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初期不整を有する内圧容器の非線形応力解析に関する研究

氏名 大谷 幸広
学位の種類 工学博士
学位記番号 博甲第35号
学位授与の日付 平成3年3月25日
学位論文の題目 初期不整を有する内圧容器の非線形応力解析に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 矢田 敏夫
 副査 教授 林 正
 副査 教授 栗田 政則
 副査 助教授 長井 正嗣
 副査 助教授 古口 日出男

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目次
記号
第1章 緒論
1-1 緒言 p.1
1-2 圧力容器の規格・基準 p.3
1-3 既往の研究 p.8
1-4 本研究の目的と各章の概要 p.9
第2章 大変形理論に基づく非線形弾性解析
2-1 緒言 p.12
2-2 微小変形理論による線形解析の問題点と大変形解析の必要性 p.13
2-3 初期変形を有する平板の非線形弾性解析 p.14
2-4 形状係数κ(ξ)の一般解 p.17
2-4-1 固定支持(Fixed)に対する形状係数κ(ξ)
2-4-2 単純支持(Simply Supported)に対する形状係数κ(ξ)
2-5 任意の初期変形形状に対する形状係数κ(ξ) p.20
2-6 考察 p.22
2-7 実験値との比較・検討 p.24
2-7-1 実験(1)
2-7-2 実験(2)
2-7-3 実験(3)
2-8 結言 p.30
第3章 赤道部に帯状軸対称変形を有する球形圧力容器のひずみ集中
3-1 緒言 p.32
3-2 大変形理論に基づくひずみ集中の定式化 p.34
3-2-1 固定支持(Fixed)の場合
3-2-2 単純支持(Simply Supported)の場合
3-3 各種の初期変形形状に対する形状係数の計算例 p.42
3-3-1 初期変形形状が1次式の場合(Type 1)
3-3-2 初期変形形状が2次式の場合(Type 2)
3-3-3 初期変形形状が3次式の場合(Type 3)
3-3-4 任意形状の初期変形に対する形状係数
3-4 数値計算例および考察 p.46
3-4-1 ひずみ集中に関する一般的考察
3-4-2 変形部の応力-ひずみ関係
3-5 実験値との比較 p.51
3-6 結言 p.56
第4章 周継手の子午線方向位置とひずみ集中の関係
4-1 緒言 p.57
4-2 解析方法 p.60
4-3 解析結果および考察 p.62
4-4 結言 p.69
第5章 凹入変形部と凸出変形部のひずみ集中に関する検討
5-1 緒言 p.70
5-2 直線(折れ線)状にモデル化した凹入・凸出角変形部の大変形解析 p.71
5-3 修正解析モデルによる変形部の大変形解析 p.76
5-4 理論式の適用方法と有限要素法解析の対応 p.78
5-5 結言 p.80
第6章 非軸対称の部分的初期変形を有する球形圧力容器のひずみ集中
6-1 緒言 p.82
6-2 非軸対称変形の有限要素モデルと解析方法 p.83
6-3 解析結果および考察 p.86
6-4 結言 p.91
第7章 初期変形部の残留応力とひずみ集中の関係に対する検討
7-1 緒言 p.92
7-2 解析モデル p.94
7-3 解析結果および考察 p.101
7-4 結言 p.106
第8章 結論 p.107
参考文献 p.112
付録A 第2章に関する補足 p.115
付録B 第3章に関する補足
B-1 微分方程式(3.20)について(式(3.14)-(3.20)の導出の詳細) p.116
B-2 式(3.20)の一般解について(式(3.20)-(3.44)の導出の詳細) p.117
B-3 特殊初期変形形状(η0(ξ)=ξ3, Type3)に対する変形部中央(ξ=0)での形状係数κφ(0), κθ(0)(式(3.49), (3.50)の導出例 p.123
B-4 パラメータβが虚数となる場合の補足 p.126
本研究に関する発表論文 p.129
謝辞 p.132

