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チタンを含む系のゾルーゲル反応の解析と応用

氏名 会沢 守
学位の種類 工学博士
学位記番号 博甲第41号
学位授与の日付 平成3年3月25日
学位論文題目 チタンを含む系のゾルーゲル反応の解析と応用
論文審査委員
 主査 教授 藤井 信行
 副査 教授 松下 和正
 副査 教授 山田 明文
 副査 助教授 高田 雅介
 副査 助教授 小松 高行
 副査 助教授 野坂 芳雄

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目次
第I章 序論 p.1
I-1.研究の背景 p.1
I-2.ゾルーゲル法について p.2
a.加水分解 p.3
b.重縮合 p.3
c.ゲル化 p.4
d.乾燥 p.5
e.焼成 p.7
I-2-1.TiO2-SiO2系ゾルーゲル反応 p.8
一般的問題点 p.10
評価法について p.11
チタンアルコキシドの反応制御について p.12
従来法とその問題点 p.13
I-3.チタネートカップリング剤について p.15
I-3-1.チタネートカップリング剤の問題点 p.18
I-4.本研究の目的と論文の構成 p.19
文献 p.21
第II章 チタンアルコキシドの加水分解・重縮合反応の解析と制御 p.24
FT-IRについて p.28
II-1.実験 p.30
II-1-1.チタンキレートの調製 p.30
II-1-2.加水分解 p.31
II-1-3.水分測定 p.31
GC p.31
カール・フィッシャー p.32
FT-IR液体ATR p.32
II-2.結果 p.34
II-3.考察 p.38
II-4.結論 p.42
文献 p.43
第III章 TiO2-SiO2二成分系ゾルーゲル反応 p.44
III-1.実験 p.45
III-1-1.試料の調製 p.47
III-1-2 FT-IR液体ATR法によるゾルーゲル反応の均一性の評価 p.47
III-1-3.XRDによる熱処理ゲルの均一性の評価 p.48
III-2.結果 p.50
III-3.考察 p.59
III-4.結論 p.63
文献 p.65
第IV章 中空TiO2ファイバーの作製 p.66
IV-1.実験 p.67
IV-2.結果及び考察 p.68
IV-3.結論 p.74
文献 p.75
第V章 高濃度塩酸酸性条件下でのTiO2-SiO2ガラスの作製と評価 p.76
V-1.実験 p.77
V-1-1.見かけの均一領域の決定 p.77
V-1-2.ゲルの均一性の評価 p.79
V-1-3.熱処理ゲルの均一性の評価 p.81
V-1-4.乾燥制御剤の評価 p.81
V-1-5.TiO2-SiO2ガラスの評価 p.83
V-2.結果 p.84
V-3.考察 p.95
V-4.結論 p.108
文献 p.109
第VI章 低温結晶化BaTiO3薄膜のEL素子への応用 p.111
VI-1.実験 p.111
VI-2.実験及び考察 p.113
文献 p.115
第VII章 チタネートカップリング剤の作用機構の解明 p.116
VII-1.チタネートカップリング剤の構造解析 p.118
VII-1-1.実験 p.118
VII-1-2.結果 p.120
VII-1-3.考察 p.120
VII-2.酸化チタン粉末表面上におけるチタネートカップリング剤の挙動 p.121
VII-2-1.実験 p.122
VII-2-1-1.チタネートカップリング剤の合成 p.122
VII-2-1-2.カップリング剤の評価 p.124
VII-2-1-3.フィラー分析 p.124
VII-2-2.結果と考察 p.126
分散性向上効果 p.126
カップリング剤処理の物質収支 p.128
表面分析 p.130
VII-2-3.結論 p.134
文献 p.135
第VIII章 結論 p.136
後記 p.139
謝辞 p.140

