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光記録における高速光ヘッド制御方式と高速記録の研究

氏名 小出 大一
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第290号
学位授与の日付 平成20年8月31日
学位論文題目 光記録における高速光ヘッド制御方式と高速記録の研究
論文審査委員
 主査 教授 大石 潔
 副査 教授 近藤 正示
 副査 准教授 伊東 淳一
 副査 准教授 宮崎 敏昌
 副査 名古屋工業大学教授 岩崎 誠

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目次

第1章 序論 p.1
I.序 p.1
 1.1 放送局における映像記録媒体の現状 p.1
 1.2 放送局映像記録システムの技術動向と要求性能 p.4
 1.3 光記録の大容量化、高転送レート化 p.5
 1.4 光記録の大容量化技術研究の動向 p.7
 1.5 光ディスクの高転送レート化と技術課題 p.11
 1.6 光ディスク駆動装置の高速高精度光ヘッドサーボ技術 p.13
II.相変化光記録の原理、光ディスク装置におけるヘッドサーボ技術 p.19
 1.7 相変化光ディスクにおける記録原理 p.19
 1.7.1 相変化光ディスク記録媒体の記録再生原理 p.19
 1.7.2 相変化光ディスクへの高速記録の技術課題と評価 p.23
 1.8 光ディスク装置における光ビームの位置決め制御 p.28
 1.8.1 光ヘッドのフォーカスサーボ p.28
 1.8.2 光ヘッドのトラッキングサーボ p.30
 1.8.3 光ヘッドのフォーカス/トラッキングサーボの高速化 p.33
 1.9 本研究の課題 p.34
 1.10 本研究の目的と、論文の構成 p.35
 参考文献 p.38

第2章 相変化光ディスクへの高速記録手法、光ディスク高速回転時の周期的外乱に対する光ヘッド高精度追従制御の問題、高速光ヘッド制御技術ZPET-FF制御方式 p.44
 2.1 はじめに p.44
I.相変化光ディスクの252Mbps高速記録技術 p.46
 2.2 相変化光ディスクへの高速記録手法 p.46
 2.3 基板の薄型化による光ディスクの15000rpm高速化-「高速薄型光ディスク」の提案 p.49
 2.4 252Mbpsの記録レートを実現する高速記録方式 p.52
II.光ディスク装置における、高速回転時の高精度光ヘッド制御方式 p.57
 2.5 光ディスクにおける、高速回転時の周期的外乱に対する光ヘッド高精度追従制御の問題 p.57
 2.6 光ディスク装置における、従来の光ヘッド制御方式 p.60
 2.6.1 従来の制御方式(1) -フィードバック制御系- p.60
 2.6.2 従来の制御方式(2) -繰り返し制御系- p.61
 2.7 高速光ヘッドサーボ方式-ZEPT-FF制御系 p.63
 2.7.1 フィードフォワード制御のトラック追従制御系への適用 p.63
 2.7.2 ZEPT-FF制御系 p.64
 2.7.2.1 フィードフォワード制御方式の概要 p.64
 2.7.2.2 フィードフォワード制御器の構成方法 p.65
 2.7.2.3 フィードフォワード制御の光ディスクへの適用 p.67
 2.7.2.4 高速トラック追従制御系(ZEPT-FF制御系)の構成 p.69
 2.7.2.5 波形推定器と整形器 p.73
 2.8 まとめ p.76
 参考文献 p.77

第3章 ZEPT-FF制御方式の光ディスクドライブトラッキングサーボへの適用 p.79
 3.1 はじめに p.79
I.ZEPT-FF方式の従来制御方式との比較による高速高精度追従性能、青紫色光ディスクドライブへの適用 p.81
 3.2 装置の青紫色レーザ光源化による、高密度光ディスクへの適用 p.81
 3.3 ZEPT-FF制御系と各制御系との性能比較 -シュミレーション- p.81
 3.3.1 比較条件 p.81
 3.3.2 シュミレーションによるZEPT-FF制御系の各制御モデルとの高精度性能比較 p.86
 3.4 実験 -青紫色光源化による光ディスク装置トラッキングサーボへのZEPT-FF制御の適用 p.90
 3.4.1 実験条件 p.90
 3.4.2 実験結果 p.92
 3.5 ZEPT-FF制御による高速化の可能性 p.95
II.青紫色光ディスクドライブの高NA化と、ZEPT-FF制御方式の適用による高転送レート化 p.97
 3.6 光ディスク装置の対物レンズ高NA化(NA0.85)と、高密度記録装置への適用 p.97
 3.7 高NA光ヘッドにおけるシュミレーション p.99
 3.7.1 高NA光ヘッドにおける制御系設計、繰り返し制御系とZEPT-FF制御系の伝達関数の比較 p.99
 3.7.2 シュミレーション p.108
 3.8 実験 -高NA光ヘッド化した光ディスク装置トラッキングサーボへのZEPT-FF制御の適用 p.113
 3.8.1 実験条件 p.113
 3.8.2 実験結果 p.115
 3.8.3 低制御サンプリング周波数による高速化の限界と改善 p.115
 3.8.4 光ディスクの高速回転限界付近10800rpmでの高精度トラック追従制御 p.120
 3.9 実機への搭載の検討(放送用ハイビジョン光ディスクカメラレコーダの試作) p.124
 3.10 まとめ p.126
 参考文献 p.128

