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土被りの浅い大規模岩盤地下空洞の安定性評価と掘削に伴う不安定領域評価に関する研究

氏名 小林 薫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第188号
学位授与の日付 平成14年3月25日
学位論文題目 土被りの浅い大規模岩盤地下空洞の安定性評価と掘削に伴う不安定領域評価に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 杉本 光隆
 副査 教授 鳥居 邦夫
 副査 助教授 大塚 悟
 副査 助教授 豊田 浩史
 副査 長岡工業高等専門学校校長 小川 正二

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第1章 序論 p.1
1.1 まえがき p.1
1.2 わが国における大規模地下空洞 p.4
1.2.1 従来の大規模地下空洞 p.4
1.2.2 大規模地下空洞の新たな活用 p.5
1.3 不特定多数が常時利用する大規模地下空洞 p.6
1.3.1 地下空洞の断面形状 p.6
1.3.2 地下空洞の土被り p.7
1.4 既往の研究と課題 p.9
1.4.1 大規模地下空洞の安定性に関する研究 p.9
1.4.2 掘削に伴う空洞周辺岩盤の不安定領域評価に関する研究 p.13
1.5 本論文の構成 p.17
第2章 土被りの浅い大規模地下空洞の安定性に及ぼす影響要因の基礎的検討 p.26
2.1 概説 p.26
2.2 掘削時の安定性に及ぼす影響要因の検討 p.26
2.2.1 解析概要 p.26
2.2.2 地下空洞の安定性に及ぼす土被りの影響 p.30
2.2.3 地下空洞の安定性に及ぼす空洞形状と側圧係数の影響 p.31
2.2.4 地下空洞の安定性に及ぼす地表面傾斜の影響 p.34
2.3 地震時の安定性に及ぼす影響要因の検討 p.37
2.3.1 地下空洞の安定性の検討方法 p.37
2.3.2 解析概要 p.39
2.3.3 地下空洞の安定性に及ぼす土被りの影響 p.40
2.3.4 地下空洞の安定性に及ぼす空洞形状の影響 p.41
2.3.5 地下空洞の安定性に及ぼす側圧係数の影響 p.41
2.3.6 地下空洞の安定性に及ぼす総合的な影響 p.43
2.3.7 地下空洞の安定性に及ぼす地表面傾斜の影響 p.45
2.4 まとめ p.59
第3章 土被りの浅い大規模地下空洞(高山祭りミュージアム)の安定性検討 p.63
3.1 概説 p.63
3.2 基本方針 p.64
3.2.1 対象構造物 p.64
3.2.2 基本検討方針 p.65
3.2.3 検討条件 p.66
3.2.4 ゆるみ領域の判断基準 p.69
3.2.5 総括的な安定性評価法の提案 p.70
3.3 時刻歴応答解析による地震時増分応力の算出 p.72
3.3.1 設計用入力地震動の設定 p.72
3.3.2 地震時増分応カの検討 p.78
3.4 連続体解析による安定性検討 p.84
3.4.1 概要 p.84
3.4.2 二次元有限要素解析の適用 p.85
3.4.3 三次元有限要素解析の適用 p.94
3.5 不連続体解析による安定性検討 p.101
3.5.1 不連続変形法の概要 p.101
3.5.2 不連続変形法(DDA)の適用 p.105
3.6 支保部材の検討 p.109
3.6.1 補強対象領域の設定 p.109
3.6.2 ロックアンカーの設計 p.109
3.7 まとめ p.113
第4章 超音波を用いた孔内弾性波伝播速度の測定装置の開発と適用 p.116
4.1 概説 p.116
4.2 従来のゆるみ領域測定と課題 p.116
4.3 超音波を用いた孔内弾性波伝播速度の測定装置の概要 p.117
4.3.1 測定装置の構成 p.117
4.3.2 測定装置の特徴 p.118
4.3.3 測定手順 p.119
4.4 弾性波伝播速度の測定装置を用いた基礎的実験 p.120
4.5 掘削工事に伴うゆるみ発生の調査を目的とした弾性波伝播速度の測定 p.122
4.5.1 工事概要 p.122
4.5.2 掘削工事 p.122
4.5.3 測定概要 p.123
4.5.4 測定結果 p.124
4.6 まとめ p.126
第5章 岩盤不連続面調査への精密写真測量の応用とその適用性 p.128
5.1 概説 p.128
5.2 不連続面調査結果のキーブロック解析への活用法 p.128
5.2.1 キーブロック解析の概要 p.128
5.2.2 基礎理論 p.129
5.3 現状における不連続面調査法の課題 p.131
5.4 精密写真測量による不連続面調査手法の概要 p.131
5.4.1 Self Calibration法による重複画像標定 p.131
5.4.2 岩盤不連続面の走向・傾斜の決定 p.132
5.4.3 作業手順および特徴 p.135
5.5 室内基礎実験 p.136
5.6 大規模地下空洞の掘削工事への適用 p.139
5.6.1 不連続面の調査概要 p.139
5.6.2 掘削面の撮影方法 p.140
5.6.3 精密写真測量の適用と考察 p.142
5.7 まとめ p.144
第6章 土被りの浅い大規模地下空洞を利用した高山祭りミュージアムの調査・施エ実績 p.146
6.1 概説 p.146
6.2 建設地点の調査・試験概要 p.146
6.2.1 地形概要 p.146
6.2.2 地質調査・試験概要 p.147
6.2.3 初期地圧試験 p.150
6.2.4 不連続面調査概要 p.150
6.3 施工実績 p.154
6.3.1 標準的な施エサイクル p.154
6.3.2 掘削工 p.154
6.3.3 支保工 p.158
6.4 施工管理 p.162
6.4.1 計測管理 p.162
6.4.2 キーブロック解析を用いた情報化施工 p.163
6.5 まとめ p.168
第7章 土被リの浅い大規模地下空洞の掘削時変形挙動の評価 p.170
7.1 概説 p.170
7.2 計測概要 p.171
7.2.1 計測器の配置 p.171
7.2.2 空洞周辺岩盤のゆるみ領域測定 p.172
7.3 計測結果 p.173
7.3.1 掘削時の変形挙動計測 p.173
7.3.2 区間ひずみ p.175
7.3.3 掘削時に伴うロックアンカー軸力の変動 p.176
7.3.4 空洞周辺岩盤のゆるみ領域 p.177
7.4 計測結果の評価 p.180
7.4.1 変形挙動の評価 p.180
7.4.2 空洞周辺岩盤のゆるみ領域の評価 p.183
7.5 まとめ p.186
第8章 結論 p.188
謝辞 p.192

