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フレッティング疲労き裂の発生・伝ぱに関する研究

氏名 近藤 和典
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第221号
学位授与の日付 平成13年3月26日
学位論文題目 フレッティング疲労き裂の発生・伝ぱに関する研究
論文審査委員
 主査 教授 武藤 睦治
 副査 教授 田中 紘一
 副査 教授 古口 日出男
 副査 助教授 許 金泉
 副査 電気通信大学 教授 越智 保雄

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目次

第1章 序論 p.1
 参考文献 p.6

第2章 フレッティング接触部の微視的相対すべり特性 p.9
2.1 緒言 p.9
2.2 供試材および実験方法 p.10
2.2.1 供試材 p.10
2.2.2 走査型電子顕微鏡付き疲労試験機でのフレッティング疲労試験 p.10
2.2.3 相対すべり振幅測定方法 p.13
2.2.4 有限要素法解析方法 p.13
2.3 実験結果および考察 p.15
2.3.1 フレッティング疲労試験結果 p.15
2.3.2 相対すべり振幅と繰返し数の関係 p.15
2.3.3 接触領域内の相対すべり分布 p.20
2.3.4 有限要素法解析結果 p.20
2.3.5 相対すべり振幅におよぼす接触片剛性の影響 p.23
2.3.6 フレッティング疲労き裂のその場観察 p.27
2.3.7 フレッティング疲労き裂発生場所の推定 p.28
2.4 結論 p.32
2.5 参考文献 p.33

第3章 フレッティング疲労き裂の初期き裂伝ぱ挙動 p.34
3.1 緒言 p.34
3.2 供試材および実験方法 p.35
3.2.1 供試材 p.35
3.2.2 フレッティング疲労試験 p.36
3.2.2.1 フレッティング疲労試験 p.36
3.2.2.2 接線力測定方法 p.38
3.2.2.3 相対すべり振幅測定方法 p.38
3.2.2.4 フレッティング疲労き裂伝ぱ方法 p.41
3.2.3 フレッティング疲労条件下での有限要素法解析 p.41
3.3 結果および考察
3.3.1 フレッティング疲労試験結果 p.43
3.3.2 フレッティング疲労き裂伝ぱ試験 p.45
3.3.3 有限要素法解析結果 p.50
3.4 結言 p.59
3.5 参考文献 p.60

第4章 混合モード下の疲労き裂伝ぱ特性 p.61
4.1 緒言 p.61
4.2 供試材および実験方法 p.62
4.2.1 疲労き裂伝ぱ試験 p.62
4.2.1.1 Mode I 疲労き裂伝ぱ試験 p.62
4.2.1.2 混合モード疲労き裂伝ぱ試験 p.64
4.2.2 微小疲労き裂伝ぱ試験方法 p.67
4.2.2.1 Mode I 微小疲労き裂伝ぱ試験 p.67
4.2.2.2 混合モード微小疲労き裂伝ぱ試験 p.68
4.2.3 混合モード微小き裂の応力拡大係数算出方法 p.70
4.3 実験結果および考察 p.72
4.3.1 疲労き裂伝ぱ試験 p.72
4.3.2 混合モード微小き裂の応力拡大係数算出結果 p.76
4.3.3 微小疲労き裂伝ぱ試験結果 p.77
4.3.4 フレッティング疲労寿命の推定 p.79
4.3.5 フレッティング疲労寿命評価法の検討 p.82
4.4 結言 p.84
4.5 参考文献 p.85

第5章 WPC処理材のフレッティング疲労き裂伝ぱ挙動 p.86
5.1 緒言 p.86
5.2 供試材および実験方法 p.87
5.2.1 供試材 p.87
5.2.2 フレッティング疲労試験 p.90
5.2.3 有限要素法解析 p.90
5.2.4 疲労き裂伝ぱ試験 p.91
5.3 実験結果および考察 p.92
5.3.1 フレッティング疲労試験結果 p.92
5.3.2 摩擦力および相対すべり量測定結果 p.93
5.3.3 フレッティング疲労損傷表面の観察 p.95
5.3.4 破面観察結果 p.95
5.3.5 フレッティング疲労き裂伝ぱ試験 p.98
5.3.6 有限要素法解析結果 p.103
5.3.7 疲労き裂伝ぱ試験結果 p.108
5.3.8 フレッティング疲労寿命の推定 p.109
5.4 結言 p.111
5.5 参考文献 p.112

