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ファインセラミックス部品光学式非接触自動欠陥検出法に関する研究

氏名 吉田 昌弘
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第242号
学位授与の日付 平成17年9月14日
学位論文題目 ファインセラミックス部品光学式非接触自動欠陥検出法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 秋山 伸幸
 副査 教授 久曽 神煌
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 福澤 康
 副査 助教授 明田川 正人

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目次

第1章 緒論 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 本研究に関連する従来の研究 p.1
 1.3 本研究の目的 p.7
 1.4 本論分の構成 p.8
 1.5 本論分で使用される記号 p.9
 1.6 参考文献 p.10

第2章 検査対象 p.11

第3章 従来の検査法と問題点 p.13

第4章 検出原理 p.16
 4.1 レーザ拡散領域検出法 p.16
 4.2 レーザ散乱光検出法 p.17
 4.3 白色透過照明による散乱光検出法 p.19
 4.4 各試料の欠陥と検出方法 p.20
 4.5 参考文献 p.21

第5章 濃色PZT基板上のき裂の自動検出 p.22
 5.1 試料の光学的特性 p.22
 5.1.1 試料の拡散放射束分布 p.22
 5.1.2 試料の拡散反射率 p.22
 5.1.3 拡散光の偏光解消特性 p.23
 5.2 き裂検出感度の向上 p.25
 5.2.1 実験装置 p.25
 5.2.2 き裂検出信号 p.25
 5.2.3 コントラスト向上のための条件 p.26
 5.2.4 SN比向上のための条件 p.27
 5.3 レーザ光走査型き裂検出機の試作と検出性能 p.28
 5.3.1 装置の構成 p.28
 5.3.2 試料表面粗さとSN比の関係 p.29
 5.3.3 き裂幅とSN比の関係 p.30
 5.3.4 検出可能き裂長さ p.30
 5.4 電極のパターン付基板上のき裂検出 p.30
 5.4.1 装置の構成 p.31
 5.4.2 き裂認識アルゴリズム p.32
 5.4.3 検出結果 p.33
 5.5 実用化の例 p.34
 5.6 本研究の特徴 p.34
 5.7 結言 p.34
 5.8 参考文献 p.35

第6章 チップ部品端部におけるき裂の自動検出 p.36
 6.1 チップ部品におけるき裂検出の背景 p.36
 6.2 検査対象 p.36
 6.3 き裂近傍の観察 p.37
 6.3.1 実験装置の構成 p.37
 6.3.2 観察用試料の作成 p.38
 6.3.3 拡散光検出結果 p.39
 6.4 PZTチップ端面からの検出条件と検出結果 p.40
 6.4.1 拡散放射束測定条件 p.40
 6.4.2 レーザ光スポット中心位置と測定窓中心位置の距離 p.41
 6.4.3 サンプリング間隔の決定 p.42
 6.4.4 き裂検出結果 p.43
 6.5 PZTチップ端面のき裂自動検出実験 p.44
 6.5.1 本研究の目的 p.44
 6.5.2 実験装置構成 p.44
 6.5.3 き裂信号検出結果 p.46
 6.5.4 PZT周辺部の検出信号 p.47
 6.6 き裂検出信号の処理方法と処理結果 p.48
 6.6.1 き裂認識アルゴリズム p.48
 6.6.2 PZT周辺の信号の除去 p.49
 6.6.3 き裂検出信号処理結果 p.49
 6.7 今後の課題 p.50
 6.8 本研究の特徴 p.50
 6.9 結言 p.50
 6.9.1 き裂の近傍における信号検出実験 p.50
 6.9.2 PZTチップ端面におけるき裂自動検出 p.51
 6.10 参考文献 p.51

第7章 ランプチューブ欠陥の自動検出 p.52
 7.1 ランプチューブにおける欠陥検出の背景 p.52
 7.2 検査対象 p.53
 7.3 欠陥の例 p.54
 7.4 レーザ散乱光検出法を用いたき裂検出 p.56
 7.4.1 検出原理 p.56
 7.4.2 理論解析 p.57
 7.4.3 計算結果と実験結果の比較 p.60
 7.4.4 実験装置と信号処理法 p.61
 7.4.5 実験結果 p.62
 7.5 白色透過光照明による散乱光検出法を用いた欠陥検出 p.63
 7.5.1 実験装置の構成 p.64
 7.5.2 試料回転機構 p.64
 7.5.3 レンズのF値と検出信号コントラストの関係 p.64
 7.5.4 検出信号処理方法 p.66
 7.5.5 実験結果 p.68
 7.6 本研究の特徴 p.69
 7.7 結言 p.69
 7.7.1 レーザ散乱光検出法を用いたき裂検出に対する結言 p.69
 7.7.2 白色透過光照明による散乱光検出法を用いた欠陥検出に対する結言 p.70
 7.8 参考文献 p.71

