本文ここから

境界要素法逆問題解析による平板内部残留応力の同定法に関する研究

氏名 冨島 俊彦
学位の種類 工学博士
学位記番号 博乙第14号
学位授与の日付 平成3年3月25日
学位論文の題目 境界要素法逆問題解析による平板内部残留応力の同定法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 矢田 敏夫
 副査 教授 伊藤 廣
 副査 教授 林 正
 副査 助教授 長井 正嗣
 副査 助教授 古口 日出男

平成2(1990)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次
主要記号 IV
第1章 緒論 p.1
参考文献 p.8
第2章 平板内部残留応力問題に対する境界要素法 p.10
2.1 緒言 p.10
2.2 順問題解析の境界条件 p.10
2.3 平板内部残留応力問題に対する境界要素法解析の定式化 p.12
2.3.1 積分方程式の定式化 p.12
2.3.2 数値解析のための離散化 p.19
2.4 境界積分 p.30
2.5 境界要素解析のプログラミング p.36
2.6 結言 p.39
参考文献 p.40
第3章 境界部の解析精度向上対策に関する実用的検討 p.41
3.1 緒言 p.41
3.2 既存プログラムによる計算 p.41
3.2.1 境界表面近傍の応力計算例 p.41
3.2.2 誤差の原因 p.43
3.3 境界要素法プログラムの改良 p.44
3.3.1 影響係数計算式の改良,BEMP1 p.44
3.3.2 境界表面部の応力計算式の改良,BEMP2 p.52
3.4 BEMP2の実用例 p.56
3.5 結言 p.59
参考文献 p.60
第4章 境界要素逆問題解析法の定式化 p.61
4.1 緒言 p.61
4.2 逆問題解析の境界条件 p.62
4.3 境界要素逆問題解析の定式化 p.63
4.4 結言 p.67
参考文献 p.68
第5章 逆解析法による平板内の局所残留応力の存在位置の同定法 p.69
5.1 緒言 p.69
5.2 数値シミュレーション p.69
5.2.1 解析対象 p.69
5.2.2 解析方法 p.70
5.2.3 解析結果 p.74
5.3 結言 p.86
参考文献 p.87
第6章 平板内部残留応力の分布の同定法 p.88
6.1 緒言 p.88
6.2 物体力による残留応力のモデル化 p.88
6.2.1 定式化 p.88
6.2.2 物体力による残留応力分布のモデル化 p.89
6.2.3 物体力による応力の理論式 p.90
6.3 応力分布の計算例 p.94
6.3.1 解析方法 p.94
6.3.2 解析結果 p.94
6.4 結言 p.99
参考文献 p.100
第7章 局所残留応力の存在位置の自動探索法および解析例 p.101
7.1 緒言 p.101
7.2 モデル化 p.102
7.2.1 定式化 p.102
7.2.2 物体力による内部応力の計算式 p.104
7.3 数値計算法 p.105
7.4 解析結果 p.108
7.5 結言 p.115
参考文献 p.116
第8章 結論 p.117
付録 p.120
(1)順解析プログラムの例 p.120
(2)逆解析プログラムの例 p.143
(3)内点応力計算式の影響係数の算出 p.163
本研究に関する発表論文 p.184
講演発表,資料等 p.185
謝辞 p.187

 溶接、加熱・冷却などの熱塑性加工により、部材内部に発生した残留応力を、定量的に推定し、評価することは、信頼性向上のためきわめて重要な問題である。しかし内部に生じている応力の状態を非破壊的に計測することは、実際には不可能である。
 近似的な計測方法としては、固体の表面から切削し、その応力変化の実測値から内部応力を推定する方法が考えられる。しかし、この破壊方式の計測を用いても、内部に生じていた応力を正確に定めることはできない。それは、切削により内部応力が変化し、再分布を繰り返すためである。
 また、理論的に残留応力を求めることは更に困難である。それは、残留応力発生の源となる固体内部の塑性ひずみを解析的に決定することは、きわめて難しい問題である。
 このように、いわゆる直接法によって、固体内部の残留応力を算出することは、現状では不可能と考えなければならない。
 そこで、本研究は熱塑性加工製品などの性能に重要な影響をもつ残留応力分布を、非破壊的に推定する近似計算法として、新しい数値解析法の提案を行うことが目的である。
 有限要素法や境界要素法等の数値解析法で、これまで一般的に扱われてきた問題は、順
問題と呼ばれ、
 (1)解析対象の領域および境界の形状
 (2)境界条件
 (3)領域内の支配方程式
 (4)領域内の材料定数などの諸定数
 (5)領域内の作用している負荷
がいずれも既知であるとの仮定のもとに解析が行われている。
 一方、数値解析法適用の新しい分野として、逆問題への応用が急速に話題を集めている。逆問題とは、上記(1)から(5)の順問題の条件のうち、ひとつまたは複数個が未知であるときに、これらを測定などによる情報を用いて同定、推定するのが逆問題である。通常の原因から結果を導く順解析のプロセスとは逆に、得られた結果あるいは観測された結果などから原因となっているものを推定する逆問題として、例えば、内部に作用している応力の性質、位置そして大きさなどの推定、境界の形状の推定、境界条件の推定、最適な形状の決定などが逆問題の範中に入る。しかし、逆解析では、問題に対して必要とする情報が不十分であるため、解が数値的に不安定になることがあり、また、通常は解の一意性が保証されていない。したがって、これらを克服するための種々の工夫が必要となる。
 本論文の目的は、以上述べたような逆問題的アプローチを適用して、板周辺上において測定された変形量および表面力分布に関するデータをもとに、非破壊的に内部残留応力分布を推定する新しい逆問題数値解析法を提案することである。
 本研究により、測定データをもとに、内部の応力状態を同定する数値解析法として、境界要素法を再構成した新しい逆問題解析の方法を開発している。
 各章の内容について、簡単に説明する。
 第2章は、平板内部残留応力同定法で用いる逆問題解析の基礎となる、境界要素法順解析について述べる。
 第3章は、一般的な境界要素法解析の、物体表面近傍の応力計算値に大きな誤差を生じる問題について、その発生原因を調べ、その対応策を検討して、平板内部残留応力逆問題解析に適用できる改良法について述べる。
 第4章は、板周辺の表面力および変形量に関するデータを基に、内部残留応力を同定するための境界要素逆問題解析について述べる。
 第5章では、境界要素逆問題解析法により、平板内部残留応力同定に関する数値シミュレーションを行い、逆解析による残留応力発生源の位置探索法および逆解析の数値計算法について述べる。
 第6章においては、溶接などの熱塑性加工により発生する内部残留応力分布を物体力によりモデル化する方法について述べる。
 第7章においては、逆問題解析法を更に改良して、残留応力発生源を自動的に探索し、更に内部残留応力分布を自動的に同定する方法について述べる。
 第8章では、本研究で提案した平板内部残留応力の同定法について総括を行う。

平成2(1990)年度博士論文題名一覧

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る