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信濃川における「横田切れ」の洪水規模の推定とその位置づけに関する研究

氏名 高島 和夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第239号
学位授与の日付 平成17年6月22日
学位論文題目 信濃川における「横田切れ」の洪水規模の推定とその位置づけに関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 陸 旻皎
 副査 教授 福嶋 祐介
 副査 助教授 力丸 厚
 副査 助教授 細山田 得三
 副査 助教授 熊倉 敏郎

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目次

1 序論
 1.1 はじめに p.1
 1.2 研究の目的 p.4
 1.3 研究の内容 p.7
 参考文献等 p.10

2 信濃川の洪水特性
 2.1 信濃川の概要 p.11
 2.1.1 流域の概要 p.11
 2.1.2 近代における変遷 p.13
 2.2 信濃川の洪水特性 p.16
 2.2.1 信濃川の水文観測 p.16
 2.2.2 信濃川の実績洪水の特徴 p.19
 2.2.3 信濃川洪水の降雨特性 p.23
 参考文献等 p.36

3 横田切れ洪水の特徴
 3.1 横田切れに関する現存する記録 p.37
 3.1.1 気象に関する記録 p.38
 3.1.2 洪水被害に関する記録 p.39
 3.1.3 水理水文に関する記録 p.42
 3.2 横田切れの洪水特性 p.48
 3.2.1 被害特性 p.48
 3.2.2 降雨特性 p.48
 3.3 降雨の実績洪水との比較 p.51
 3.3.1 降雨量及び降雨の時空間分布の比較 p.51
 3.3.2 流域の湿潤状態 p.53
 参考文献等 p.55

4 横田切れの洪水規模の推定
 4.1 洪水規模の推定の考え方 p.56
 4.2 水位記録からの推定 p.57
 4.2.1 条件設定 p.57
 4.2.2 水位と流量の関係検討 p.59
 4.3 降雨(日雨量)からの推定 p.60
 4.3.1 流出モデルの条件設定 p.61
 4.3.2 降雨の時間分布の仮定 p.66
 4.3.3 流域の湿潤状態の設定 p.68
 4.3.4 まとめ p.69
 4.4 洪水氾濫記録からの推定 p.71
 4.4.1 洪水氾濫記録の整理 p.71
 4.4.2 洪水氾濫シミュレーションモデルと条件設定 p.74
 4.4.3 洪水氾濫記録と氾濫シミュレーション結果の比較検証 p.80
 4.4.4 まとめ p.84
 4.5 洪水最大流量のまとめ p.85
 4.5.1 横田切れの推定洪水最大流量の妥当性の検証 p.85
 4.5.2 全国一級水系における実績最大流量による検証 p.86
 4.5.3 洪水最大流量のまとめ p.86
 参考文献等 p.87

5 信濃川における横田切れ洪水の位置付け
 5.1 既住の歴史的大洪水との比較 p.88
 5.2 流域平均二日雨量の評価 p.92
 5.2.1 年最大流域平均二日雨量の算定 p.92
 5.2.2 流域平均二日雨量の評価 p.101
 5.2.3 水文統計解析による評価 p.101
 5.2.4 まとめ p.103
 5.3 洪水最大流量の評価 p.104
 5.3.1 昭和31年(1956)以降の実績洪水群との比較 p.104
 5.3.2 昭和57年(1982)9月洪水との比較検証 p.104
 5.3.3 年最大水量の推定 p.105
 5.3.4 水文統計解析による評価 p.113
 5.4 まとめ p.117
 参考文献等 p.118

