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Structural Analysis and Application for SPR Device of Multi-Layered Thin Films (多層薄膜の構造解析とSPR素子への応用)

氏名 岸本 真一
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第481号
学位授与の日付 平成20年8月31日
学位論文題目 Structural Analysis and Application for SPR Device of Multi-Layered Thin Films (多層薄膜の構造解析とSPR素子への応用)
論文審査委員
 主査 教授 齋藤 秀俊
 副査 教授 曽田 郁嗣
 副査 准教授 内田 希
 副査 准教授 伊藤 治彦
 副査 准教授 松原 浩

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1. General Introduction p.1
 1-1. Overview p.1
 1-2. Literature survey p.3
 1-2-1. Multi-layered films p.3
 1-2-2. Interaction between ceramics and biomolecules p.4
 (a) Ceramics and their application as to be biomaterials p.4
 (b) Behavior of biomolecules at ceramic interface p.5
 (c) Binding factors of ceramic-protein interaction p.7
 (d) Biocompatibility p.8
 1-3. Statement of problems p.8
 1-3-1. Analytical technique for multi-layered films p.8
 1-3-2. evaluation technique for biocompatibility p.10
 1-4. Analytical techniques p.11
 1-4-1. X-ray reflectivity (XRR) p.11
 (a) What is XRR ? p.11
 (b) Refractive index for X-ray p.12
 (c) Penetration depth p.13
 (d) Critical angle and film density p.14
 (e) Period of interference fringe and film thickness p.15
 (f) Reduction in reflectivity and roughness p.15
 (g) Reflectivity from a multi-layered film p.16
 (h) Reliability of profile fitting p.18
 (i) Apparatus with θ/2θ configuration for XRR p.18
 (j) XRR measurement in θ/2θ configuration p.19
 1-4-2. Surface plasmon resnance (SPR) p.21
 (a) What is SPR ? p.21
 (b) Resonance condition p.22
 (c) Reflectance curve (SPR profile) p.24
 (d) Detectable space p.26
 (e) Apparatus for SPR p.28
 (f) Absolute accuracy of beam angle p.30
 (g) Reproducibility of DPR measurements and repeatability of apparatus p.30
 1-5. Objective of this study p.31
 1-6. Outline of this thesis p.31
 1-7. References p.33
2. Density Investigation by X-ray Reflectivity for Thin Films Synthesized Using CVD Technique Operated under Atmosphere p.38
 2-1. Introduction p.39
 2-2. Experimental p.40
 2-2-1. Synthesis of the samples p.40
 2-2-2. Characterization of particles packinf structure p.42
 2-3. Results and discussion p.43
 2-3-1. Complementary analysi for XRR fitting p.43
 2-3-2. Stacking structure for simulation model of hafnia film p.47
 2-3-3. Film density of hafnia p.50
 2-3-4. Stacking structure for simulation model of titania film p.52
 2-3-5. Film density of titania p.53
 2-3-6. Possibility of existence of amorphous phase in thin films p.55
 2-4. Conclusion p.55
 2-5. References p.57
3. Multi-Layerd Films with Opitical Structure Synthesized by Chemical Vapor Deposition p.59
 3-1. Introduction p.60
 3-2. Experimental p.63
 3-2-1. Synthesis of multi-layered film p.63
 3-2-2. Characterization of synthesized film p.64
 3-3. Results and discussion p.66
 3-3-1. Cross-sectional morphology of the multi-layered film p.66
 3-3-2. Layer characterization p.67
 3-3-3. Optical propaty p.73
 3-4. Conclusion p.75
 3-5. References p.76
