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コンクリート中の塩化物の管理分析法に関する研究

氏名 荒川 豊
学位の種類 工学博士
学位記番号 博甲第42号
学位授与の日付 平成3年3月25日
学位論文題目 コンクリート中の塩化物の管理分析法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 山田 明文
 副査 教授 藤井 信行
 副査 教授 松下 和正
 副査 助教授 吉國 忠亜
 副査 教授 桃井 清至
 副査 助教授 丸山 久一

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目次
第一章 緒論 p.1
第二章 クロム酸銀との置換反応を利用した塩化物定量法の開発 p.5
2-1 序言 p.6
2-2 実験 p.8
2-2-1 原理 p.8
2-2-2 装置 p.8
2-2-3 試薬 p.9
2-2-4 方法 p.10
2-3 結果および考察 p.12
2-3-1 置換反応に必要な振り混ぜ時間 p.12
2-3-2 置換反応に必要なクロム酸銀の量 p.12
2-3-3 クロム酸銀の解離におけるpH依存性 p.15
2-3-4 中和剤の選択と中和に必要な量 p.18
2-3-5 緩衝溶液の選択 p.20
2-3-6 弱酸性領域におけるクロム酸銀の解離 p.22
2-3-7 緩衝溶液の適量 p.24
2-3-8 測定時の溶液処理 p.24
2-3-9 試料の色の影響 p.26
2-3-10 呈色安定性 p.30
2-3-11 検量線 p.30
2-3-12 セメントペースト液の調整 p.34
2-3-13 セメントペースト液に対する本法の適用結果 p.35
2-4 二章のまとめ p.38
第三章 ディスポーザブルカートリッジの開発 p.41
3-1 序言 p.42
3-2 実験 p.43
3-2-1 装置 p.43
3-2-2 試薬 p.43
3-2-3 方法 p.44
3-3 結果および考察 p.46
3-3-1 ラボラトリー法における未反応のクロム酸銀および塩化銀のろ過法の改良 p.46
3-3-2 アンモニア添加操作の削除 p.49
3-3-3 中和剤(0.1N硝酸)添加操作の削除 p.53
3-3-4 シリンジ内ホウ酸塩緩衝溶液 p.53
3-3-5 置換反応カラムの開発 p.56
3-3-6 押し出し速度の影響 p.60
3-3-7 標準塩化ナトリウム水溶液に対する精度と直線性 p.62
3-4 三章のまとめ p.64
第四章 ディスポーザブル法を用いた塩化物の管理分析 p.69
4-1 序言 p.70
4-2 実験 p.71
4-2-1 装置 p.71
4-2-2 試薬 p.72
4-2-3 試料調整 p.72
a.セメントペーストおよびフレッシュコンクリートの配合 p.72
b.硬化体試料の調整 p.75
c.硬化体分解試料溶液の調整 p.75
4-2-4 方法 p.77
a.フレッシュコンクリート中の塩化物分析操作 p.77
b.セメント硬化体中の塩化物分析操作 p.79
4-3 結果および考察 p.79
4-3-1 フレッシュコンクリート中の塩化物の現場分析法 p.79
a.セメントペースト中の塩化物の定量 p.79
b.フレッシュコンクリート中の定量 p.82
4-3-2 硬化コンクリート中の塩化物分析への応用 p.86
a.シリンジ内のpH調整剤の濃度と適量 p.89
b.セメント硬化体用検量線 p.93
c.セメント硬化体中の塩化物の定量 p.96
4-4 四章のまとめ p.99
第五章 総論 p.101
引用文献 p.106
外部発表 p.109
謝辞 p.111
付録 p.112

 近年、コンクリート中に混入した塩化物による鉄筋の腐食が大きな社会問題となり、「塩害」問題を引き起こしている。建設需要の増大とともにあらかじめ工場で練り上げられたレディーミックストコンクリートが主流になっている今日、フレッシュコンクリート中の塩化物の管理は重要な課題となっている。現在、現場におけるフレッシュコンクリート中の塩化物の管理分析法としては、モール法を応用した試験紙法、ならびに電気化学的方法を用いたボルタンメトリー、クーロメトリー、イオン電極法などが用いられている。これに対し、吸光光度法を用いた塩化物の分析法は、優れた方法にもかかわらず、分析方法の繁雑さや、使用機器に対する熟練度の必要性などから十分に利用されていない。
 本論文は、「コンクリート中の塩化物の管理分析法に関する研究」と題し、クロム酸銀と塩化物イオンとの置換反応を利用した吸光光度分析法を開発し、(1)コンクリート中の塩化物管理に対する分析法の確立、(2)管理分析に耐えるディスポーザブルカートリッジの開発、及び(3)硬化コンクリート中の塩化物分析への適用、について研究を行ったもので、以下の5つの章から構成される。
 第1章「緒論」では、コンクリート中の塩化物の管理が必要とされる状況を説明し、従来のコンクリート材料中の塩化物の規制経過について述べた。次に、個別の材料に対する塩化物規制では不十分であり、フレッシュコンクリートになった状態での総量規制に移行した理由を述べ、従来の塩化物分析法について概説した。最後に本研究の目的出ある吸光光度法を利用した現場での塩化物の管理分析法の可能性についてふれ、その工学的、学術的寄与について述べた。
 第2章「クロム酸銀との置換反応を利用した塩化物定量法の開発」では、塩化物イオンと固形クロム酸銀との置換反応によって遊離するクロム酸イオンの吸光度を測定する方法が、測定原理の単純さにくわえ、呈色安定性や定量範囲などの点で優れていることに着目し、フレッシュコンクリート中の塩化物の定量法として確立するための分析条件の検討を行った。コンクリート試料採取方法、使用緩衝溶液の適正、吸光度測定に持っていくまでの諸操作、呈色安定性などの分析に際して必要となる数多くの因子に対し検討を加えた。17~170mMの塩化物濃度のセメント液に対し、基準値に対する相対誤差3%で定量でき、建設省の評価基準、10%以内を十分に満足することを明らかにした。
 第3章「ディスポーザブルカートリッジの開発」では、前章で確立した分析法を、現場で迅速に、より簡便に管理分析法として適用できるよう、改良研究を行った。メンブランフィルターユニットの間にクロム酸銀微粉体とアルミナ分散剤を封入したディスポーザブルカートリッジを開発し、押し出し時間30秒以内に99%の置換反応効率が得られることを明らかにした。これによって、個-液相界面における置換反応を定常的に行わせ、置換反応に続く個-液相界分離を再現性良く、簡便に迅速に行わせることが可能となり、前章で30分要した分析所要時間を3分程度に短縮することができた。
 第4章「ディスポーザブルカートリッジ法を用いた塩化物の管理分析」では、実際のコンクリート練り混ぜ現場における塩化物の管理分析法としての適用性を検討した。一般的な配合設計により練り混ぜたフレッシュコンクリートに対し、本法を適用し電気化学的方法並びに試験紙法との比較検討を行った。JIS公定法のモール法で得られた基準値に対し相対誤差3%の精度が得られ、現場における管理分析法として有用であることを明らかにした。さらに、硬化コンクリート中の塩化物の分析にも適用し、同様に相対誤差3%の精度で塩化物を定量できることが分かった。
 第5章「総論」では、本研究の総括を行い、置換反応の利用による選択性をいかした化学分析法と、吸光光度法という機器分析法との長所を複合化したディスポーザブルカートリッジ法の意義について述べた。最後に今後の問題点と展望を述べ結論とした。

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