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精密部品加工への超塑性の応用に関する研究

氏名 木村 南
学位の種類 工学博士
学位記番号 博甲第29号
学位授与の日付 平成2年12月31日
学位論文の題目 精密部品加工への超塑性の応用に関する研究
論文審査委員 主査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 矢田 敏夫
 副査 教授 小島 陽
 副査 教授 高田 孝次
 副査 千葉大学 教授 広橋 光治
 副査 千葉工業大学 教授 小林 勝

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目次
第1章 緒論 p.1
1-1 研究の背景と従来の研究 p.1
1-1-1 研究の背景 p.1
1-1-2 従来の研究 p.2
1-2 本研究の目的および論文の構成 p.5
参考文献 p.6
第2章 精密部品加工への超塑性材料の応用に関する検討 p.7
2-1 緒言 p.7
2-2 精密機械材料に要求される特性 p.8
2-2-1 腕時計外装部品 p.8
2-2-2 プリンタ部品 p.11
2-2-3 ロボットハンド p.15
2-3 精密部品としての超塑性材料の選択 p.15
2-4 結言 p.20
参考文献 p.23
第3章 薄板材の超塑性精密鍛造 p.24
3-1 緒言 p.24
3-2 実験方法 p.25
3-3 実験結果および考察 p.28
3-3-1 定速成形法による実験結果および考察 p.28
3-3-2 定圧成形法による実験結果および考察 p.37
3-3-3 繰り返し加工法による実験結果および考察 p.42
3-4 エネルギ法による解析 p.47
3-5 結言 p.58
参考文献 p.58
第4章 小型超塑性鍛造機の試作と薄板材の超塑性エンボス成形 p.59
4-1 緒言 p.59
4-2 小型超塑性鍛造機の試作 p.61
4-2-1 材料試験機による超塑性鍛造の問題点 p.61
4-2-2 小型超塑性鍛造機の設計思想 p.61
4-2-3 力積制御法による超塑性鍛造の予備的検討 p.68
4-3 簡易エンボス成形 p.71
4-3-1 実験方法 p.71
4-3-2 実験結果および考察 p.73
4-4 連続成形方法および試作例 p.89
4-4-1 連続成形方法 p.89
4-4-2 試作例 p.92
4-5 結言 p.94
参考文献 p.96
第5章 薄板材の超塑性精密鍛造における転写精度および解析 p.97
5-1 緒言 p.97
5-2 実験方法 p.98
5-3 実験結果および考察 p.103
5-4 転写機構の解析 p.112
5-4-1 実験的解析 p.112
5-4-2 転写機構モデル p.116
5-5 実験的解析およびシミュレーション p.120
5-6 結言 p.127
参考文献 p.127
第6章 超塑性鍛造で粉末を表面に圧入する条件 p.128
6-1 緒言 p.128
6-2 実験方法 p.129
6-3 実験結果および考察 p.131
6-4 圧入接合機構の解析 p.139
6-4-1 実験的解析 p.139
6-4-2 圧入接合モデル p.150
6-5 定圧成形法の応用 p.152
6-6 結言 p.154
参考文献 p.154
第7章 腕時計文字板への超塑性精密鍛造法の応用 p.155
7-1 緒言 p.155
7-2 一体成形文字板の試作 p.156
7-3 少量生産への対応 p.167
7-3-1 文字板用超塑性薄板材の開発 p.167
7-3-2 簡易金型の開発 p.171
7-4 超塑性を用いる文字板の加工設計方法の提案 p.174
7-5 文字板の製作 p.184
7-6 結言 p.191
参考文献 p.192
第8章 超塑性鍛造による圧入接合法の精密機械部品への応用 p.193
8-1 緒言 p.193
8-2 プリンタ紙送りロールへの応用 p.193
8-3 ロボットハンドへの応用 p.196
8-4 機能性粉末を圧入接合する複合材料の開発 p.201
8-4-1 磁気シールド材 p.201
8-4-2 表面多孔質材 p.209
参考文献 p.209
第9章 総括 p.210
9-1 まとめ p.210
9-2 今後の課題 p.211
謝辞 p.213
著者の学術研究業績 p.214

