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光ディスク装置回転系の半径方向および軸方向振動に関する研究

氏名 多田 誠二
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第93号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文の題目 光ディスク装置回転系の半径方向および軸方向振動に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 五十嵐 昭男
 副査 教授 秋山 伸幸
 副査 助教授 金子 覚
 副査 助教授 川谷 亮治

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目次
第1章 緒論 p.1
1.1 光ディスクの概要 p.1
1.2 これまでの研究 p.4
1.3 本研究の目的および論文の概要 p.8
第2章 供試光ディスク装置 p.11
2.1 光ディスク装置の概要 p.11
2.2 回転系 p.11
2.2.1 光ディスク p.16
2.2.2 スピンドル・軸受系 p.16
2.3 光ピックアップ p.23
2.4 エラー信号の校正 p.26
2.4.1 トラッキングエラー信号の校正 p.26
2.4.2 フォーカシングエラー信号の校正 p.30
2.5 制御系 p.33
2.5.1 トラッキングサーボ系の構成および動特性 p.33
2.5.2 フォーカシングサーボ系の構成および動特性 p.35
2.6 まとめ p.37
第3章 エラー信号および振動波形の処理 p.38
3.1 平均波形および非再現性の振れの定義と計算法 p.38
3.2 エラー信号のサンプリング波形、平均波形、非再現性の振れ p.39
3.3 非再現性の振れの特徴 p.42
3.4 まとめ p.45
第4章 回転系半径方向振動とトラッキングエラー信号の関連および特徴 p.46
4.1 はじめに p.46
4.2 回転系半径方向振動測定系および実験方法 p.46
4.2.1 フォトセンサ p.46
4.2.2 測定系および波形処理系 p.48
4.2.3 実験方法 p.48
4.3 振動波形とエラー信号の処理結果比較 p.51
4.3.1 サンプリング波形、平均波形、非再現性の振れ p.51
4.3.2 非再現性の振れの振幅の回転速度による変化 p.54
4.3.3 非再現性の振れの周波数分析結果に含まれる回転同期成分 p.54
4.3.4 非再現性の振れの周波数数成分と玉受軸に起因する半径方向振動の振動数成分 p.60
4.4 回転系半径方向振動の固有振動数 p.63
4.5 回転系半径振動およびトラッキングエラー信号の非再現性の振れ周波数分析結果の関連性 p.68
4.6 まとめ p.72
第5章 回転系軸方向振動とフォーカシングエラー信号の関連と特徴 p.73
5.1 はじめに p.73
5.2 回転系軸方向振動測定系および実験方法 p.73
5.3 振動波形とエラー信号の処理結果 p.76
5.3.1 回転系軸方向振動のサンプリング波形・平均波形・非再現性の振れ p.76
5.3.2 フォーカシングエラー信号のサンプリング波形・平均波形・非再現性の振れ p.76
5.4 フォーカシングエラー信号の平均波形 p.82
5.4.1 形状および振幅 p.82
5.4.2 周波数分析結果 p.88
5.5 回転系軸方向振動およびフォーカシングエラー信号の非再現性の振れ p.92
5.5.1 周波数分析結果 p.92
5.5.2 周波数分析結果のキャンベル図と玉軸受に起因する軸方向振動数成分 p.94
5.6 張合せディスクを用いた場合のフォーカシングエラー信号の非再現性の振れの特徴 p.96
5.7 回転系軸方向振動およびフォーカシングエラー信号の非再現性の振れの周波数分析結果の関連 p.96
5.8 トラッキングエラー信号およびフォーカシングエラー信号の相関 p.99
5.9 まとめ p.103
第6章 回転系の半径方向および軸方向の固有振動数 p.105
6.1 はじめに p.105
6.2 ディスクの曲げ固有振動数および固有モード p.105
6.2.1 加振実験 p.105
6.2.2 FEM解析 p.116
6.3 回転系の半径方向曲げ固有振動数 p.116
6.3.1 実験 p.116
6.3.2 玉軸受半径方向のばね定数の計算 p.121
6.3.3 回転系の半径方向振動の固有振動数 p.128
6.4 回転系の軸方向固有振動数 p.131
6.4.1 打撃試験 p.131
6.4.2 玉軸受の軸方向ばね定数 p.131
6.4.3 玉軸受の予圧過程と軸方向ばね定数の算出法 p.135
6.4.・4 スピンドル・軸受系の軸方向固有振動数 p.140
6.5 まとめ p.143
第7章 光ディスク装置回転系設計のための指針 p.144
7.1 回転系の振動と制御系 p.144
7.2 ディスク固定内径が曲げ固有振動数に及ぼす影響 p.146
7.3 玉軸受の軸方向荷重-変位曲線に影響を及ぼす因子 p.146
7.3.1 玉軸受のすきま p.148
7.3.2 軸受予圧力 p.148
7.3.3 モータ回転子のマグネット力 p.156
7.4 まとめ p.158
第8章 結論 p.159
文献 p.162
付録A 玉軸受の玉や内・外輪のうねりに起因する振動の振動数 p.A1
付録B 玉軸受の軸方向荷重-変位曲線 p.B1
付録C 位相を考慮した感度関数のゲイン p.C1
謝辞