4. SPR Analysisl of the Annealing Effect of Silica Film Synthesized Using CVD Technique Operated under Atmosphere p.78
 4-1. Introduction p.79
 4-2. Experimental p.81
 4-2-1. Apparatus for symthesis of silica film p.81
 4-2-2. Synthesis of silica film p.83
 4-2-3. Characterization p.83
 4-3. Results and discussion p.85
 4-3-1. Activation energy for synthesis of silica film p.85
 4-3-2. Influence of silica thickness for SPR p.88
 4-3-3. Annealing effect of silica film p.90
 4-4. Conclusion p.95
 4-5. References p.97
5. Detection of Protein Adsorption on Silica Surface Using Surface Plasmon Resonance Sensor p.99
 5-1. Introduction p.100
 5-2. Experimental p.101
 5-2-1. Synthesis of SPR sensor chip p.101
 5-2-2. Preparation of chemicals p.102
 5-2-3. Characterization p.103
 5-3. Results and discussion p.105
 5-3-1. SPR influenced by gold and silica film p.105
 5-3-2. Hydrophobicity of silica surface p.107
 5-3-3. Interaction between silica surface and lysozyme solution p.108
 5-4. Conclusion p.112
 5-5. References p.113
6. Structural Analysis by X-ray Rejlectivity and Protein Interaction Using Surface Plasmon Resonance Sensors for Titania Films p.114
 6-1. Introduction p.115
 6-2. Experimental p.116
 6-2-1. Synthesis of titania p.116
 6-2-2. Characterization p.117
 6-2-3. Preparation of chemicals p.119
 6-2-4. Adsorption behavior of lysozyme on titania p.119
 6-3. Results and discussion p.120
 6-3-1. Influence of synthesis temperture on change in true density p.120
 6-3-2. SPR behabior of titania film p.123
 6-3-3. Adsorption behavior of lysozyme on titania surface p.126
 6-3-4. Influence of UV irradiation p.128
 6-4. Conclusion p.130
 6-5. References p.131
7. General Conclusion p.132
List of Publication p.135
List of Meetings p.136

 セラミックスコーティングとタンパク質分子との相互作用に関する調査は、生体適合性セラミックス材料開発に大きく関与することから、その重要性が増している。現在、生体適合性セラミックス材料の試験には、数日~数ヶ月単位で検証する方法が主流である。しかし、生体適合性の発現には、タンパク質がセラミックス表面に対して、数秒オーダーで吸着することが起因となることが知られており、このような試験が、迅速な生体適合性セラミックス材料の開発を実現できると考えられる。この様な試験のために、従来用いられている複雑な生化学的プロトコロを用いる測定の替わりに、より迅速で簡便なセラミックス材料とタンパク質分子との相互作用を検出する測定法が望まれている。
 本研究では、化学気相析出(CVD)法を使いセラミックス薄膜による、多層薄膜を合成し、
その構造についてX線反射率(XRR)法を用いた解析手法を確立するとともに、多層薄膜を応用した表面プラズモン共鳴(SPR)素子を得て、その動作特性を議論した。まず、XRR法により10層からなるシリカ/チタニア交互多層膜の解析に非破壊で成功した。次に、この手法を利用して50nm厚金薄膜と10nm厚酸化物薄膜との積層からなるSPR素子を精密設計し、SPR素子としての動作を確認した。この素子によりシリカならびにチタニア表面におけるリゾチームの吸着挙動を検出するとともに、同素子の動作がフレネルの多重反射理論で説明できることを示した。以上の結果を以下に示す7章からなる論文にまとめた。
 第1章「General Introduction」では、本研究の背景となる積層膜と生体材料の開発に関するこれまでの研究をまとめ、その問題点を明らかにし、その問題解決のための手法であるX線反射率(XRR)法とSPR法に関する基礎理論をまとめた。また目的および本論文の構成を示した。
 第2章「Density Investigation by X-ray Reflectivity for Thin Films Synthesized Using CVD Technique Operated under Atmosphere」では、ハフニアとチタニアの密度解析を通して、XRR法を使った薄膜構造の解析法と解析精度について記述した。XRR法による構造解析は、解析対象である薄膜の界面又は内部の構造に対して、できる限り忠実な構成モデルを構築することが、解析精度の向上につながることを示した。
 第3章「Multi-Layered Films with Optical Structure Synthesized by Chemical Vapor Deposition」では、10層からなるシリカ/チタニア交互多層膜の非破壊積層解析を実施した。XRR法によって各層の密度を決定し、光学反射率特性と比較することで、その解析能力を示した。XRR法解析は、多層膜の光学特性に影響を及ぼす、各層の元素拡散などに起因する密度変化も非破壊で解析することができることを示した。
