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平成12年都市計画法改正と市町村合併に伴う新たな土地利用制御の枠組みに関する研究

氏名 岩本 陽介
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第496号
学位授与の日付 平成21年3月25日
学位論文題目 平成12年都市計画法改正と市町村合併に伴う新たな土地利用制御の枠組みに関する研究
論文審査委員
 主査 教授 中出 文平
 副査 教授 松本 昌二
 副査 准教授 樋口 秀
 副査 山口大学 大学院教授 鵤 心治
 副査 長岡工業高等専門学校教授 宮腰 和弘

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目次
第1章 序論 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 研究の目的 p.2
 1.2.1 研究の着眼点 p.2
 1.2.2 研究の目的 p.2
 1.3 既往研究との関連 p.3
 1.4 研究の構成 p.4
 1.5 平成12年敏計画法の改正点と本研究での位置づけ p.5
 1.6 用語の定義 p.8
第2章 新しい土地利用制御の枠組みの必要性と課題 p.11
 2.1 はじめに p.11
 2.2 松本都市圏の開発実態 p.12
 2.2.1 松本都市圏の概要 p.12
 2.2.2 松本都市圏の開発動向 p.12
 2.2.3 本節のまとめ p.21
 2.3 松本市市街化区域隣接部の開発動向 p.22
 2.3.1 同一自治体内の非線引き都市計画区域の開発動向‐梓川村倭地区 p.22
 2.3.2 隣接自治体の非線引き都市計画区域の開発動向‐波田村 p.24
 2.3.3 隣接自治体の都市計画区域外の開発動向‐山形村および朝日村 p.27
 2.3.4 安曇野市の開発動向 p.32
 2.3.5 本節のまとめ p.36
 2.4 土地利用規制の不連続に対する自治体の対応 p.37
 2.4.1 都市計画区域の指定 p.37
 2.4.2 用途地域の指定 p.38
 2.4.3 都市計画マスタープランに見る長野県の認識 p.39
 2.4.4 都市計画区域再編に向けた各主体の取り組み p.40
 2.4.5 本節のまとめ p.41
 2.5 本章のまとめ p.42
第3章 自治体の市町村合併による都市計画区域再編意向とその手法 p.45
 3.1 はじめに p.45
 3.2 新自治体の都市計画区域の構成状況 p.46
 3.2.1 市町村合併による自治体数の変化 p.46
 3.2.2 大都市圏の市町村合併と都市計画区域の構成 p.46
 3.2.3 地方都市圏の市町村合併と都市計画区域の構成 p.46
 3.2.4 本節のまとめ p.48
 3.3 都道府県の都市計画区域再編意向 p.49
 3.3.1 市町村合併による都市計画区域の再編 p.49
 3.3.2 市街化調整区域と周辺地域の格差に関する認識 p.50
 3.3.3 格差是正のための特定用途制限地域の活用意向 p.51
 3.3.4 本節のまとめ p.52
 3.4 市町村の都市計画区域再編意向 p.53
 3.4.1 都市計画区域再編意向 p.53
 3.4.2 都市計画区域再編の意向を持っている自治体の考え方と課題 p.54
 3.4.3 都市計画区域再編の意向を持っていない自治体の考え方と課題 p.56
 3.4.4 再編に拠らない土地利用規制の格差是正手法の活用意向 p.57
 3.4.5 本節のまとめ p.58
 3.5 線引きと非線引きの都市計画区域の統合プロセスの評価 p.60
 3.5.1 静岡市のプロセスに見る課題 p.60
 3.5.2 浜松市のプロセスに見る課題 p.63
 3.5.3 本節のまとめ p.67
 3.6 区域区分導入の問題点と課題 p.68
 3.6.1 鶴岡市の概要と区域区分導入経緯 p.68
 3.6.2 線引き導入に伴い運用された関連施策の内容 p.72
 3.6.3 本節のまとめ p.74
 3.7 本章 p.75
第4章 都市計画区域マスタープランによる用途地域外の土地利用計画手法 p.77
 4.1 はじめに p.77
 4.2 区域マスでの白地方針の策定プロセス p.78
 4.2.1 各都道府県の区域マス策定方針 p.78
 4.2.2 白地方針の提示形態及び策定過程に着目した都道府県の分類 p.81
 4.2.3 対象都道府県の選定 p.85
 4.2.4 本節のまとめ p.85
 4.3 策定プロセスの違いによる白地方針の提示実態 p.87
 4.3.1 都道府県主導型‐長野県 p.87
 4.3.2 調整型‐熊本県 p.92
 4.3.3 市町村主導型‐宮城県 p.97
 4.3.4 自主判断型‐福井県 p.100
 4.3.5 本節のまとめ p.104
