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造成された宅地地盤の健全度評価に関する基礎的研究

氏名 高田 晋
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第558号
学位授与の日付 平成22年8月31日
学位論文題目 造成された宅地地盤の健全度評価に関する基礎的研究
論文審査委員
 主査 准教授 豊田 浩史
 副査 教授 杉本 光隆
 副査 教授 大塚 悟
 副査 准教授 高橋 修
 副査 高知大学准教授 原 忠

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Table of Contents
第1章 序論 p.1
 1.1 はじめに p.1
 1.2 研究の背景 p.1
 1.3 本研究の目的 p.7
 1.4 本研究の構成 p.8
第2章 宅地地盤における液状化に関する既住の研究 p.11
 2.1 はじめに p.11
 2.2 宅地地盤と地震被害 p.11
 2.3 礫質土の液状化特性に関する既往の概要 p.12
 2.4 宅地地盤の健全度評価に関する既住 p.17
 2.5 まとめ p.19
第3章 液状化や斜面崩壊がおよぼす宅地被害の調査 p.20
 3.1 はじめに p.20
 3.2 大規模地震による崩壊斜面から採取した土の液状化特性 p.20
 3.3 旧河道埋立地盤の被害調査とスウェーデン式サウンディング試験を用いた液状化予測手法の適用性の検討 p.24
 3.3.1 地震被害の概要 p.24
 3.3.2 橋場町の地形と地質 p.24
 3.3.3 被害の調査方法 p.24
 3.3.4 宅地と家屋の被害状況 p.27
 3.3.5 原位置調査 p.32
 3.3.6 地下水位と被害の関係 p.37
 3.4 まとめ p.39
第4章 造成された宅地地盤における原位置調査 p.40
 4.1 はじめに p.40
 4.2 広川町埋立地盤の概要 p.40
 4.3 埋立地盤の概要 p.43
 4.4 埋立地盤の地質 p.47
 4.5 宅地地盤表層部に埋め立てられた埋地の物理特性 p.48
 4.5.1 物理試験方法 p.48
 4.5.2 広川土の物理特性 p.49
 4.5.3 広川土のスレーキング特性 p.51
 4.6 埋立地盤における原位置試験概要 p.53
 4.6.1 原位置試験方法 p.53
 4.6.2 原位置試験結果 p.59
 4.7 まとめ p.73
第5章 宅地地盤表層部の埋立土の液状化特性 p.75
 5.1 はじめに p.75
 5.2 試験装置・試験方法 p.75
 5.2.1 三軸試験装置概要 p.75
 5.2.2 三軸試験の試験方法 p.86
 5.2.3 供試体作成方法 p.87
 5.3 広川土の静的力学特性 p.96
 5.3.1 非排水単調載荷三軸圧縮試験 p.96
 5.3.2 飽和度が異なる圧密排気排水三軸圧縮試験 p.99
 5.4 広川土の液状化特性 p.101
 5.4.1 試験条件及び試験ケース p.101
 5.4.2 相対密度が異なる広川土の繰返し三軸試験結果 p.102
 5.4.3 礫分含有率が異なる広川土の繰返し三軸試験結果 p.113
 5.4.4 供試体構成が異なる広川土の繰返し三軸試験結果 p.122
 5.4.5 過圧密比が異なる広川土の繰返し三軸試験結果 p.132
 5.4.6 広川土の液状化強度 p.141
 5.5 広川土の液状化特性を支配する影響原因子に関する考察 p.145
 5.5.1 粒子破砕に着目した試験の概要 p.145
 5.5.2 乾燥試料を用いた繰返し一面せん断試験による粒子破砕性の検討 p.147
 5.5.3 乾燥試験を用いた水浸試験による粒子破砕性の検討 p.158
 5.6 まとめ p.165
第6章 原位置試験を模擬した室内静的コーン貫入試験 p.167
 6.1 はじめに p.167
 6.2 スウェーデン式サウンディング試験の工学的問題 p.167
 6.3 静的コーン貫入試験装置 p.168
 6.4 供試体条件方法 p.170
 6.5 供試体作成方法 p.171
 6.6 試験方法および試験条件 p.173
 6.7 広川土のコーン貫入抵抗力と貫入量の関係 p.174
 6.8 まとめ p.179
第7章 宅地地盤表層部の埋立土の圧縮特性およびせん断弾性波伝播特性 p.180
 7.1 はじめに p.180
 7.2 試験装置概要 p.180
 7.2.1 ベンダーエレメント内蔵型定ひずみ圧密試験装置 p.180
 7.2.2 制御・計測方法 p.186
 7.2.3 ベンダーエレメント p.189
 7.3 試験装置の特性と結果の整理法 p.191
 7.3.1 ベンダーエレメント入出力波形 p.191
 7.3.2 せん断波到達時間同定法 p.198
 7.3.3 せん断波の近接場効果と回り込み効果の影響 p.199
 7.4 試験手順 p.202
 7.5 供試体作成方法 p.203
 7.6 試験結果 p.204
 7.6.1 試験条件及び試験ケース p.204
 7.6.2 飽和状態の広川土を用いた定ひずみ圧密試験結果 p.206
 7.6.3 飽和状態の広川土を用いたせん断弾性波測定試験結果 p.210
 7.6.4 波動伝播特性を用いた液状化強度推算モデルの構築 p.220
 7.7 まとめ p.228
第8章 宅地地盤の健全度評価 p.229
 8.1 はじめに p.229
 8.2 宅地地盤の健全度評価手法とその問題点 p.229
 8.3 広川町埋立地地盤をモデルとした健全度評価ケーススタディ p.232
 8.3.1 計算条件 p.232
 8.3.2 埋立地盤の地盤条件 p.233
 8.3.3 圧密沈下予測 p.234
 8.3.4 液状化判定 p.238
 8.4 宅地地盤の健全度評価法の提案 p.251
 8.5 まとめ p.255
第9章 結論 p.257
参考文献 p.260
記号一覧 p.266
謝辞 p.271

