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立方晶窒化ほう素の気相合成に関する研究

氏名 斎藤 秀俊
学位の種類 工学博士
学位記番号 博甲第27号
学位授与の日付 平成2年3月26日
学位論文の題目 立方晶窒化ほう素の気相合成に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 一ノ瀬 幸雄
 副査 助教授 弘津 禎彦
 副査 教授 岡本 祥一
 副査 教授 松下 和正
 副査 助教授 井上 泰宣

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目次
第1章 緒論 p.1
第2章 ダイヤモンドとcBNの特性比較及びその合成法
2-1 ダイヤモンドとcBNの特性比較 p.8
2-1-1 一般的性質 p.8
2-1-2 工具材料としての性質 p.11
2-1-3 電子材料としての性質 p.15
2-2 cBNの合法性 p.22
2-2-1 高圧法 p.22
2-2-2 気相法 p.24
2-3 まとめ p.29
第3章 熱活性型RFプラズマCVD法によるcBNの生成条件
3-1 緒言 p.35
3-2 実験 p.35
3-2-1 成膜装置 p.35
3-2-2 試料作成 p.37
3-2-3 膜構造の評価 p.38
(1)赤外線吸収スペクトルの測定 p.38
(2)電子顕微鏡用試料 p.40
3-3 実験結果および考察 p.40
3-3-1 膜構造のフィラメント温度依存性 p.40
3-3-2 膜構造のガス圧依存性 p.47
3-3-3 膜構造の高周波電力、バイアス電圧依存性 p.47
3-3-4 BN膜の堆積速度 p.50
3-3-5 SEMによる膜の観察 p.55
3-4 結言 p.57
第4章 気相中におけるcBNの生成要因
4-1 緒言 p.62
4-2 BH3NH3+H2を原料としたBN膜の作成 p.63
4-2-1 実験 p.63
4-2-2 結果及び考察 p.65
4-3 NaBH4+NH3、H3BO3+NH3を原料としたBN膜の作成とプラズマ分光法によるcBN生成要因の解明 p.73
4-3-1 実験 p.73
4-3-2 結果および考察 p.75
4-4 結言  p.88
第5章 t-BNの生成条件と原子状水素によるエッチング
5-1 緒言 p.91
5-2 t-BN膜の生成 p.91
5-2-1 実験 p.93
5-2-2 実験結果および考察 p.93
5-3 原子状水素の生成とt-BNエッチングの関係 p.106
5-3-1 実験 p.106
5-3-2 結果および考察 p.108
5-4 結言 p.119
付録5-1 t-BNのエッチングを行なう原子状水素の励起状態 p.120
付録5-2 エッチング速度および生成物の水素ガス圧依存性 p.122
第6章 るつぼ型CVD装置によるcBN単相膜の作成
6-1 緒言 p.126
6-2 実験 p.127
6-3 結果および考察 p.130
6-3-1 BH3NH3+H2を原料とした成膜 p.130
6-3-2 NaBH4+NH3を原料とした成膜 p.130
6-4 結言 p.139
第7章 プラズマジェット法によるcBNの合成
7-1 緒言 p.142
7-2 実験 p.142
7-2-1 実験装置 p.142
7-2-2 成膜実験 p.145
7-3 実験結果および考察 p.145
7-3-1 B2H6+NH3+H2系原料による成膜 p.148
7-3-2 B2H6+NH3+H2+Ar系原料による成膜 p.163
7-4 結言 p.176
第8章 原料圧力および温度相図におけるcBNの生成域 p.178
第9章 基板表面におけるcBNの生成要因
9-1 緒言 p.185
9-2 基板表面のきずがcBNの生成に与える影響 p.186
9-2-1 実験 p.186
(1)基板表面処理 p.186
(2)成膜実験 p.186
(3)膜の評価 p.186
9-2-2 結果および考察 p.188
9-3 cBN核成長 p.194
9-3-1 実験 p.195
(1)基板処理 p.195
(2)成膜実験および堆積物の評価 p.195
9-3-2 実験結果および考察 p.198
(1)ラマン散乱スペクトル p.198
(2)cBN種子結晶上へのBNの堆積 p.204
9-4 結言 p.212
第10章 結論 p.214
謝辞 p.219