 本論文は「チタンを含む系のゾルーゲル反応の解析と応用」と題し、八つの章から構成されている。
 ゾルーゲル法は、有機又は無機の金属化合物を出発原料として得られる無機ポリマーを焼成することを特徴とする、ガラス・セラミックスの新しい合成法である。
 チタンは、単独ではTiO2粉末の形で白色顔料として用られることが多いが、他元素と組み合わせることで多くの優れた性質を有する材料を与る。TiO2-SiO2ガラスもそのひとつで、TiO2含有が7WT%程度のときに熱膨張率がゼロになることが知られている。このガラスは、従来の溶融法での合成が困難であり、ゾルーゲル法による合成が検討されてきている。
 しかし、多成分系のゾルゲール反応は金属アルコキシド間の反応性の違いが大きく、そのままでは均一な反応を行うのが困難である。TiO2-SiO2系の場合にはチタンアルコキシドの反応性を制御する必要があるが、系統立てた検討は殆ど行われていない。また、従来の研究では、ゾルーゲル反応の均一性に及ぼす金属アルコキシドの反応性の影響には明らかにされていない。
 本研究では、ゾルーゲル法によるガラス・セラックス合成の際の重要な出発原料であるチタンアルコキシドの反応性を明らかにした上で、単独あるいは他金属アルコキシドとの反応を高度に制御して、より優れた性質の材料をより適正な方法で合成することを目的とした。
 また、ゾルーゲル反応との類似性を示すチタネートカップリング剤(表面処理剤)の作用機構の解明も行った。
 第I章では、チタンを含む系のゾルーゲル反応及び表面処理剤への応用の研究背景と解決すべき問題点について述べた。
 第II章では、主としてFT-IR液体ART法によるチタンアルコキシドの反応の解析について述べた。
 チタンアルコキシドの重縮合反応は、βジケトンとグリコールによるキレート化で制御でき、グリコールの鎖長の長いものほど立体効果による安定化への寄与が大きかった。また、反応のpHが低くなるほど重縮合反応は制御された。
 第III章では、主としてFT-IR液体ART法を用いたTi-O-Siバンド(915◆-1)の検出による、二成分系ゾルーゲル反応の均一性の定量的評価について述べた。
 均一性の高い二成分系ゲルは、最も安定なチタンキレートと最も反応性の高いシリコンアルコキシド(TMOS)の組み合わせで得られた。また、反応のpHが低意ほど均一性が向上することも示された。しかし、チタンキレートとシリコンアルコキシドの自己重縮合反応速度を単純に揃えることは、必ずしも、ゲルの均一性向上には結びつかなかった。
 第IV章では、高濃度塩酸酸性条件下でのチタンアルコキシドの反応性制御について述べた。
 一定量の塩酸がゾルに加えられると、チタンの加水分解物の沈殿形成が制御されることが示された。また、このゾルから中空のファイバーが極めて容易に紡糸されることが見い出された。中空ファイバーは、ゲルファイバー中に取り込まれた微小気泡が、ゲルの個化に伴い見かけ上成長するために形成される。
 第V章では、高濃度塩酸酸性条件下でのTiO2-SiO2ゾルーゲル反応とガラスの作製について述べた。
 従来のゾルーゲル反応では、反応操作が繁雑で大希釈系を必要とする決点があったが、チタンアルコキシドの一部を四塩化チタンに置き換えることでこの欠点を解消した。
 反応は、四塩化チタンを含むチタン及びシリコンアルコキシド混合液を、同量のメタノールで希釈した水に添加するだけの僅か1ステップで迅速且つ容易に完了した。
 FT-IR及びXRDによるゲルの分析から、Ti/Si≦10/90, C1/Ti>1.2/1.0(molar ratio)のとき、ゲルは均一で結晶化は全く観察されなかった。また、乾燥制御剤として炭酸プロビレンが有効であることを見いだし、25mφの透明なバルクガラスを得た。TiO2含有が6.93wt%のガラスは、-0.61x10-7/度という極めて低い熱膨張率を示した。
 第VI章では、低温結晶化チタン酸バリウムのEL素子への応用について述べた。反応溶媒に高沸点のアルコールを用いて結晶化温度を従来の600度から200度にまで大幅に曵き下げた。このバインダーを用いたEL素子は、シリカバインダーのものに比べて高い輝度を示した。
 第VII章では、チタネートカップリング剤の作用機構の解明について述べた。
 NMRやFT-IR拡散反射法などを用いた分析の結果から以下の知見を得た。
 フィラー表面上に吸着したチタネートカップリング剤は隣接する分子間で縮合を行う。それぞれのチタンゲンシに結合する親油性基は、互いの相互作用でその配交性が変化し、処理フィラーのマトリックスへの分散性に影響を及ぼす。
 第VIII章は、以上のまとめである。

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