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新素材応用工作機械構造の熱変形特性に関する研究

氏名 田辺 郁男
学位の種類 工学博士
学位記番号 博乙第7号
学位授与の日付 平成2年3月26日
学位論文の題目 新素材応用工作機械構造の熱変形特性に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 高田 孝次
 副査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 服部 賢
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 東京工業大学 教授 伊東 誼

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目次
第1章 緒論
1-1 緒言 p.1
1-2 従来の研究状況と本論文の位置付け p.2
1-3 本論文の研究範囲 p.7
第2章 コンクリートの機械的・熱的特性
2-1 緒言 p.10
2-2 エポキシレジンコンクリートの機械的特性 p.11
2-2-1 密度と混合状態 p.11
2-2-2 ヤング率とポアソン比 p.17
2-3 エポキシレジンコンクリートの熱的特性 p.21
2-3-1 熱伝導率 p.21
2-3-2 比熱 p.24
2-3-3 線膨張率 p.26
2-4 各種コンクリートの機械的・熱的特性の比較 p.29
2-5 結言 p.31
第3章 コンクリート-鋼製複合構造体の基礎的熱挙動
3-1 緒言 p.32
3-2 工作機械構造材料としてのコンクリートの特徴 p.33
3-2-1 構造設計上の特徴 p.33
3-2-2 熱的挙動上の特徴 p.34
3-3 コンクリート-鋼製複合構造体の簡単なモデルによる熱挙動の実験的検討 p.38
3-3-1 実験装置 p.38
3-3-2 一様な熱流束に対する温度応答と熱変形 p.39
3-3-3 局所的な熱流束に対する温度応答と熱変形 p.44
3-3-4 断熱効果に伴う冷却の必要性 p.46
3-3-5 周期的に変動する熱源に対する温度応答 p.49
3-4 結言 p.51
第4章 コンクリートの断熱効果を利用した構造
4-1 緒言 p.52
4-2 断熱材として適切なエポキシレジンコンクリートの形状と寸法・並びにその設置場所 p.53
4-2-1 有限要素法解析を用いた考察 p.53
4-2-2 模擬実験によるエポキシレジンコンクリートの断熱効果の確認 p.58
4-3 主軸台とベッドの間に断熱材としてエポキシレジンコンクリートを挿入した複合構造形式の旋盤の熱挙動 p.62
4-3-1 複合構造形式の旋盤の基本的熱変形挙動 p.62
4-3-2 主軸台内の強制冷却の効果 p.66
4-4 結言 p.73
第5章 コンクリートの高熱慣性を利用した構造
5-1 緒言 p.74
5-2 簡易的な恒温室の室温変動に対する小径内面研削盤の熱挙動 p.74
5-2-1 簡易的な室温変動に対する鋳鉄ベッドとポルトランドセメントコンクリートベッドの熱挙動の比較 p.74
5-2-2 各ベッドを用いた小径内面研削盤の簡易的な恒温室の室温変動に対する熱挙動 p.86
5-3 一般的な機械工場の室温変動に対する小径内面研削盤の熱挙動 p.96
5-3-1 一般的な機械工場の室温変動に対する鋳鉄ベッドとポルトランドセメントコンクリートベッドの熱挙動の比較 p.96
5-3-2 各ベッドを用いた小径内面研削盤の一般的な機械工場の室温変動に対する熱挙動 p.99
5-4 内部熱源対策 p.101
5-5 結言 p.103
第6章 結論 p.104
謝辞 p.108
参考文献 p.109

