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鉄道路盤の支持特性と路盤強化に関する研究

氏名 関根 悦夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第86号
学位授与の日付 平成8年9月18日
学位論文の題目 鉄道路盤の支持特性と路盤強化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 杉本 光隆
 副査 助教授 大塚 悟
 副査 長岡工業高等専門学校教授 佐藤 勝久
 副査 金沢工業大学 助教授 山田 幹雄

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第1章 序論 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.2 関連の研究の概要 p.3
1.2.1 鉄道営業線の路盤の挙動に関する研究 p.3
1.2.2 鉄道営業線の路盤の改良に関する研究 p.5
1.3 本論文の目的と構成 p.10
第2章 鉄道路盤の支持特性 p.13
2.1 概説 p.13
2.2 列車走行時の路盤の挙動 p.13
2.2.1 列車荷重の影響範囲 p.14
2.2.2 列車荷重による路盤の変位 p.16
2.2.3 路盤の変位と軌道の状態 p.22
2.3 道床バラスト貫入層の実態 p.23
2.3.1 道床バラスト貫入層の粒度特性 p.23
2.3.2 道床バラスト貫入層の強度 p.24
2.3.3 道床バラスト貫入層と地盤のK値 p.25
2.4 路盤のK値 p.27
2.5 路盤のK値推定法 p.30
2.5.1 解析の方法と路盤のモデル p.30
2.5.2 厳密解との比較 p.32
2.5.3 路盤の変位とK値 p.34
2.5.4 営業線路盤のK値推定例 p.35
2.5.5 路盤のK値推定法を用いた路盤改良効果に対する検討 p.38
2.6 まとめ p.39
第3章 鉄道路盤の強化 p.41
3.1 概説 p.41
3.2 安定処理による路盤強化工法 p.42
3.2.1 基本特性 p.42
3.2.2 繰返し載荷に対する耐久性の検討 p.54
3.2.3 現地大型模型試験による確認 p.61
3.2.4 まとめ p.78
3.3 立体補強材を用いた路盤強化工法 p.80
3.3.1 立体補強材の概要 p.80
3.3.2 立体補強材の強度・変形特性 p.83
3.3.3 立体補強材を用いた路盤の支持力特性 p.88
3.3.4 立体補強材を用いた路盤の締固め特性 p.94
3.3.5 立体補強材を用いた路盤の大型模型による載荷試験 p.98
3.3.6 現地試験施工による効果の確認 p.116
3.3.7 まとめ p.119
3.4 まとめ p.121
第4章 路盤強化工法に関する設計法の提案 p.123
4.1 概説 p.123
4.2 安定処理による路盤強化工法 p.123
4.2.1 設計の考え方 p.123
4.2.2 安定処理土の強度 p.124
4.2.3 改良厚さの算定 p.125
4.2.4 設計・施工上考慮すべき点 p.128
4.3 立体補強材を用いた路盤強化工法 p.129
4.3.1 設計の考え方 p.129
4.3.2 充填材料の適用条件 p.129
4.3.3 変形係数 p.129
4.3.4 改良厚さ p.130
4.3.5 標準改良厚さ p.131
4.3.6 改良幅 p.132
4.4 まとめ p.133
第5章 結論 p.135
参考文献 p.137
謝辞 p.145

