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ポケットパークの計画と管理に関する研究

氏名 熊野 稔
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第190号
学位授与の日付 平成14年3月25日
学位論文題目 ポケットパークの計画と管理に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 鳥居 邦夫
 副査 教授 中出 文平
 副査 助教授 宮木 康幸
 副査 前橋工科大学 教授 湯沢 昭

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第1章 序論 研究の背景,意義及び目的と方法 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.2 ポケットパークの定義 p.3
1.3 研究の意義 p.5
1.4 既往研究の整理 p.7
1.4.1 広場的研究 p.7
1.4.2 公開空地の研究 p.7
1.4.3 都市の自由空間・小空地空間的研究 p.8
1.5 研究の目的 p.10
1.6 研究の方法 p.11
1.7 本論文の構成 p.12
1.8 1章のまとめ p.13
第2章 ポケットパークの経緯と動向,制度体系及び事例分析 p.16
2.1 ポケットパークの背景と経緯 p.16
2.1.1 Paley Parkとニューヨーク市でのポケットパーク p.16
2.1.2 アーバンプラザ p.18
2.1.3 アーバンパーク p.19
2.1.4 ブロック貫通ギャレリア p.19
2.1.5 ニューヨークのポケットパークとその動向と課題 p.20
2.1.6 我が国におけるポケットパーク的空間の初動期 p.21
2.2 我が国におけるポケットパークの設立経緯と目的及び動向 p.23
2.2.1 ポケットパークの設立経緯と動向 p.23
2.2.2 地方自治体におけるポケットパークの意味と設立目的 p.26
2.3 都市計画、景観計画におけるポケットパークの位置付け p.28
2.4 ポケットパークの制度体系と計画構成 p.30
2.4.1 ポケットパークの制度手法 p.30
2.4.2 制度別事例 p.38
2.4.3 総合設計制度の公開空地について p.42
2.5 3大都市圏におけるポケットパークの事例と評価 p.47
2.5.1 東京都 p.47
2.5.2 東京特別区のポケットパーク p.50
2.5.3 大阪府・市 p.72
2.5.4 名古屋市 p.79
2.5.5 神戸市 p.83
2.6 地方都市におけるポケットパークの事例と評価 p.88
2.6.1 静岡市 p.88
2.6.2 高山市 p.91
2.6.3 郡上郡八幡町 p.95
2.6.4 山口市 p.100
2.7 ポケットパーク事例に見る諸特性と評価 p.106
2.8 2章のまとめ p.108
第3章 ポケットパークの立地構成と空間特性分析 p.111
3.1 ポケットパークのデータ構成と立地構成 p.111
3.1.1 ポケットパークの土地所有別立地構成について p.112
3.1.2 ポケットパークの立地別構成の内容と事例 p.115
3.2 ポケットパークの形態と接道数条件による類型化 p.120
3.3 ポケットパークの空間特牲分析 p.137
3.3.1 規模と設置場所(以前の土地利用) p.137
3.3.2 整備内容 p.137
3.3.3 平面形態と接道数条件による類型化の構成内容 p.139
3.3.4 防災対策 p.140
3.4 3章のまとめ p.144
第4章 ポケットパークの利用と管理から見た事例評価 p.146
4.1 ポケットパークのデータ構成 p.146
4.2 ポケットパークの利用状況と評価 p.149
4.3 ポケットパークの管理状況と評価 p.153
4.4 ポケットパークの行政評価 p.156
4.5 ポケットパークの利用者,管理者及び住民評価(山口市等を事例として) p.165
4.5.1 ポケットパークの利用者評価 p.166
4.5.2 ポケットパークの利用特性 p.172
4.5.3 ポケットパークの周辺住民評価 p.178
4.5.4 ポケットパークの管理者評価 p.181
4.6 4章のまとめ p.184
第5章 ポケットパークの必要性と機能性について p.186
5.1 ポケットパークの必要性の論理 p.186
5.1.1 景観の向上 p.187
5.1.2 都市緑化 p.190
5.1.3 都市構成における面・線・点のグリーンフレームの構築に寄与 p.191
5.1.4 ミニであることの有用性 p.192
5.1.5 自然環境保全・生態系の向上 p.192