 第1章 緒論
 閃亜鉛鉱型構造を持つ立方晶窒化ホウ素(cBN)は高硬度、高熱伝導率、広い禁制帯幅など、ダイヤモンドと同様の優れた特性を持つ新材料で、将来高温用半導体やヒートシンクなどへの応用が期待されている。このため、最近ダイヤモンドとともに気相法による合成が試みられているが、ダイヤモンドに比べてその報告例は少ない。そこで、本研究が良質なcBNの気相合成法の確立を目的とすることを明らかにし、さらに本論文の構成について述べた。
 第2章 ダイヤモンドとcBNの特性比較及びその合成法
 cBNの物理的特性はダイヤモンドに類似しているが、鉄系材料の切削に極めて有用であること、また半導体としてはp型、n型が容易に作成できること、パッケージ材としても有用であるなど工具材料、電子材料としてダイヤモンド以上の特性を有することを明らかにした。また、各種cBN合成法の特徴を挙げ経済的観点から安価なプロセスでcBNを合成できる気相法開発の重要性を示した。
 第3章 熱活性型RFプラズマCVD法によるcBNの生成条件
 通常のRFプラズマCVD装置の反応管内にタングステンフィラメントを装着し、プラズマと加熱による複合的な原料ガスの活性化を行い、cBN膜の作成を行った。その結果、(1)cBN生成に必要な条件はフィラメント温度1873K以上、高周波電力40W以上および93Pa以上500Pa以下のガス圧であること、(2)BN膜の堆積速度はガス圧とともに増大し、プラズマ励起やフィラメント過熱を行うことで遅くなること、(3)BN膜はコーン状に成長したcBNと、cBN柱の間隙を埋めるように成長したt-BNの領域に別れていることを示した。
 第4章 気相中におけるcBNの生成要因
 BH3NH3+H2、NaBH4+NH3およびH3BO3+NH3系原料を用いた熱活性型RFプラズマCVD法でBN膜を作成し、cBNの生成要因の検討を行った。その結果、(1)cBNの生成には、4配位構造が重要と思われるが、それがかならずしも十分条件とはならないこと、(2)NaBH4+NH3およびH3BO3+NH3系原料でもcBNが生成すること、(3)プラズマ分光法で気相中の励起種を同定した結果、18.8eV以上のポテンシャルエネルギーをもつ窒素分子イオンの存在がcBNの生成要因と考えられることを明らかにした。
 第5章 t-BNの生成条件と原子状水素によるエッチング
 B2H6+NH3+H2系原料を用いたRFプラズマCVD法で基板温度を変えてt-BN膜を作成したところ、基板温度の上昇に伴い六角網面の積層構造がhBN構造に近づくことを電子顕微鏡法により明らかにした。また、フィラメント加熱、プラズマ励起により解離した原子状水素はt-BNを選択的にエッチングし、BHやNH2などの分子として気相中に放出する作用をもつことを明らかにした。
 第6章 るつぼ型CVD装置によるcBN単相膜の作成
 熱フィラメントやプラズマがcBNの生成に不可欠であることから、原料がフィラメント近傍とプラズマ中を通過し基板に到達する構造のるつぼ型CVD装置を開発した。この装置により作成したBN膜中のcBN生成率は反応管型装置で作成したものより増加することがわかった。またcBN単相膜はNaBH4+NH3系原料で基板温度823K、高周波電力200W、ガス圧92Pa~130Paおよびフィラメント温度1973Kの条件で得ることができた。
 第7章 プラズマジェット法によるcBNの合成
 CDプラズマジェット装置を開発し、4~20kPaのガス圧下でアーク放電プラズマを発生させることに成功した。B2H6+NH3+H2(+Ar)系原料を用いてBN膜を作成した結果、B2H6+NH3+H2系原料では、t-BNとcBNの混在膜が堆積速度100μm/minの速度で堆積し、このガス圧範囲でcBNの生成を確認した。また、B2H6+NH3+H2系原料にArを添加した結果、Arのスパッタリングとプラズマ柱の拡散により、堆積速度は10μm/minに低下すること、cBNの生成率は基板温度1223K付近で最大になることを明らかにした。
 第8章 原料圧力および温度相図におけるcBNの生成域
 各種合成法における実験ガス圧に対するcBNの生成温度を圧力-温度相図(p-T)図上にまとめると、cBN-hBN合成境界線は合成方法にかかわらず一本の曲線で表現できることがわかった。
 第9章 基板表面におけるcBNの生成要因
 きずのある基板表面でのBN膜生成とcBN種子結晶上へのBN堆積を行ない、cBNの基板表面反応について検討を行なった。基板表面にきずをつけると初期核形成が容易になりcBNの生成率は増加することが判明し、cBNを生成するためには基板状にcBN核を形成する必要のあることがわかった。そこでcBNを合成する際、初期核として予め基板表面にcBN種子結晶を点在したところ種子結晶にcBNの生成がみられ、この方法がcBN生成量を増大するための有効な手段になりうることを示唆した。
 第10章 結論
 本研究において、cBNは熱活性型RFプラズマCVD装置、るつぼ型CVD装置、DCプラズマジェット法および反応性蒸着法により合成できることを示し、この中でるつぼ型CVD装置によりNaBH4+NH3系原料を用いてcBN単相膜の得られることを明らかにした。またcBNの生成モデルを提案し、cBNの生成要因がプラズマ励起および熱フィラメントによる原料の解離や励起および基板上での初期核形成にあることを明らかにした。

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