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大強度パルスイオンビーム蒸着法によるBaTiO3薄膜の作製と特性改善

氏名 曽根川 富博
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第88号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文の題目 大強度パルスイオンビーム蒸着法によるBaTiO3薄膜の作製と特性改善
論文審査委員
 主査 教授 八井 浄
 副査 教授 高田 雅介
 副査 教授 濱崎 勝義
 副査 助教授 升方 勝己
 副査 助教授 原田 信弘

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1章 序論 p.1
1-1 はじめに p.1
1-2 チタン酸バリウム(BaTiO3)の特徴 p.2
1-2-1 BaTiO3の特徴 p.2
1-2-2 BaTiO3薄膜 p.6
1-2-3 BaTiO3成膜での問題点 p.8
1-3 大強度パルスイオンビーム蒸着法 p.12
1-3-1 大強度パルス軽イオンビーム p.12
1-3-1a 大強度パルスイオンビーム発生装置ETIGO-II p.12
1-3-1b LIBの発生 p.14
1-3-2 大強度パルスイオンビーム蒸着法の特徴 p.14
1-3-2a IBE/FS法 p.16
1-3-2b IBE/BS法 p.18
1-3-3 IBEをBaTiO3薄膜の生成に用いる利点 p.20
1-4 本研究の目的・構成 p.21
1-4-1 目的 p.21
1-4-2 本論文の構成 p.21
文献 p.23
2章 正面堆積パルスイオンビーム蒸着法(IBE/FS)によるBaTiO3薄膜の生成 p.26
2-1 はじめに p.26
2-2 実験条件 p.26
2-3 実験結果及び考察 p.29
2-3-1 LIBの動特性 p.29
2-3-2 XRDによる薄膜の結晶性の評価 p.31
2-3-3 SEMによる薄膜の表面観察 p.36
2-3-4 XMAによる薄膜の金属組成分析 p.36
2-3-5 薄膜の静電特性 p.40
2-4 まとめ p.47
文献 p.48
3章 背面堆積パルスイオンビーム蒸着法(IBE/BS)によるBaTiO3薄膜の生成とIBE/FS法との比較 p.49
3-1 はじめに p.49
3-2 実験条件 p.49
3-3 実験結果 p.51
3-3-1 LIBの動特性 p.51
3-3-2 薄膜の表面、及び断面の比較 p.51
3-3-3 IBE/BS法によるBaTiO3薄膜の成膜速度 p.51
3-3-4 IBE/BS法により得られた薄膜のAFM像 p.56
3-3-5 薄膜の結晶性の比較 p.56
3-3-6 静電容量の周波数特性の比較 p.59
3-3-7 誘電損失の周波数特性の比較 p.59
3-3-8 IBE/BS法により得られた薄膜のビームの照射数と誘電率の関係 p.63
3-4 まとめ p.65
文献 p.65
4章 基板加熱によるIBE/BSにより生成された薄膜の特性改善 p.66
4-1 はじめに p.66
4-2 実験条件 p.66
4-3 実験結果および考察 p.66
4-3-1 LIBの動特性 p.66
4-3-2 薄膜のSEM観察 p.66
4-3-3 薄膜のAFM表面観察 p.69
4-3-4 XRDによる薄膜の結晶性の評価 p.74
4-3-5 薄膜の組成分析 p.77
4-3-6 薄膜の誘電特性 p.80
4-4 まとめ p.83
文献 p.83
5章 結論および今後の課題と展望 p.84
5-1 結論 p.84
5-2 今後の課題と展望 p.85
謝辞 p.86
付録 p.87
研究業績 p.88