第6章 結論 p.113

 機械や構造物は多くの部材から構成されており, 構成部材同士の接触は避け難い. そのような接触部においては, 部材間の剛性の相違から, 外部からの繰返し負荷や振動にともない, 微小な相対的変位の繰返しが生じこれをフレッティングと呼んでいる. フレッティングが要因となった摩耗および疲労をそれぞれフレッティング摩耗および, フレッティング疲労と呼んでいる. フレッティング疲労問題が重要なのは, 通常の疲労に比べ大幅に疲労強度が低下することにある. 近年地球環境および省資源の観点から, 機器・構造物の軽量化が進められるとともに高負荷荷重, 超高温ならびに長寿命使用などその使用条件の過酷化が顕著となってきている. そのため,これまで破壊を生じなかった機器類においても,フレッティング疲労破壊が顕在化するようになり, 設計法の確立や事故対策が強く求められている. これまでにも多くのフレッティング疲労に関する研究が行われてきている. しかし, もっとも基本的であり, フレッティング疲労破壊過程の中でももっとも重要な, フレッティング疲労き裂の発生と初期のき裂伝ぱについては,十分な検討が行われておらず,き裂発生箇所ならびに発生条件, あるいは初期の伝ぱの加速に対する力学的説明など, 不明な点が多いのが実状である. そこで本研究では, フレッティング疲労破壊挙動の解明を目指し, フレッティング疲労き裂発生挙動および初期のき裂伝ぱ挙動を詳細な実験と有限要素法を用いた解析の両面から検討した. それらの結果に基づき, き裂伝ぱ初期の混合モード状態を考慮したフレッティング疲労き裂モデルの有限要素法シミュレーションを行い,フレッティング疲労寿命の推定についても検討した.
 本論文は, 全6章からなっており, 以下に各章の概要を示す. 第1章「序論」は, 本研究を行うにあたり, フレッティング疲労に関する研究の歴史および背景を調査し, 本研究の意義と目的について述べた. 第2章「フレッティング接触部の微視的相対すべり特性」では, 走査型電子顕微鏡付き疲労試験機を用いて, フレッティング疲労試験中の相対すべりの直接測定を試みるとともに, フレッティング接触部の解析を行った. その結果から, 相対すべりの特性ならびに, フレッティング疲労き裂発生位置と発生条件について検討した. 第3章「フレッティング疲労き裂の初期き裂伝ぱ挙動」では, 発生直後のフレッティング疲労き裂伝ぱ挙動を明らかにするために, 通常の構造用鋼を用いて, 通常のフレッティング疲労試験を中断し, 試験片の断面観察を行う, フレッティング疲労き裂伝ぱ試験を行った. また, モデルにフレッティング疲労き裂を導入した有限要素法解析を行い, 混合モード下のフレッティング疲労き裂の伝ぱ挙動について検討した. 第4章「混合モード下の疲労き裂伝ぱ特性」では, フレッティング疲労き裂が, 発生直後においてモードIとモードIIの混合モード状態であることから, 前章と同じ構造用鋼を用いて, 混合モード条件下での疲労き裂伝ぱ試験を行った. また, 同様に, 混合モード条件下での微小疲労き裂伝ぱ試験を行った. そして, 本章で得られた混合モードのき裂伝ぱ曲線と前章のフレッティング疲労き裂モデルの有限要素法解析を組み合わせることにより, 混合モードを考慮したフレッティング疲労寿命の推定を行った. 第5章「WPC処理材のフレッティング疲労き裂伝ぱ挙動」では, 陽極酸化処理とWPC処理により圧縮残留応力付与したアルミニウム合金のフレッティング疲労試験ならびにフレッティング疲労き裂伝ぱ試験を行うとともに,混合モード条件を考慮したフレッティング疲労寿命推定法を用いて, 表面に圧縮残留応力を付与した場合のフレッティング疲労寿命推定について検討した. 第6章「結論」では, 各章で得られた結果を総括し, 本論文の結論とした.
 得られた結論を要約すると, フレッティング疲労き裂の発生箇所は, 接触部表面において, 各応力成分の変動幅が最大となる, 接触領域の外端部であり, 最大せん断応力方向に発生する. また, このようにいったん発生したき裂は, その後屈折し, 最大主応力に垂直方向に進展する. 最大主応力に垂直方向へのき裂進展を組み入れたフレッティング疲労き裂伝ぱモデルの有限要素法シミュレーションは, 実験と同一のき裂伝ぱ経路を与えるとともに, これに基づくフレッティング疲労寿命推定値は実験結果とよく一致する. この混合モードを考慮した手法は, 従来のモードIき裂を仮定した方法では限界のある, 超長寿命領域および疲労限近傍での強度評価に大きく貢献するものである.

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