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Studies on Enzymology and Molecular Biology of Novel Dipeptidyl Peptidases in Microorganisms

(微生物の新規ジペプチジルペプチダーゼに関する酵素科学的および分子生物学的研究)

氏名 小笠原 渉
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第130号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文題目 Studies on Enzymology and Molecular Biology of Novel Dipeptidyl Peptidases in Microorganisms (微生物の新規ジペプチジルペプチダーゼに関する酵素科学的および分子生物学的研究)
論文審査委員
 主査 教授 森川 康
 副査 助教授 岡田 宏文
 副査 教授 三井 幸雄
 副査 教授 山田 良平
 副査 教授 福田 雅夫

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CONTENTS
General Introduction p.1
Synopsis p.22
Part I Screening and indentification of microorganisms having dipeptidyl aminopeptidase I-like activity p.30
Part II Purification and characterization of dipeptidyl peptidases from the selected microorganisms p.40
Chapter 1 Novel dipeptidyl aminopeptidases from microorganisms p.40
Chapter 2 Dipeptidyl aminopeptidase from Aureobacterium sp.WO26 p.87
Chapter 3 Other dipeptide-releasing enzymes from Pseudomonas sp.
 WO243-1 Dipeptidyl aminopeptidase IV from Pseudomonas sp.
 WO24 p.105
3-2 Dipeptidyl carboxypeptidase from Pseudomonas sp.WO24 p.127
Part III Screening and characterization of the genes encoding dipeptidyl aminopeptidases from Pseudomonas sp.WO24
Chapter 1 Isolation of the genes encoding dipeptidyl aminopeptidase BI,BII,BIII and IV from two genomic Libraries of Pseudomonas sp.WO24 p.148
Chapter 2 Sequencing,sequence analyzing and expression of the gene encoding DAP BI in Escherichia coli p.170
General Conclusion p.191
Publication List p.196

 タンパク質やペプチドをN末端側からジペプチド単位で切断するエキソ型のジペプチジルアミノペプチダーゼ(DAP)は、哺乳類において酵素化学的性質の違いから4種(DAPI~IV)に分類され、プロセッシングや細胞内タンパク質分解に関与する生理的に極めて重要な酵素であることが示唆されてきた。一方、微生物においてはDAP IVが知られているのみで、他のDAPの存在の有無については明らかにされていない。DAPかなぜジペプチド単位に切断するのかの切断機構と構造との相関もまた明らかとされていないが、この切断機構の解明はプロテアーゼの切断様式の最も大きな分類であるエンド型とエキソ型を決定づける因子の解明の手がかりとなることが期待される。微生物由来の酵素は哺乳類のものと比べ、精製,遺伝子の取り扱いおよび大量生産が比較的容易であることから、X線結晶構造解析による三次元構造を検討しうる可能性も高い。これらの点から、微生物DAPの研究は今後DAPの生理的役割および切断機構の解明を可能にすると期待されている。
 本論文は、こりまで明らかにされていない微生物DAPの全体像の把握およびDAPの切断機構解明の足がかりとなることが期待される、微生物DAPの酵素科学的および分子生物学的性質を明らかにすることを目的としている。
 「General introduction」においてはプロテアーゼ研究全般からDAP研究の位置づけを明確にするとともに、研究課題を提示し本論文の意義について述べている。
 第1部では、これまで微生物で見出されていないDAP活性、特に哺乳類DAPの中で最も基質特異性の広いDAP1様活性を有する菌株を自然界からのスクリーニングし、得られた菌株の同定を行っている。Pseudomonassp.WO24株は他のスクリーニングされた菌株と比べ高いDAP I様活性を示し、エンドプロテアーゼ活性やアミノペプチダーゼ活性は僅かしか有していなかったことから、今後の微生物DAP研究の代表株とした。
 第2部は4章からなり、それぞれの章において第1部で得られた菌株からジペプチドを遊離する酵素群の精製と特徴を明らかにしている。第1章においてはPseudomonas sp.WO24株由来の3種のDAP(DAP BI,DAP BIIおよびDAP BIII)を見出したこと、さらに酵素化学的性質がこれまでに報告されている哺乳類および微生物DAPのいずれにも当てはまらない新規酵素であることを示している。第2章においてはAureobacterium sp.WO26株由来のDAP I様酵素(AuDAP)の存在と性質を明らかにし、本酵素が第1章で見出されたDAP B1と類似の酵素であることを明らかにしている。第1章と2章の結果から、微生物DAPは哺乳類DAPの分類に当てはまらないことが示唆された。さらに、Pseudomonas sp.WO24の粗酵素溶液から従来から知られているDAP IV活性およびC末端側からジペプチド単位で切断するジペプチジルカルボキシペプチダーゼ(DCP)活性も検出した。先の微生物DAPは哺乳類DAPの分類に当てはまらないという観点から、第3章ではこれらの酵素が既知のタイプに属するのか否かを検討している。第3-1章においてはDAP IVについて検討し、Pseudomonas属にDAP IVが存在することを初めて明らかにするととも、本酵素の性質はこれまでに報告されている典型的なDAP IVの性質と類似していることを述べた。第3-2章においてはDCPについて検討し、生成量および比活性が既知のどの菌株よりも高い値を有することを明らかにした。酵素化学的性質は報告されている他の菌株由来の酵素とほぼ同様であった。以上の結果から、本論文の第2部では、微生物においてDAP IV以外の酵素も多数存在し、微生物のDAPはDAP IVを除いて哺乳類DAPの分類とは異なる分類をすべきであることを初めて提案している。
 第2部で見出したDAP群の活性中心残基やそれらの属するプロテアーゼファミリーの決定を行うため、およびDAPの生理的役割や切断様式と構造の相関の解明の第一段階として、第3部はPseudomonas sp.WO24由来のDAP群をコードする遺伝子の解析について報告している。
 第3部は2章からなり、第1章においてはPseudomonas sp.WO24株の染色体DANのプラスミドおよびファージライブラリーを2種構築し、DAP BIとDAP IVをコードする遺伝子を大腸菌における発現をプレートアッセイにより検出する方法でプラスミドライブラリーからクローニングした。また、DAP BIIとDAP BIII遺伝子はファージライブラリーからプラークハイブリダイゼーションによりクローニングに成功している。第2章においては、DAP BIをコードする遺伝子の全塩基配列を決定し、その解析の結果相同性のある他のエンドプロテアーゼと比較し、それらの切断様式と一次構造の相違について言及している。また、大腸菌における発現酵素の性質についてネイティブ酵素と同じであることを明らかにしている。
 「General conclusion」においては本研究結果を総括し、今後期待されるDAP研究の展開について述べている。

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