第8章 結論 p.72
 8.1 各章での結論 p.73
 8.2 本研究全体を通しての結論 p.75

謝辞 p.76

 ファインセラミックスは構造材や電子機能材として広く使用されており,中でも電子部品の材料として大量に使用されている.電子部品の基板として従来はアルミナファインセラミックスが広く使用されてきたが,最近ではこの他にAlN,SiCなどが使用されている.また携帯電話機等の発振器としてPZT(PbZrTiO3),構造材としてSi3N4が大量に使用されている.以上のようなファインセラミックスは高強度,高絶縁,圧電効果などがあり,非常に有用な素材である.しかしながら例えば,電子機能材として製造されるファインセラミックスは,高温での焼結時および分極(ファインセラミック基板に高電圧をかけて結晶の方向をそろえる)時に微細なき裂が発生することがある.電子部品にき裂が生じると導通不良やインピーダンス不良となり,構造材部品にき裂が生じると強度不足の原因となる.そのためファインセラミックスでは製造工程中での非破壊のき裂検査が不可欠であり,これまでに種々の検査技術が開発されている.
 本研究では拡散反射率が80%以上のファインセラミックスを白色,80%未満のもの(20~30%のものが多い)を濃色と名付けて対象製品の外観上の色を大まかに分類した.これによって対象製品の外観上のイメージが直感的に分かるように配慮した.
 ファインセラミックスが白色アルミナ基板の場合には,拡散反射率が80% 程度であり,白色光や低出力レーザ(放射束が数 mWのもの)を用いてき裂を検出した例が報告されている.しかし,その他のファインセラミックス(Si3N4,濃色PZT,AlN,SiCなど)は一般に濃色(拡散反射率で 20~30 %)を有しているため,光の透過率が低く,これまで使用されている白色光や,低出力レーザでは微細き裂の検出が困難である.これに対しては検出に高出力レーザを使用することが考えられ,高出力レーザとしてArレーザを用いて Si3N4 上のき裂を検出した例も報告されているが,実用化に至っていない.
 また,透明体である眼鏡用ガラスレンズを対象にしてその欠陥を検出した例は報告されているが,半透明なファインセラミックス製品を対象として欠陥検出をした例は見当たらない.
 本論文では,最初に検査対象である濃色PZT基板,濃色PZT基板を組み込んだチップ部品,半透明ランプチューブを説明した.濃色PZTに関してはき裂欠陥の検出,ランプチューブに関しては,き裂,不純物,傷の欠陥検出を目的としていることを述べた.次に従来の検査方法と問題点を述べた.従来はエタノール浸透によるPZT基板のき裂検査を行っていたが,検査に時間がかかるとともに検査の信頼性が低いことが問題であった.またランプチューブの場合には目視で欠陥検出を行っているが,同様に検査に時間がかかることと検査の信頼性が低いことが問題であった.
 本研究で使用した検出原理はレーザ拡散領域検出法,レーザ散乱光検出法,および白色透過光照明による散乱光検出法である.
 レーザ拡散領域検出法は,濃色PZT基板およびPZT基板を組み込んだチップ部品に使用したものである.これは,ファインセラミックスにレーザ光を照射すると,粒子とその隙間を光が拡散する.このときにき裂が存在するとファインセラミックス内で拡散する光の分布が正常部と異なることを利用するものである.
 レーザ散乱光検出法は,ランプチューブのき裂を検出する場合に使用したものであり,レーザ光をランプチューブに照射した際の後方散乱光を検出することで,き裂の信号を得るものである.
 白色透過光照明による散乱光検出法は,ランプチューブのき裂およびき裂以外の欠陥を検出する場合に使用したものであり,白色光を透過させ,き裂およびき裂以外の欠陥の信号レベルが低下することを利用するものである.これらの方法をき裂および表面傷,不純物,微小空洞の検出に適用して実験した結果,以下のことが明らかとなった.
1. 濃色PZT基板のき裂検査では,レーザ拡散領域検出法を用いて,幅 1μm,長さ0.2mmのき裂検出率50%,幅 3μm,長さ0.2mmのき裂検出率100%を得た.
2. チップ部品端面におけるき裂自動検出実験では,同じくレーザ拡散領域検出法を用いて,閉き裂で長さ 35μm,幅 20μm 以上,開き裂で長さ 50μm以上のき裂を検出した.
3. ランプチューブ欠陥のうち,き裂のみを検出する場合は,レーザ光を試料の接線方向に当て,その後方散乱光を検出することによって,長さ1.0 mm以上のき裂を自動的に検出した.
4. ランプチューブ欠陥のうち,き裂および表面傷,微小空洞,不純物を検出する場合には白色光を用いて透過照明を行うことによって画像を検出し,き裂および傷は長さ0.6,0.2 mm 以上,不純物は 0.15 mm 以上を自動的に検出した.
以上の研究成果により,従来技術で検出できなかった試料の欠陥を製造工程中で自動的に検出することを可能とした.

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