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正弦波コンバータ回路の簡単化と高性能化に関する研究

氏名 伊藤 淳一
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第154号
学位授与の日付 平成12年6月21日
学位論文題目 正弦波コンバータ回路の簡単化と高性能化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 高橋 勲
 副査 教授 近藤 正示
 副査 助教授 大石 潔
 副査 助教授 野口 敏彦
 副査 富山大学教授 作井 正昭

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第1章 序論
1.1 研究背景 p.1
1.2 研究の目的 p.7
1.3 論文の概要 p.10
参考文献 p.13

第2章 正弦波コンバータ回路の一般化表記法と簡単化, 高性能化の手法
2.1 緒言 p.15
2.2 正弦波コンバータの基本原理と基本回路構成 p.16
2.3 スイッチマトリックスによる電力変換回路の表現 p.20
2.4 スイッチマトリックスによる正弦波コンバータ回路の簡単化 p.27
2.4.1 スイッチマトリックスによる簡単化の手法 p.27
2.4.2 簡単化手法の回路への適用 p.29
2.5 正弦波コンバータの共通化による簡単化 p.40
2.6 入力電流不連続形正弦波コンバータ回路の高性能化 p.45
2.7 電力変換回路の高効率化 p.50
2.8 本研究の位置付け p.54
2.9 結言 p.57
参考文献 p.58

第3章 デルタ形交流/交流直接変換回路を用いた入力電流の正弦波化
3.1 緒言 p.61
3.2 瞬時空間電圧ベクトルによるコンバータの解析法 p.62
3.2.1 瞬時空間電圧ベクトルの性質 p.62
3.2.2 出力電圧ベクトルと入力電流ベクトルの対応 p.65
3.3 デルタ形交流/交流直接変換回路の瞬時空間ベクトルによる解析 p.68
3.3.1 出力電圧と入力電流制御範囲 p.68
3.3.2 制御方法 p.71
3.4 シミュレーション結果 p.73
3.5 各交流/交流直接変換回路との比較 p.76
3.6 結言 p.86
参考文献 p.87

第4章 負荷中性点を用いた正弦波コンバータの入力リアクトルレス化
4.1 緒言 p.89
4.2 負荷中性点を用いた入力リアクトルレス化原理 p.90
4.2.1 インバータの零相電圧 p.90
4.2.2 電動機負荷に対する適用 p.91
4.2.3 提案回路 p.93
4.2.4 直流リンク電圧と入力電流制御 p.95
4.3 制御方法 p.97
4.4 シミュレーション結果 p.98
4.5 実験結果 p.103
4.6 提案した共通化原理の応用 p.108
4.6.1 ダイオードによる負荷中性点電位の利用 p.108
4.6.2 シミュレーション結果 p.110
4.7 提案回路の比較 p.113
4.8 結言 p.117
参考文献 p.118

第5章 三相直列チョッパを用いた入力電流不連続形正弦波コンバータ
5.1 緒言 p.119
5.2 入力電流ひずみ発生原因 p.120
5.2.1 回路動作 p.120
5.2.2 動作解析 p.120
5.3 入力電流ひずみ低減手法 p.126
5.3.1 三相直流チョッパを用いた提案回路 p.126
5.3.2 提案回路の設計法 p.128
5.3.3 制御方法 p.132
5.4 シミュレーション結果 p.133
5.5 実験結果 p.138
5.6 提案回路の比較 p.142
5.7 結言 p.144
参考文献 p.145

第6章 トランジスタを用いたスイッチング素子の損失低減法
6.1 緒言 p.147
6.2 導通損失低減法 p.148
6.2.1 導通損失低減原理 p.148
6.2.2 CTによるトランジスタの低損失駆動 p.149
6.3 スイッチング損失低減法 p.151
6.3.1 低損失高周波スイッチング法の原理 p.151
6.3.2 CTの設計法 p.158
6.3.3 スイッチングロス回収スナバ p.159
6.4 実験結果 p.162
6.4.1 導通損失低減法の効果 p.162
6.4.2 低損失高周波スイッチング法の効果 p.164
6.4.3 電力変換回路の小型化 p.168
6.5 結言 p.168
参考文献 p.171

