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水路の蛇行に伴うせん断構造と大規模二次流れに関する研究

氏名 渡辺 勝利
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第96号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文の題目 水路の蛇行に伴うせん断構造と大規模二次流れに関する研究
論文審査委員
 主査 教授 福嶋 祐介
 副査 教授 早川 典生
 副査 教授 白樫 正高
 副査 助教授 陸 旻皎
 副査 助教授 細山田 得三

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 本研究の背景 p.1
1.2 本研究の目的と基本的立場 p.3
1.3 本論文の構成 p.4
第2章 壁乱流の縦断面せん断構造 p.5
2.1 緒言 p.5
2.2 実験装置と実験方法 p.6
2.2.1 DPTV p.6
2.2.2 平均流速分布と乱れ統計量特性 p.6
2.3 実験結果と考察 p.7
2.3.1 考察の視点 p.7
2.3.2 染料流脈パターンの特徴 p.8
2.3.2.1 low speed streaks p.8
2.3.2.2 low speed streaks(LSSs)の集中・変形 p.9
2.3.2.3 横渦構造 p.9
2.3.2.4 大規模上昇・下降流 p.9
2.3.3 変動流速ベクトルと流脈パターンの対応 p.10
2.3.3.1 大規模上昇流 p.10
2.3.3.2 大規模下降流 p.11
2.3.4 変動速度分布特性 p.11
2.3.4.1 u速度分布 p.11
2.3.4.2 v速度分布 p.11
2.3.5 速度せん断構造 p.12
2.3.5.1 dU/dy構造 p.12
2.3.5.1 du/dy構造 p.12
2.3.5.2 dv/dx構造 p.13
2.3.5.4 uおよびvせん断構造の相互関係 p.15
2.3.5.5 瞬時渦度分布 p.15
2.3.5.6 瞬間レイノルズ応力分布 p.15
2.4 結論 p.16
第3章 水路蛇曲部における側壁領域の乱流構造 p.35
3.1 緒言 p.35
3.2 実験装置と実験方法 p.36
3.4 実験結果と考察 p.37
3.3.1 考察の視点 p.37
3.3.2 流速計測結果 p.37
3.3.3 水路蛇曲部の3次元流況 p.39
3.3.4 側壁領域の二次流れの構造 p.39
3.3.5 側壁領域の組織構造と瞬時速度情報 p.40
3.3.5.1 左岸側壁領域 p.40
3.3.5.2 右岸側壁領域 p.42
3.4 結論 p.43
第4章 水路の蛇曲に伴う大規模二次流れの構造 p.64
4.1 緒言 p.64
4.2 実験装置および方法 p.65
4.3 実験結果と考察 p.66
4.3.1 流速計測結果 p.66
4.3.2 考察の視点 p.67
4.3.3 組織構造の傾斜特性 p.67
4.3.4 低速縞の経時変化 p.68
4.3.5 瞬時および平均せん断構造 p.69
4.3.5.1 染料流脈と水素気泡の相互関係 p.69
4.3.5.2 水素気泡流脈の縦横変位とせん断構造の時間変化 p.70
4.3.5.3 平均横方向変位および平均せん断特性 p.71
4.4 結論 p.72
第5章 蛇行水路乱流の組織構造 p.90
5.1 緒言 p.90
5.2 実験装置および方法 p.91
5.3 実験結果と考察 p.92
5.3.1 考察の視点 p.92
5.3.2 蛇行水路乱流の内部構造 p.92
5.3.3 蛇行低速領域 p.94
5.3.4 大規模凸岸渦 p.95
5.3.5 水平渦 p.96
5.3.6 大規模縦渦 p.98
5.4 結論 p.99
第6章 p.120
謝辞 p.123
参考文献 p.124