 強誘電体材料の一つであるチタン酸バリウム(BaTiO3)は、超高集積デバイスのメモリー材としての用途から、これを薄膜化することが非常に重要である。誘電率の高い薄膜を得るためには、BaTiO3薄膜を結晶化することが重要であるが、従来の成膜法では、薄膜生成時に300℃以上の基板温度が必要とされたり、或は、成膜後に高温でのアニールが必要とされてきた。しかし、電子デバイスへの応用を考えると、BaTiO3薄膜の成膜法ととしては、以下の事が望ましい。
 1)低温生成
 2)成膜後にアニールを行わないin situ成膜
 一方、高エネルギー(~1 MeV)、大電力密度(~1 GW/cm2)、短パルス(数十ns)の大強度パルス軽イオンビーム(Intense,Pulsed,Light-Ino Beam : LIB)を、個体ターゲットに照射すると、高温(数eV以上)、高密度(~10の20乗cm-3)のアブレーションプラズマが生成される。このアブレーションプラズマをターゲットに隣接する基板上に照射すると、高速度で薄膜が生成される(大強度パルスイオンビーム蒸着法(Intense,Pulsed,Ion-Beam Evaporation : IBE)ことが、世界初めての本学の例証実験により知られていた。この場合、基板表面がブラズマの運動エネルギー、および内部エネルギーの放出により高温となる。このため、外部からの基板加熱や、成膜後の熱処理を行わなくても、結晶化したBaTiO3薄膜を低温プロセスで生成することが可能である。
 本研究では、IBE法を用いて、BaTiO3結晶膜を基板加熱せずに生成することに成功した。この時成膜速度は数百nm/ショットで、レーザーアブレーション法に比べて3桁程度高いことが判明した。一方、アブレーションプラズマを正対面する基板に堆積して成膜する従来の正面堆積IBE法(以下、IBE/FS法と省略する)では、薄膜上に多量のドロプレートが生成される欠点があったが、これを改善する新たな方法として背面堆積IBE法(以下、IBE/BS法と省略する)を世界で初めて提案した。本方法により、ドロップレットを除去すると共に、数十nm/ショットの高速成膜を達成した。更に、比較的低温の基板加熱(~250℃)により、膜質及び薄膜の誘電率が大幅に向上することを示した。
 本論文は、以下の事柄を纏めたもので「大強度パルスイオンビーム蒸着法によるBaTiO3薄膜の作製と特性改善」と題し、以下の5章から構成される。
 第1章「序論」では、BaTiO3の特徴、BaTiO3薄膜の有用性の概要を述べ、成膜上での問題点を明らかにした。また、IBE法の概略・特徴を説明し、IBE/FS法、IBE/BS法の違い、特徴について述べた。
 第2章「正面堆積パルスイオンビーム蒸着法(IBE/FS)によるBaTiO3薄膜の生成」では、IBE/FS法によるBaTiO3薄膜の室温での成膜実験の結果について述べた。その実験結果より、IBE/FS法により、BaTiO3多結晶薄膜の低温生成を例証した。得られた薄膜の成膜速度は、数百nm/ショットであった。また、得られた薄膜の誘電率の周波数特性を測定し、その結果を解析的に得られた結果と比較した。
 第3章「背面堆積パルスイオンビーム蒸着法(IBE/BS)によるBaTiO3薄膜の生成とIBE/FSとの比較」では、IBE/BS法によるBaTiO3薄膜の室温での成膜実験の結果について述べた。実験結果を、IBE/FS法により得られた結果と比較し、ドロップレットの無い、平滑な薄膜が得られることを示した。成膜速度は、数十nm/ショットであり、IBE/FSの~10%であったが、レーザーアブレーション法と比較すると2桁程度大きい値であり、高速成膜が行われることがわかった。また、IBE/BS法により成膜されたBaTiO3薄膜が、電気特性に於いても、IBE/FS法より優れていることを示した。
 第4章「基板加熱によるIBE/BSにより生成された薄膜の特性改善」では、IBE/BS法にて、基板温度を25(室温)~350℃に変化させて行ったBaTiO3薄膜の成膜実験の結果について述べ、基板温度の上昇が、薄膜の静電容量を増加させるもとを示した。
 第5章「結論」では、以上の結果を総括するもので、IBE法によりBaTiO3薄膜の低温生成が可能である事を明らかにし、IBE/BS法により、特性の改善が行われることを結論した。

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