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岩盤不連続面のせん断強度モデルに関する基礎的研究

氏名 尾澤 知憲
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第368号
学位授与の日付 平成18年3月24日
学位論文題目 岩盤不連続面のせん断強度モデルに関する基礎的研究
論文審査委員
 主査 助教授 大塚 悟
 副査 教授 海野 隆哉
 副査 教授 杉本 光隆
 副査 助教授 豊田 浩史
 副査 東北大学大学院工学研究科助教授 京谷 孝史

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第1章 序論 p.1
 1.1 まえがき p.1
 1.2 既往のせん断強度モデル p.3
 1.2.1 Pattonのバイ・リニアモデル p.3
 1.2.2 Jaegerの指数関数を導入した強度モデル p.4
 1.2.3 Ladanyi and Archambaultのせん断強度モデル p.6
 1.2.4 楠見ほかの修正L-Aモデル p.8
 1.2.5 Bartonの実験に基づく強度モデル p.9
 1.2.6 Ohtsuka and Doiの区分線形強度モデル p.11
 1.3 本研究の目的 p.12
 [参考文献] p.13

第2章 不連続面の2次元せん断強度モデルの提案と妥当性の検討 p.17
 2.1 はじめに p.17
 2.2 上界計算による不連続面のせん断破壊機構の検討 p.18
 2.2.1 不連続面の代表形状と破壊形態の選定 p.18
 2.2.2 鋸型状の凹凸形状を有する不連続面のせん断強度 p.20
 2.2.3 凹凸形状が不連続面のせん断強度に与える影響 p.28
 2.3 不連続面の幾何形状の定量的評価方法 p.35
 2.3.1 Rengersの形状評価手法 p.35
 2.3.2 Rengers曲線の物理的な意味 p.39
 2.4 Rengersの方法を導入した2次元せん断強度モデル p.39
 2.4.1 Ohtsuka and Doiの区分線形強度モデル p.40
 2.4.2 上界計算式に基づいた区分線形強度モデル p.40
 2.4.3 不連続面のせん断強度の求め方 p.41
 2.5 提案モデルの妥当性の検討 p.42
 2.5.1 1次アスペリティに対する上界計算結果との比較 p.42
 2.5.2 高次アスペリティに対する上界計算結果との比較 p.43
 2.5.3 代表形状を連結して幾何形状を評価することの妥当性 p.49
 2.5.4 不規則形状を有する不連続面に対する提案モデルの妥当性 p.51
 2.5.5 せん断方向によるせん断強度の異方性の検討 p.55
 2.5.6 不連続面の凹凸形状に関する寸法効果の検討 p.60
 2.5.7 2つの基本形状を含む不連続面に対する適用性 p.64
 2.6 まとめ p.65
 [参考文献] p.67

第3章 不連続面の3次元せん断強度モデルの提案と妥当性の検討 p.71
 3.1 はじめに p.71
 3.2 上界計算による不連続面のせん断破壊機構の検討 p.72
 3.3 3次元的に分布する不連続面の形状評価手法 p.81
 3.4 3次元せん断強度モデルの提案 p.85
 3.5 3次元せん断強度モデルの妥当性の検討 p.85
 3.5.1 上界計算結果との比較 p.85
 3.5.2 実験結果との比較 p.90
 3.6 まとめ p.94
 [参考文献] p.97

第4章 提案モデルを用いた斜面安定解析 p.99
 4.1 はじめに p.99
 4.2 岩盤斜面の安定解析 p.102
 4.3 まとめ p.107
 [参考文献] p.109

第5章 結論 p.111

謝辞 p.115

 不連続面が発達した岩盤斜面の崩壊は不連続面のせん断強度特性に大きく依存する.一般に不連続面の表面は凹凸形状を成しており,そのせん断強度は垂直応力に対して非線形となる.よって,不連続面の幾何形状を定量的に評価することによりせん断強度を予測することは工学的に極めて重要である.本論文は凹凸形状の破壊機構の視点から不連続面のせん断強度モデルを提案することを目的とし,その妥当性について検討したものである.提案モデルを用いて不連続面のせん断強度を適切に評価することにより現実的な岩盤斜面の安定性評価が可能となればその工学的意義は大きいと考えられる.

本論文は「岩盤不連続面のせん断強度モデルに関する基礎的研究」と題し,全5章より構成されている.以下に各章の内容を概説するとともに得られた結論を略述する.

第1章では岩盤斜面の崩壊要因について概説し,不連続面のせん断強度把握の重要性を示したのち,既往の研究成果を踏まえた本研究の目的と位置づけを述べている.

