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半導体デバイス形成用シリコンナイトライド薄膜に関する研究

氏名 安井 寛治
学位の種類 工学博士
学位記番号 博乙第10号
学位授与の日付 平成2年9月19日
学位論文の題目 半導体デバイス形成用シリコンナイトラド薄膜に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 金田 重男
 副査 教授 長倉 繁麿
 副査 教授 藤井 信行
 副査 助教授 赤羽 正志
 副査 助教授 鎌田 喜一郎

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目次
第1章 序論 p.1
1-1 半導体デバイス形成におけるSiN薄膜の重要性ならびに要求特性 p.1
1-1-1 半導体デバイス内でのSiN薄膜の利用とその重要性 p.1
1-1-2 SiNの基本的な性質とデバイス形成において要求される特性 p.7
1-2 SiN薄膜に関する従来の研究概要 p.10
1-2-1 成長法 p.10
1-2-2 原料用材料 p.11
1-2-3 問題点 p.12
1-3 本研究の目的と研究方法の概要 p.14
1-3-1 応力低減に関する研究 p.14
1-3-2 低温合成に関する研究 p.14
1-3-3 低水素濃度化に関する研究 p.14
1-3-4 本研究の構成 p.15
第2章 RFプラズマCVD法の薄膜の成長 p.18
2-1 プラズマCVD法の反応機構 p.18
2-2 RFプラズマCVD装置 p.24
2-3 RFプラズマCVD法によるSiN膜の特性と問題点 p.28
第3章 SiN膜作製のための窒素原料 p.35
3-1 N2及びNH3ガス p.35
3-2 有機金属ガス p.43
第4章 マイクロ波プラズマCVD法による薄膜の成長 p.45
4-1 マイクロ波プラズマCVD装置 p.45
4-2 マイクロ波プラズマを用いたSiN薄膜の成長 p.49
第5章 RFプラズマCVD法によるSiN膜の低応力化 p.53
5-1 はじめに p.53
5-2 RFプラズマCVD法によるSiN膜へのカーボン添加
5-2-1 本研究で用いたRFプラズマCVD装置 p.54
5-2-2 組成 p.56
5-2-3 内部応力 p.57
5-2-4 電気抵抗と絶縁破壊強度 p.60
5-2-5 まとめ p.62
5-3 モノメチルアミンを用いたRFマグネトロンプラズマCVD法による低応力SiN膜の作製 p.64
5-3-1 実験方法 p.64
5-3-2 成長速度 p.66
5-3-3 組成及び結合水素数 p.68
5-3-4 内部応力 p.71
5-3-5 光学ギャップと電気抵抗 p.74
5-3-6 まとめ p.76
第6章 モノメチルアミンを用いたCVD法によるSiN膜の成長 p.77
6-1 はじめに p.77
6-2 モノメチルアミンを用いた減圧CVD法によるSiN膜の成長 p.78
6-2-1 成長条件 p.78
6-2-2 成長速度 p.80
6-2-3 組成 p.80
6-2-4 電気抵抗 p.82
6-2-5 光学ギャップ p.85
6-2-6 まとめ p.87
6-3 熱フィラメントCVD法によるSiN膜の成長 p.88
6-3-1 成長法 p.88
6-3-2 成長速度 p.89
6-3-3 組成 p.89
6-3-4 表面モフォロジー p.91
6-3-5 まとめ p.93
第7章 マイクロ波励起水素ラジカルCVD法によるSiN膜の成長 p.95
7-1 はじめに p.95
7-2 マイクロ波励起水素ラジカルCVD法によるシラン、モノメチルアミンを用いたSiN膜の成長 p.96
7-2-1 成長法 p.96
7-2-2 成長速度分布 p.97
7-2-3 組成 p.99
7-2-4 結合水素量 p.101
7-2-5 光学ギャップと電気抵抗 p.104
7-2-6 まとめ p.106
7-3 テトラメチルシラン、モノメチルアミンを用いたSiN膜の成長 p.108
7-3-1 成長条件 p.108
7-3-2 組成 p.108
7-3-3 赤外吸収スペクトル p.110
7-3-4 まとめ p.111
第8章 結論 p.112
参考文献 p.115
謝辞 p.122
本研究に関する主な発表論文 p.123