 工学的分野で用いられている各種の大型シェル構造物は、板を曲げ加工し、それを溶接して組立られている場合が多い。このため、種々の原因によって構造的な欠陥(初期不整)を生じている場合がある。特に、鋼板等を用いて組み立てられた大型圧力容器では、構造部材の接合部等に、板曲げ加工時の誤差や取付け時の目違いあるいは溶接時の熱変形等によって、幾何学的な初期不整(角変形等の面外変形、本論文ではこれらを初期変形と呼ぶ)を生じていることが多い。
 本研究で対象とする球形シェルは、完全な球形状において、膜力だけで内圧および内容物を保持できるなどの利点を有することから、高圧ガスホルダーや化学プラントの反応容器といった各種の内圧容器として、工学的分野で広く用いられている。ただし、大型で薄肉構造になるにしたがい、シェル厚さ程度のオーダーではあるが、完全形状からの幾何学的なずれ(初期変形)を生じ易くなり、これを完全になくすことは困難である。しかし、初期変形は圧力容器の部分的な強度低下を引き起こす原因となる場合があり、重要な問題である。すなわち、内圧の付加に伴って発生する膜応力によって、変形部には変形量に比例した曲げモーメントおよび径変化を生じる。その結果、曲げひずみおよび付加ひずみが発生し、これが膜成分に重畳されて局所的にかなり大きくひずみが集中する(本論文では、変形部における局所的なひずみの増大を"ひずみ集中"と呼ぶ)。したがって、圧力容器の使用条件に対して適正な許容初期変形量を明確にし、規定することがきわめて重要である。そこで、変形部に生じる応力およびひずみの大きさを正しく解析し、評価する必要があると考える。この場合の解析は、シェル構造物の膜力および曲げの両方に基づく変形の解析となる。また、一般に圧力容器は比較的薄肉であるため、変形部の応力・ひずみ-変位関係を正確に解析・評価するためには、変形部の幾何学的な非線形性(大変形挙動)を考慮して解析を行う必要がある。
 本論文では、大型球形内圧容器の溶接継手等に対する許容初期変形量を明確にすることを目的として、初期不整によって発生するひずみ集中の定式化・定量化の方法を、変形部の幾何学的非線形性を考慮して理論的・数値的に検討する。そして、初期不整に関する各種のパラメータが、ひずみ集中に及ぼす影響を詳細に論ずる。本論文は8章から成り、第2章では、圧力容器の継手部等に生じた初期変形によって発生するひずみの集中の定式化の方法について一般的考察を行う。すなわち、突合わせ溶接等によって初期変形を生じた平板の一軸引張問題を対象に、変形部の幾何学的非線形性を考慮したひずみ集中の定式化の方法を理論的に検討する。そして、微小変形理論による定式化の問題点と大変形理論に基づく定式化の必要性を示す。さらに、実験値との比較を行い、理論式の妥当性を検証する。第3章では、大型球形圧力容器が、赤道部に位置する周継手に沿って軸対称変形を生じている場合について、継手変形部に生じるひずみ集中の定式化の方法を大変形理論に基づいて検討する。そして、各種の初期変形形状および端部境界条件に対する理論式を導出する。また、得られた理論式をもとに、ひずみ集中の傾向と初期変形に関する各種パラメーターの関係について考察する。さらに、理論値と実験値および大型球形圧力容器による実測値との比較を行い、理論式の妥当性を検証する。第4章では、理論式の適用範囲の拡張を目的に、初期変形を生じた周継手の位置が球形シェルの子午線方向に角度を有している場合について有限要素法による数値解析を行い、継手位置がひずみ集中に及ぼす影響を明らかにする。第5章では、球形圧力容器の周継手に凹入変形を生じている場合と、これと幾何学的に対称な凸出変形を生じている場合を対称に、ひずみ集中に及ぼす初期変形形状の影響の重要性を示す。さらに、本問題に対する有限要素法解析における変形部の適切なモデル化の方法および理論式と対応関係とその適用方法を考察する。第6章では、球形圧力器の子午線方向および周方向の両方向に局所的な初期変形(非軸対称変形)部に発生するひずみ集中の傾向を、有限要素法解析によって検討する。そして、この結果を軸対称変形の場合と比較し、両者のひずみ集中の傾向の差異を明らかにする。また、初期変形の生じている範囲に関しては、理論式適用限界を検討する。第7章では、球形圧力容器の周継手に、幾何学的初期不整(初期変形)と力学的初期不整(残留応力)が同時に生じている場合について、継手変形部に発生するひずみ集中の定性的な考察を行う。第8章では、本研究で得られた結果を総轄的にまとめる。

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