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A study on thermal countermeasures for cutting material with low thermal conductivity (難削材加工のための切削発熱対策に関する研究)

氏名 YE HTUT SOE
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第627号
学位授与の日付 平成24年8月31日
学位論文題目 A study on thermal countermeasures for cutting material with low thermal conductivity (難削材加工のための切削発熱対策に関する研究)
論文審査委員
 主査 教授 田辺 郁男
 副査 教授 柳 和久
 副査 教授 福澤 康
 副査 教授 明田川 正人
 副査 准教授 磯部 浩巳

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Table of Contents page
Chapter 1: Introduction p.1
 1.1 Difficult to cut materials and their classification p.1
 1.2 The effect of difficult to cut material on cutting process p.2
 1.3 The essentialness of difficult to cut material and the problem on the tool tip temperature p.4
 1.4 Conventional counter measures for cutting difficult to cut materials p.5
 1.5 Purpose of the research and composition of thesis p.8
Chapter 2: Development of quick calculation method for tool temperature and optimum cutting condition p.12
 2.1 Introduction p.12
 2.2 Investigation of difficulty for cutting difficult to cut materials p.13
 2.2.1 Combination of work piece, cutting tool type and analysis condition p.13
 2.2.2 Result of cutting simulation analysis p.15
 2.2.3 Investigation of difficulty for cutting of difficult to cut materials p.19
 2.3 Investigation of optimum cutting condition by calculation p.21
 2.3.1 Explanation of calculation method for optimum cutting condition p.22
 2.3.2 Calculation of tool tip temperature using proposed method p.24
 2.3.3 Investigation of the stress analysis on rake face of the cutting tool p.27
 2.4 Experiment for tool life and tool temperature p.29
 2.4.1 Experimental setup p.30
 2.4.2 Results of the experiment p.33
 2.5 Conclusion p.38
Chapter 3: Prediction of tool temperature using neural network for machining materials with low thermal conductivity p.39
 3.1 Introduction p.39
 3.2 The algorithm of the method p.40
 3.3 The structure of inverse analysis model of neural network and the calculation of optimum cutting speed p.41
 3.3.1 The illustration of the objected cutting process p.41
 3.3.2 The structure of neural network model p.42
 3.4 Construction of teaching data using FEM and training process p.44
 3.5 Calculation of cutting speed using neural network p.49
 3.6 Modification for localized individual machines p.51
 3.7 Experiment for measuring tool tip temperature p.54
 3.8 Conclusion p.56
Chapter 4: Development of cutting technology under strong alkaline water with micro bubbles p.57
 4.1 Introduction p.57
 4.2 The corrosion resistance of amaterials in strong alkaline water p.57
 4.3 Development of cutting technology under strong alkaline water p.61
 4.3.1 Experimental setup p.61
 4.3.2 Development of cutting tool for improving cooling efficiency p.62
 4.4 Improvement of evaporation rate of water using air bubble and micro bubble p.66
 4.5 Experiment for measuring tool tip temperature p.69
 4.5.1 Measurement of temperature at the tool tip p.69
 4.6 Experiment for tool life and surface roughness p.71
 4.7 Consideration for the impacts on environment p.73
 4.8 Conclusion p.76
Chapter 5: Conclusion p.77

難削材は,航空宇宙産業,原子力産業,海洋開発産業,医療産業などの先端技術産業界では,高強度,耐熱性,耐食性などの性能を有する構造用材料として広く利用されている.また,日本国内の産業における成熟化とグローバル的な競争力の進展のために,その活用がより求められている.具体的には,グローバル化により製造・加工の拠点が海外移転されつつあり,その対策として,日本国内のものづくりの競争力を高めるため,一般の工業用・産業用製品においても高強度・高品質な材料を用いて付加価値の高い製品を作ろうとする傾向になってきている.それらの材料の多くは難削材になりつつある.つまり国内製造業の国際競争力強化のために,難削材の加工,適用が必要不可欠な状況である.主な難削材の使用例としては,近年,チタン合金やニッケル基合金などがそれらの高強度,耐熱性,耐食性などの特性を持つ,高温下でも安定強度が得られることから,これまで航空宇宙機器材料として使用するため,容易かつ高精度にこれらを加工する方法が要求されている.しかし,これらの材料は低熱伝導特性から切削で生じる熱的負荷の多くを工具のみに負担させ,その結果,工具はきわめて多大な熱影響を受け,工具寿命がきわめて短命になることが,大きな問題として挙げられる.そのため,これらの難削材を切削加工するために効率的な工具温度対策することが望まれている.
そこで,本研究では,低熱伝導特性を有するために難削材とされるチタン合金,ニッケル基合金などを高効率に加工するために,工具温度の簡易計算方法,管理方法,最適加工条件の把握,新しい強制冷却方法を開発,評価することを目的とする.

本論文は、「A study on thermal countermeasures for cutting material with low thermal conductivity (難削材加工のための切削発熱対策に関する研究)」と題し、5章より構成されている。本論文の内容に関して,各章ごとに以下に説明する.