 光ディスク装置は、記録媒体である光ディスクとこれを支えて回転させる回転系およびレーザ光を光ディスク上に位置決めし、かつ情報の再生・記録を行う光、ピックアップ系から構成されている。光ディスクでは、情報は半径方向に1.6μm幅でならぶ一本のらせん状の溝に長手方向に約2μmピッチで記録されている。光ピックアップからのレーザ光とディスク記録面のいずれをトラッキングエラー、フォーカシングエラーとよび、これらはそれぞれ±0.1μm、±1μm以内に保たれる必要がある。これを行う制御をトラッキングサーボ、フォーカシングサーボという。エラーの原因はディスクやスピンドルの偏心や傾き、ディスク・スピンドル・軸受系から成る回転系の半径方向・軸方向の振動であり、エラーが規定値を超えると正確な再生・記録が困難になる。今後、記録密度やアクセス速度の向上のためには光ピックアップ系だけでなく回転系の振動特性の改善が重要不可欠である。
 本研究は、光ディスク装置のトラッキングエラー、フォーンシングエラーの振幅を低減するための回転系の設計指針を得ることを目的として、光ディスク装置回転系の振動特性とエラー信号の関連および特徴を明らかにするとともに、回転系を支える玉軸受のばね定数計算法を検討したもので8章より成っている。
 第1章「緒論」では、光ディスクの概要、ディスク装置の問題点を明らかにするとともに、過去の関連論文をレビューし、本研究の目的、位置づけについて述べている。
 第2章「供試光ディスク装置」では、実験に用いた光ディスク装置の回転系および光ピクアップ系について説明している。次に、トラッキングサーボ系、フォーカシングサーボ系の構成を説明し、二つのサーボ系から得られるエラー信号の検出方法および変位校正法を示している。さらに両サーボ系のブロック線図および一巡伝達関数を考慮し、制御外乱となる回転系の振動と制御信号であるエラー信号がサーボ系の感度関数で関連づけられることを述べている。
 第3章「エラー信号および振動波形の処理」では、回転系の振動や制御系のエラー信号の時間波形(サンプリング波形)から平均波形(平均成分)および非再現性の振れ(サンプリング波形の平均成分からの偏差)を計算する方法を説明している。非再現性の振れは、数個の周波数成分の振幅が時間とともに変化する結果生じるものであることを実験結果から明らかにしている。
 第4章「回転系半径方向振動とトラッキングエラー信号の関連および特徴」では、回転系の半径方向振動を新たに設置した光位置センサーで直接測定した振動波形と、装置の制御系出力であるトラッキングエラー信号を波形処理して両者の比較を行っている。両者のサンプリング波形、平均波形、非再現性の振れはスピンドルの偏心成分、非再現性の振れに含まれる回転同期成分等を除去することにより比較が可能となり、両者の非再現性の振れの周波数分析結果はトラッキングサーボ系の感度関数のゲイン特性で関連づけられることを実験結果を用いて示している。また、トラッキングエラー信号の主成分は非再現性の振れであり、その周波数成分のほとんどは、スピンドルを支える玉軸受の玉および内・外輪のうねりに起因した回転速度とともに増加する振動数成分で、これらが回転系半径方向曲げ振動の固有振動数に接近すると共振を生じ、非再現性の振れが大きくなることを明らかにしている。
 第5章「回転系軸方向振動とフォーカシングエラー信号の関連と特徴」では、回転系の軸方向振動に着目し、振動波形およびフォーカシングエラー信号を波形処理して各波形の特徴を明らかにしている。フォーカシングエラー信号の主成分は平均波形であり、その振幅はディスクの面振れの大きさにはほとんど関係なく、共振点を除けば、回転速度とともに単調に増加する。平均波形は、スピンドル回転速度に同期した振動成分から成り、本装置では、平面対向型ブラシレスDCモータのステータコイル数(6個)に依存する磁気力の不均一による成分が大きく、これが回転系の軸方向振動やディスクの曲げ振動の固有振動数と共振すると振幅が増大することを示している。一方、非再現性の振れは、平均波形にくらべて振幅は小さいが、軸方向振動およびフォーカシングエラー信号の非再現性の振れの間には前章と同じ特性が見られることを示している。また貼り合わせディスクを用いた場合の結果についても説明している。
 第6章「回転系の半径方向および軸方向固有振動数」では、加振実験より得たディスクの曲げ固有振動数をFEM解析の結果と比較し、両者がほぼ一致すること、単板ディスクでは節線数1、1、2のモードの固有振動数が極めて接近していることを明らかにしている。さらに、回転系の固有振動数に大きな影響を及ぼす玉軸受のばね定数を、スピンドルを支えている2個の玉軸受に予圧を加える過程およびモータ回転子のマグネット力を考慮して計算する方法を示し、結果が実験値とよく一致することを示している。この玉軸受のばね定数を用いて回転系の軸方向固有振動数を計算した結果は実験とよく一致している。
 第7章「光ディスク装置回転系設計のための指針」では、本研究で得られた結果を基に光ディスク装置の回転系の設計指針を提案している。即ちエラー信号の大きさを抑制するためには、回転系に共振が生じても、その振動数がサーボ系の感度関数のゲインが小さい周波数範囲に入るよう設計することで、基本的には回転系の各種の固有振動数を低く設計することが望ましい。このため、玉軸受のばね定数を小さくする方策として、軸受すきまや予圧荷重を小さく、モータ回転子マグネット力が回転体自重に近くすることを示している。この他、高精度の玉軸受を選定すること、適当な減衰を回転系に付加することが望ましいことを述べている。
 第8章「結論」では、本研究で得られた結果を要約している。

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