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乗算分解型超弾性-塑性材料におけるせん断帯モードおよび拡散型モードの分岐解析

氏名 佐藤 啓介
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第361号
学位授与の日付 平成18年3月24日
学位論文題目 乗算分解型超弾性-塑性材料におけるせん断帯モードおよび拡散型モードの分岐解析
論文審査委員
 主査 助教授 岩崎 英治
 副査 教授 海野 隆哉
 副査 教授 大塚 悟
 副査 助教授 下村 匠
 副査 東北大学大学院 工学研究科教授 池田 清宏

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目次

1 序論 p.1
 1.1 はじめに p.1
 1.2 本研究の目的 p.4
 1.3 本論文の構成 p.4

2 解析的理論分岐解法 p.7
 2.1 はじめに p.7
 2.2 構成関係と分岐発生時の支配方程式 p.8
 2.2.1 圧縮性材料の構成関係 p.8
 2.2.2 支配方程式と境界条件 p.10
 2.3 せん断帯分岐モード p.19
 2.4 拡散型分岐モード p.19
 2.4.1 境界条件とつり合い式 p.19
 2.4.2 支配方程式における解の分類 p.21
 2.4.3 EC領域での分岐条件式 p.24
 2.4.4 EI領域での分岐条件式 p.24
 2.4.5 P領域での分岐条件式 p.25
 2.4.6 H領域での分岐条件式 p.26
 2.5 まとめ p.26

3 乗算分解型超弾性‐塑性材料 p.27
 3.1 はじめに p.27
 3.2 速度型弾塑性構成式 p.28
 3.2.1 速度型超弾性構成式と接線係数 p.28
 3.2.2 速度型弾塑性構成式 p.30
 3.3 Hencky超弾性モデル p.31
 3.4 Drucker-Pragerモデル p.33
 3.5 乗算分解型超弾性‐塑性材料の速度型構成式と構成パラメータ p.34
 3.5.1 構成パラメータおよび45度せん断剛性 p.35
 3.5.2 瞬間せん断剛性 p.39
 3.6 まとめ p.40

4 理論解法を用いた分岐解析 p.41
 4.1 はじめに p.41
 4.2 1要素解析による構成式応答の導出 p.42
 4.2.1 解析モデルと材料定数 p.42
 4.2.2 1要素解析 p.44
 4.3 分岐に関する解の領域と分岐方程式 p.46
 4.3.1 変形に伴う応力状態 p.46
 4.3.2 応力状態と支配方程式の解の領域 p.48
 4.4 理論解法によるせん断帯分岐解析 p.51
 4.4.1 せん断帯分岐の発生 p.51
 4.4.2 材料の硬化とせん断帯分岐 p.52
 4.4.3 せん断帯傾角 p.55
 4.4.4 応力速度と解の領域の関係 p.56
 4.5 理論解法による拡散型分岐モード p.59
 4.5.1 拡散型分岐の発生 p.59
 4.5.2 拡散型モードの変形形状 p.61
 4.5.3 硬化の度合いと分岐の発生 p.67
 4.6 まとめ p.70

5 有限要素法を用いた分岐解析と理論解法との比較 p.72
 5.1 はじめに p.72
 5.2 数値解法による分岐解析 p.73
 5.2.1 弾塑性分岐条件と数値分岐解析手法 p.74
 5.2.2 解析モデルと境界条件 p.75
 5.2.3 つり合い経路と分岐モード p.80
 5.2.4 拡散型分岐条件に関する理論解法と数値解法との比較 p.81
 5.3 数値分岐解析による供試体形状比の検討 p.84
 5.3.1 解析モデルと境界条件 p.84
 5.3.2 分岐加重・分岐モード p.85
 5.3.3 供試体形状に関する数値解と理論解の比較 p.90
 5.3.4 実験における破壊モードと数値解析結果の比較 p.93
 5.4 まとめ p.95

6 結論 p.99

参考文献 p.100

A 乗算分解型超弾性‐塑性材料の速度型構成式 p.109
 A.1 弾塑性有限ひずみ理論における構成関係とその応力速度 p.109
 A.1.1 超弾性構成式と塑性発展方程式 p.109
 A.1.2 速度形式における弾塑性構成式 p.115
 A.1.3 弾塑性接線係数の導出 p.118

B Jaumann速度を用いた速度型亜弾性‐塑性材料 p.120
 B.1 Chau and Rudnicki5)における構成式 p.120

C 豊浦砂の平面ひずみ試験1)の概要 p.123

D 各種方程式の導出 p.127
 D.1 せん断帯分岐における支配方程式の定式化 p.127
 D.2 拡散型分岐に関する定式化 p.128
 D.2.1 支配方程式の定式化 p.128
 D.2.2 EC領域における分岐条件式 p.132
 D.3 垂直応力・垂直ひずみに関する弾塑性接線係数 p.138

