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透過型繰り込みエリプソメトリー法による液晶の統合的評価

氏名 田中 紀彦
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第364号
学位授与の日付 平成18年3月24日
学位論文題目 透過型繰り込みエリプソメトリー法による液晶の統合的評価
論文審査委員
 主査 教授 赤羽 正志
 副査 教授 小野 浩司
 副査 助教授 安井 寛治
 副査 助教授 河合 晃
 副査 助教授 木村 宗弘

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第1章 序論 p.1
 1.1 液晶研究における本研究の意義 p.2
 ・はじめに p.2
 1.2 研究の目的 p.4
 ・社会的背景 p.4
 ・本研究の目的と概要 p.4
 ・本論文の構成 p.6

第2章 液晶 p.9
 2.1 液晶相 p.10
 ・液晶相の分類 p.10
 ・ネマティック液晶相およびスメクティツタ液晶相 p.10
 ・ダイレクタと配向秩序 p.11
 2.2 液晶の物性:その電気的及び光学的性賞 p.13
 ・液晶の誘電率異方性 p.13
 ・液晶の屈折率異方性 p.13
 2.3 ネマティック液晶の連続体理論 p.14
 ・Ossen-Frankの弾性体理論 p.14
 ・誘電エネルギー密度 p.15
 2.4 アンカリングエネルギー p.16
 ・アンカリングエネルギー関数の定義 p.16
 2.5 まとめ p.18

第3章 エリプソメトリー p.19
 3.1 エリプソメトリーの概要 p.20
 ・エリプソメトリーの特徴 p.20
 ・反射型エリプソメトリーの原理 p.20
 ・透過型エリプソメトリーの原理 p.22
 ・△,Ψ測定もよび解析 p.23
 3.2 Jonesマトリクス法 p.26
 ・Jonesマトリクス法の基礎 p.26
 ・Jone8マトリクス法による異方性媒体の一般的表記 p.28
 3.3 測定系における透過型繰り込みエリプソメトリー p.29
 ・Jonesマトリクスによる透過光の偏光状態の表記 p.29
 ・透過型繰り込みエリプソメトリー p.31
 3.4 まとめ p.35

第4章 液晶セルのエリプソメトリー p.37
 4.1 光学モデルにおける透過型繰り込みエリプソメトリー p.38
 ・はじめに p.38
 ・液晶膚の伝播マトリクス p.38
 ・配向膜、ITO膜および絶縁膜の伝播マトリクス p.40
 ・サンドイッチ型液晶セルの伝播マトリクス p.41
 ・液晶セルの透過型繰り込みエリプソメトリー p.41
 4.2 座棟系及びパラメーターの定義 p.43
 ・液晶セルの光学モデリング p.43
 4.3 収束計算の光学計算への適用 p.45
 ・polytope法 p.45
 4.4 まとめ p.49

第5章 液晶セルとその統合的評価 p.51
 5.1 液晶セルにおける評価対象 p.52
 ・概要 p.52
 ・現在の評価法の問題点 p.53
 ・液晶セルの統合的評価 p.54
 5.2 液晶セルの作製 p.56
 ・液晶セルの作製 p.56
 5.3 まとめ p.59

第6章 液晶材料の屈折率波長分散の測定法 p.61
 6.1 液晶セルの光学モデリング p.62
 ・光学モデルの決定 p.62
 6.2 屈折率波長分散の測定の基本原理 p.63
 ・step1:△ndの決定 p.63
 ・step2:neまたはnoの決定 p.64
 ・step3:屈折率波長分散の解析 p.67
 6.3 解析の一般化 p.70
 ・TNセルを用いた解析 p.70
 ・配向膜の光学的影響 p.71
 6.4 実験による液晶材料の屈折率波長分散の決定 p.76
 ・step1:Jonesマトリクスによるフィッティング p.76
 ・step2:neの初期値および次数の決定 p.76
 ・step3:4×4マトリクス法による屈折率の決定 p.77
 ・データの除外 p.82
 6.5 まとめ p.83

