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高磁場の粒子配向セラミックス製造への応用

氏名 牧谷 敦
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第399号
学位授与の日付 平成19年3月26日
学位論文題目 高磁場の粒子配向セラミックス製造への応用
論文審査委員
 主査 教授 植松 敬三
 副査 教授 高田 雅介
 副査 教授 小松 高行
 副査 教授 齋藤 秀俊
 副査 助教授 内田 希

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第1章 緒論 [p.1-p.28]

 1.1. 緒言 p.1
 1.2. 粒子配向セラミックスの概要 p.2
 1.2.1 粒子配向セラミックスの既往の研究 p.2
 1.2.2 粒子配向構造の評価技術 p.9
 1.3 本研究の目的 p.11
 1.4 本論文の構成 p.11

 参考文献 p.13
 図表 p.19

第2章 偏光顕微鏡観察による粒子配向評価法の検証 [p.29-p.49]

 2.1 緒言 p.30
 3.2 実験方法 p.30
 3.3 結果及び考察 p.31
 3.4 結言 p.35

 参考文献 p.36
 図表 p.38

第3章 強磁場成形による粒子配向アルミナの作製と評価 [p.50-p.82]

 3.1 緒言 p.51
 3.1.1 強磁場プロセスんにおける磁気科学の基礎 p.51
 3.2.1 成形体の粒子配向の磁束密度依存性 p.52
 3.1.3 配向速度 p.54
 3.2 実験方法 p.54
 3.3 結果及び考察 p.55
 3.4 結言 p.58

 参考文献 p.60
 図表 p.62

第4章 強磁場成形による粒子配向Bi4Ti3O12の作製 [p.83-p.108]

 4.1 緒言 p.84
 4.2 実験方法 p.85
 4.3 結果及び考察 p.86
 4.4 結言 p.89
 参考文献 p.91
 図表 p.92

第5章 強磁場成形のビスマス層状構造強誘電体及びペロブスカイト型強誘電体への応用 [p.109-p.129]

 5.1 緒言 p.110
 5.1 ビスマス層状構造強誘電体への強磁場成形プロセスの適用 p.111
 5.2.1 実験方法 p.111
 5.2.2 結果及び考察 p.111
 5.3 ペロブスカイト型強誘電体への強磁場成形プロセスの適用 p.112
 5.3.1 実験方法 p.113
 5.3.2 結果及び考察 p.113
 5.4 結言 p.114

 参考文献 p.116
 図表 p.117

第6章 回転磁場による粒子配向セラミックスの作製 [p.130-p.159]

 6.1 緒言 p.131
 6.2 c軸配向酸化亜鉛の作製 p.131
 6.2.1 実験方法 p.132
 6.2.2 結果及び考察 p.132
 6.2.3 まとめ p.134
 6.3 c軸配向KSr2Nb5O15の作製 p.135
 6.3.1 実験 p.135
 6.3.2 結果及び考察 p.135
 6.3.3 まとめ p.137
 6.4 結言 p.137

 参考文献 p.138
 図表 p.140

第7章 強磁場成形プロセスの今後の展望 [p.160-p.176]

 7.1 緒言 p.161
 7.2 強磁場成形プロセスにおけるバインダー添加の影響 p.161
 7.2.1 実験方法 p.162
 7.2.2 結果及び考察 p.162
 7.2.3 まとめ p.163
 7.3 強磁場プロセスのテープ成形プロセスへの展開 p.164
 7.3.1 実験方法 p.164
 7.3.2 結果及び考察 p.164
 7.3.3 まとめ p.165
 7.4 結言 p.165

 図表 p.166

第8章 結論 [p.177-p.180]