 地盤材料力学の分野では,分岐現象に起因する変形の局所化を理論的・数値解析的あるいは実験的に捉える研究が盛んに行われている.分岐現象には,一様な変形から局所的な変形に移行する際の分岐モードとして,幅の狭い帯状領域に変形が局所化して現れる「せん断帯モード」や供試体が周期性を持った変形を生じる「拡散型モード」などが考えられる.本論文では,これら2つの分岐現象について理論解法による検討を行った.
 第1章では,本研究に関する背景と既往の研究について論じるとともに,本研究における目的と論文の構成を述べた.
 第2章では,乗算分解型超弾性-塑性材料を想定した構成式を用いて解析的理論解法によるせん断帯分岐モードおよび拡散型分岐モードの分岐条件を導いた.このとき,平面ひずみ条件での摩擦性材料の速度型構成式を用いた.特に,拡散型モードの変位速度場を表す関数には体積変化を考慮しうる形式を用いた.
 第3章では,乗算分解型超弾性-塑性理論に基づいた有限変形時の構成式を表すことによる特長について述べた.また,平面ひずみ条件での摩擦性材料の挙動を表すために必要な各種係数の具体形を導出し,この係数とJaumann速度を用いた速度型亜弾性-塑性材料における係数との比較を行うことで,乗算分解型超弾性-塑性理論で自然に導出される現配置での応力状態に依存する項の存在を示した.
 第4章では,平面ひずみ状態でのせん断帯モードおよび拡散型モードの分岐点を理論解法による各分岐条件により調べた.その結果,せん断帯分岐モードでは,Cauchy応力で表記した応力経路に関して,軟化挙動を示す場合にのみせん断帯分岐モードが発生し,軟化が示されない場合にはせん断帯分岐が現れないことが確認された.また,微小変形理論の場合と比べても良い精度が得られており,塑性硬化係数が大きいほどせん断帯の傾角は小さくなる傾向が得られることが示された.拡散型分岐モードでは,拡散型モードの分岐発生応力や発生モードの順番について調べた.また,塑性硬化係数が大きいほど分岐点の数が減少し,せん断帯モードと同様に,応力経路が軟化を示さない場合は分岐点が存在しないことが確認された.
 第5章では,数値分岐解析における拡散型モードの分岐発生条件や数値分岐解析の基本的な事項を示した.そして,第4章で示した理論解法による分岐解析の結果と数値分岐解析の結果を比較した.これにより,比較的低次の分岐モードの場合に限れば,理論分岐解析と比べて数値分岐解析は比較的良好な精度で分岐点位置の予測を与えうることが確認された.さらに,供試体形状比と拡散型分岐モードとの関連性を数値解法および理論解法の両面から調べ,ともに供試体形状比により分岐応力は増減を伴いながら変動することが確認された.
 最後に第6章では,本論文の成果をまとめ,研究の総括を行うとともに,今後の課題と研究の展望について述べる.
 以上のように,本論文では地盤材料における変形の局所化とせん断帯分岐形成が分岐現象に支配されていることを,理論解析を通して示した.

本論文は,「乗算分解型超弾性-塑性材料におけるせん断帯モードおよび拡散型モードの分岐解析」と題し,6章で構成されている.
 第1章では,本研究に関する背景と既往の研究について論じるとともに,本研究における目的と論文の構成を述べている.
 第2章では,乗算分解型超弾性-塑性材料を想定した構成式を用いて解析的理論解法によるせん断帯分岐モードおよび拡散型分岐モードの分岐条件を導いている.
 第3章では,乗算分解型超弾性-塑性理論に基づいた有限変形時の構成式を表すことの特長について述べている.また,平面ひずみ条件での摩擦性材料の挙動を表すために必要な各種係数の具体形を導出し,この係数とJaumann速度を用いた速度型亜弾性-塑性材料における係数との比較を行うことで,乗算分解型超弾性-塑性理論で自然に導出される現配置での応力状態に依存する項の存在を示している.
 第4章では,平面ひずみ状態でのせん断帯モードおよび拡散型モードの分岐点を理論解法による各分岐条件により調べている.その結果,せん断帯分岐モードでは,Cauchy応力で表記した応力経路に関して,軟化挙動を示す場合にのみせん断帯分岐モードが発生し,軟化が示されない場合にはせん断帯分岐が現れないことを確認している.また,微小変形理論の場合と比べても良い精度が得られており,塑性硬化係数が大きいほどせん断帯の傾角は小さくなることが示されている.拡散型分岐モードでは,拡散型モードの分岐発生応力や発生モードの順番について調べることで,塑性硬化係数が大きいほど分岐点の数が減少し,せん断帯モードと同様に,応力経路が軟化を示さない場合は分岐点が存在しないことを確認している.
 第5章では,数値分岐解析における拡散型モードの分岐発生条件や数値分岐解析の基本的な事項を示している.そして,第4章で示した理論解法による分岐解析の結果と数値分岐解析の結果を比較している.これにより,比較的低次の分岐モードの場合に限れば,理論分岐解析と比べて数値分岐解析は比較的良好な精度で分岐点位置の予測を与えうることを確認している.さらに,供試体形状比と拡散型分岐モードとの関連性を数値解法および理論解法の両面から調べ,ともに供試体形状比により分岐応力は増減を伴いながら変動することを確認している.
 最後に第6章では,本論文の成果をまとめ,研究の総括を行うとともに,今後の課題と研究の展望について述べている.
 本論文では,地盤材料における変形の局所化とせん断帯分岐形成が分岐現象に支配されていることについて理論解析により示し,より合理的な要素試験の解析手法には分岐現象を考慮するべきであることを示した.よって,本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める.

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