第7章 多入射分光フィッティング法 p.85
 7.1 多入射分光フィッティング法の原理 p.86
 ・はじめに p.86
 ・光学モデル p.86
 ・フィッティング方法 p.89
 7.2 分光フィッティング法による解析誤差の低減 p.90
 ・低減効果の検証 p.90
 ・分光で実験を行うことの有用性について p.91
 ・△,Ψ中の各パラメーターへの依存性 p.92
 ・ITO膜の屈折率が低い場合 p.95
 ・HANセルの場合 p.98
 ・セルパラメ一夕ーの決定の精度 p.102
 7.3 実験における多入射分光フィッティング法 p.103
 ・実験準備 p.103
 ・評価結果 p.103
 7.4 まとめ p.106

第8章 方位角アンカリング強度の評価 p.107
 8.1 方位角アンカリング強度評価の概要 p.108
 ・背景 p.108
 ・トルクバランス法 p.108
 8.2 プレチルト角の考慮 p.111
 ・背景 p.111
 ・評価方法 p.111
 ・実験準備 p.111
 ・実験結果 p.111
 ・考察 p.113
 8.3 HAN/TN2ドメインセルを用いたセル組み誤差の考慮 p.116
 ・背景 p.116
 ・セル組み誤差考慮の重要性 p.116
 ・評価原理 p.117
 ・実験準備 p.117
 ・実験結果 p.119
 8.4 まとめ p.121

第9章 結論 p.123
 9.1 統合的評価の効果 p.124
 ・屈折率決定誤差とセルバラメ一夕ー p.124
 ・方位角アンカリング強度評価への影響 p.125
 ・統合の効果 p.126
 9.2 まとめ p.127
 ・透過型繰り込みエリプソメトリー法の提案 p.127
 ・液晶セルとその統合的評価 p.127
 ・液晶材料の屈折率波長分散の決定 p.128
 ・多入射分光フィッティング法 p.128
 ・方位角アンカルグ強度の評価 p.128
 ・結論 p.129

参考文献 p.133

業績 p.137

付録 p.143

付録A 4×4マトリクス法の概要 p.144

現在、液晶ディスプレイ(LCD)を取り巻く社会の最も大きな変革は、2003年から開始されているテレビ放送の地上デジタル化である。これまで行われてきたアナログ放送が2011年には停波されるだけでなく、放送画質もハイビジョン放送へと移行する。そのため、テレビはより高精細な表示性能が求められる。

そこで、本論文では、LCDの高精細化のために不可欠な評価対象である、液晶材料、液晶セル、液晶配向という三つの要素を分光エリプソメーターで統合的に測定・評価することを目的とした。以下に本論文の要旨を示す。

第1章 序論では、本研究の背景および研究目的と意義について示した。

第2章 液晶では、本論文の焦点である液晶について触れ、その基礎的特性、即ち液晶の分類、物性などについて述べた。特に、本研究で扱うネマティック液晶材料について言及し、液晶の巨視的な解析手法の基本である「液晶の連続体理論」について概説した。

第3章 エリプソメトリーでは、本研究を貫く基礎測定技術であるエリプソメトリーについて、その原理や解析手法について示した。特に、透過型エリプソメトリー法の応用について示し、また異方性媒質に適用した「透過型繰り込みエリプソメトリー」について述べた。

第4章 液晶セルのエリプソメトリーでは、先に提案した透過型繰り込みエリプソメトリー法によって液晶セルを評価するために、サンドイッチ型液晶セルのモデリング及び光学計算の手法についてまとめた。さらに、液晶セルを特徴付けるセルパラメーターを定義した。最後に、多くのパラメーターを求めるために有効な多変量解析法について言及し、液晶セルへの適用について詳述した。

第5章 液晶セルとその統合的評価では、現在研究・開発されている液晶ディスプレイモードとその特徴を示し、高精細化のために、上に示した3つの要素を知ることが重要であることを述べた。その上で、それらの要素を評価する既存の手法が個々に問題を持つことを示した。そこで、本研究で提案する透過型繰り込みエリプソメトリー法を用いることにより、問題点を改善するだけでなく、同一液晶セルを用いて、誤差の少ない統合的評価が可能であることを示した。さらに、本研究で重要な液晶セルの基本的な作製方法について述べた。

第6章 液晶材料の屈折率波長分散の測定法では、可視光範囲内での液晶材料の屈折率波長分散を測定するために、透過型繰り込みエリプソメトリー法を用いた方法について提案した。特に、Jonesマトリクス法を巧みに利用することにより、容易に屈折率が決定できることを示した。また、理論、実験双方から議論を行い、液晶セルの光学要素についての考察や、解析手法の拡張を行った。これにより、分光エリプソメーターを用い液晶セルによる屈折率決定を初めて可能とした。