第7章 結論
7.1 本研究の成果 p.173
7.2 各提案回路の特徴 p.179
7.3 今後の課題 p.181

発表論文

謝辞

 近年,インバータ装置のダイオード整流回路により発生する入力電流の高調波が問題となっている。入力電流の高調波は,進相設備内のコンデンサや直列リアクトルの過熱や系統電圧ひずみなど多くの問題を発生させるため,国内では通産省により高調波低減に関する通達が行われている。入力電流の高調波を低減する有力な手法に半導体スイッチング素子を用いた正弦波コンバータが有る。交流電圧を入力とする電力変換装置の入力に正弦波コンバータを適用することで非常に高い入力力率と,入力電流低ひずみ率を実現できるが,小形で簡単な回路構成が求められている。本研究では,各種用途に応じて非常に高い入力力率と入力電流の高調波含有率を低減し,小形で簡単な構成の正弦波コンバータを実現した。
 本論文は7章からなっており,各章の内容は次のようになっている。
 第1章では,インバータ装置のダイオード整流回路などにより発生する入力電流の高調波が系統に接続されている機器に与える影響について言及し,正弦波コンバータの必要性を示している。また,現状の正弦波コンバータの方式と問題点を示し,それらに対する本論文の研究目的を述べている。
 第2章では,様々な正弦波コンバータの回路構成を包括して一般化表記できる一般化理論について述べる。スイッチング関数からなるスイッチマトリックスにより正弦波コンバータを一義的に定義する。さらに,一般化理論の応用としてスイッチマトリックスを使った簡単化手法を示し,スイッチマトリックスから,簡単化した回路構成が導出できることを示す。また,更なる簡単化として,各正弦波コンバータ単体ではなく,インバータと正弦波コンバータを一体化し,簡単化する一般的な手法についても示す。加えて,高性能化の手法として,入力電流不連続形コンバータの一般的な入力電流ひずみ低減手法と電力変換器に適用可能な一般的な高効率化手法を示す。
 以下,3章,4章,5章,6章では,シミュレーションや実験により,簡単化手法および高性能化手法により第2章で導出された回路の有効性の検証を行う。
 第3章では第2章で導出されたデルタ形交流/交流直接変換器において,スイッチマトリックスから導出した可変電圧固定周波数回路(VVCF)を瞬時空間ベクトルにより解析をおこない,シミュレーションにより直接変換器における一般化理論の有効性を確認する。同時に現在提案されている交流/交流直接変換器についてスイッチマトリックスによる解析を行い,比較を行うことで,解析の汎用性と有効性を確認する。
 第4章では,負荷の中性点電位を用いて入力リアクトルレスを実現する手法について詳細な検討を行い,それを単相/三相電力変換システムに利用する。提案する回路は負荷のインダクタンスを入力リアクトルとして代用できることから,リアクトルレス化が可能である。また,インバータのゼロ電圧ベクトル(以下ゼロベクトルという)により,負荷の中性点電位を制御し,あたかもインバータがひとつのスイッチング素子レッグとみなすことができ,それを利用してスイッチング素子の省略を実現することが可能である。ここでは,負荷として誘導電動機を用いた2つの回路構成についてシミュレーションと実験により検証を行い,有効性を確認する。
 第5章では,高性能化として三相直列チョッパを用いた入力電流不連続形三相正弦波コンバータについて検討をおこなう。この回路は,各電源相に直列に接続したスイッチング素子からなる三相直列チョッパを用いて,リアクトルに蓄えたエネルギを放出する際に,電流の放電経路に電源を含まない構成としたことに特徴がある。その結果,出力電圧が比較的低い場合でも入力電流ひずみを低減できる。提案した回路と従来回路の原理的な比較検討を行って従来回路において入力電流がひずむ原因を明確にする。提案回路の動作を検討するとともにリアクトルやスイッチング素子選定など設計に関しても検討を行い,設計方法を明らかにする。また,提案した回路については実験により検証をおこない,高調波低減効果と高入力力率を確認する。
 第6章ではトランジスタを用いた導通損失低減方法を検討する。提案する導通損失低減法は回路的にスイッチング素子の損失を低減するものであり,さまざまな電力変換回路に対して適用可能である。また,導通損失の低減だけでなく,トランジスタのスイッチング損失の低減を行う。トランジスタを高速でスイッチングさせるために補助IGBTを併用した低損失高速スイッチング法を提案し,さらにIGBTスイッチング損失の低減するためにロスレススナバを適用する。この結果,従来のトランジスタのスイッチング周波数は5kHz程度が上限であったが,提案手法により16kHzスイッチングを可能とし,トランジスタを用いた電力変換器の無騒音化に成功した。以上の損失低減法を用いて高効率化,小型化の効果を実験により確認する。
 第7章では,本論文の成果と各提案回路における総括を述べ,それぞれの今後の課題についてまとめる。

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