第4章 15000rpm高速薄型光ディスク、ZEPTpc-FF制御方式トラッキングサーボの適用と高速化、高速記録技術 p.130
 4.1 はじめに p.130
I.15000rpm高速薄型光ディスクの提案とZPETpc-FF制御の適用 p.131
 4.2 薄型光ディスク p.131
 4.3 15000rpm対応高速高精度光ビーム位置制御技術”ZEPTpc-FF制御方式”の適用 p.138
 4.3.1 はじめに p.138
 4.3.2 15000rpmにおけるトラッキング制御の問題 p.139
 4.3.3 ZEPT-FF制御方式の解析 p.140
 4.3.4 ZEPTpc-FF制御方式の提案と概要 p.146
 4.3.5 ZEPTpc-FF制御方式の構成 p.148
 4.4 シミュレーション p.151
 4.4.1 周波数応答 p.151
 4.4.2 トラック追従制御特性 p.155
 4.4.3 光ディスクのCLV回転制御時におけるZEPTpc-FF制御系の対応 p.159
 4.5 高速トラッキング制御実験 p.161
 4.5.1 トラック追従制御実験でのZEPTpc-FF制御方式の性能評価 p.169
 4.5.2 15000rpmトラッキングサーボ実験 p.169
 4.6 15000rpm高速記録実験 p.175
 4.6.1 薄型光ディスク15000rpm高速記録実験 p.175
 4.6.2 小型高速回転ドライブの試作 p.179
II.薄型光ディスクへの252Mbps高速記録、低誤り率記録技術 p.180
 4.7 薄型光ディスク高速・低誤り率記録技術 p.180
 4.7.1 はじめに p.180
 4.7.2 薄型光ディスク媒体の高感度化 p.181
 4.7.3 薄型光ディスク高速記録再生系の構築、高速記録技術 p.182
 4.7.4 252Mbps高速記録、データ誤り率特性 p.186
 4.8 薄型光ディスクの放送用ハイビジョン映像記録再生 p.190
 4.8.1 映像記録検証用薄型光ディスクドライブ p.190
 4.8.2 薄型光ディスクへの全面記録(半径-144Mbps記録再生特性) p.192
 4.8.3 放送局用ハイビジョン動画の記録再生 p.193
 4.9 まとめ p.196
 参考文献 p.198

