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強外場を利用した結晶配向型ガラスセラミックスの創製と機能発現

氏名 豊原 望
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第423号
学位授与の日付 平成19年3月26日
学位論文題目 強外場を利用した結晶配向型ガラスセラミックスの創製と機能発現
論文審査委員
 主査 教授 小松 高行
 副査 教授 高田 雅介
 副査 教授 野坂 芳雄
 副査 助教授 松原 浩
 副査 東北大学教授 藤原 巧

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主要緒言 p.1

1.外場印加及び評価の手法と理論
 1.1 外場印加による機能性の向上
 1.1.1 強磁場を用いた結晶配向と機能性の向上 p.5
 1.1.2 ポーリングによる強誘電結晶の分極軸の再配列と機能性の向上 p.12
 1.2 メーカーフリンジ測定を用いた第二次高調波測定と評価
 1.2.1 第二次高調波発生(Second Harmonic Generation) p.12
 1.2.2 メーカーフリンジ測定と解析手法 p.15
 参考文献 p.19

2.強磁場中で作製したBi2212超伝導ガラスセラミックスの結晶配向と超伝導特性
 2.1 緒言 p.21
 2.2 実験操作 p.21
 2.3 結果及び考察 p.24
 2.4 まとめ p.31
 参考文献 p.32

3.強磁場中での透明Ba2TiGe2O8ガラスセラミックスの創製と二次光非線形性
 3.1 緒言 p.34
 3.2 実験操作 p.34
 3.3 結果及び考察 p.37
 3.4 まとめ p.49
 参考文献 p.51

4.強磁場中での作製したBa2TiSi2O8系ナノ結晶化ガラスの結晶化挙動と二次光非線形性
 4.1 緒言 p.53
 4.2 実験操作 p.54
 4.3 結果及び考察 p.56
 4.4 まとめ p.67
 参考文献 p.69

5.熱ポーリングによるBaO-TiO2-SiO2系強誘電性ナノ結晶化ガラスの第二高調波強度の向上
 5.1 緒言 p.71
 5.2 実験操作 p.72
 5.3 結果及び考察 p.74
 5.4 まとめ p.82
 参考文献 p.83

総括 p.85

投稿論文及び受賞リスト p.87

謝辞 p.88

 ガラスは成形・加工性の容易さや高い光の透明性を有する等の利点を持つことから、特に光通信などのフォトニクス材料として広く活用される材料である。本研究室ではガラスを熱処理することによってガラス中に結晶を含有させ、結晶固有の機能性をガラスに付与したガラスセラミックスの創製を行っている。本研究ではガラスセラミックスの電気的、光学的機能性を向上させる手法としてガラスの結晶化過程及びガラスセラミックスに強磁場や高電場等の外場を印加して結晶配向や機能性発現軸の制御を試み、ガラスセラミックスの機能性の更なる向上を見出した。学位論文の構成を以下に示す。
 まず主要緒言においてガラス、セラミックス及びガラスセラミックスの特徴について記している。また強磁場や高電場等の外場を利用した材料の創製について紹介している。
 第一章では磁場による結晶配向や結晶化に及ぼす影響について、理論的な部分を紹介している。特に磁場による結晶化への影響についての報告例は酸化物材料については報告が無く、金属材料において報告されている事例を元に予想される影響を記している。また熱ポーリングによるガラスセラミックスの二次光非線形性の向上及び交流電場印加によるガラスセラミックスの二次光非線形の発現について記述している。最後に第二高調波発生の原理及び測定、非線形光学定数の算出について説明を行っている。
 第二章ではBi系(Bi2Sr2CaCu2Ox) 超伝導ガラスセラミックスの強磁場中での作製、及び結晶配向や超伝導特性の評価について記述している。10Tの強磁場中でBi2212結晶で構成される超伝導ガラスセラミックスを作製し、結晶配向及び超伝導特性への強磁場効果を抵抗測定、XRD測定及びSEM観察により調査した。強磁場下で作製したガラスセラミックスは無磁場下で作製した試料に比べて超伝導特性 (Tc, Jc) 及び常伝導状態での伝導度の向上を示した。Bi2212の板状結晶は印加した磁場の方向にc軸配向し、Bi2212結晶においてc軸に平行な方向の磁気感受率がc軸に垂直な方向の磁気感受率よりも大きいことを示唆した。
 第三章では30BaO-15TiO2-55GeO2透明表面結晶化ガラスの結晶化過程に10 Tの強磁場をガラス表面に垂直、平行に印加して表面結晶層を形成するfresnoite型Ba2TiGe2O8の結晶配向及び二次光非線形性への強磁場効果を調査した。その結果強磁場をガラス表面に垂直に印加した試料では表面結晶層のc軸配行と第二次高調波強度の向上が確認され、一方で強磁場をガラス表面に平行に印加した試料ではそれらの低下が確認された。本研究によって熱処理中の強磁場の印加は30BaO-15TiO2-55GeO2ガラスセラミックスの結晶配向及び光学特性の制御手法として有効であることが明らかとなった。
 第四章ではナノ結晶化ガラスの結晶化挙動に及ぼす強磁場効果に着目し、40BaO-20TiO2-40SiO2 ガラスの結晶化過程に10 Tの強磁場をガラス表面に垂直、平行に印加してガラス内に析出するfresnoite型Ba2TiSi2O8ナノ結晶の結晶化挙動や結晶配向、及び二次光非線形性への強磁場効果を調査した。その結果熱処理中に印加した磁場によって結晶の析出が抑制されることを酸化物セラミックスにおいて初めて確認した。また強磁場下760℃ 1時間熱処理を行った試料から得られたSH強度のフリンジパターンからBa2TiSi2O8結晶は磁場に対してc軸配行することが示唆された。本研究の結果から40BaO-20TiO2-40SiO2ガラスへの強磁場印加は結晶の粒子サイズ及び配向を制御する手法として期待できる。
 第五章では強誘電体であるfresnoite型Ba2TiSi2O8結晶を100-200 nmのナノサイズで析出させた40BaO-20TiO2-40SiO2ガラス中に、110-300℃で1時間8.8 kV/cmでの熱ポーリングを施して、得られたナノ結晶化ガラスについてSH強度への熱ポーリング効果を調査した。その結果ナノ結晶化ガラスのSH強度が増大し、熱ポーリングがSiO2系非線形光学結晶の異方的自発分極を増大するのに有効な手段であることを証明した。またBa2TiSi2O8結晶のキュリー点は160℃であり、キュリー点以上の温度でのみ熱ポーリングの効果が得られた為、電場によりナノ結晶の自発分極の増大が得られたことが示唆された。
 総括においては各章の結論について記述している。