 第4章「SPR Analysis of the Annealing Effect of Silica Film Synthesized Using CVD Technique Operated under Atmosphere」では、大気開放型CVD法を用いて、テトラエチルオルソシリケイトを出発原料とした、シリカ薄膜の合成について記述した。そして、そのシリカ薄膜を利用したSPR素子を用いて、シリカ薄膜の膜厚が及ぼすSPR現象への影響について示した。また、シリカ薄膜のアニール現象を利用した評価によって、独自に構築したSPRセンサーの感度について評価を行った。大気開放型CVD法により合成したシリカ薄膜は、従来報告されている他のCVD法で合成した薄膜と同様な反応機構で進行することを明らかにし、このシリカ薄膜を利用したSPRセンサーの評価において、構築したSPR検出装置は、シリカ薄膜中の不純物除去効果を持つアニールに対する薄膜の構造変化をもとらえることを明らかにした。
 第5章「Detection of Protein Adsorption on Silica Surface Using Surface Plasmon Resonance Sensor」では、シリカ薄膜を組み込んだSPRセンサーを用いて、親水性と疎水性の表面特性を持つシリカ上におけるリゾチームの吸着挙動に関する研究を記述した。リゾチームは、親水性又は疎水性の表面特性をもつ、いずれのシリカ薄膜に対しても結合しないことを明らかにした。また、リゾチームの凝集挙動について、両者で異なることが検出できた。この結果から、シリカとリゾチームの相互作用は、疎水性相互作用が支配的であることを示した。
 第6章「Structural Analysis by X-ray Reflectivity and Protein Interaction Using Surface Plasmon Resonance Sensors for Titania Films」では、大気開放型CVD法を使い、様々な合成条件におけるチタニア薄膜の構造特性と、チタニア薄膜が及ぼすSPR現象への影響、そしてチタニア表面におけるリゾチームの吸着挙動について記述した。大気開放型CVD法で合成したチタニア薄膜は、合成条件を変更することで結晶構造を変化させることができ、アナターゼ構造を持つ結晶表面に対して、リゾチームが吸着することを明らかにした。また、365nmのピーク波長を持つ紫外線照射によって、リゾチームの吸着挙動に変化が生じることを示した。
 第7章「General Conclusions」では、各章の結果を要約し、次の結論を得た。XRR法で10層からなるシリカ/チタニア交互多層膜を精確に解析する手法を見出した。さらに同法により、50nm厚金薄膜と10nm厚酸化物薄膜との積層からなるSPR素子の精密設計法も確立した。SPR素子によりシリカならびにチタニア表面におけるリゾチームの吸着挙動を検出するとともに、これらの素子の動作は、フレネルの多重反射理論で説明できることを示した。これにより、多層膜技術によりセラミックス薄膜に対するタンパク質の吸着挙動に対する評価手法を開発できたと結論づける。

 本論文は、「Structural Analysis and Application for SPR Device of Multi-Layered Thin Films」と題し、10章から構成されている。
 第1章「General Introduction」では、積層膜と生体材料の開発に関するこれまでの研究をまとめ、その問題点を明らかにし、本研究の背景、目的および本論文の構成を示している。
 第2章「Density Investigation by X-ray Reflectivity for Thin Films Synthesized Using CVD Technique Operated under Atmosphere」では、大気開放型化学気相析出(CVD)法により合成したハフニアとチタニアの密度解析を通して、X線反射率(XRR)法を使った薄膜構造の解析法とその解析精度について記述している。解析対象である薄膜の界面または内部の構造に対して忠実な構成モデルを構築することで、XRR法解析精度の向上につながることを示している。
 第3章「Multi-Layered Films with Optical Structure Synthesized by Chemical Vapor Deposition」では、10層からなるシリカ/チタニア交互多層膜の各層の密度を決定し、光学反射率特性と比較することで、XRR法の解析能力を示している。さらに同法は多層膜の光学特性に影響を及ぼす、各層の元素拡散などに起因する密度変化も非破壊で解析することができることを示している。
 第4章「SPR Analysis of the Annealing Effect of Silica Film Synthesized Using CVD Technique Operated under Atmosphere」では、シリカ薄膜を利用した表面プラズモン共鳴(SPR)素子を用いて、シリカ薄膜の膜厚が及ぼすSPR現象への影響について示している。大気開放型CVD法により合成したシリカ薄膜は、従来報告されている他のCVD法で合成した薄膜と同様な反応機構で進行することを明らかにし、このシリカ薄膜を利用したSPRセンサーの評価において、構築したSPR検出装置は、シリカ薄膜中の不純物除去効果を持つアニールに対する薄膜の構造変化をもとらえることを明らかにしている。
 第5章「Detection of Protein Adsorption on Silica Surface Using Surface Plasmon Resonance Sensor」では、シリカ薄膜を組み込んだSPRセンサーを用いて、親水性と疎水性の表面特性を持つシリカ上におけるリゾチームの吸着挙動に関する研究を記述している。リゾチームは、親水性又は疎水性の表面特性をもつ、いずれのシリカ薄膜に対しても結合しないことを明らかにしている。
 第6章「Structural Analysis by X-ray Reflectivity and Protein Interaction Using Surface Plasmon Resonance Sensors for Titania Films」では、チタニア薄膜が及ぼすSPR現象への影響、そしてチタニア表面におけるリゾチームの吸着挙動について記述している。結晶構造を変化させることで、アナターゼ構造を持つ結晶表面に対して、リゾチームが吸着することを明らかにしている。
 第7章「General Conclusions」では、本論文の内容を簡潔に要約している。
 本論文は工学上及び工業上貢献するところがきわめて大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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