第6章 結論 p.200

謝辞 p.207

研究業績リスト p.209

本論文では、高転送レートな光ディスク記録の実現に向けた、光ディスクドライブにおける高速高精度光ヘッド制御方式と高速記録の研究について述べる。
放送局における記録媒体とその装置は、磁気テープによるVideoTapeRecorder(VTR)から、よりデータを取り扱いやすく小型化した、アクセス速度が速いディスク媒体や固体メモリへと変遷しつつある。そのうち、長期にわたるデータの保存が見込まれる光ディスクは、光によるデータ記録による長期保存の信頼性の高さから、記録・保存用媒体として注目されている。放送局におけるより高品質なHighDefinition Television(HDTV)にみられるような映像のコンテンツを記録・・保存するための媒体とレて光ディスクを実現するためには、容量の増大化に併せ、高品質な映像の記録のために転送レートを高速化させることが必須となる。
高転送レートな光ディスク記録を実現するには、光ディスクドライブにおいて、光ディスク媒体を高速に回転させ、ディスク自身に30pmから100pmで存在する偏心の周期的外乱に対し、光ヘッドから集光して照射されるレーザービームを、ディスク上の0.32pmの狭いトラックに対し、10nm程度の精度で正確にトラック追従(トラッキング)させる必要がある。
250Mbps以上の高転送レートな光ディスクを実現するためには、光ディスクを15000回転/分程度に高速回転させる必要がある。このようなディスク上にある狭い記鎗トラックに追従させるためには、従来一般に適用されているフィードバック制御手法では、高精度に追従することができない。そこで、高速回転するディスク上の狭トラックに対しても、高精度に追従することを可能とする、光ディスクドライブのための零位相誤差トラッキング法の適用によるフィードフォワード制御を併用した制御方式を開発した。本方式は、シミュレーションにより、従来報告されている制御方式に比較し、より高速高精度な制御方式であることを示す。また、光ディスクの高速なトラッキング制御実験により、本制御系の有効性を示す。
本論文は、以下のように構成される。
第1章では、序論として、放送局における映像記録媒体の現状と記録媒体の要求性能について背景をまず述べ、光ディスク記録装置の大容量化の変遷及び放送用途に必要な高転送レート化と技術課題、高速高精度光ヘッドサーボ技術の必要性、本論文の概要と構成について述べる。
第2章では、次に、光ディスク装置の高速化と高速光ヘッド制御御方式として、従来の位相補償によるフィードバック制御方式や繰り返し制御方式と比較して有効な性能を持つ、零位相誤差トラッキング法の適用によるフィードフォワード制御を併用したトラック追従制御方式である「ZPET-FF制御方式」の理論を述べる。
第3章では、青紫色レーザ光源(レーザ波長405nm)と集光する対物レンズの開口数(NA)が0.65である光ディスク装置に対し、4.7GB相当(トラックピッチ0.74pm)のDVD媒体より狭トラックな媒体における記録媒体における高速高精度トラッキング制御方式の適用について述べる。
ここでは更に、位相補償によるフイ∵ドバック制御、繰り返し制御方式、ZPET-FF制御方式をシミュレーションにより比較し、ZPET-FF制御方式の有効性を示し、実験による結果より高速高精度性について示す。
また本章では、15000rpmまでの高精度制御の可能性につ)「てシミュレーション結果を示し、高速回転時におけるZPET-FF制御方式による高速高精度制御の可能性を示す。
第4章では、青紫色レーザ光源に加え、光ヘッドの対物レンズのNAを0.85 に高めた高密度記録を行うための光ディスク装置に対し、25GB相当(トラックピヅチ0.32lユm)の大容量なディスク媒体(ブルーレイディスク)へのZPET-FF制御方式の適用について述べる。ここでは、光ディスク媒体において回転数の限界とされる10000rpm付近でのトラッキング制御特性と本制御方式の有効性について述べる。
第5章では、25GBの容量のディスクに、従来と異なる、1/12の厚さとなる0.1mmの薄い基板を用いた「薄型光ディスク」を適用し、従来光ディスクの限界とされる回転数の1.5倍の15000rpmの高速回転を実現し、本光ディスクにおけるZPET-FF制御方式のトラッキング制御への適用による高速なトラッキングサーボ動作を実現した実験結果を示す。本動作を基盤に15000rpmの回転数におけるデータの記録再生の実現とその特性を示し、ZPET-FF制御の高速記録再生に対する有効性を示す。
第6章では、薄型光ディスクでの高速記録技術として、ZPET-FF制御方式の適用により実現した、252Mbpsの高速記録技術と実験、実験により得られた低エラーレートの評価の実験結果を示す。また、本開発による光ディスク媒体と試作したドライブ装置により、高転送レートな映像の記録再生を可能とし、放送用高速光記録媒体としての有効性を示す。
最後に第7章にて、本研究によって得られた成果について、放送局における光ディスク記録装置の位置づけと、ZPET-FF制御方式による高速高精度光ヘッド制御方式の有効性、光ディスクの高速記録技術をまとめる。

本論文は、「光記録における高速光ヘッド制御方式と高速記録の研究」と題し、5章より構成されている。
第1章では、本研究の背景となる放送局の映像記録媒体の現状と記録媒体の要求性能、近年の研究動向を踏まえ、相変化光記録の原理と光ビーム位置決め制御方法の技術背景と共に、本研究の目的を述べ、本研究の意義、位置づけを明らかにしている。
第2章では、相変化光ディスクへの高速記録手法として、従来に比べ1.5倍高い15000 rpmの高速回転が可能な厚さ0.1 mmの薄型基板を用いた薄型光ディスクと、その装置の要素技術を提案している。また、光ディスクの高速回転時における周期的偏心外乱に対する光ヘッドの高精度追従制御の問題について述べ、これを解決する方法として、零位相誤差トラッキング法によるフィードフォワード制御を適用した高速光ヘッド追従制御技術であるZPET-FF制御方式を構築し、その理論とモデル化を詳細に論じている。
第3章では、第2章で提案した高速光ヘッド制御方式の、青紫色レーザを搭載した光ディスク媒体及び装置における実機のトラッキングサーボへの適用について述べている。光へッドの制御対象に対し、高速光ヘッド制御方式の理論による設計とシミュレーションにより、他の制御手法と比較した高精度制御の効果と優位性を確認している。また、光ヘッドの高NA化により高密度化した系に応用し、シミュレーションと実験により、一般の光ディスクにおける回転数の限界付近の10800 rpmにおける高速光ヘッド制御方式の有効性を論じ、立証している。
第4章では、第2章で提案した高速記録手法である薄型光ディスクの実機への適用について述べている。まず、15000 rpm対応の高速なトラック追従制御の手法として、フィードフォワード制御器に含まれる位相遅延成分を補償し、より高速高精度制御を可能とするZPETpc-FF制御方式を提案している。本方式の実機への適用による15000 rpm回転時のトラック追従制御動作の実現により、有効性を確認している。また、薄型光ディスクを用いた250 Mbpsの高転送レート記録において、高感度な記録媒体の試作と、高速レーザ駆動記録技術、光ヘッド高速高精度位置決め制御技術、低誤り率再生技術を統合することで、低誤り率記録による記録を実証し、本高速光記録手法の有効性を立証している。
最後に第5章では、本論文で得られた研究成果をまとめ総括している。
以上のように、本論文では、光記録における新しい高速光ヘッド制御手法の確立と高速高精度な位置決め制御を実現している。また、薄型光ディスクによる高速記録手法の確立と高転送レートな記録を実現している。よって、本論文は、工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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