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直接電力制御法を適用した三相電力変換器に関する研究

氏名 佐藤 明
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第502号
学位授与の日付 平成21年3月25日
学位論文題目 直接電力制御法を適用した三相電力変換器に関する研究
論文審査委員
 主査 准教授 野口 敏彦
 副査 教授 近藤 正示
 副査 教授 大石 潔
 副査 准教授 伊東 淳一
 副査 名古屋工業大学教授 竹下 隆晴

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目次
第1章 序論
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 研究の目的 p.4
 1.3 論文の概要 p.5
 参考文献
第2章 瞬時電力に着目した三相電力変換器の波形制御法
 2.1 諸言 p.11
 2.2 瞬時電力の定義と電力変換器の基本回路構成 p.12
 2.2.1 瞬時有効・無効電力の定義 p.12
 2.2.2 電力フローの可逆性による分類 p.16
 2.2.3 電圧形と電流形の双対性による分類 p.18
 2.3 出力波形の正弦波化手法 p.21
 2.4 瞬時電力に着目した三相電力変換器の波形制御法 p.27
 2.4.1 直接電力制御システムの概要 p.27
 2.4.2. 制御原理 p.30
 2.4.3 電力変換器のスイッチングモードと瞬時電力の関係 p.32
 2.5 本研究の位置付け p.40
 2.6 結言 p.42
 参考文献
第3章 電圧形PWM整流器野直接電力制御法
 3.1 諸言 p.45
 3.2 直接電力制御システム p.46
 3.2.1 制御システム p.46
 3.2.2 スイッチングテーブルの構成法 p.48
 3.3 小容量平滑コンデンサ時の運転特性 p.50
 3.4 不平衡電源における運転特性 p.55
 3.5 結言 p.59
 参考文献
第4章 瞬時電力に着目した電流形PWM整流器の制御法
 4.1 諸言 p.65
 4.2 直接電力制御システム p.66
 4.2.1 制御システム p.66
 4.2.2 スイッチングテーブルの構成法 p.68
 4.2.3 LCフィルタ共振抑制法 p.70
 4.3 シミュレーションによる検証 p.72
 4.4 実機による検証 p.77
 4.5 結言 p.81
 参考文献
第5章 中性点クランプ形PWM整流器の直接電力制御法
 5.1 諸言 p.85
 5.2 直接電力制御システム p.86
 5.2.1 制御システム p.86
 5.2.2 出力電圧ベクトル選択法 p.87
 5.2.3 スイッチングテーブルの構成法 p.89
 5.2.4 中性点電位の変動抑制法 p.93
 5.3 シミュレーションによる検証 p.98
 5.4 実機による検証 p.98
 5.5 結言 p.106
 参考文献
第6章 直接電力制御法を適用したCVCFインバータ
 6.1 諸言 p.109
 6.2 制御原理 p.110
 6.3 直接電力制御システム p.111
 6.3.1 制御システム p.111
 6.3.2 スイッチングテーブルの構成法 p.113
 6.4 シミュレーションによる検証 p.118
 6.5 実機による検証 p.118
 6.6 結言 p.121
 参考文献
第7章 結論
 7.1 本研究の成果 p.127
 7.2 各制御システムの比較 p.130
 7.3 今後の課題 p.133
謝辞
発表論文

 本論文では,瞬時有効電力と瞬時無効電力に着目した三相電力変換器の直接電力制御法を提案している。提案する手法の理論的な裏付けを行うとともに,提案法を種々の電力変換器に適用し,計算機シミュレーションや実機検証によりその妥当性と有効性を検証している。まず,電圧形PWM整流器においては簡単な制御システムで,直流部のエネルギー蓄積要素の極小容量化を実現している。また,電圧形PWM整流器と双対関係にある電流形PWM整流器にも直接電力制御法を適用しその有効性を確認している。加えて大容量システムに使用されている中性点クランプ形PWM整流器に本手法を適用し,従来法を凌駕する総合入力力率や総合効率を実現した。さらに提案法の応用として,UPS等に用いられる定電圧定周波数PWMインバータを検討し,負荷が平衡,不平衡であっても簡単なシステム構成で平衡した出力電圧波形を得られることを確認した。
 第1章では,本論文の序論として研究背景について述べ,従来の波形制御法に対して問題点を示している。そして,この問題点に対して,本論文の研究指針について述べている。
 第2章では,瞬時有効電力と瞬時無効電力に着目した三相電力変換器の直接電力制御法を提案している。まず,瞬時有効・無効電力を定義し,電力変換器を電力フローの可逆性,電圧形と電流形の双対性の観点から分類を行い,それぞれの特徴を明らかにしている。また,出力波形の正弦波化手法を時間軸と振幅軸,2つの観点から分類を行い,それぞれの正弦波手法の特徴を示している。さらに,本論文で提案する瞬時有効電力と瞬時無効電力に着目した三相電力変換器の制御法,直接電力制御法の概要および制御原理について述べている。本制御法は瞬時有効電力と瞬時無効電力を電力変換器のスイッチングにより直接的に制御する手法である。瞬時有効電力と瞬時無効電力がその指令値に追従するように動作するためには,瞬時有効電力と瞬時無効電力とスイッチングモードの関係を知る必要があり,電力変換器のモデル図を用いてそれらの関係を理論的に検討している。最後に本論文の研究の位置付けについて述べている。
 第3章以降では,第2章で提案している直接電力制御法を種々の電力変換器に適用し,計算機シミュレーションや実機検証によりその妥当性と有効性について述べている。
 第3章では,直接電力制御法を電圧形PWM整流器に適用したシステム構成について検討している。また,本制御システムで重要となるスイッチングテーブルの構成法についても述べている。本制御法の特長である高速応答性を活かして,直流部のエネルギー蓄積要素を極小容量化できることを実験的に示している。さらに不平衡電源時における運転特性を従来のキャリア変調に基づく電流制御法と比較し,提案する方式の有効性を示している。
 第4章では,第3章で検討した電圧形PWM整流器の双対関係にある電流形PWM整流器に直接電力制御法を適用したシステム構成,スイッチングテーブル構成について述べている。さらに電流形PWM整流器の入力にはLCフィルタが設置されるため,入力電流に共振周波数成分が生じる問題があり,この共振を抑制する方策についても検討している。そして,本手法の有効性を計算機シミュレーションと実験による検証により確認している。
 第5章では,直接電力制御法を多レベル電力変換器に適用したシステム構成について検討している。ここでは,多レベル変換器として中性点クランプ形PWM整流器を採用し,スイッチングパターンの選択法,中性点クランプ形変換器特有の問題点である中性点電位の変動を抑制する方策についても検討している。そして,本手法の有効性を確認するために,従来の静止座標で電流制御を行う手法と総合入力力率および総合効率の比較を行っている。
 第6章では,直接電力制御法を定電圧定周波数PWMインバータシステムに応用している。第3~5章では入力電力と出力電力が一致するよう瞬時電力制御するのに対し,フィルタコンデンサの充放電するエネルギーを直接的に制御することで安定した出力電圧が得られる手法を提案している。そして,フィルタコンデンサ電流マイナーループをもつ手法と比較し,不平衡負荷時に提案する方式が従来法より平衡した出力電圧が得られることを計算機シミュレーションで確認している。さらに,実験により提案する方式の運転特性を明らかにしている。
 第7章では,本論文の結論として,各章で検討した電力変換器の直接電力制御法に関する総括を行う。さらに本研究で残された課題についても言及している。

