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アスファルトの劣化促進と再生用添加剤の開発に関する研究

氏名 野村 健一郎
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第143号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文題目 アスファルトの劣化促進と再生用添加剤の開発に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 下村 匠
 副査 助教授 唐 伯明
 副査 長岡工業高等専門学校教授 佐藤 勝久

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目次
1章 序論
1.1 研究の背景 p.1
1.1.1 一般的背景 p.1
1.1.2 技術的背景 p.1
1.2 本研究の目的 p.3
1.3 本論文の構成 p.5
【参考文献】 p.8
2章 アスファルト混合物製造時のアスファルトの劣化の再現 p.10
2.1 緒言 p.10
2.2 既往の技術と問題点 p.10
2.2.1 混合物製造時の劣化を再現する混合物製造手法関連 p.10
2.2.2 アスファルト単体で混合物製造時の劣化を再現する手法関連 p.11
(1) 薄膜加熱試験 p.11
(2) 回転薄膜加熱試験 p.12
(3) 両試験結果の比較 p.12
(4) TFOTおよびRTFOTの問題点 p.12
2.3 研究の概要 p.13
2.4 使用材料 p.14
2.4.1 アスファルト p.14
2.4.2 骨材 p.15
3.4.3 アスファルト混合物 p.15
2.5 実験方法 p.16
2.5.1 プラントでの混合実験 p.16
2.5.2 混合物製造時の劣化を再現する混合物製造手法の検討 p.17
2.5.3 アスファルト単体での混合物製造時の劣化の再現 p.18
(1) AsIIのプラント混合での劣化状態の推定 p.18
(2) TFOT、RTFOT p.18
2.5.4 評価試験 p.19
(1) アスファルトの回収 p.19
(2) コンシステンシに関する試験 p.19
(3) 組成分析 p.19
1) カラムクロマトグラフィーによる組成分析 p.20
2) 化学沈殿法による組成分析 p.22
(4) 分子量分布の測定 p.24
2.6 実験結果および考察 p.25
2.6.1 プラント混合実験結果 p.25
(1) 回収アスファルトのコンシステンシ p.25
(2) 組成 p.26
(3) 分子量分布 p.28
2.6.2 アスファルト混合物製造時に生じる劣化の促進 p.29
(1) 混合物製造時の劣化を再現する混合物製造手法の検討 p.29
1) 回収アスファルトのコンシステンシ p.29
2) アスファルトの組成 p.30
3) アスファルトの分子量分布 p.30
4) 考察 p.30
(2) パグミルミキサで製造した混合物と縦型ミキサで製造した混合物性状 p.31
1) 実験項目 p.31
2) 実験結果 p.31
2.6.3 アスファルト単体での劣化の再現に関する検討結果 p.34
(1) アスファルトのコンシステンシ p.34
(2) 組成 p.37
(3) 分子量分布 p.40
(4) 考察 p.40
2.7 まとめ p.41
(1) 混合物製造時のアスファルトの劣化の実態 p.41
(2) 混合物製造時の劣化を再現する混合物製造手法 p.41
(3) アスファルト単体での混合物製造時の劣化を再現する手法 p.42
【参考文献】 p.43
3章 屋外で生じる混合物中のアスファルトの劣化の促進 p.44
3.1 序言 p.44
3.2 既往の技術と問題点 p.44
(1) アスファルト混合物での劣化促進 p.44
(2) アスファルト単体での劣化促進 p.44
(3) 問題点 p.45
3.3 研究の概要 p.46
3.4 実験方法 p.48
3.4.1 使用材料 p.48
(1) アスファルトおよびアスファルト混合物 p.48
3.4.2 アスファルト混合物の屋外曝露実験 p.49
3.4.3 アスファルト混合物の劣化促進 p.50
(1) アスファルト混合物の加熱劣化促進 p.50
(2) アスファルト混合物の60℃酸素恒温槽での劣化促進 p.50
3.4.4 アスファルト単体での劣化促進 p.52
3.4.5 評価のための試験 p.54
3.5 実験結果および考察 p.54
3.5.1 屋外曝露実験 p.54
(1) アスファルトのコンシステンシ p.54
(2) アスファルトの組成 p.55
(3) 回収アスファルトの分子量分布 p.58
3.5.2 劣化促進手法に関する実験結果 p.59