 本論文は、「強外場を利用した結晶配向型ガラスセラミックスの創製と機能発現」と題し、5章より構成されている。
 緒言では、ガラス、セラミックス及びガラスセラミックスの特徴、強磁場や高電場等の外場を利用した材料創製について述べ、本研究の目的を明らかにしている。
 第1章「外場印加及び評価の手法と理論」では、結晶配向や結晶化に及ぼす磁場の効果を理論的観点から述べている。また、熱ポーリングによるガラスセラミックスの二次光非線形性の向上及び交流電場印加によるガラスセラミックスの二次光非線形の発現の基本的概念について述べている。第二高調波強度の測定法と算出方法についても説明している。
 第2章「強磁場中でのBi2212超伝導ガラスセラミックスの創製と超伝導特性」では、強磁場中(10T)での結晶化により得られたBi2Sr2CaCu2Ox (Bi2212)超伝導ガラスセラミックスの結晶配向や超伝導特性を評価し、強磁場下で作製したガラスセラミックスは無磁場下で作製した試料に比べて超伝導特性 (臨界温度、電流密度) 及び常伝導状態での伝導度が向上することを見出している。また、Bi2212板状結晶の磁場印加方向へのc軸配向を見出している。
 第3章「強磁場中での透明Ba2TiGe2O8ガラスセラミックスの創製と二次光非線形性」では、30BaO-15TiO2-55GeO2ガラスの結晶化挙動に対する強磁場(10T)印加の効果を調べ、強磁場をガラス表面に垂直に印加した試料ではBa2TiGe2O8表面結晶層のc軸配向と第二次高調波強度の向上を発見している。
 第4章「強磁場中で作製したBa2TiSi2O8ナノ結晶化ガラスの結晶化挙動と二次光非線形性」では、40BaO-20TiO2-40SiO2ガラスの結晶化過程に強磁場(10T)をガラス表面に垂直、平行に印加し、ナノ結晶化挙動に対する強磁場効果を明らかにしている。特に、磁場によって結晶核生成が抑制されることを酸化物ガラスにおいて初めて見出している。
 第5章「熱ポーリングによるBaO-TiO2-SiO2系強誘電性ナノ結晶化ガラスの第二高調波強度の向上」では、Ba2TiSi2O8ナノ結晶(100-200 nm)から成る透明なナノ結晶化ガラスに高電場下(8.8 kV/cm)で熱処理(110-300℃)を行い、熱ポーリングにより表面及び内部の両方において第二高調波強度が増大することを見出している。
 総括では、各章の結論を総括している。
 本論文は以上のように、ガラスの結晶化過程での強磁場印加やナノ結晶化ガラスへの高電場印加は結晶配向及び光非線形性の向上に有効であることを実証している。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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