 本論文は、土被りの浅い大規模岩盤地下空洞の建設技術の確立に寄与することを目的にしている。まず、不特定多数が常時利用する建築構造物としての土被りの浅い大規模岩盤地下空洞を対象に、掘削時および地震時の空洞周辺岩盤の変位挙動や安定性に及ぼす影響要因を系統立てた解析的検討により明らかにした上で、土被りの浅い大規模岩盤地下空洞の総括的な安定性評価手法について論じている。また、空洞掘削時における周辺岩盤の不安定領域を迅速かつ定量的に原位置で評価する手法について検討している。さらに、掘削に伴う空洞周辺岩盤の計測結果と解析結果を詳細に比較検討することにより、これまでほとんど明らかにされていなかった土被りの浅い低地圧下における大規模岩盤地下空洞の掘削時の変形挙動および安定性について把握し、掘削時の変形挙動予測手法に関する提言を行っている。
 本論文は、「土被りの浅い大規模岩盤地下空洞の安定性評価と掘削に伴う不安定領域評価に関する研究」と題して8章からなり、各章の構成は以下のとおりである。
 第1章の序論は、建築構造物としての不特定多数が常時利用する大規模岩盤地下空洞の特徴を整理・分析し、研究対象とする大規模岩盤地下空洞を明確にした上で、既往の研究成果を整理し土被りの浅い大規模岩盤地下空洞に対して、掘削時および地震時の安定性評価と掘削に伴う不安定領域評価に関する研究課題を抽出するとともに、本論文の位置づけを行っている。
 第2章では、第1章で整理・分析した特徴を考慮した上で、土被りが浅い大規模岩盤地下空洞の掘削時の安定性評価とともに、これまで問題となることが少なかった地震時の安定性に及ぼす各種要因(土被り、初期応力比、空洞形状および地表面の傾斜)の影響について系統的な解析を行うことによって詳細に検討した結果について述べている。
 第3章では、第2章の結果を基に、国内初の建築構造物としての土被りの浅い大規模岩盤地下空洞(高山祭りミュージアム)を対象に安定性評価手法を提案するとともに、各種数値解析による高山祭りミュージアムの掘削時および地震時の安定性評価とそれに基づく支保部材(特に、ロックアンカー)について検討した結果について述べている。
 第4章では、従来の原位置におけるゆるみ測定法の課題を述べた上で、土被りの浅い不連続性硬質岩盤の掘削に伴うゆるみ領域を迅速かつ定量的に評価するための超音波を用いた孔内弾性波伝播速度の測定装置の概要と特徴について述べるとともに、開発した測定装置の室内基礎実験の結果について述べている。さらに、堤体コンクリートの掘削工事へ適用し、従来手法による測定結果と比較することによって詳細に検討した結果について述べている。
 第5章では、安全施工とともにキーブロック解析を用いた情報化施工において最も重要な掘削時の不連続面調査の課題を述べ、その上で、精密写真測量による不連続面調査法の概要と特徴を述べるとともに、室内基礎実験による測定精度の検証結果について述べている。また、本調査法を大規模岩盤地下空洞の掘削現場に適用し、従来のクリノメータで行う不連続面調査結果(走向・傾斜)と比較することによって適用性について検討した結果について述べている。
 第6章では、国内初の不特定多数が常時入場する土被りの浅い大規模岩盤地下空洞を利用した高山祭りミュージアムの各種調査・施工実績の詳細について述べている。実施工にあたっては、安全施工、品質確保および施工の効率化を目指して開発した新たな材料や施工装置について述べている。
 第7章では、土被りの浅い大規模岩盤地下空洞の掘削時変形挙動に論点を絞り、計測事例が極めて少ない低地圧下での大規模岩盤地下空洞の壁面変位、地中変位およびゆるみ領域などの計測結果について述べるとともに、掘削に伴う空洞周辺岩盤の変形挙動について数値解析結果による挙動予測と各種計測結果を比較することによって詳細に検討した結果について述べている。さらに、掘削時の変形挙動特性について明らかにした上で、掘削時の変形挙動予測手法に関する提言を行っている。
 第8章は結論であり、本研究で得られた結果および知見を総括的に整理するとともに、今後の課題・展望について述べている。

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