6 結論 p.119
 参考文献等 p.124

7 あとがき p.125

謝辞 p.127

 今から100余年前の明治29年(1896)7月20日に発生した信濃川の歴史上の大洪水である「横田切れ」については、その被害規模、地域社会への影響の大きさ等より氾濫被害等に関する文献、記録等は数多く残されているものの、洪水最大流量等の水理水文記録は、当時の技術水準等もあり、ほとんど明らかとなっていない。規模の大きい洪水、とりわけ横田切れのように史上最大クラスの洪水の最大流量を把握することは、治水計画を検討する上で、極めて重要である。
 しかし、一般に、歴史上の大洪水の洪水規模の検討は、当時の記録、データの存在状況等の制約が多く、その信頼性に疑問が残る。そのため、異なった情報をもとに複数の手法を用いて洪水規模を推定することにより、精度向上に繋がるとともに、その信頼性の向上を図ることができる。
 本研究は、横田切れの洪水規模、洪水最大流量について複数の手法により推定するとともに、その河川工学的な位置づけを明らかにし、信濃川の洪水現象、治水計画の基礎資料とするものである。
 以下、各章の内容について述べる。
 第一章では、本研究の目的、その内容を概括する。
 第二章では、本研究の対象である信濃川の洪水特性について分析するもので、信濃川において水文観測が本格化し、記録として充実している昭和31年(1956)以降の観測された降雨、流量記録をもとに、洪水流量が大きな上位10洪水を選出し、特に、降雨の地域分布と時間分布の両方を表現した時空間分布という概念を導入し、信濃川小千谷において洪水流量が大きくなる洪水の降雨特性を明らかにし、横田切れの降雨特性と比較検証するものである。
 第三章では、横田切れの特徴について、被害と水理水文という二つの側面から分析、整理する。被害については、現存する新聞、文書等の記録から、氾濫の範囲、氾濫水深、氾濫期間などの被害概要など、特に洪水の規模の直接関係する事項を抽出する。水理水文については、現存する降雨量、水位など洪水の具体なデータを整理とりまとめ、横田切れの降雨特性について前章の実績洪水群の分析と同様に整理することにより、その特徴を明らかにし、洪水規模の推定の基礎資料とする。
 第四章では、横田切れ洪水の規模、洪水最大流量について以下の複数方法により推定する。
 第一に、現存する普通観測による水位記録をもとに洪水最大流量を推定するもので、当時の河道の横断形状が現存しないこと、当時の水位記録が普通観測であり最高水位であったかどうか不明であること、ゆえに当時の水位と流量の関係が不明なことより、実際に水位流量観測記録が残る昭和31年(1956)以降を対象にした水位・流量の関係をもとに、当時の水位記録に相当する洪水流量を求め、それに当時の河積と現在の河積の比率を乗じて、洪水最大流量を試算した。
 第二に、信濃川流域内の当時の日雨量記録が存在したので、これをもとに貯留関数モデルによる流出計算により洪水最大流量を推定した。流出計算に入力する時間雨量データが存在しないため、ここでは、降雨特性が類似の場合、降雨の時間分布が相似であると仮定して、横田切れと降雨特性が類似の近年洪水の降雨の時間分布を用いて、横田切れの降雨の時間分布を仮定し、時間雨量を作成している。また、流域の湿潤状態については、降雨量、流量記録がある近年の実績洪水群の再現により求めた飽和雨量値を複数ケース設定することにより、洪水最大流量は最小値と最大値を求め、幅を持った値で表現している。
 第三に、横田切れ洪水は越後平野一帯を洪水の海にしたため、氾濫範囲、氾濫水深などの記録が多く残されている。よって、洪水氾濫シミュレーションにより、記録に残る氾濫範囲、氾濫水深を再現することにより、これらの記録と適合する洪水最大流量を試行錯誤により求めるものである。氾濫範囲、氾濫水深を規定する洪水規模の要因としては、洪水ボリュームが卓越するため、洪水ハイドログラフの形の設定が重要となる。そのため、ここでは前述の横田切れ洪水の降雨分布と類似の近年の実績洪水のハイドログラフを用いることとした。また、洪水氾濫シミュレーションにあたり、氾濫源、河道の条件は当時に可能な限りちかい、古い図面等を用いて設定した。さらに、推定した横田切れの洪水最大流量について、降雨特性が類似の洪水群の降雨と流量の相関関係をもとに検証した。
 以上の検討結果を総合的に評価して、横田切れの洪水最大流量を推定し、考察する。
 第五章では、推定した横田切れの洪水規模の位置付けを明らかにするため、昭和50年代後半に小千谷地点において10,000m3/sに近い値を記録した大洪水も含め、近年洪水と横田切れについて、降雨、洪水最大流量の観点から比較検証する。さらに、横田切れ以降、現在までの105個の水文記録を標本として水文統計解析等により、横田切れの位置づけを検討した。なお、横田切れ以降、水文観測が本格的に開始されるまでの期間の洪水最大流量は、降雨要因別に降雨の時間分布を仮定し推定した。
 第六章では、本研究で得られた結論をとりまとめた。

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