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土路盤上省力化軌道の支持構造とその設計に関する研究

氏名 安藤 勝敏
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第89号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文の題目 土路盤上省力化軌道の支持構造とその設計に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 下村 匠
 副査 助教授 唐 伯明
 副査 足利工業 大学教授 桃井 徹

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目次
1. 緒論 p.1
1.1 本研究の目的と意義 p.1
1.2 省力化軌道に関する既往の研究と本研究の位置づけ p.5
1.2.1 剛性路盤上スラブ軌道 p.5
1.2.2 新設線用土路盤上スラブ軌道 p.6
1.2.3 既設線用土路盤上スラブ軌道 p.7
1.3 本研究の概要 p.12
1.3.1 第1~3章の概要 p.12
1.3.2 第4章の概要 p.12
1.3.3 第5章の概要 p.14
1.3.4 第6章の概要 p.16
2. 省力化軌道の種別と特徴 p.16
2.1 新設線用省力化軌道 p.16
2.2 既設営業線用省力化軌道 p.18
2.3 欧米における省力化軌道 p.21
3. 鉄道と道路における荷重支持構造に関する設計法 p.23
3.1 鉄道と道路における舗装に作用する荷重の相違点 p.23
3.2 道路における舗装設計法の概要 p.26
3.3 鉄道における軌道構造設計法の概要 p.28
4. 新設線用土路盤上スラブ軌道の研究 p.37
4.1 アスファルト舗装路盤 p.37
4.1.1 研究の目的 p.37
4.1.2 従来の経緯 p.37
4.1.3 模型実験 p.41
4.1.4 上越新幹線用RA形スラブ軌道の構造検討 p.46
4.1.5 日野土木実験所における実物実験 p.52
4.1.6 不連続性を考慮した舗装構造の検討 p.64
4.1.7 スラブ軌道用アスファルト舗装設計に関する総合考察 p.72
4.1.8 第4.1節の要約 p.97
4.2 コンクリート舗装路盤 p.97
4.2.1 研究の目的 p.97
4.2.2 基本構想と構造提案 p.97
4.2.3 日野土木実験所における第1次試験 p.98
4.2.4 日野土木実験所における第2次試験 p.103
4.2.5 日野土木実験所における第3次試験 p.109
4.2.6 北陸新幹線における載荷試験 p.116
4.2.7 スラブ軌道用コンクリート舗装路盤設計に関する総合考察 p.123
4.2.8 第4.2節の要約 p.132
4.3 温度変化時におけるスラブ軌道の荷重変形特性 p.134
4.3.1 研究の目的 p.134
4.3.2 軌道スラブの反り現象と気温調査 p.134
4.3.3 材料耐候性試験装置を用いた試験 p.135
4.3.4 日野土木実験所における試験 p.146
4.3.5 現行の軌道スラブ設計に関する考察 p.150
4.3.6 第4.3節の要約 p.154
5. 既設線用省力化軌道の研究 p.154
5.1 舗装軌道 p.154
5.1.1 研究の目的 p.154
5.1.2 従来の経緯 p.154
5.1.3 既設舗装軌道の調査結果 p.155
5.1.4 現場敷設に伴う舗装軌道の改良と特性試験 p.156
5.1.5 舗装軌道の設計に関する総合考察 p.176
5.1.6 第5、1節の要約 p.177
5.2 枠型軌道 p.178
5.2.1 開発の目的 p.178
5.2.2 従来の経緯 p.178
5.2.3 基本構造の提案 p.180
5.2.4 日野土木実験所における第1次試験 p.180
5.2.5 日野土木実験所における第2次試験 p.185
5.2.6 仮軌道時における軌道安全性試験 p.191
5.2.7 仮軌道の軌道狂い進み試験 p.195
5.2.8 仮軌道時における軌道スラブ水平抵抗試験 p.197
5.2.9 枠型軌道設計に関する総合考察 p.198
5.2.10 第5.2節の要約 p.199
5.3 環境対策の研究 p.200
5.3.1 研究の目的 p.200
5.3.2 開発の経緯 p.200
5.3.3 骨材散布型吸音材の検討 p.202
5.3.4 軌道への適用のための検討 p.202
5.3.5 第5.3節の要約 p.205
6. 各種省力化軌道の導入後における調査・評価 p.206
6.1 新設線用省力化軌道 p.206
6.1.1 上越新幹線におけるRAスラブ軌道の性能確認試験 p.206
6.1.2 上越新幹線におけるRAスラブ軌道の軌道状態 p.208
6.1.3 第6.1節の要約 p.208
6.2 既設線用省力化軌道 p.209
6.2.1 敷設実積 p.209
6.2.2 山手線における舗装軌道の性能試験 p.210
6.2.3 山手線における枠型軌道の性能試験 p.214
6.2.4 省力化効果と軌道沈下特性 p.215
6.2.5 経済比較と投資効果の推定 p.218
6.2.6 第6.2節の要約 p.222
7. 結論 p.223
参考文献 p.225
謝辞 p.231
参考付録 p.233