5.1.6 街の文化・個性の醸成 p.192
5.1.7 屋外彫刻・パブリックアートなどの展示及び鑑賞空間の確保 p.193
5.1.8 ストリートファニチャーを集約配置した場合の空間の確保 p.195
5.1.9 公共施設前庭の開放化によるオープンスペースの確保 p.201
5.1.10 道路線形状,余裕スペースが生じざるを得ない箇所の価値化 p.202
5.1.11 道路の拡幅予定地における空地の価値化 p.204
5.1.12 道路交通島・ロータリー等の価値化 p.205
5.1.13 道路残地の価値化 p.206
5.1.14 歩車共存道路の余裕スペースの価値化 p.207
5.1.15 遊休地・空地の価値化 p.207
5.1.16 空地の開放 p.207
5.1.17 密集市街地での余裕スペースの確保と環境特性の向上 p.207
5.1.18 交差点角地などにおける交通安全上の見通しの確保 p.207
5.1.19 防災上 p.208
5.1.20 まちの中に庭を造る p.209
5.1.21 まちづくりの一環としてのコミュニテイの醸成が図れる p.209
5.1.22 道路構造令の改正による滞留スペースの必要性 p.210
5.1.23 市街地の活性化と集客・交流人口の受け皿としての機能 p.211
5.1.24 高層建築物等,建築施設回避のための土地活用 p.212
5.2 行政と住民意識から見たポケットパークの必要性と機能性 p.213
5.3 必要性から見たポケットパーク制度の法的位置付け p.219
5.4 5章のまとめ p.223
第6章 ポケットパークの計画条件と方向性(住民参加型を基調として) p.225
6.1 住民参加型ポケットパークの計画の動向と評価 p.225
6.1.1 グランドワークによる事例 p.226
6.1.2 住民参加型ワークショップによる計画事例と評価 p.229
6.2 演習活用法による設置計画と計画デザインについて p.239
6.2.1 研究の背景と目的及び方法 p.239
6.2.2 集計分析結果と考察 p.240
6.2.3 演習活用法の学生自己評価 p.241
6.2.4 行政による演習活用法の評価 p.242
6.2.5 結論 p.242
6.2.1 ポケットパークにおける施設構成の条件 p.247
6.3.1 舗装、下地デザインの条件と方向性 p.247
6.3.2 植栽デザインの条件と方向性 p.249
6.3.3 ストリートファニチャーの条件と方向性 p.251
6.3.4 モニュメント・野外彫刻設置の条件と方向性 p.253
6.3.5 公衆トイレ等,建物条件と方向性 p.254
6.3.6 照明デザインの条件と方向性 p.255
6.3.7 バリアフリーへの条件と方向性 p.256
6.4 6章のまとめ p.257
第7章 ポケットパークの維持管理と方向性 p.263
7.1 住民参加型の管理の在り方 p.263
7.2 アダプトプログラムの動向と方向性 p.266
7.2.1 研究の背景と目的 p.266
7.2.2 全国自治体調査 p.267
7.2.3 住民参加型美化活動の実施状況について p.267
7.2.4 道路美化活動に対する自治体の評価 p.268
7.2.5 効果の分析と類型化 p.269
7.2.6 結論 p.271
7.3 管理主体と内容の類型化と評価、方向性 p.272
7.4 7章のまとめ p.274
第8章 まとめ p.276
8.1 ポケットパークの諸特性としての知見 p.276
8.2 ポケットパーク計画と設計への提言及び総括 p.288
8.3 ポケットパークの維持管理への提言及び総括 p.291
謝辞

 市街地の快適性や景観の向上に身近なオープンスペースの存在が重要視されてきた。オープンスペースとしての公園や広場は法的に位置付けられ,都市計画目標の基に整備されてきたが,ポケットパークの名称で代表される小広場空間は法的に位置付けられず,定義もあいまいなまま,わが国でも増加した。
 1967年に米国ニューヨーク市で開設されたPALEY PARKが原型とされるベストポケットパークが日本にも移入され,ポケットパークと名称が短縮され,特に1980年代以降に顕著に普及した。市街地や住民の用,憩,美に役立つとされる反面,設計や管理上の問題も有り成功例とは言えないものも指摘されてきた。一方,公園や広場,住宅団地のコモンスペースの研究は既に多くが成され蓄積も豊富であるが,ポケットパーク的空間を扱った研究は歴史もまだ浅いこともあり,非常に数が少なく,公開空地や東京の震災復興橋詰広場の研究にとどめるに過ぎない。しかし,手軽に建設されうることなどから,現実にはまちづくりや様々な環境デザインでポケットパ一クが採用されることが多く未だ増加傾向にある中で,ポケットパークの学術的体系化および評価等を明らかにし,満足度と効用性の高いポケットパークの,計画と管理の基本的条件と方向性を示していくことが求められる。