発表論文一覧 p.181

謝辞 p.185

 本研究は、10T級の高磁場中で成形を行なう事による反磁性体の粒子配向セラミックスの開発及び偏光顕微鏡観察による粒子配向評価法の定量的な有効性を実証する事を目的としている。
 第1章「緒論」では粒子配向セラミックスに関する既往の研究と既往の粒子配向評価技術について課題点を整理した上で、強磁場成形プロセスの特徴及び現在の研究状況と粒子配向評価法としての偏光顕微鏡観察法について示し、本論文の目的を記している。
 第2章「偏光顕微鏡観察による粒子配向評価法の検証」では、偏光顕微鏡観察による定量的な成形体の粒子配向評価法を示し、その有効性を検証した。成形体段階の粒子配向は微弱であり、従来の方法では評価が困難な場合が多い。偏光顕微鏡観察による粒子配向評価法は結晶の光学的な異方性を利用し、微弱な粒子配向も検出可能である。配向度は測定された複屈折率差と単結晶の複屈折率差の比として定義した。偏光顕微鏡観察において、成形体のレタデーションは成形体を構成している粒子のレタデーションの総和である事を仮定している。この仮定について実験的検証を行なった。高配向成形体について、配向分布をX線回折法のロッキングカーブから測定した。その配向分布から構成粒子のレタデーションを算出し、成形体のレタデーションを概算した結果、計算値と実測値は一致した。この事から、成形体のレタデーションは構成される粒子のレタデーションの総和である事が実証できた。偏光顕微鏡観察法は成形体の粒子配向評価法として適切であり、強磁場成形プロセスを理解する上で有効な評価法である事を示した。
 第3章「強磁場成形による粒子配向アルミナの作製と評価」では、アルミナをモデル材料として、強磁場成形において作製条件が配向度に与える影響について検討した。アルミナ結晶はχa<χc<0であり、c軸が磁場方向に配向する。これまで、印加磁束密度、原料粒径、スラリーの固体含有率等のプロセス因子と成形体配向度の関係は未解明であった。配向評価法として偏光顕微鏡観察法を用いる事により、本研究ではじめて、作製条件と成形体配向度の関係を明らかにした。はじめに、成形体配向度の磁束密度依存性はLangevinの理論を用いて導出できる事を示した。希薄系スラリーから作製した成形体の配向度を実測した結果、印加磁束密度と伴に増加し、概ねLangevinの理論に従う事が示された。成形体の配向度は原料粒径が大きい程高く、スラリーの固体含有率の増加と伴に配向度は減少した。スラリーの粘度と伴に成形体配向度は直線的に減少し、粒子間相互作用が磁気配向を阻害している事が示された。焼成に伴い配向度は向上し、微粒子程、著しく配向度は向上した。焼結体の微構造は焼結の最終段階で異方的な構造に成長した。高配向焼結体を得るためには、原料に微粒子を用いて焼成に伴う配向構造の発達を促進させる事も重要である事が示された。
 第4章「強磁場成形による粒子配向Bi4Ti3O12の作製」では、強磁場成形をBi4Ti3O12に適用し、強磁場成形法が圧電材料の粒子配向に有効である事を実証した。Bi4Ti3O12は代表的なビスマス層状構造強誘電体であり、結晶方位により異方的特性を示し、a,b軸方向で高い強誘電性を示す。強磁場成形により配向性Bi4Ti3O12多結晶体の作製を行なった結果、磁場方向にb軸が配向したBi4Ti3O12多結晶体の作製に成功した。
 第5章「強磁場成形のビスマス層状構造強誘電体及びペロブスカイト型強誘電体への応用」では、ビスマス層状構造及びペロブスカイト型強誘電体に強磁場成形を適用し、本方法の圧電材料系に対する汎用性を実証した。CaBi4Ti4O15,BaBi4Ti4O15とチタン酸バリウム,ニオブ酸カリウム,Pb(Zr0.52 Ti0.48)O3について粒子配向の効果を検討した。その結果、CaBi4Ti4O15及びBaBi4Ti4O15について、それぞれ[0k0]配向、[hk0]配向体の作製に成功した。チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム、Pb(Zr0.52 Ti0.48)O3においても強磁場成形により、粒子配向が確認できた。ペロブスカイト型強誘電体は結晶のc軸が印加磁場方向に対して垂直になる傾向にある事が見出された。
 第6章「回転磁場による粒子配向セラミックスの作製」では、回転磁場成形を用いる事で、反磁性の強い結晶軸を配向させる方法について検討した。反磁性粒子を強磁場成形する場合、反磁性の最も強い結晶軸が印加磁場方向に対して垂直となり、その結果、反磁性の一番弱い結晶軸が印加磁場方向に配向する。回転磁場成形は、反磁性の最も強い結晶軸を配向させる技術であり、本方法をセラミックス作製に適用した。酸化亜鉛,KSr2Nb5O15はc軸方向で電気伝導、圧電定数が高い為、c軸配向体の作製が望まれている。酸化亜鉛, KSr2Nb5O15は一軸結晶であり、χa<χc<0である事が知られている。その為、通常の静置磁場成形では結晶のc軸を配向させる事は出来ないが、回転磁場成形法を用いればc軸配向体を作製可能である。酸化亜鉛及びKSr2Nb5O15で検討した結果、著しくc軸配向した多結晶体の作製に成功した。
 第7章では「強磁場成形プロセスの今後の展望」では、前章までの結果をまとめ、強磁場プロセスを実用プロセスへ展開させるための指針を示した。本プロセスを実用化するために、強磁場下でのテープ成形について検討した。バインダー等の助剤は適切な範囲内であれば配向度に大きな影響を与える事無く、添加可能である事が示された。強磁場下でテープ成形を行った結果は、配向グリーンシートの作製は充分可能である事が示された。
 第8章「結論」においては、各章の結言について総括している。