 鉄道における有道床軌道は、建設費が安価で保守が容易であるという長所を有しているが、列車振動により軌道狂いを生じた定常的保守を必要とする。近年列車本数の増加に伴い、良好な線路状態を維持するため多大な保守費が必要となっている。また、わが国は急速に高齢化社会を迎えようとしており、将来保守作業員を確保することが困難になると予想され、人力依存による保守体制の抜本的な改善は鉄道会社にとって緊急課題となっている。
 本研究の目的は、このような背景の下で、従来試験の域をでなかった土路盤上において適用可能な、経済的で耐久性に優れた標準的な省力化軌道構造を開発・実用化することである。本研究では、新設線と既設線に大別し、下部支持構造として新設線ではアスファルト舗装およびコンクリート舗装、既設線では道床てん充層を基本とし、この上に軌道スラブまたは大版まくらぎを構成する土路盤上省力化軌道構造を新たに提案するとともに、これまで明らかでなかった荷重支持特性の明確化とその設計に関する研究を行った。
 本論文は第1章~7章で構成され、以下に各章の概要と得られた知見について述べる。
 第1章では、過去の軌道の開発経緯を述べ、本研究の目的と意義を明らかにした。
 第2章では、新設線と既設線に分けて、既開発省力化軌道の種別と特徴を述べている。
 第3章では、鉄道と道路における支持構造と設計法について述べている。これによって、両者の相違点を明らかにし、舗装構造としての設計法の歴史と現状について紹介した。
 第4章では新設線におけるアスファルト舗装とコンクリート舗装から成る土路盤上スラブ軌道の研究および、温度変化時における軌道スラブの荷重変形特性について述べている。
 アスファルト舗装から成るRA形スラブ軌道については、模型実験の結果を基に、改良型構造を提案し、実際に施工が実施された。また、従来の弾性床上はりモデルの代わりに、レールから路盤まで含めた3次元有限要素モデルを提案した。
 一方、より沈下抑制効果が期待されるコンクリート舗装に着目し、この構造を今後の土路盤上スラブ軌道路盤構造として新たに提案した。これを高盛土区間に敷設し、動的荷重による沈下特性試験を実施した結果、各部応力は低いレベルにあり、盛土の長期沈下量を含めても最終沈下量は目標の10mm以内に収まることが期待された。
 温度変化に伴うスラブ軌道の挙動に関して行った検討の結果、1日の最高最低温度差が10℃程度以上あれば、温度上昇時に軌道スラブは上側に凸状に、下降時には凹状に反り、載荷時の変位および応力が大幅に変動することを確認した。これを現行の軌道スラブの設計法と照らし合わせると、反りによる応力増加分は概ね安全率でカバーされているものと考えられる。
 第5章では既設線における土路盤省力化軌道(E型舗装軌道、枠型軌道)の研究および環境対策として、軌道面吸音材の提案、試験および評価について述べている。
 てん充材については、夜間の3時間間合いでも施工が可能なタイプを開発した。土路盤上では高架橋上と比べててん充材に発生する応力は大きくなり、一定の支持力がない場合には問題があることを数値的に明らかにし、てん充材に要求される早期強度を決定した。また、実物軌道の動的荷重試験結果を基に、舗装軌道を敷設するのに必要に路盤条件を提案した。さらに、急曲線区間への適用や道床横抵抗力の強化に関する検討等を行い、舗装軌道の改良構造を提案した。これとは別に、レール破線が可能な現場に適用されることを目標として、より省力化効果の優れた枠型軌道を提案し、その実用化を進めた。
 これらの軌道の騒音軽減策として、ごみの焼却残さから成るリサイクル材(骨材、ガラスおよび陶器の破片)を散布または設置する方法を提案し、その効果を確認した。
 第6章では、新設線用省力化軌道と既設線用省力化軌道に関する敷設後の列車走行試験結果および経済性評価について述べている。上越新幹線のRA形スラブ軌道の性能確認試験の結果、高速軌道として特に問題ないことを確認した。また、開業後今日まで14年を経過したが、軌道状態は極めて良好で、十分にその機能を果たしていると判断される。
 E型舗装軌道および枠型軌道に対し、列車走行に伴う性能試験を実施した結果、軌道として所要の性能を有していることが確認され、省力化効果も良好な結果が得られている。
 第7章では、本研究で得られた上記の知見を要約して結論を述べている。
 以上のように本研究は、土路盤上においても省力化軌道の適用を可能にし、鉄道会社における保守費削減および人力依存耐性の抜本的改善に大きく貢献するものである。

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