 そこで本研究は,ポケットパークを「市街地や集落内で公開利用可能な,緑やベンチなど何らかの機能を持った道路と接した小広場空間」と定義した。都市公園法の街区公園では面積標準を2500平方メートルと位置付けており,国庫補助事業の最低面積が500平方メートル以上であることから,小広場空間の最大限面積範囲を500平方メートルと位置付けた。現実には500平方メートル以下が最も多いが,500平方メートルを超えるものもポケットパーク的空間と位置付けている自治体があり,約1000平方メートル以下の日本全国のポケットパークを可能な範囲で収集し,各種調査,評価及び分析を行うことによって,ポケットパークの動向,事例評価,空間特性,類型化,行政住民や利用者評価,などを明らかにしてポケットパークの計画構成などの体系化を図るとともに,計画と管理を行っていくための基本的条件と方向性を明らかにすることを目的とした。
 本研究は,第1章から第8章で構成される。以下に,各章の概要と得られた知見を述べる。
 第1章 序論では,研究の背景として都市計画や街づくりの中で小広場空間の計画や採用が増え,計画論の必要性が高まっている割には既往研究が少ないことを指摘した。ポケットパークの定義を設定し,体系化と計画方法論の構築による市街地の快適性向上,憩いやコミュニテイの場の確保,景観の向上が図れるといった研究の意義,西欧の広場,都市の自由空間,東京の震災復興橋詰広場などの既往研究の整理を行い,研究の目的と方法,論文の構成を示した。
 第2章では,ポケットパークの経緯と動向,制度体系及び事例分析と題し,ニューヨーク市でのポケットパークが生まれる経緯と動向,わが国での国レベルでの補助事業から自治体の単独事業等普及に至る動向,都市計画等に置けるポケットパークの位置付け、ポケットパークの事例評価として,東京,大阪,名古屋の三大都市圏,政令指定都市の神戸や,静岡,郡上八幡,高山市、山口市などの地方中小都市,町レベルのものまで代表的な自治体ごとに取り上げた。ポケットパークによるまちづくりの仕掛けや手法の構築,民有地の活用,空地の暫定利用,自治体の文化や個性の表現として活用されていることが明らかになった。又事例の類型化や諸特性についても言及した。
 第3章では,ポケットパークの立地構成と空間特性分析と題し,全国のポケットパークのデータを,規模や形態,設置場所や整備内容など空間特性を中心に分析することにより市街地内での立地モデル図を示し,ポケットパークを公共用地と公開空地(民有地)に大別し,それぞれ道路や河川空間など,民間の提供する公開空地などの種類を体系化して説明した。また,ポケットパークの接道数と形態に分けて類型化し,それぞれの特徴を明らかにした。空間や機能構成の特徴も考察した。
 第4章では,ポケットパークの利用と管理から見た事例評価と題し,全国のポケットパークを有する自治体にアンケート調査を行うことで利活用の状況や計画管理の実態を明らかにし行政評価を行った。又,山口県下各都市や山口市を事例とした利用実態,利用者及び周辺住民の意見を収集し,使われ方並びに利用評価を行うと共に管理者評価も行った。これらから住民参加の有効性及び計画と管理の方向性への基本的知見が考察された。
 第5章では,ポケットパークの必要性と機能性と題して、自治体へのアンケート調査やポケットパークの関係者からの意見を元に,ポケットパークの必要性の論理や,ポケットパークの必要性と機能性を行政と住民意識から明らかにした。また,必要性から見たポケットパーク制度の法的位置付けの方向性を明らかにした。
 第6章では,ポケットパークの計画条件と方向性と題し,それぞれの基本条件を整理した。住民参加型ポケットパークの計画の動向と管理の有り方や,演習活用法と言う教育方法を環境デザインに取り入れる方法の実証を行ない,住民参加型での計画の有効性を示した。また,ポケットパークの施設構成の条件と題して,行政や関係者のヒアリング調査を参考にして,舗装・下地デザイン,植栽,ストリートファニチャー,モニュメント・野外彫刻,トイレ,照明デザイン,バリアーフリーの基本的な計画条件と方向性を明らかにした。
 第7章では,ポケットパークの維持管理と方向性と題し,住民参加型の管理の有り方やアダプトプログラムの動向と評価,管理主体や内容の類型化と方向性なども示した。
 第8章では、結論としてポケットパークは市街地整備において必要であり,地元の住民参加で計画・管理が行われることが有効とした。総括として各章で明らかにしたことの整理と,ポケットパークの設計と管理への提言を整理し,今後、検討されるべき研究の課題を示した。

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