第1章「緒論」では,研究の背景,目的,関連する従来の研究について説明し,難削材加工のための切削発熱対策の必要性,有効性について述べている.

第2章「工具温度上昇と最適切削条件の簡易推定ソフトウエアの開発と評価」では,切削理論を用いて切削発熱量,工作物,切りくず,工具へ各熱影響を計算し、工具温度を本来の切削性能が発揮できる適正値に維持するための最適加工条件を計算するソフトウエアを開発し,実験とFEM解析でその計算精度評価をして,それが難削材加工時の最適加工条件計算用として実用可能であるとの評価した.このことより,難削材料加工時の工具への定量的な熱影響をきわめて迅速・容易に把握でき、生産性の向上は望めないのもも,現状でできるベストの加工条件を設定できる手法を提案した.

第3章「低熱伝導材料加工のためのニューラルネットワークの逆解法を用いた温度管理」では,難削材料切削データを用いて,まず,さまざまな加工条件とそのときの工具温度経過の関係を表現できるニューラルネットワークを構築した後,つぎに、それをニューラルネットワークの逆解法用のツールとして使用し,事前にNCプログラムを先読みし,工具が本来の性能を発揮できる適正温度値に維持できるように最適加工条件を計算し,自動的にNCプログラムを修正するシステムを開発した.これにより,難削材をNC制御で自動加工する際に,本手法によってNCプログラムを自動修正が行われ,常時適正温度値状態で工具を使用することが可能になった.また,これに関して,実験によって本手法が十分な効果と実用性があることを確認した.

第4章「マイクロバブルを含有した強アルカリ水中切削技術の開発」では,まったく新しい加工のコンセプトとして,金属の耐食性を維持しつつ,きわめて大きな冷却能力を有するマイクロバブルを含有した強アルカリ水中に工作物を完全に浸漬させ工作物の全周囲から強制冷却をおこなう技術を開発した.ここでは,気化熱冷却効果によって,大きな強制冷却能力を発揮するためのマイクロバブルの仕様を明らかにし,従来の強制冷却を使用した場合の2.4倍の強制冷却能力が確認できた.しかも,簡単なLCA評価によって,本手法が環境保全効果も発揮できる実用的な難削材切削技術であることを明らかにした.

第5章「結論」では,本研究で得られた結果をまとめた.

以上のように,本研究によって,難削材料を加工する際に,事前に最適加工条件を迅速・容易に推定する手法,事前にニューラルネットワークの逆解法を用いてNCプログラムを最適加工条件に自動修正するシステム,高効率な強制冷却技術をそれぞれ開発し,これらの開発が高品位な工業製品の製作に寄与できることを明らかにした.このように,開発した難削材加工のための切削発熱対策は工業的に有効であった.

本論文は,「A study on thermal countermeasures for cutting material with low thermal conductivity (難削材加工のための切削発熱対策に関する研究)」と題し,5章より構成されている.
第1章「緒論」では,研究の背景,目的,関連する従来の研究について説明し,難削材加工のための切削発熱対策の必要性,有効性について述べている.
第2章「工具温度上昇と最適切削条件の簡易推定ソフトウエアの開発と評価」では,工切削理論を用いて切削発熱量とその熱影響を計算し,工具温度を本来の性能を発揮できる適正値に維持するための最適加工条件を計算するソフトウエアを開発し,実験とFEM解析でその計算精度評価をして,それが実用可能であると評価した.このことより,難削材料加工時の工具への定量的な熱影響をきわめて迅速・容易に把握できる手法を提案した.
第3章「低熱伝導材料加工のためのニューラルネットワークの逆解法を用いた温度管理」では,難削材料切削データを用いて,まず,加工条件と工具温度の関係のニューラルネットワークを構築した後,つぎに,そのニューラルネットワークの逆解法を用いて事前にNCプログラムを先読みし,工具が本来の性能を発揮できる適正値に維持するための最適加工条件を計算し,自動的にNCプログラムを修正するシステムを開発して,実験によって本手法が十分な効果と実用性があることを確認した.
第4章「マイクロバブルを含有した強アルカリ水中切削技術の開発」では,金属の耐食性を維持しつつ,きわめて大きな冷却能力を有するマイクロバブルを含有した強アルカリ水中に工作物を完全に浸漬させ工作物の全周囲から強制冷却を行う技術を開発した.これにより,従来冷却の2倍以上の冷却能力を有し,しかも,環境保全効果も発揮できる実用的な難削材切削技術が開発できた.
第5章「結論」では,本研究で得られた結果をまとめた.
以上のように,本研究によって,難削材料を加工する際に,事前に最適加工条件を迅速・容易に推定する手法,事前にニューラルネットワークの逆解法を用いてNCプログラムを最適加工条件に自動修正するシステム,高効率な強制冷却技術をそれぞれ開発し,これらの開発が高品位な工業製品の製作に寄与できることを明らかにした.よって,本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める.

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