(1) アスファルト混合物の70℃での加熱劣化促進 p.59
1) アスファルトのコンシステンシ p.59
(2) アスファルト混合物の60℃酸素恒温槽での劣化促進 p.59
1) コンシステンシ p.59
2) アスファルトの組成 p.61
3) アスファルトの分子量分布 p.64
(3) RTFOTでの劣化促進 p.65
1) コンシステンシ p.65
2) アスファルトの組成 p.67
(4) PAV試験での劣化促進 p.70
1) アスファルトのコンシステンシ p.70
2) アスファルトの組成 p.70
3) アスファルトの分子量分布 p.73
3.6 まとめ p.74
(1) 屋外での混合物中のアスファルトの劣化の実態 p.74
(2) 混合物での劣化促進手法 p.74
(3) アスファルト単体での劣化促進 p.75
【参考文献】 p.77
4章 再生用添加剤の開発 p.79
4.1 緒言 p.79
4.2 既往の研究と問題点 p.79
4.2.1 わが国における再生用添加剤に関する研究 p.80
4.2.2 海外における研究 p.80
4.3 開発方針 p.80
4.3.1 Davidsonらの提案 p.81
4.3.2 Danningらの提案 p.81
4.4 再生用添加剤の試作 p.83
4.4.1 再生用添加剤のNとN/Pの最適な範囲の把握 p.83
(1) Nの量とN/Pを変化させた再生用添加剤の試作 p.83
(2) Nの量とN/Pを変化させて試作した再生用添加剤の再生効果 p.85
(3) 適当と考えられるNの量とN/Pの範囲 p.90
4.4.2 再生用添加剤のCRRの最適な範囲の把握 p.91
(1) CRRを変化させた再生用添加剤の試作 p.91
(2) CRRを変化させて試作した再生用添加剤の再生効果 p.92
(3) 再生アスファルトの耐熱性 p.96
(4) 適当と考えられるCRRの範囲 p.98
4.5 適当と考えられる再生用添加剤の組成 p.98
4.6 実用を目的とした再生用添加剤の試作 p.98
4.6.1 考慮した事項 p.98
4.6.2 試作再生用添加剤の性状 p.99
4.6.3 試作再生用添加剤の再生効果の確認 p.100
(1) 再生アスファルトの性状 p.100
(2) 再生混合物の性状 p.102
(3) 再生用添加剤の添加混合の形態の影響の確認 p.107
4.6.4 再生用添加剤#200で再生したアスファルトの劣化性状 p.108
(1) 評価方法 p.108
(2) 劣化による性状の変化 p.108
1) コンシステンシの変化 p.108
2) 組成の変化 p.109
4.7 まとめ p.112
(1) 最適なNの量とN/P p.112
(2) 最適なCRR p.112
(3) 実用化を目的に試作した再生用添加剤の適用性 p.112
【参考文献】 p.114
5章 開発した再生用添加剤の適用性 p.116
5.1 緒言 p.116
5.2 プラント再生への適用 p.116
5.2.1 課題 p.116
5.2.2 再生混合物の性状の確認 p.118
5.3 路上表層再生工法への適用 p.119
5.3.1 課題 p.119
5.3.2 路上表層再生機械の改良 p.120
(1) 添加装置の試作 p.120
1) 添加システムの試作 p.121
2) 速度検出器からの信号電流と散布量の関係 p.122
3) ノズルごとの散布量のばらつき p.123
(2) 混合装置の試作 p.124
1) ミキサの骨材分散能に関する実験 p.125
2) バインダの混合性の検討 p.126
5.3.3 再生用添加剤の混合性に関する実験 p.126
(1) 実験概要 p.126
(2) 評価 p.128
5.4 まとめ p.130
(1) プラント再生への適用性 p.130
(2) 路上表層再生工法への適用性 p.130
【参考文献】 p.131
6章 再々生用添加剤の開発 p.132
6.1 緒言 p.132
6.2 既往の技術と問題点 p.132
6.3 再生用添加剤#200および#50の再々生への適用性の確認 p.132
6.3.1 実験方法 p.132
6.3.2 実験結果 p.134
6.4 再々生用添加剤の試作 p.135
6.4.1 試作再々生用添加剤 p.137
6.4.2 再々生用添加剤の組成と再々生アスファルトのコンシステンシの関 p.138
(1) 試作再々生用添加剤の適用 p.138
(2) N量と再々生アスファルトの劣化性状 p.141
(3) 試作再々生用添加剤のN量と再々生アスファルトの伸度との関係 p.142
(4) P/Nと再々生アスファルトの伸度との関係 p.143
6.4.3 CRRと再々生アスファルトの劣化 p.144
6.4.4 再々生用添加剤として適すると考えられる組成 p.145
6.5 まとめ p.145