 近年、精密機械にも高付加価値化と多品種少量生産および製作工程の削減が求められ、さらに一部品に複数の機能を付加した複合材料部品も必要となってきた。しかし精密部品に多用される薄板材料を鍛造することは難しく、また従来切削・研削加工で仕上げていた表面を塑性加工で代替することも困難であった。一方金属基複合材料は製造条件が厳しく、強化材料により機械加工も困難でった。
 そこで本研究では、これらの技術課題を達成するために、超塑性を利用する薄板材料の精密鍛造技術を開発し、複数の部品を一体化成形させることにより工程数を削減すること、および超塑性による塑性流動を利用して超塑性成形と同時に機能性粒子を表面に付加する複合材料部材の製作技術の開発を目的とする。
 第1章では、本研究の背景について述べ、次に従来の超塑性材料とその加工方法について調査し、本研究の目的と開発課題について述べている。開発課題としては、超塑性薄板の成形に適する超塑性鍛造技術の開発、小型の超塑性鍛造機の開発および超塑性流動を利用した複合材料の開発が必要であることを述べている。
 第2章では精密機械への要求機能を分析し、適用部品としては腕時計文字板、プリンタの紙送りロール、ロボットハンドのチャックを挙げている。精密部品に応用する超塑性材料としては、超塑性成形温度が523Kと比較的低温であること、表面処理性を考慮して超塑性Zn-Al合金(SPZ)が適当であるとしている。
 第3章では薄板材の超塑性精密鍛造法として、ひずみ速度依存性を利用した低速成形法、一定のひずみ速度で成形する超塑性成形とその後に一定荷重を保持するクリープ成形を組み合わせた低圧成形法、超塑性材料の加工硬化性がほとんどないことを利用した繰り返し加工法を提案している。これらの成形方法の成形条件が力積で整理できることをエネルギ法により解析している。
 第4章では力積制御が可能な小型超塑性鍛造機の開発および本装置を利用して、超塑性薄板の上にダミー用の超塑性薄板を重ねて鍛造する簡易エンボス成形法の開発と成形中の塑性流動についての解析を行っている。
 第5章では超塑性材料のすぐれた成形性を生かすために、超塑性鍛造による転写性について検討し、15%以上の圧縮加工をすれば、1.5μm程度の粗さも転写成形可能なことを実験的に明らかにしている。さらに密閉型を利用すれば表面粗さ0.2μmRmax程度の鏡面も転写成形可能であることを示している。加えて板厚/直径比が0.03の薄板に対して押出し比900の加工を行うと、m値の高い超塑性SPZの方が加工硬化性が高いAlよりも変形が均一であることを実験およびシミュレーションから示している。
 第6章では超塑性材料の良好な塑性流動性を利用して、セラミック粉末材料を粘着剤でSPZ表面に仮付し、超塑性鍛造で粉末を圧入接合する表面複合材料の製作方法・条件および機構について検討している。得られた表面複合材料では、圧入された粉末の突起高と圧入効率が、粉末に加わる圧力と素材の降伏応力の比である応力比γにより整理できることを示している。セラミック球を用いて圧入機構を解析し、12<γで良好な圧入状態が得られることを示している。
 第7章では第5章までに得られた超塑性鍛造技術を腕時計文字板の成形への応用例を示している。板厚が0.3~0.6mmのSPZ薄板材料の板厚/直径比が0.01~0.02というブランクから15部品を一体成形した文字板を成形している。成形条件が力積で整理できること、また一体化成形する加工条件の簡易計算プログラムを作成し実際の成形結果と一致したことを示している。
 第8章では一方超塑性精密鍛造法による粉末圧入接合材の応用例が示されている。SiC粉末圧入接合材によるプリンタ紙送りロール、ロボットハンドチャックの製作、SiC粉末圧入接合材が突起高さの増加につれて摩擦係数を増加し、工具鋼と同等以上の耐摩耗性を示すことを述べている。また、アモルファス粉末圧入接合材は磁気シールド性を示した。さらにNaCl粉末を圧入後に溶解させた表面多気孔材の製作について述べている。
 第9章では本研究の総括を行い、精密部品加工への超塑性の応用は、薄板材料の一体成形による工程削減および成形と同時に表面のセラミック等を圧入接合して必要な部分にのみ機能性の複合材料化できることの意義について述べている。
 最後に今後の課題として、金属間化合物等の機能材料の超塑性化と量産性のある超塑性鍛造機の開発を挙げている。

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