 4.4 協議不調型の新潟県の白地方針の考え方と策定プロセス p.106
 4.4.1 白地方針の区域区分の考え方 p.106
 4.4.2 白地方針の策定プロセスの提示形態の変容 p.108
 4.4.3 県修正案作成に際しての特定地域の考え方 p.109
 4.4.4 本節のまとめ p.110
 4.5 協議不調型の新潟県の白地方針の考え方と策定プロセス p.112
 4.5.1 開発想定地に着目した市町村安と県修正案の比較 p.112
 4.5.2 市町村の類型化と詳細対象市町村の選定 p.115
 4.5.3 本節のまとめ p.119
 4.6 新潟県と各市町村の調整プロセス p.120
 4.6.1 特定地域に関する市町村案と県修正案の評価 p.120
 4.6.2 混合地域の指定に関する考え方の乖離 p.127
 4.6.3 農業地域に関する考え方の乖離 p.129
 4.7 本章のまとめ p.131
 4.7.1 区域マスの白地方針の提示に関する問題点 p.131
 4.7.2 区域マスの白地方針に関する提言 p.132
第5章 非線引き都市計画区域の土地利用制御手法 p.133
 5.1 はじめに p.133
 5.2 全国の用途地域の変遷 p.134
 5.2.1 全国の用途地域の変遷 p.134
 5.2.2 用途地域拡大自治体に見る用途地域制の限界 p.137
 5.2.3 用途地域縮小自治体の実態 p.140
 5.2.4 本節のまとめ p.142
 5.3 全国の特定用途制限地域の指定実態 p.143
 5.3.1 指定事例の概要 p.143
 5.3.2 指定目的に着目した各事例の特長 p.143
 5.3.3 規制内容に着目した各事例の特長 p.144
 5.3.4 本節のまとめ p.145
 5.4 岐阜県美濃加茂市と富加町の特定用途制限地域指定のプロセス p.146
 5.4.1 美濃加茂市と富加町の概要 p.146
 5.4.2 指定経緯 p.146
 5.4.3 住民合意のプロセス p.147
 5.4.4 指定地域の建築動向 p.148
 5.4.5 本節のまとめ p.150
 5.5 特定用途制限地域の活用可能性 p.151
 5.5.1 各種計画で想定している特定用途制限地域の活用手法 p.151
 5.5.2 用途地域との比較による制度の特長 p.152
 5.6 本章のまとめ p.154
 5.6.1 用途地域の指定指定に関する課題 p.154
 5.6.2 特定用途制限地域の指定に関する知見 p.154
 5.6.3 非線引き都市計画区域の用途地域外の土地利用規制の枠組みのあり方 p.155
第6章 結論 p.157
 6.1 本研究で得られた知見 p.157
 6.2 現行の地方都市の土地利用制御面での問題点 p.159
 6.3 今後の土地利用規制の枠組みに関する提言 p.160
 6.4 今後の課題 p.164

 本研究は、地方都市で問題となっている都市計画区域の指定のあり方、著しい土地利用規制の格差から生じる土地利用の不整合を解決するための新たな土地利用制御の枠組みを提示すること目的とする。
 まず、線引き、非線引きの都市計画区域や都市計画区域外の土地利用規制が混在する地方都市特有の状況を有する松本都市圏を対象に、規制の格差に伴う土地利用動向の不整合の実態を明らかにし、新たな土地利用制御の枠組みを構築する必要性を指摘した。その上で、新たな土地利用制御の枠組みを構築するために本研究では、(1)一体の都市として整合の取れた都市計画区域の指定形態のあり方、(2)広域的観点から土地利用制御を図る仕組みの構築、(3)規制力が弱い非線引き都市計画区域の土地利用制御手法のあり方、という3つの視点から地方都市の実情に応じた土地利用制御の枠組みの検討を行った。
 一点目については、一体の都市として整合の取れた土地利用制御を実現するためには、現状の都市計画区域を再編することが必要との認識から、本研究では都市計画区域の指定や区域区分の決定権者である都道府県及び、市町村合併により都市計画区域再編の必要性が顕在化したと考えられる自治体の都市計画区域再編に対する意向と今後の動向を把握し、再編意向がある自治体と意向がない自治体それぞれについて、再編を考えるにあたっての課題を考察し、都市計画区域再編の課題を明らかにした。また、実際に線引きと非線引きの都市計画区域を再編した事例、並びに非線引き都市計画区域に区域区分を導入した事例から、都市計画区域再編の手法とあり方を考察した。
 二点目については、人々の日常生活の範囲が広がった今日において、一市町村のみで土地利用を制御していることには限界があることを踏まえ、一市町村を超えた広域的な観点から土地利用制御を図る仕組みを構築しなければならない。そこで、本研究では平成12年都市計画法改正で創設された都市計画区域マスタープランを都道府県が広域的観点から土地利用の方針を定めることが可能な計画と位置付け、その運用のあり方について論じた。 三点目については、地方都市にとっては、用途地域外が法規制的に必ずしも市街化を抑制することになっていない非線引き都市計画区域の土地利用制御が肝要であるとの認識から、線引きと非線引きの規制の格差を解消する方策として、本研究では平成12年都市計画法改正で創設された特定用途制限地域を活用した非線引き都市計画区域の土地利用制御による線引きと非線引きの都市計画区域の規制格差の是正方策を検討した。