【参考文献】 p.146
7章 結論 p.147
謝辞 p.150

 昭和30年代には2万kmに満たなかったわが国の舗装道路は、平成6年には82万kmに達し、その後も年々増加を続けている。これにともない、道路舗装の補修工事が増大し、舗装発生材も増加の一途をたどり、その処分場の枯渇が深刻な問題となってきた。これを背景に、昭和45年以降、舗装の再生利用に関する技術開発が本格的に行われるようになってきた。
 さらには、資源の有効利用や地球環境保全の観点からも、舗装発生材を含む建設副産物のリサイクルへの要求が、年々高まつている。
 しかし、これまでの再生技術は、耐劣化性状を新規アスファルト混合物と同等にまで回復できるかが明確になっていないなど、更に検討を必要とする項目が残されている。
 本研究はこれらを踏まえ、アスファルト舗装発生材の有効利用を意図した、アスファルト混合物の再生について検討するものである。
 本研究では、まず、アスファルトの再生を研究する際に必要となるアスファルトの劣化促進方法を検討し、混合物製造時および舗設後に生じるアスファルトの劣化をほぼ再現できる劣化促進法を提案した。次いで、再生用添加剤の成分の働きに着目して組成を検討し、劣化したアスファルト混合物の品質を、新規アスファルト混合物と同等もしくはそれ以上にまで回復できる再生用添加剤を開発した。
 本研究では、第1章~第7章で構成される。以下に、各章の概要と得られた知見を述べる。
 第1章では、研究の背景として、舗装発生材の増加の実態およびアスファルト混合物の再生利用の必要性等を示すとともに、アスファルト混合物の再生を研究するにあたっては、アスファルトの劣化促進試験が必要となることを示し、研究目的を明確にしている。
 第2章では、まず、稼働中のアスファルトプラントで混合実験を行い、混合物製造時のアスファルトの劣化の実態を把握した。次いで、混合物製造時の劣化を再現する方法を検討した。この結果、(1)混合物では、室内パグミルミキサを用い混合時間を工夫とすることで、(2)アスファルト単体では、回転薄膜加熱試験の試験時間を80分から60分に短縮することで、アスファルトプラントでの劣化をほぼ再現できることが明らかになった。
 第3章では、先ず、アスファルト混合物の屋外暴露実験を行い、舗設後の混合物中のアスファルトの劣化の実態を把握した。次いで、舗設後のアスファルトの劣化を促進する方法を検討した。この結果、(1)混合物では、今回考案した60℃の酸素を満たした恒温槽内に混合物を静置する方法で、(2)アスファルト単体では、プレッシャエージングベッセル試験の加熱時間を工夫することで、舗設後の混合物中のアスファルトの劣化をほぼ再現できることが明らかになった。また、混合物製造時の劣化と舗設後の劣化の相違点として、組成および分子量の変化の違い等を明らかにした。
 第4章では、化学沈澱法により分別した5成分の構造比に着目し、再生用添加剤の組成と再生アスファルトおよび再生アスファルト混合物の性状の関係を検討した。この結果、成分の構成が再生能力と再生アスファルトの耐劣化性に影響することが明らかになった。ここでは、これらの結果を基に、新規アスファルトと同等のコンシステンシおよび新規アスファルトより優れた耐劣化性状が得られる再生用添加剤2種を試作した。1種はプラント再生を、もう1種はより低粘度化を図り、路上表層再生工法を対象としたものである。
 第5章では、第4章で試作した2種の再生用添加剤の実用化を目的に、アスファルトプラントおよび路上表層再生工法での適用方法を検討した。主たる検討内容は、前者ではバッチ単位での再生用添加剤の計量・添加方法、後者では施工速度に応じた再生用添加剤の連続定量添加方法および混合方法である。この結果、プラント再生および路上表層再生工法において、当該再生用添加剤を用いて再生した混合物が、新規アスファルト混合物とほぼ同等の性状となることが確認できた。
 第6章では、まず、第4章で試作した再生用添加剤の繰返し再生の適用性を確認した。この結果、2回目以降の再生では、耐劣化性状は新規アスファルトよりも優れるものの、コンシステンシのうち伸度が目標値を満足しないことが明らかになった。そこで、4章の検討結果を基本として、2回目以降の再生に適する再生用添加剤の組成を検討した。この結果、再生効果が最も優れる成分(耐劣化性は最も劣る成分)を増量することで、新規アスファルトと同等の耐劣化性状を確保しながら、再生を繰返したアスファルトの伸度を含むコンシステンシを、新規アスファルトと同等にできることが明らかになった。
 第7章では、本研究の結論を述べている。
 本研究の成果は、再生アスファルト混合物の品質向上を可能にするもので、アスファルト舗装発生材の有効利用に貢献できる。

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