 近年頻発する大規模地震では,宅地地盤の安定性評価に基づいて建築した住宅において,宅地の液状化や斜面の流動化に伴った家屋の被害が多数発生した.住宅本体を健全な状態に維持するためには,宅地地盤の圧密沈下や地震時の液状化に対する安定性評価が必要不可欠であるが,1.予算に限りがあるため住宅本体以外にかけるコストが少ないこと,2.時間的制約を受けること,等の理由から,簡易的な地盤調査を基にした簡易的な評価手法に頼らざるを得ないという問題がある.大規模な地震に備えて,これら簡易的な評価法の適用性を検討するとともに,簡便かつ詳細な評価法の構築が求められている.これら諸問題を解決するためには,低コストかつ非破壊で地盤構造を求めることができる波動伝播法を利用した表面波探査試験が有効であると考えられる.この試験から得られるせん断弾性波速度は,N値や土の物性値と関係性が高いパラメータであるため,それと液状化強度には良い相関関係が期待され,この関係を利用した液状化予測が可能であると考えた.

 本論文は,上記の趣旨に基づき,表面波探査試験から得られるせん断弾性波速度と液状化特性を関連付ける液状化強度予測モデルを作成し,このモデルを用いた定量的な宅地地盤の液状化予測システムの開発を行った成果をまとめたものである.本論文は8章から成り,各章の概要を以下に示す.

 第1章では,本研究の目的と本論の構成について述べる.

 第2章では,新潟県中越地震および新潟県中越沖地震を例にとり,自然斜面や宅地において行った被害調査結果から液状化特性に与える要因を検討した.ここでは,地盤の固結力と液状化抵抗性に関する基礎的な検討を行った結果について述べる.また,液状化被害が卓越した地盤において簡易的な地盤調査法としてスウェーデン式サウンディング試験を例にとり,その適用性を検討した結果について述べる.

 第3章では,人工的に造成した埋立地盤をモデルとして,現地踏査および種々の原位置試験を実施し,礫質土が分布する宅地地盤における簡易的な試験手法の適用性について検討した.その結果,埋立地盤の深度・場所によって礫分の含有状況に変化が見られ,礫分の多い箇所でのスウェーデン式サウンディング試験の適用は困難であった.また,表面波探査試験は,礫分の有無に影響を受けない非破壊試験であるため,礫質土地盤において適用性が高いことを示した.

 第4章では,埋立地盤から採取した土を用いて,原位置調査で行ったスウェーデン式サウンディング試験を模擬する室内静的コーン貫入試験を行い,礫分含有率と貫入抵抗力の関係について調べた.その結果,供試体の間隙比が同程度の場合,コーン貫入抵抗力は礫分含有率と大きく関係し,礫を多く含む地盤において貫入抵抗力が大きくなる傾向にあること,また,その傾向は地盤の飽和度や貫入抵抗体が礫粒子に接触するか否かによって変化することを明らかにした.