第2章では不連続面の凹凸形状(アスペリティ)が奥行き方向に一定である2次元不連続面を対象に,極限定理の上界計算を用いて鋸型状の規則的な凹凸形状を有する不連続面のせん断破壊機構について検討した.不連続面のせん断強度はその破壊形態がアスペリティに沿うすべり破壊からアスペリティの完全せん断破壊に移行することで,垂直応力に対して非線形となることを明らかにした.また,垂直応力に応じて変化する不連続面のせん断抵抗角,および凹凸形状のせん断抵抗力に起因して発現する見掛けの粘着力はアスペリティの幾何学的な情報から予測できることを示した.次に,破壊機構の考察に基づいて凹凸形状を定量的かつ客観的に評価するRengersの方法を導入した2次元強度モデルを提案した.鋸型状不連続面に対する提案モデルのせん断強度は上界計算結果と良く一致する結果が得られた.また,不規則形状を有する不連続面に対して提案モデルを適用し実験結果との比較を行ったところ,提案モデルは低垂直応力でのせん断強度を精度良く予測した.岩盤斜面の安定問題では低垂直応力でのせん断強度把握が重要であることを勘案すると提案モデルの実務への適用性が期待できる.その他,Rengersの方法はせん断方向を考慮した形状評価が可能であることから,せん断方向による不連続面の強度異方性について検討した.不連続面が規則形状を有する場合は異方性が顕著であったのに対して,不規則形状の場合は異方性が発現しない傾向にあり興味深い結果が得られた.

第3章では実岩盤不連続面の3次元的な凹凸分布に着目し,上界計算を用いて四角錘状不連続面の3次元的なせん断破壊機構について検討した.不連続面のせん断強度は2次元問題と比較して非線形性が強くなることを示すとともに,不連続面のせん断抵抗角や見かけの粘着力はアスペリティの3次元的な幾何情報により予測できることを示した.さらに既往の強度モデルの多くは2次元問題に限定されていることから,本研究では破壊機構に基づいて3次元強度モデルの開発を行った.不連続面の形状評価手法については第2章にて導入した手法を3次元問題に拡張した.四角錘状不連続面に対する提案モデルのせん断強度は上界計算結果と良く整合した.また,上界計算により四角錘状不連続面の強度異方性について検討したところ顕著な異方性が確認されたが,提案モデルはこれを精度良く予測した.不規則形状に対する提案モデルのせん断強度は従来,評価が困難であった低垂直応力域にて実験結果と良く一致した.このことから提案モデルは斜面安定問題への工学的な適用性が高いと考えられる.

第4章では提案モデルの実際問題への適用を念頭に,不連続面のせん断強度特性を考慮した極限平衡法による岩盤斜面の安定解析を実施した.不連続面の表面粗度を考慮しない従来法に対して,表面粗度を取り入れることにより岩盤斜面の安定性を適切に評価できることを示した.提案モデルを用いて不連続面のせん断強度を適切に評価することにより,岩盤斜面の安定化対策工の経済性向上や崩壊予測の精度向上が期待される.

第5章では以上の総括と提案モデルに関する今後の課題および展望について述べている.

 本論文は,「岩盤不連続面のせん断強度モデルに関する基礎的研究」と題し,全5章より構成されている.

第1章では岩盤斜面の崩壊要因について概説し,不連続面のせん断強度把握の重要性を示したのち,既往の研究を踏まえて本研究の目的と位置づけを述べている.

第2章では不連続面の凹凸形状(アスペリティ)が奥行き方向に一定である2次元不連続面を対象に,極限定理の上界計算を用いて不連続面のせん断破壊機構について検討している.不連続面のせん断強度はその破壊形態がアスペリティに沿うすべり破壊からアスペリティの完全せん断破壊に移行することで垂直応力に対して非線形な挙動を示すことを明らかにしたのち,破壊機構の考察に基づいて凹凸形状を定量的かつ客観的に評価する手法を導入した2次元せん断強度モデルを提案している.上界計算による理論解および実験結果との比較により,提案モデルは不連続面のせん断強度を精度良く予測することを明らかにしている.

第3章では実岩盤不連続面の3次元的な凹凸分布に着目し,上界計算を用いて不連続面の3次元的なせん断破壊機構について検討している.不連続面のせん断強度は2次元問題と比較して非線形性が強くなることを示したのち,実現象を表現し得る強度モデルの構築を目的に破壊機構に基づいた3次元強度モデルを提案している.さらに,第2章にて導入した不連続面の形状評価手法を3次元問題に拡張している.提案モデルは従来,評価が困難であった低垂直応力域にて実験結果とよく整合しており,斜面安定問題への工学的な適用性の高いことを明らかにしている.

第4章では提案モデルの実際問題への適用を念頭に,不連続面のせん断強度特性を考慮した極限平衡法による岩盤斜面の安定解析を実施している.不連続面の表面粗度を考慮しない従来法に対して,表面粗度を取り入れることにより岩盤斜面の安定性を適切に評価できることを示している.

第5章では,各章の結論の総括と提案モデルに関する今後の課題および展望について述べている.

以上のように,本論文は岩盤不連続面の2次元・3次元せん断強度モデルをせん断破壊機構の視点から提案し,その妥当性について検討したものである.不連続面の幾何形状に基づいて岩盤不連続面のせん断強度を予測する方法は斬新であり,強度予測法に関して新たな視点や考え方を提示している.また,提案モデルを用いて不連続面のせん断強度を適切に評価することにより,岩盤斜面の安定化対策工の経済性向上や崩壊予測の精度向上が期待されることから,本論文は岩盤工学の発展及び応用に関して貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める.

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