機械システムの動的シミュレーションに関する研究
氏名 今西 悦二郎
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第52号
学位授与の日付 平成4年3月25日
学位論文題目 機械システムの動的シミュレーションに関する研究
論文審査委員
主査 教授 伊藤 廣
副査 教授 浅野 重初
副査 教授 矢鍋 重夫
副査 教授 丸山 暉彦
副査 九州大学 教授 田村 英之
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目次
記号 p.6
第1章 緒論 p.9
1.1 諸言 p.9
1.2 動的システムのシミュレーション p.11
1.3 従来の研究 p.12
1.4 本研究の目的と概要 p.15
第2章 分割法による動的シミュレーションの精度評価 p.18
2.1 諸言 p.18
2.2 区間連成-定形分割法(CCF法) p.20
2.3 精度検討法と試計算 p.25
2.4 結合誤差パラメータと誤差評価 p.28
2.5 誤差発生の物理的解釈と精度改善 p.37
2.6 改良形CCF法の精度検討 p.45
2.7 適用例 p.54
2.8 結言 p.57
第3章 モード合成法による動的シミュレーションの効率化 p.59
3.1 諸言 p.59
3.2 物理座標に再変換するモード合成法 p.60
3.3 ダミーマス法 p.66
3.4 はり構造モデルを用いた試計算による精度検討 p.69
3.5 物理座標の一部に有意成がない場合の解法 p.73
3.6 骨組構造および板構造モデルを用いた試計算による精度検討 p.80
3.7 適用例 p.87
3.8 結言 p.87
第4章 リンク機構のシミュレーション p.89
4.1 諸言 p.89
4.2 弾性振動を含む大変位要素の解析 p.89
4.3 大変位トラス要素の解析 p.91
4.4 シーブ付き大変位トラス要素の解析 p.93
4.5 大変位はり要素の解析 p.95
4.6 解析例による精度検証 p.102
4.7 クレーン運転時のシミュレーション p.107
4.8 結言 p.112
第5章 油圧系を含むリンク機構の動的シミュレーション p.113
5.1 諸言 p.113
5.2 大変位シリンダ要素の解析 p.113
5.3 配管要素の解析 p.119
5.4 バルブ要素の解析 p.120
5.5 リリーフ弁、チェック弁、ポンプ要素の解析 p.121
5.6 解析例による精度検証 p.123
5.7 油圧ショベルのブーム起伏と旋回の同時操作に関する動的シミュレーション p.126
5.8 結言 p.132
第6章 油圧系と制御系を含むリンク機構の動的シミュレーション p.133
6.1 諸言 p.133
6.2 タワクレーンとつり荷水平引込み制御 p.133
6.3 つり荷水平引込み制御システムの数学モデル p.138
6.4 つり荷水平引込み制御の動的シミュレーション p.141
6.5 結言 p.149
第7章 結論 p.150
謝辞 p.152
本研究に関連した発表論文 p.153
I.学会論文 p.153
II.講演論文および企業技法等 p.154
著者が発表したその他の論文 p.156
参考文献 p.157
付録 p.162
付録1.Newmark-β法の計算式 p.163
付録2.SINSYS USER'S MANUAL抜粋 p.164
付録3.非線形動的解析システム"COMET-SINDYS" p.166
付録4.動的応答解析システムCOMET-SINDYS p.168
本研究は、機械システムの設計に要求されている、複雑でかつ大規模な動的問題や、建設機械などで利用されている動的伝達方式である油圧パワラインと機械・構造系との連成を考慮し、しかもアタッチメントの弾性振動を含んだリンク機構系の動的問題を効率よくかつ汎用的に取扱える動的シミュレーション技術を確立することを目的としている。さらには、これらの解析技術を用いて機械システムの設計に利用することのできる汎用的な動的解析システムCOMET-SINDYSを開発しようとするものである。以下にその内容および特徴を示す。
(1)機械システムの動的シミュレーションにおける分割法の精度検討法を提案し、精度改善手法を得ること。
(2)機械システムの動的シミュレーションを効率よく行うためのモード合成法を開発し、動的解析システムと結合するとともに実問題適用時の問題点を示し、その対処法を得ること。
(3)油圧系を含むリンク機構の動的シミュレーションに関する理論解析を行って、油圧ショベルのブーム起伏と旋回の同時操作に関する動的シミュレーションに適用すること。
(4)油圧・制御系を含むリンク機構の動的シミュレーションに関するモデル化の方法を示し、タワークレーンのつり荷水平引込み制御の動的シミュレーションに適用すること。
第1章は、緒論である。機械システムの動的シミュレーションに関する従来の研究の経緯について述べ、従来の研究を紹介し、機械システムの動的シミュレーションの研究に関する現在課題を明記し、本研究の目的を述べた。
第2章は、機械システムの動的シミュレーションにおける分割法として連成力を時間ステップ内で一定とする方法(区間連成力-定形分割法)に関して、分割方法や時間きざみのあらさが解析精度に与える影響を調べ、適用上の留意点や適用限界を明らかにした。さらに、本手本の改善をめざして、誤差発生原因の物理的解釈を試み、それに基づいた制度改善方法の提案、および提案した手法の制度検討を行った。
第3章は、機械システムの動的シミュレーションを効率よく行うためのモード合成法として、モード座標で表された分系を結合部の物理座標を含んだ座標系に再変換するモード合成法を提案した。また、不拘束モード法の実用的な精度改善方法として、各分系の結合領域にダミーマスを付けることによって、採用モードが全体系の低次モードを表しやすいようにして精度を改善するダミーマス法を提案した。また、低次のモード座標を物理座標に変換する方法では、物理座標間に従属関係が生じたり、採用モードの中に有意性を持たない自由度を物理座標に指定する可能性があることを指摘し、その改善方法を提示した。さらに改善効果を見るために、線形の系からなるいくつかのモデルに適用して、精度の検討を行った。
第4章は、第5章、第6章の研究と深い係り合いのある頭井らの研究(49)を紹介した。第5章、第6章では頭井らによる研究をベースにして、油圧パワライン、制御系、大変位運動などを含めたリンク機構の動的シミュレーションに関する研究を行うが、頭井らの研究は大変位弾性振動の応答解析法に全変位理論を用いていることなど、第5章、第6章の研究に適していることを示した。
第5章は、油圧パワライン、制御系、大変位運動などを含めたリンク機構の動的シミュレーションに関する研究の第一段階として油圧パワラインと大変位運動の連性解析をとりあげ、そのための基本要素として大変位シリンダに関する理論解析を行った。まず、大変位シリンダ要素の理論と油圧系の各要素の理論的取扱いについて述べ、その後いくつかのモデルを用いて精度検証を行い、最後に実機への適用例として油圧ショベルのブーム起伏と旋回の同時操作に関する動的シミュレーションについて述べた。
第6章は、油圧パワラインだけでなく制御系も含んだリンク機構の動的シミュレーションをとりあげ、タワクレーンのつり荷水平引込制御装置の性能予測および実測値との比較検討を行った。
本研究によって、複雑かつ大規模な動的問題を、効率よく汎用的に取扱うことができるシミュレーション技術を確立し、動的シミュレーションがメカトロニクスの進む機械システムの設計に幅広く活用できるものと考えられる。