 第5章では,埋立土を用いて三軸圧縮試験を行い,基本的な力学特性を求めるとともに,礫分含有率に着目した繰返し三軸圧縮試験および各種物理試験により,液状化特性とそれを支配する影響因子について検討した.その結果,粒径分布が広い礫混じり土において,礫分が質量で20%程度まで増えても,液状化強度比はそれほど変化しないが,マトリックス材に含まれる細粒分の影響で過圧密比が大きくなると,液状化強度比も顕著に大きくなることを明らかにした.

 第6章では,埋立土を用いて礫分含有率や圧密応力に着目したベンダーエレメント内蔵型定ひずみ圧密試験を行い,それらとせん断弾性波速度の関係について調べた.その結果,せん断弾性波速度は,圧密圧力や飽和度によって変化するが,礫分が質量で20%程度まで増えてもそれほど変化しないが,過圧密比の大小に影響を受けることが明らかとなった.また,この試験結果と第5章で求められた液状化特性と圧密圧力で正規化したせん断弾性波速度の関係を用いて,本埋立土の液状化強度推算モデルを構築した.

 第7章では,宅地地盤の健全度評価項目の中で,地震時の液状化問題に対してケーススタディを行った.ここでは,2008年に発行された「小規模建築物基礎設計指針」で推奨されている原位置調査試験から求められた地盤情報から検討する簡易的な照査法と,本論文で提案する定量的な宅地地盤の液状化予測システムを用いた詳細な評価法の2種類について比較検討を行った.その結果,提案する液状化強度推算モデルを表面波探査試験データに適用することで,固結力の低い礫質土で埋め立てられた宅地地盤の液状化強度を簡便かつ定量的に予測することが可能であることが明らかとなった.

 最後に,第8章結論では,本研究で得られた結果をまとめ,表面波探査試験を用いた宅地地盤の液状化予測システムが,従来の簡易的液状化評価に変わる手法として適用性が高いことを結論付けている.

 本論文は,「造成された宅地地盤の健全度評価に関する基礎的研究」と題し,8章より構成されている.第1章では,住宅本体を健全な状態に維持するために,宅地地盤の圧密沈下や地震時の液状化に対する安定性評価が必要不可欠であることを議論するとともに,本研究の目的と本論の構成について述べる.

 第2章では,新潟県中越地震および新潟県中越沖地震を例にとり,自然斜面や宅地において行った被害調査結果から液状化特性に与える要因を検討した.

 第3章では,人工的に造成した埋立地盤において,現地踏査および種々の原位置試験を実施した.その結果,礫分の多い箇所でのスウェーデン式サウンディング試験の適用は困難であり,表面波探査試験は,礫分の有無に影響を受けない非破壊試験であるため,礫質土地盤において適用性が高いことを示した.

 第4章では,埋立地盤から採取した土を用いて,室内静的コーン貫入試験を行い,礫分含有率と貫入抵抗力の関係について調べた.その結果,コーン貫入抵抗力は,礫を多く含む地盤において貫入抵抗力が大きくなる傾向にあること,また,その傾向は地盤の飽和度や貫入抵抗体が礫粒子に接触するか否かによって変化することを明らかにした.

 第5章では,礫分含有率に着目した繰返し非排水三軸試験により,液状化特性とそれを支配する影響因子について検討した.粒径分布が広い礫混じり土において,礫分が質量で20%程度まで増えても,液状化強度比はそれほど変化しないが,細粒分の影響で過圧密比が大きくなると,液状化強度比は顕著に大きくなることを明らかにした.

 第6章では,埋立土を用いて礫分含有率や圧密応力に着目したベンダーエレメント内蔵型定ひずみ圧密試験を行い,せん断弾性波速度の変化特性について調べた.その結果,せん断弾性波速度は,礫分が質量で20%程度まで増えてもそれほど変化しないが,過圧密比の大小の影響を受けることが明らかとなった.また,この試験結果と第5章で求められた液状化特性と圧密圧力で正規化したせん断弾性波速度の関係を用いて,本埋立土の液状化強度推算モデルを構築した.

 第7章では,宅地地盤の健全度評価項目の中で,地震時の液状化問題に対してケーススタディを行った.ここでは,本論文で提案する定量的な宅地地盤の液状化予測システムを用いた詳細な評価法の2種類について比較検討を行った.その結果,提案する液状化強度推算モデルを適用することで,礫質土で埋め立てられた宅地地盤の液状化強度を簡便かつ定量的に予測することが可能であることを示した.

 最後に,第8章では,本研究で得られた結果をまとめ,表面波探査試験を用いた宅地地盤の液状化予測システムが,従来の簡易的液状化評価に変わる手法として適用性が高いことを結論付けている.よって,本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める.

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