第7章 多入射分光フィッティング法では、液晶セルのセルパラメーターを正確に決定することを目的とした。透過型繰り込みエリプソメトリー法に分光評価を組み合わせて行うことにより、高精度な測定・解析手法を提案した。また、従来無視されていた多重反射/干渉の効果が、測定結果に大きく影響を与えることに言及した。その上で、本研究で提案する分光評価を適用することにより、その影響が低減できることを示した。これにより、従来できなかった全てのセルパラメーターの精密同時決定を可能とした。

第8章 方位角アンカリング強度の評価では、方位角アンカリング強度の評価法について議論を行った。1点目は、通常、無視されている界面のプレチルト角と方位角アンカリング強度との関係について考察した。本研究では、多入射分光フィッティング法を用いてTN(Twisted Nematic)セルのセルパラメーターを評価することにより、ある液晶-配向膜界面におけるプレチルト角と方位角アンカリング強度の関係を明らかにすることに成功した。
2点目は、従来の一般的な評価手法で方位角アンカリング強度を評価した場合に問題となる、セル組み誤差について検討をした。本研究では、HAN(Hybrid Aligned Nematic)配向領域とTN配向領域を合わせて持つ特殊なセルを用いることにより、セル組み誤差に影響されない評価が可能か検討を行い、利点と課題を示した。

第9章 結論では、透過型繰り込みエリプソメトリー法を通して、液晶材料、液晶セル、そして液晶-配向膜界面の物性と、統合的な評価が可能となる本研究についてまとめ、結論を記した。

本研究ではこれらの成果により、これまで複数の評価機器を用いていた種々の評価を、同一の機器(分光エリプソメーター)で行うことに成功した。この方法の利点は、液晶の物性、液晶セル、液晶配向まで統合的に評価できるため、self-consistentな評価が可能な点である。このように、液晶材料から、液晶ディスプレイの表示特性を左右する方位角アンカリング強度までを統合的に決定できる機器は他に存在せず、提案した評価手法は、液晶ディスプレイ研究において、極めて有効な手法であると考えられる。

本論文は、「透過型繰り込みエリプソメトリー法による液晶の統合的評価」と題し、液晶材料、液晶セル、液晶配向という三つの要素を分光エリプソメーターで統合的に測定・評価する方法を提案し、その有効性を実験・理論の両面から実証したものである。

第1章「序論」では、本研究の背景および研究目的と意義について述べている。

第2章「液晶」では、本研究で扱っているネマティック液晶材料について、巨視的な解析手法の基本である「液晶の連続体理論」について概説している。

第3章「エリプソメトリー」では、本研究を貫く基礎測定技術であるエリプソメトリーについて、その原理や解析手法について示している。特に、透過型エリプソメトリー法の応用について示し、また異方性媒質に適用した「透過型繰り込みエリプソメトリー」について述べている。

第4章「液晶セルのエリプソメトリー」では、前章で提案した透過型繰り込みエリプソメトリー法によって液晶セルを評価するために、サンドイッチ型液晶セルのモデリング及び光学計算の手法について述べ、さらに、液晶セルを特徴付けるセルパラメーターを定義している。

第5章「液晶セルとその統合的評価」では、現在研究・開発されている液晶ディスプレイモードとその特徴を示し、高精細化のために、上に示した3つの要素を知ることが重要であることを述べ、その上で、それらの要素を評価する既存の手法が個々に問題を持つことを示している。また、本研究で提案する透過型繰り込みエリプソメトリー法を用いることにより、問題点を改善するだけでなく、同一液晶セルを用いて、誤差の少ない統合的評価が可能であることを示している。

第6章「液晶材料の屈折率波長分散の測定法」では、可視光範囲内での液晶材料の屈折率波長分散を測定するために、透過型繰り込みエリプソメトリー法を用いた方法について提案している。これにより、分光エリプソメーターを用い液晶セルによる屈折率決定を初めて可能としている。

第7章「多入射分光フィッティング法」では、透過型繰り込みエリプソメトリー法に分光評価を組み合わせて行うことにより、高精度な測定・解析手法を提案している。

第8章「方位角アンカリング強度の評価」では、本手法を用いた方位角アンカリング強度の評価法について議論を行っている。

第9章「結論」では本研究で得られた結論をまとめている。
以上のように、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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