 組織構造は、乱れの発生や輸送あるいは流体中の物質の混合、拡散といった乱流現象と密接な関係を有することから、その解明は流体力学および水工学における重要な課題である。組織構造に関する研究は、乱流境界層におけるstreak構造の秩序運動を発見した先駆的な研究から始まり、様々な手法と開発に伴って発展している。最近出された、乱流境界層の組織構造に関する研究のレビューには、従来の研究の到達点とともに、組織構造に関する研究の1990年代課題が示されている。そこでは、渦構造とせん断層の運動学および力学的特性の解明、複雑な条件下での乱流境界層の組織構造の解明等があげられている。渦構造とせん断層は、乱れエネルギーの生成に直接関係することから、その解明はきわめて重要である。また、複雑な条件下の乱流境界層は、より現実の流れに近いことから、その解明は工学的に重要と考えられる。これまでにも、複雑乱流の研究が試みられているが、その構造の十分な利かいには至っていない。水工学の分野においては、洪水流の3次元流況や湾曲あるいは蛇行した河川の河岸付近の複雑な流れの構造を解明することが重要であり、それには組織構造の解明が不可欠であることが指摘されている。
 本研究は、上述の背景を踏まえて、水路線形が直線から蛇行へ変化する水路乱流のせん断構造と大規模二次流れの特徴の究明を目的としたものである。本研究においては、主に流れの可視化法を用いて、流れ場に形成された組織構造に注目し、それらの詳細を踏まえて、せん断構造および二次流れの構造の特徴を考察した。以下に、本論文における各章の概要を述べる。
 第1章においては、本研究の背景、目的と基本的立場を明らかにし、論文の構成を示した。
 第2章においては、染料流脈パターンと粒子流跡を同時可視化する手法(Dye streak pattern Particle Tracking Velocimetry,以下DPTVと略称)を用いて、直線開水路乱流の組織構造とその縦断面構造を考察した。とくに、壁近くのIow speed streaksのIift up(bursting現象の第1過程)現象、壁から離れた領域における横渦の巻き上げ(roll up)現象などが、流れ方向および鉛直方向の速度せん断構造特性と重要な関係を有することを明らかにした。また、その流れ方向および鉛直方向の速度せん断構造は、それぞれ、鉛直方向および流れ方向に、正負の高い速度せん断値が交互に形成され、それらが直交する特徴を有することを明らかにした。さらに、染料流脈パターンの形成が、これらの速度せん断構造の特徴に密接に関係することを明らかにした。
 第3章においては、DPTVを用いて、直線から蛇行水路へ移行する水路蛇曲部における側壁領域の組織構造と二次流れの構造を考察した。水路の蛇曲に伴って、その側壁領域には、湾曲の影響を受けた第1種二次流れが、もともと直線水路乱流の側壁領域で発達していた乱流二次流れ内に発達し、それに伴い、流れ方向および横方向に大規模なスケールを有する組織構造が形成されることを明らかにした。また、この組織構造は、左岸と右岸でそれぞれ異なる大規模なせん断構造を付随的に発生させ、さらには、水工学的に重要な底壁近くの局所的な高せん断層の形成とも重要な関係を有することを明らかにした。
 第4章においては、水素気泡法と染料注入法を併用した可視化法によって、水路蛇曲部の中央付近における流れの組織構造を観察し、大規模に二次流れの構造を考察した。水路の蛇曲に伴って、横方向の平均流速分布と組織構造の横方向への傾斜現象が発生することを明らかにした。また、この現象は、横方向の大規模なせん断構造を発生させ、それが水路の蛇曲に伴う大規模な二次流れの形成に重要な役割を果たすことを明らかにした。
 第5章においては、トレーサーとして蛍光塗料水路駅や水素気泡を使用する複数の流れの可視化法を用いて、低レイノルズ数、低水路幅水深比における蛇行水路乱流に形成された組織構造の時空間特性を考察した。蛇行水路の低壁、側壁および水表面付近には、「蛇行低速領域」、「大規模縦渦」、「大規模凸岸渦」、「水平渦」と呼ばれる蛇行水路乱流固有の大規模な組織構造が形成されることを示し、それらの空間スケール、経時変化、速度情報との相互関係を明らかにした。また、これらの組織構造の時空間的挙動が蛇行水路乱流における瞬間二次流れの形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
 第6章においては、2章から5章において得られた知見をまとめて結論とした。

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