 はじめに p.108
7-2 研削抵抗の解析的理論 p.109
7-2-1 単粒による切削抵抗 p.109
7-2-2 砥石による研削抵抗 p.111
7-3 既存研削理論における問題点 p.115
7-4 単粒押し込み、引っ掻き試験 p.116
7-4-1 はじめに p.116
7-4-2 供試材料 p.117
7-4-3 ビッカース圧子圧入試験 p.118
7-4-4 ダイヤモンド単粒引っ掻き試験 p.118
7-5 圧子圧入試験における材料の変位挙動 p.119
7-6 単粒ダイヤモンド圧子による引っ掻き試験特性 p.120
7-7 引っ掻き試験における比研削エネルギーと材料除去量の関係 p.122
7-8 実接触断面積と実切削断面積をもとにした研削抵抗の経験的法則の導出 p.123
7-9 まとめ p.124
図 p.125
参考文献 p.139

 セラミックスの研削加工における加工現象を支配する要因は多く、かつ複雑に絡み合っている。本研究では、被研削材のもつ特性を明らかにし、研削加工のメカニズム、ダイヤモンド砥粒の最大研削能力等について探究し、これらの結果をもとにして、高能率、高研削比多孔質ダイヤモンド砥石を開発した。
 第1章「緒論」では、現状の研削加工の設計方法をはじめ、砥石の評価方法の問題点を明らかにし、砥石開発の必要性、砥石開発に要求される項目等について記述した。
 第2章「高強度・高気孔率多孔質材料の作製」では、多孔質ダイヤモンド砥石を作製するために、高強度多孔質材料の作製を試みた。多孔質体を作製するにあたって、通常焼結で行った場合、高気孔率と高強度は相反する特性であるために、一般的には同時に実現できないとされている。そこで本研究においては、高強度多孔質焼結体を作製するために、熱間等方圧加圧焼結(HIP)法を用いてHIP圧力と多孔質体の焼結性および機械的特性について検討した。
 多孔質体の気孔率はHIP焼結中のガス圧力によって制御でき、HIP圧力を増加することによって、同じ焼結温度のもとで、常圧焼結に比べて高い気孔率を示すことが確認され、またその気孔径は、HIP圧力が高くなることによって、微細な気孔径が消滅し、気孔径の制御も可能となった。多孔質体の機械的強度は、HIP圧力を高くすることで、銅又はガラス質砥石の曲げ強度、ヤング率が増加することが確認できた。高圧ガスを用いることで、多孔質焼結体の気孔率、気孔径、機械的強度を制御することが可能となった。
 第3章「電着砥石を用いたダイヤモンド砥粒の最大研削能力評価」では、ダイヤモンド砥石の比較基準を作製するために、ダイヤモンド砥粒の最大研削能力について検討した。一般に研削加工において使用される砥石の砥粒は、被加工材料に比較して硬度を有する材料であり、セラミックス加工に関しては、通常ダイヤモンドが使用される。また砥石に用いられる各種結合材(ボンド)の存在によって、ダイヤモンド砥粒の研削能力は低下し、また砥粒の影響、ボンド材の影響が明確に判断できない。そこで、本研究においては、砥粒の突き出し量の調整が可能で、ボンド材の影響を少ない電着砥石を試作し、砥粒集中度(コンセントレーション)をパラメターして、定圧研削試験を行った。本実験では、砥粒率が少ない5%の電着砥石が優れた研削性能を示しだ。また、通常の研削試験では実施しない、極低速研削を行い、比研削エネルギーに対する砥石周速度の影響と弾性回復量について調べた結果、砥石周速が極端に遅くなることで、比研削エネルギーが急激に大きくなり、自作の引っ掻き試験機を使用して得られた被研削材料の比研削エネルギーと一致することが確認でき、弾性回復量は電着砥石の砥石周速が速くなることで格段に小さくなることが確認された。引っ掻き試饒で得られた比研削エネルギーとつまり、これまでの実際の研削加工と単粒引っ掻き試験結果との不整合性は、極低速研削試験によって解決でき、単粒引っ掻き試験を行うことで、その研削加工現象を推定できることを明らかにした。
 第4章「レーザー顕微鏡を用いた砥石表面トポグラフィー評価」では、研削砥石の表面トポグラフィと研削性能を調べるために、セラミックスの加工物性とダイヤモンド砥粒の最大研削能力をもとにして、実際の研削現象について考察した。砥石表面に多数存在するダイヤモンド砥粒が、実際に研削作業中に被研削材料に作用可能なダイヤモンド粒の個数、その接触面積、研削抵抗、材料除去速度などのパラメータを共焦点レーザー顕微鏡を用いて測定した結果からシミュレーシーンを行い、砥石表面状態と研削抵抗、材料除去速度の関係を検討した。その結果、トポグラフィ測定を元に計算した電着砥石の砥石表面状態は、本研究で得られた研削抵抗の経験式を適用することで実際の研削試験結果とほぼ同じ値を示すことが確認された。被削材材料除去速度と比研削エネルギーに関しては、分担荷重を考慮することで実際の試験結果とほぼ同じ結果を示すことが確認された。これによって、砥石表面トポグラフィーと研削抵抗の関係が明らかになり、最適な砥粒分布を持つ研削砥石設計に関しての指標を得ることができた。
 第5章「高能率・高研削比多孔質ダイヤモンド砥石の開発」では、本研究で得られた研究結果をもとに、多孔質ダイヤモンド砥石の作製を試みた。砥石の研削能力は、砥粒の突き出し量と気孔の有無が大きく関連し、易ドレス・ツルーイング性には、気孔率、研削比には、砥粒の保持形態、寸法精度には、砥石のヤング率が起因する。本実験においては、鋳鉄ボンドと窒化チタンボンドを用いて研削砥石の相反特性である研削能率と研削比を同時に向上させる砥石の開発を行った。研削能率と研削比を同時に向上さすには、砥粒とボンド材の界面に、ボンド材と砥粒の固溶反応または化学反応させることによって、砥粒の保持力が上昇し、ボンド部分はボンド部材原料粉を焼結させることにより、多孔質化することによって多孔質ボンドダイヤモンド砥石を作製し、高い除去能率と高い研削比を同時に実現することができた。
 第6章では本論文を総括し、本研究によりはじめて「多孔質金属ボンドダイヤモンド砥石」、「多孔質セラミックスボンドダイヤモンド砥石」と言う概念が考え出され、その作製を可能にし、またダイヤモンドとボンド材の化学反応による新しいダイヤモンド砥粒の保持方法が開発されたことを明らかにし、将来の展望、また今後解決すべき問題点を述べた。

平成9(1997)年度博士論文題名一覧

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る