本文ここから

カラー液晶ディスプレイの高品位化技術に関する研究

氏名 石川 正仁
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第84号
学位授与の日付 平成8年6月19日
学位論文の題目 カラー液晶ディスプレイの高品位化技術に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 中川 匡弘
 副査 教授 松田 甚一
 副査 教授 神林 紀嘉
 副査 教授 赤羽 正志
 副査 助教授 川田 重夫

平成8(1996)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次
第1章 研究の背景と目的 p.8
1.1 液晶ディスプレイの歴史 p.8
1.2 本論文に関わる研究の背景 p.12
1.2.1 強誘電性液晶ディスプレイ p.13
(1)動作原理 p.14
(2)液晶材料 p.18
(3)駆動波形 p.18
1.2.2 TFT液晶ディスプレイ p.20
(1)構成とカラー表示 p.20
(2)駆動波形 p.22
(3)現状の視野角改善手法 p.25
1)階調表示時の異常表示現象 p.25
2)階調表示LCDの視角特性の評価法 p.26
3)TNセルの条件による視角特性の変化 p.30
4)光学異方性素子による視野角補償 p.30
5)配向分割法による視野角改善 p.33
1.3研究の目的と主旨 p.35
第2章 強誘電性液晶のディスプレイの表示特性に関する研究 p.38
2.1 SSFLCの要求性能 p.39
2.1.1 高速化と双安定性 p.39
(1)応答時間 p.39
(2)駆動マージン p.41
(3)結果と考察 p.41
2.1.2 メモリしきい値電圧 p.45
2.2 セルギャップ増大の影響に関する検討 p.49
2.2.1 液晶材料 p.49
2.2.2 液晶セル p.49
2.2.3 表示色の改良 p.52
(1)セル構成の検討 p.52
(2)透過スペクトルの計算 p.52
(3)光学異方性素子付き3μmFLCDの透過スペクトルの計算 p.53
2.2.4 まとめ p.58
2.3 層構造の視角特性への影響 p.59
2.3.1 視角特性の測定 p.59
2.3.2 視角特性の計算 p.59
2.3.3 層形状の対称性の視角特性依存性 p.63
2.3.4 まとめ p.63
2.4 今後の課題 p.63
第3章 TFT液晶ディスプレイの反射特性の評価と改善 p.67
3.1 鏡面反射 p.67
3.1.1 鏡面反射の要因解析 p.69
3.1.2 鏡面反射率の数値解析 p.69
(1)ブラックマトリクスの反射率依存性 p.72
(2)偏光板の反射率依存性 p.72
(3)開口率の反射率依存性 p.72
3.1.3 鏡面反射の低下法 p.74
(1)ブラックマトリクスの低反射化手法 p.74
(2)偏光板の低反射化手法 p.74
3.2 拡散反射 p.75
3.2.1 拡散反射の要因解析 p.75
3.2.2 コントラストへの影響解析 p.78
3.2.3 拡散反射の低減法 p.78
3.3 LCDの高品位化における反射特性の関与 p.81
3.3.1 映りこみの改善 p.83
3.3.2 各種許容値の検討 p.88
(1)蛍光灯の映りこみの主観評価(鏡面反射テスト) p.88
(2)画面全体が明るい場合の主観評価(拡散反射テスト) p.88
(3)主観評価結果 p.88
(4)許容値 p.88
3.3.3 最適設計 p.94
3.4 考察 p.95
3.5 まとめ p.96
第4章 TFT液晶ディスプレイの視角特性の評価法 p.98
4.1 階調表示時の色相による視角特性の評価法 p.98
4.1.1 実験サンプル p.98
4.1.2 主観評価法 p.101
4.1.3 心理物理的評価法 p.101
(1)色差ΔE*(lso-ΔE*ave'lso-ΔE*max) p.102
(2)色度差Δu*v*(lso-Δu*v*ave'lso-Δu*v*max) p.103
(3)色相角差ΔH°(lso-ΔH°ave'lso-ΔH°max) p.103
(4)彩度差ΔC*(lso-ΔC*ave'lso-ΔC*max) p.104
4.1.4 結果と考察 p.104
(1)主観評価結果 p.104
(2)心理物理的評価結果 p.104
4.1.5 主観評価結果と心理物理的評価結果間の相関関係 p.114
4.1.6 まとめ p.114
4.2 階調表示時の視角特性の評価法 p.117
4.2.1 実験サンプル p.117
4.2.2 主観評価 p.117
4.2.3 心理物理的評価 p.117
4.2.4 主観評価結果と心理物理的評価結果との関係 p.122
4.3 考察 p.122
4.4 まとめ p.124
第5章 TFT液晶ディスプレイの視角特性の解析 p.126
5.1 TNセルの視角特性 p.126
5.1.1 TNセルの電気光学特性 p.126
5.1.2 TNセルの視角特性要因解析 p.130
(1)正面の偏光特性 p.130
(2)斜め方向での偏光特性 p.130
5.1.3 TNセルの視角特性改善方法の検討 p.135
5.2 光学異方性素子の視角特性 p.137
5.2.1 右ねじれ光学異方性素子 p.137
5.2.2 左ねじれ光学異方性素子 p.139
5.2.3 左ねじれ50°チルト光学異方性素子 p.139
5.2.4 ねじれ光学異方性素子の旋光性の方位角依存性 p.139
5.3 TNセルとねじれ光学異方性素子との組み合わせ時の視角特性 p.142
5.3.1 右ねじれ光学異方性素子 p.142
5.3.2 左ねじれ光学異方性素子 p.145
5.3.3 左ねじれ50°チルト光学異方性素子 p.148
5.3.4 考察 p.150
5.4 まとめ p.150
第6章 総括 p.153
謝辞 p.157