 本論文は「直接電力制御法を適用した三相電力変換器に関する研究」と題し,全7章から構成されている。
第1章では,本論文の序論として研究背景について述べ,従来の波形制御法に対して問題点を示している。そして,この問題点に対して,本論文の研究指針について述べている。
 第2章では,瞬時有効電力と瞬時無効電力に着目した三相電力変換器の直接電力制御法を提案している。まず,瞬時有効・無効電力を定義し,電力変換器を電力フローの可逆性,電圧形と電流形の双対性の観点から分類を行い,それぞれの特徴を明らかにしている。また,出力波形の正弦波化手法を時間軸と振幅軸,2つの観点から分類を行い,それぞれの正弦波手法の特徴を示している。さらに,本論文で提案する瞬時有効電力と瞬時無効電力に着目した三相電力変換器の制御法,直接電力制御法の概要および制御原理について述べている。本制御法は瞬時有効電力と瞬時無効電力を電力変換器のスイッチングにより直接的に制御する手法である。瞬時有効電力と瞬時無効電力がその指令値に追従するように動作するためには,瞬時有効電力と瞬時無効電力とスイッチングモードの関係を知る必要があり,それらの関係を理論的に検討している。最後に本論文の研究の位置付けについて述べている。
 第3章では,直接電力制御法を電圧形PWM整流器に適用したシステム構成について検討している。また,本制御システムで重要となるスイッチングテーブルの構成法についても述べている。本制御法の特長である高速応答性を活かして,直流部のエネルギー蓄積要素を極小容量化できることを実験的に示している。さらに不平衡電源時における運転特性を従来のキャリア変調に基づく電流制御法と比較し,提案する方式の有効性を示している。
 第4章では,第3章で検討した電圧形PWM整流器の双対関係にある電流形PWM整流器に直接電力制御法を適用したシステム構成,スイッチングテーブル構成について述べている。さらに電流形PWM整流器の入力にはLCフィルタが設置されるため,入力電流に共振周波数成分が生じる問題があり,この共振を抑制する方策についても検討している。そして,本手法の有効性を計算機シミュレーションと実験による検証により確認している。
 第5章では,直接電力制御法を多レベル電力変換器に適用したシステム構成について検討している。ここでは,多レベル変換器として中性点クランプ形PWM整流器を採用し,スイッチングパターンの選択法,中性点クランプ形変換器特有の問題点である中性点電位の変動を抑制する方策についても検討している。そして,本手法の有効性を確認するために,従来の静止座標で電流制御を行う手法と総合入力力率および総合効率の比較を行っている。
 第6章では,直接電力制御法を定電圧定周波数PWMインバータシステムに応用している。第3~5章では入力電力と出力電力が一致するよう瞬時電力制御するのに対し,フィルタコンデンサの充放電するエネルギーを直接的に制御することで安定した出力電圧が得られる手法を提案している。そして,フィルタコンデンサ電流マイナーループをもつ手法と比較し,不平衡負荷時に提案する方式が従来法より平衡した出力電圧が得られることを計算機シミュレーションで確認している。さらに,実験により提案する方式の運転特性を明らかにしている。
 第7章では,本論文の結論として,各章で検討した電力変換器の直接電力制御法に関する総括を行う。さらに本研究で残された課題についても言及している。
 よって,本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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