 半導体デバイスや半導体集積回路は年々高機能化、高集積化が進みそれとともにデバイスに用いられる絶縁体薄膜の高性能化が求められている。半導体デバイス内に用いられている種々の絶縁体薄膜の中でシリコンナイトライド膜は高い高度、高い化学的安定性を有するとともに、Naイオンや水分といったデバイス機能部に拡散した場合その機能を劣化させてしまうイオンや分子に対する優れたバリアー効果を有するため、最終保護膜やMNOSデバイス内のゲート絶縁膜として、また素子分離用SiO2膜の選択形成等のために無くてはならない役割を果たしている。
 本論文は「半導体デバイス形成用シリコンナイトライド薄膜に関する研究」と題し、シリコンナイトライド薄膜の高性能化を目的に(1)プラズマCVD法による低温成長膜において生じる応力の低減化、(2)低水素濃度化、(3)低温合成の可能な窒素源用材料の開発について研究を行ったもので、以下の8つの賞から構成されている。
 第1章「序論」では、半導体デバイス内でシリコンナイトライド薄膜が果たしている役割とデバイス内において要求される特性について述べている。また従来のシリコンナイトライド膜の成長法の概略とともに減圧CVD法やRFプラズマCVD法によって成長したシリコンナイトライド膜に内在する問題点について述べ、本研究の位置付けをするとともにそれらの問題点を解決するための研究指針ならびに方法について説明している。
 第2章「PRプラズマCVD法による薄膜の成長」では、シリコンナイトライド膜を低温で成長させるために用いるRFプラズマを用いた成長法を説明し、原料分子やラジカルの結合エネルギーから膜堆積に寄与するラジカル種を検討するとともにこの方法によって得られる膜の性質について述べている。RFプラズマCVD法によって作製したシリコンナイトライド膜には半導体プロセスで一般に用いられる基板温度300~350℃の条件でも膜内に20at%もの結合水素が残留しこの結合水素のうちN-H結合数に比例して内部応力が生じることを述べている。
 第3章「SiN膜作製のための窒素原料」では、従来シリコンナイトライド膜を成長させるために用いられてきた原料ガスの性質とそれを用いて減圧CVD法、プラズマCVD法により膜成長を行った場合の問題点についてのべている。アンモニアを用い、RFプラズマCVD法で作製した膜の表面には大きな丘状構造が見られ、この構造内に多量のN-H結合が存在している。特に100℃以下の低温成長膜にはアンモニア分子が吸蔵していることが確かめられ、これらが電気抵抗の低下ならびに絶縁破壊強度の劣性をもたらしていることが判明した。
 第4章「マイクロ波プラズマCVD法による薄膜の成長」では、従来のPFプラズマCVD法に比べてより寿命の長いラジカルを形成するマイクロ波プラズマCVD法による薄膜の成長法について述べている。そしてマイクロ波プラズマを用いた場合問題となるプラズマダメージを回避する方法として遠隔励起プラズマCVD法について述べ、その方法によって得られた膜質について述べている。
 第5章「RFプラズマCVD法によるSiN膜の低応力化」では、第2章で述べたRFプラズマCVD法において生じる膜内の多量の結合水素、そして多量のN-H結合の存在に比例して生じる内部応力の問題を詳しく述べ、応力の原因になっているN-H結合の低減のために少量のカーボン添加を行った実験結果について述べている。カーボン添加によりN-H結合数の低減を実現するとともに内部応力を1×109dyne/cm2まで低下させることが出来た。また膜表面に生じる大きな丘状構造を緩和させ、表面の平坦性を向上させることによって絶縁破壊強度が向上することを示している。
 第6章「モノメチルアミンを用いたCVD法によるSiN膜の成長」では、従来の窒素及びアンモニアガスに比べて分解温度が低く、得られた膜が低水素濃度になると思われるモノメチルアミンを用いて、減圧CVD法及び熱フィラメントCVD法によって成長した膜の特性について述べている。熱フィラメントCVD法を用いた場合650℃で結合水素が1~2at%以下の表面の平滑性に優れたシリコンナイトライド膜が得られることを示している。
 第7章「マイクロ波励水水素ラジカルCVD法によるSiN膜の成長」では、第4章で述べたようにマイクロ波プラズマをエネルギー源として、水素分子を励起し発生した水素ラジカルをプラズマ外に輸送してシラン、モノメチルアミンを分解し、プラズマ外に固定した基板上にシリコンナイトライド膜をプラズマダメージを受けずに成長させ、その膜の組成や結合水素について測定した結果を述べている。得られた膜の結合水素は1×1022cm-3以下と従来のRFプラズマCVD法による膜の1/2以下であり、まらアンモニアに比べ、モノメチルアミンは低水素膜を得る材料としてより適していることを示している。
 第8章「結論」では、本研究により得られた主な成果を要約し論文の結論としている。

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