 鉄道路盤のK値が小さい場合には、路盤噴泥現象や列車荷重の影響により路盤の弾性変形が大きくなる現象により軌道保守量が増大する問題が生じている。これに、対処するために、昭和43年に、これまで基準がなかった路盤に対して明確な構造が示された。さらに昭和53年以降は、道路のアスファルト舗装と同様な構造の強化路盤が導入され、軌道保守の低減に効果を上げている。しかし、鉄道営業線路盤の大部分は、昭和43年以前に施工されたものであり、その支持特性は明確でなく、中には、軟弱路盤と呼ばれるK値の小さい路盤も多々あり、軌道保守に多大な労力を要している。このような状況において、鉄道営業線路盤の支持特性を明確にし、経済的かつ合理的施工で、列車荷重に対して耐久性のある路盤強化工法を提案することは、軌道保守の低減に繋がるものであり、鉄道各社からの要請も高い。
 そこで、本研究では、営業線路盤の支持特性についての研究を行うとともに、軌道保守の省力化のために主として行う路盤強化は、路盤噴泥対策と列車走行時の路盤の変形対策の二つであることから、路盤噴泥対策として実績があり、今後も適用されると考えられる安定処理による強化工法の列車荷重に対する耐久性、および、列車走行時の路盤の変形対策として、施工性に優れ、効率的かつ経済的で耐久性に優れた新しい工法を提案するために立体補強材による強化工法に関する研究を行った。
 本研究論文は第1章~第5章からなり、以下に、各章の概略と得られた知見について述べる。
 第1章では、営業線路盤の挙動とその強化に関する研究の現状について述べるとともに、路盤の支持特性を明らかにすること、経済的かつ合理的施工で耐久性に優れ、より効果のある路盤強化工法を提案することの必要性についてまとめ、本研究の目的を明らかにしている。
 第2章では、鉄道営業線路盤の支持特性を明らかにするために、現地の地盤調査や振動測定、解析を行い、列車走行時の路盤の変位は、路盤以下の強度に依存し、路盤変位が0.mm以下であれば軌道保守量は少ないことを明らかにした。また、営業線路盤の構造は道床バラスト貫入層と地盤からなる2層構造であり、道床バラスト貫入層の深さとその強度は地盤のK値に依存することを示すとともに、列車走行時の路盤の変位と路盤のK値との関係を明確にし、2層系弾性解析により路盤の変位から路盤のK値を測定することが可能であることを示した。
 第3章は、鉄道営業線における路盤強化工法に関し、路盤噴泥対策として従来から行われ、今後も適用されると考えられる「安定処理による路盤強化工法」および列車走行時の路盤の変形対策として新たに提案した「立体補強材を用いた路盤強化工法」についての研究であり、安定処理による路盤強化工法については、安定処理土の基本的な強度特性を示すとともに、繰返し荷重の作用による安定処理土の沈下は、載荷応力と安定処理土の強度の比である載荷応力比に依存し、載荷応力比が0.2以下でほとんど沈下を生じず、安定処理土の強度が載荷応力の5倍以上あれば列車の繰返し荷重に対して十分な耐久性が確保できることを明らかにした。さらに、安定処理土の変形係数は、列車荷重により生ずるひずみを考慮すると一軸圧縮強さの500倍以上あることも示した。
 立体補強材を用いた路盤強化工法については、立体補強材と砕石との複合構造体の変形係数を明らかにするとともに、砕石充填の際に生ずる補強材のひずみが大きいほど、充填材の密度が大きいほど、高い剛性、支持力が得られることを示した。また、本工法は置換工法に比べ、路床部の変形・残留沈下抑止効果、約1.8倍の荷重分散効果があることを明らかにし、列車相当の繰返し荷重に対して十分な耐久性があることを示した。さらに、立体補強材に充填する砕石は、一般的な営業線では体積変化の少ない単粒度砕石、施工時間が十分に確保できる場合には粒度調製砕石等の粒度分布の良い砕石が適していることを示し、現地での試験施工により、列車走行時の路盤の鉛直変位が低減を確認した。これらのことから、本工法が軌道保守の低減対策として十分適用可能であることが判明した。
 第4章では、第3章で得られた結果を基に、2層系弾性解析を用い、安定処理による路盤強化工法については列車の繰返し荷重に対する耐久性を考慮した設計法、立体補強材による強化工法については列車走行時の路盤の変位を抑止を目的とした設計法を提案している。
 第5章では、本研究で得られた知見を要約して結論として述べている。

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