本論文は"高磁場の粒子配向セラミックス製造への応用"と題し、8章より構成されている。
 第1章「緒論」では、粒子配向セラミックスの製造法及び配向構造評価法に関する既往の研究と課題点を整理すると伴に、高磁場成形プロセスの特徴を示し、本研究の目的及び構成を述べている。
 第2章「偏光顕微鏡観察による粒子配向評価法の検証」では、偏光顕微鏡観察法が配向評価法として適切且つ有効な方法である事をX線回折法と比較・検討する事によって検証している。この評価法の背景にある仮定は複数の粒子を通過後の偏光のレタデーションが、各粒子を通過する際のレタデーションの和で与えられるというものである。この仮定を実証するため、配向分布をX線回折法のロッキングカーブから測定し、その配向分布から構成粒子のレタデーションを算出、試料のレタデーションを概算している。その結果、計算値と実測値が一致する事を示し、本手法が適切且つ有効な配向評価法である事を明らかにしている。
 第3章「強磁場成形による粒子配向アルミナの作製と評価」では、アルミナをモデル材料として、強磁場成形において作製条件が配向度に与える影響について検討している。これまで、印加磁束密度、原料粒径、スラリーの固体含有率等のプロセス因子と配向度の関係は未解明であった。配向評価法として偏光顕微鏡観察法を用いる事により、本研究ではじめて、作製条件と配向度の関係を明らかにしている。
 第4章「強磁場成形による粒子配向Bi4Ti3O12の作製」では、強磁場成形をBi4Ti3O12に適用し、強磁場成形法が圧電材料の粒子配向に有効である事を実証している。Bi4Ti3O12は代表的なビスマス層状構造強誘電体であり、結晶方位により異方的特性を示し、a,b軸方向で高い強誘電性を示す。強磁場成形によりBi4Ti3O12多結晶体の作製を行なった結果、磁場方向にb軸が配向したBi4Ti3O12多結晶体の作製に成功している。
 第5章「強磁場成形のビスマス層状構造強誘電体及びペロブスカイト型強誘電体への応用」では、ビスマス層状構造及びペロブスカイト型強誘電体に強磁場成形を適用し、本方法の圧電材料系に対する汎用性を実証している。
 第6章「回転磁場による粒子配向セラミックスの作製」では、回転磁場成形を用いる事で、反磁性の大きい結晶軸を配向させる方法について述べている。本方法をZnO, KSr2Nb5O15セラミックス作製に適用した結果、著しくc軸配向した多結晶体の作製に成功している。
 第7章では「強磁場成形プロセスの今後の展望」では、前章までの結果をまとめ、強磁場プロセスを実用プロセスへ展開させるための指針を述べている。本プロセスを実用化するためには強磁場下でのテープ成形について検討する必要がある事を指摘し、代表的な実験系において検討を行っている。その結果、配向グリーンシートの作製は充分可能である事を示している。
 第8章「結論」 では、本論文の内容を要約している。
 よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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