 以上のことから、我が国の地方都市における土地利用制御の枠組みについて、次のことを提言した。線引き都市計画区域の開発圧力が都市計画区域外に拡散した場合、都市計画法に基づく対応は困難であり、都市計画区域内での土地利用制御がうまく機能していても、広域的な整合を図ることが難しい。そのため都市計画区域からの開発圧力を受ける可能性がある都市計画区域外については、積極的に都市計画区域を指定していくことが望ましい。
また、都道府県が定める都市計画区域マスタープランの中で、広域的に土地利用の調整を図ることが可能な形で、土地利用の方針を示すことが、都市圏レベルで整合がとれた土地利用制御を実現するための有効な手段であると考える。具体的には、区域区分をはじめとした県が定める都市計画や、用途地域のように市町村が定める都市計画であっても、都道府県の同意の判断基準として、都市計画区域マスタープランに基づいた判断がなされるような運用がなされるべきであり、さらに、市町村が定める都市計画であっても、例えば用途地域を拡大する場合の都道府県の同意の判断基準として、都市計画区域マスタープランに位置付けられている箇所以外は認めないというような運用がなされることが望ましい。また、都市計画区域マスタープランに広域調整機能を十分に発揮するために、都市計画区域の再編は、市町村の範囲を超えた広域の都市計画区域に再編していくことが必要であることも指摘した。最後に、線引きと非線引きの都市計画区域の統合が難しく、両者が併存する場合には、規制の格差による土地利用の不整合が生じないような土地利用規制手法の運用が図られるべきである。非線引き都市計画区域の用途地域外で特定用途制限地域を指定し、市街化調整区域で34条11号や34条12号に基づく条例により、一定程度の開発を緩和することによって、段階的な土地利用規制による整合性のとれた土地利用制御の枠組みの構築して必要性を指摘した。

 本論文は、「平成12年都市計画法改正と市町村合併に伴う新たな土地利用規制の枠組みに関する研究」と題し、地方都市で問題となっている都市計画区域の指定のあり方、著しい土地利用規制の格差から生じる土地利用の不整合を解決するための新たな土地利用制御の枠組みを提示する研究として、全6章より構成されている。第一章では、(1)一体の都市として整合の取れた都市計画区域の指定形態のあり方、(2)広域的観点から土地利用制御を図る仕組みの構築、(3)規制力が弱い非線引き都市計画区域の土地利用制御手法のあり方、という3つの視点が、新たな土地利用制御の枠組を構築するための視点
として示された。
 第二章では、まず、線引き、非線引きの都市計画区域や都市計画区域外の土地利用規制が混在する地方都市特有の状況を有する松本都市圏を対象に、規制の格差に伴う土地利用動向の不整合の実態を明らかにした。
 第三章では、都市計画区域の指定権者である都道府県と市町村合併により都市計画区域再編の必要性が顕在化した区域区分都市に対するアンケートをもとに、各自治体の都市計画区域再編に対する意向と今後の動向を把握するとともに、平成12年法改正で制度化された手法の指定動向や活用意向を考察している。
 第四章では、都市計画区域マスタープランの市街化調整区域や非線引き用途地域外の土地利用方針の提示の仕方と策定の経緯について、都道府県アンケートから全国的な策定実態を把握するとともに各都道府県を類型化した上で事例を取り上げ、白地の土地利用方針の策定実態や問題点を明らかにするとともに、これら地域の土地利用方針の提示のあり方や県と市町村のあり方について考察している。
 第五章では、1970年以降の用途地域の拡大、縮小及び新規指定の動向を概観した上で、具体の事例を取り上げ、非線引き都市計画区域の用途地域のあり方を論じた上で、特定用途制限地域の活用可能性を論考するにあたって線引き廃止の代替措置としての運用ではない岐阜県の二自治体での指定事例を分析し、同制度を活用した土地利用制御策を考察している。
 第六章では、本論文で得られた結果をまとめるとともに、それを踏まえた上で「都市計画区域外に対する都市計画区域の指定」「都市計画区域マスタープランによる都道府県の土地利用制御に対する関与を見越した都市計画区域の再編」「区域区分の有無が異なる都市計画区域の土地利用制御の枠組み」の3点に関する新たな土地利用制御の枠組みを提案した。
 よって、本論文は工学上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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