 工作機械の設計においては、生産性向上と加工精度向上という相反する二つの要求を同時に満たすことが求められる。この問題に対する基本的な解答は熱変形の少ない工作機械を設計することであり、今日、工作機械の機能が急速に高度化している状況のもとで、この熱変形制御の問題が設計上の大きな、かつ、困難な課題として新たな対応をせまられている。殊に、構造材料の面で、従来の鋳鉄と鋼を主体とした構造では対応に限界があると考えられる。
 本研究は、鋳鉄・鋼類とは熱的特性の異なる新しい材料を工作機械構造にて適用することにより熱変形を抑制する設計法を提唱し、その有効性と具体的設計指針を明らかにすることを目的としており、以下の6章より構成されている。
 第1章「緒論」では、工作機械の熱変形とその制御方法に関する従来の研究を概観し、本研究の意義と位置付けを明らかにしている。工作機械の熱変形対策は、基本的には次の4項目に大別できる。すなわち、(1)熱的対称構造の採用など構造設計面からの対策、(2)発熱部の冷却、発熱量の低減など熱源自体に対する対策、(3)温度分布ないし熱変形の能動的補正など制御面からの対策、(4)構造材料からの対策、である。
 本章ではまず、従来の研究の多くは、鋳鉄ないし鋼製の構造を対象として上記(1)~(3)の方法を追求したものであるが、近年の高機能工作機械に対してはいずれも十分な対策とはなり得ず、(4)の構造材料面からの対策が重要であることを指摘している。そのうえで、工作機械構造用材料として、各種セラミックス、FRP、コンクリート等を熱的・機械的特性ならびに経済性の観点から比較検討し、現時点では、レジンコンクリートとセメントコンクリートが最も有望な素材であることを述べている。
 第2章「コンクリートの機械的・熱的特性」では、コンクリート構造工作機械を設計する際に必要となる基礎データを提供している。一般構造材料として既に実績のあるセメントコンクリートについてはその特性が明らかにされているが、レジンコンクリートについては系統的なデータが欠如しているため、本章では、特にレジンコンクリートの機械的・熱的特性を中心に検討している。その結果、レジンコンクリートの諸特性は結合材と細骨化、粗骨材の配合割合に極めて強く依存することを明らかにすると同時に、ヤング率、線膨張率、熱伝導率、密度等の基本量を配合成分から推定する実用的なモデルを提示している。これにより、工作機械構造用としては望ましいレジンコンクリートを設計することが可能となった。
 第3章「コンクリート-鋼製複合構造体の基本的熱挙動」では、互いに機械的・熱的特性が大きくコンクリートと鋼とを複合化した構造に生じる温度分布、熱変形などの熱的挙動について実験と数値解析の両面から詳細に検討し、コンクリートを工作機械構造に適用する場合の設計指針を得ている。まず、コンクリート構造の特徴として、工作機械として必要な剛性を確保するためにはほとんど中実な構造をせざるを得ず、このことが従来の鋳鉄・鋼構造とは異なる熱的挙動を示す要因の一つとなることを示し、次いで、コンクリートを効果的に利用するには、その高い断熱性を活用する設計と大きな熱慣性を活用する設計とは明確に区別されるべきことを明らかにしている。
 第4章「コンクリートの断熱効果を利用した構造」では、第3章で示した複合構造設計の具体的な適用の一例として汎用旋盤を取りあげている。汎用旋盤は強い熱源が主軸台内部に集中しているのが特徴で、この内部熱源に起因するベッドの熱変形を抑制することが目的である。ここでは、共に鋼製の主軸台とベッドとの間にコンクリート材を挿入し、主軸台からベッドへの熱の流れを抑制することにより、極めて効果的にベッドの熱変形が抑制され、安定した加工精度を保持できることを実証している。実験例では、コンクリートを採用した構造では従来構造に比べ、主軸中心線と縦送り案内面との垂直相対変位ならびに相対的傾きが共に約1/2に改善された。さらに、主軸台内の熱源に対して冷却対策を講じた場合には上記の相異がより顕著になることを示し、第3章で示した複合構造設計の妥当性を確認している。
 第5章「コンクリートの高熱慣性を利用した構造」では、第3章で示した複合構造設計のもう一つの例として精密工作機械に対するコンクリートの適用を試みている。精密工作機械の熱変形に対しては、温室変動が相対的に大きな影響を与えることに注目し、ここでは、例として小型内面研削盤を取りあげ、熱慣用の大きなコンクリートベッドを採用した場合と従来の鋳鉄ベッドを採用した場合の周期的室温変動(空調された工場内の室温変動に対応)に対する定常熱変形を実験と数値解析の両面から比較検討している。その結果、コンクリートベッドをさいようしたものは従来のものより熱変形が2/3~1/2に減少することが示され、再び複合設計の有効性を確認している。精密加工工場の空調には多大の費用を要することを考えると、精密工作機械に対する新素材の適用は特に重要である。
 第6章「結論」では本研究の総括を行い、新素材を取り入れた複合構造設計の考え方が新しい工作機械構造設計法となり得ることを結論づけている。

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