氏名 石川 正仁
 本論文では、液晶ディスプレイの高品位化に要求される応答速度の向上、反射の低減、さらに広視角化を目的とし、それに関わる新しい技術を提案し論じている。
 高速化技術として、高速応答性を有し注目されている強誘電性液晶をとりあげ、この液晶の応用の可能性について示した。まず、応答速度と双安定性について検討した。具体的には、強誘電性液晶の自発分極について、応答速度と双安定性の評価を行った結果、応答速度は自発分極が大きいほど向上する反面、自発分極が大きいほど双安定性が不安定化することが分かった。そこで、粘性の低い液晶を母体となる強誘電性液晶に混合することにより、自発分極値を下げ双安定性を保ち、かつ、応答速度の低下を抑えることができることを見出した。さらに、この検討に基き試作した強誘電性液晶ディスプレイの表示性能を評価し、実用化に向け要求されるセルギャップの増大化に伴う表示の色づきの問題を解決する手法として光学異方性素子を検討した。その結果、本手法は表示色の無彩色化効果が大きいことが分かり、強誘電性液晶固有の"く"の字型の層形状を考慮し、最適条件を計算機シミュレーションにより求めた。試作パネルにより、無彩色、高コントラスト表示が実現され、強誘電性液晶による高速・カラー表示の可能性が示された。
 次に、現在主流となっているTFT駆動カラー液晶ディスプレイにおいて問題とされている反射の低減技術を確立する為、まずTFT駆動カラー液晶ディスプレイの反射の主要因を調べた。ディスプレイの構成要素の各々の反射率を測定した結果、RGBの画素の周囲に存在するブラックマトリクスの反射率の寄与が最も高いことが分かった。また、ディスプレイの反射率の計算機シミュレーションを行い構成材料の反射率の影響を検討した。その結果、ディスプレイの反射率はブラックマトリクスの反射率が低い場合、偏光板の反射率の寄与が大きいことが分かった。そこで、多層膜構造および樹脂材料からなる低反射ブラックマトリクス及び表面が積層膜や微細凹凸を形成した低反射偏光板を導入し、反射率の異なるTFT駆動カラー液晶ディスプレイを試作し、一連の主観評価実験を行い、反射率の許容限界を人間工学的見地から評価し、この許容限界を上回る視認性の高いTFT駆動カラー液晶ディスプレイを実現した。
 次に、広視角化実現のために階調特性を包含した表示特性の心理物理的な評価値を定量化する手法を提案し、その有用性を明らかにした。定量化の検討に際しては、試作した視角依存性の異なるカラー液晶ディスプレイを用いて、角度を変え階調表示色の測色を行い、CIE表色系を基盤として表示色の角度変化量と主観評価結果とを比較した。この結果、最大色相変化による色彩工学的心理物理評価が主観評価との強い相関を示した。そして、輝度の変化量だけで大方の液晶ディスプレイの評価が可能とされてきた階調表示画像が比較的正常に観える範囲を記述する評価手法(Iso-REC法)は、この色相による色変化の評価手法と組み合わせることにより、より的確に視角特性を捉えたものとなることが主観評価実験により実証された。
 上記評価法を踏まえ、広視角化に要求される新しい光学異方性素子について検討した。まず、現在のTFT駆動カラー液晶ディスプレイにおいて問題とされている階調表示の視角依存性に関し、その発生要因について実験と計算機シミュレーションの両面から解析を行った。その結果、中間調電圧において液晶分子が起き上がる方面では旋光性が消失するが、一方、この反対方向では旋光性が残存し、これらが表示品位を著しく低下させていることが分かった。この現象を解決すべく、旋光性を有する光学異方性素子として種々のねじれ配列の液晶セルを検討し、その旋光性を解析した結果、液晶セルの配向を傾斜配向とすることで、斜め方向での旋光性を正面方向より大きくすることが可能となり、これが視角依存性の改善に有効であることが分かった。本検討により、光学異方性素子による視角依存性の改善の可能性が示され、その実用成性が実証された。

平成8(1996)年度博士論文題名一覧

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る