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マグネシウム合金の表面処理と耐食性に関する研究

氏名 梅原 博行
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第156号
学位授与の日付 平成12年9月20日
学位論文題目 マグネシウム合金の表面処理と耐食性に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 小島 陽
 副査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 山田 明文
 副査 教授 福澤 康
 副査 助教授 鎌土 重晴

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第1章 緒論 p.1
1.1 マグネシウム合金の特性と応用 p.1
1.1.1 マグネシウム及びマグネシウム合金の諸性質 p.3
1.1.1.1 物理的性質 p.3
1.1.1.2 化学的性質 p.4
1.1.1.3 マグネシウムの合金化 p.4
1.1.1.4 機械的性質 p.5
1.1.2 マグネシウムの用途 p.9
1.1.3 マグネシウムの需要動向 p.11
1.1.3.1 マグネシウム構造材の用途 p.13
1.1.3.2 自動車への適用 p.13
1.1.3.3 携帯用電子機器への適用 p.16
1.2 マグネシウム合金の腐食特性と表面処理 p.17
1.2.1 マグネシウムの腐食 p.18
1.2.2 マグネシウム上に生成する皮膜について p.21
1.2.3 マグネシウム合金の腐食 p.22
1.2.3.1 鉄とマンガンの効果 p.22
1.2.3.2 AlMnFe金属間化合物相の電気化学的挙動 p.24
1.2.3.3 腐食に及ぼすミクロ組織の影響(β相の効果) p.25
1.2.3.4 合金元素の影響 p.27
1.2.4 表面処理 p.30
1.2.4.1 溶剤洗浄 p.31
1.2.4.2 機械的清浄処理 p.31
1.2.4.3 アルカリ洗浄 p.32
1.2.4.4 酸洗浄処理 p.33
1.2.4.5 化成処理 p.33
1.2.4.6 陽極酸化処理 p.37
1.2.4.7 めっき処理 p.40
1.3 本研究の意義・目的・必要性 p.43
1.4 本論文の内容 p.45

第2章 AZ91Dマグネシウム合金ダイカスト塗装材の表面解析およびその塗装膜の塩水噴霧試験による耐食性評価 p.51
2.1 はじめに p.51
2.2 実験方法 p.51
2.2.1 試料作製法 p.52
2.2.2 作製試料の表面解析法 p.52
2.2.3 耐食試験法および耐食性評価 p.54
2.3 実験結果および考察 p.54
2.3.1 供試材の腐食 p.54
2.3.2 化成皮膜の表面分析 p.55
2.3.2.1 SEM及びEPMAによる表面の観察 p.55
2.3.2.2 オージェ電子分光分析結果 p.57
2.3.2.3 X線回折による結晶構造の解析 p.60
2.3.2.4 XPSによる分析結果 p.60
2.3.3 塩水噴霧試験後の供試材の外観観察 p.63
2.3.4 塗装膜の密着性 p.67
2.3.5 クロスカット部の孔食深さ p.69
2.3.6 塩水噴霧試験による再現性 p.71
2.4 まとめ p.72

第3章 AZ91Dマグネシウム合金ダイカスト塗装材の大気暴露腐食 p.75
3.1 はじめに p.75
3.2 表日本気候におけるAZ91Dマグネシウム合金ダイカスト塗装材の大気腐食 p.75
3.2.1 実験方法 p.75
3.2.1.1 試料 p.75
3.2.1.2 耐食性評価 p.77
3.2.2 暴露試験および環境因子 p.77
3.2.3 実験結果および考察 p.78
3.2.3.1 AZ91D素材の大気中における耐食性 p.78
3.2.3.2 大気暴露試験後の外観 p.79
3.2.3.3 塗膜の密着性 p.82
3.2.3.4 クロスカット部の腐食 p.82
3.2.3.5 腐食に及ぼす表面加工の影響 p.84
3.3 亜熱帯気候におけるAZ91Dマグネシウム合金ダイカスト塗装材の大気暴露腐食 p.85
3.3.1 宮古島における環境因子について p.85
3.3.2 実験結果および考察 p.85
3.3.2.1 塗装材の大気暴露試験後の外観 p.85
3.3.2.2 表面処理材の大気暴露試験後の外観 p.89
3.3.2.3 塗膜による防食 p.91
3.3.2.4 環境因子(特にぬれ時間) p.93
3.4 まとめ p.95

第4章 AZ91Dマグネシウム合金の大気中における異種金属接触腐食挙動 p.99
4.1 はじめに p.99
4.2 実験方法 p.99
4.3 試験条件 p.102
4.4 実験結果 p.104
4.4.1 腐食部の外観 p.104
4.4.2 腐食減量 p.111
4.4.3 孔食深さ p.118
4.4.4 分極測定 p.118
4.4.5 接触電流の測定 p.122
4.4.6 異種金属接触腐食の防止 p.123
4.5 まとめ p.124

第5章 マグネシウム合金へのマンガン系化成膜の作製とその耐食性 p.127
5.1 はじめに p.127
5.2 実験方法 p.128
5.3 実験結果・および考察 p.129
5.3.1 化成処理による重量変化 p.129
5.3.2 浸せき電位の変化と表面状態 p.132
5.3.3 XRDによる解析 p.134
5.3.4 XPSによる化成皮膜の解析 p.135
5.3.5 GDSによる皮膜の元素分析 p.139
5.3.6 化成皮膜形成プロセス p.139
5.3.7 化成皮膜の分極挙動 p.142
5.3.8 化成皮膜の耐食性 p.143
5.4 まとめ p.145

第6章 総括 p.147

謝辞 p.153

 本論文は素材それ自身の軽さを最大利点とするマグネシウム合金を取り上げ,特に現在の実用マグネシウム合金の種々の環境における耐食性と表面処理皮膜との関係を解明するとともに,マグネシウム合金に対する新たな高性能耐食性皮膜を形成することを目指し,以下の研究を行い,まとめたものである。すなわち,(1)AZ91Dマグネシウム合金ダイカスト塗装材の化成皮膜の構造解析および塗装材の塩水噴霧試験による耐食性の評価,(2)AZ91Dマグネシウム合金ダイカスト塗装材の大気暴露腐食の研究,(3)AZ91Dマグネシウム合金の大気中における異種金属接触腐食挙動の解析,(4)マグネシウム合金へのマンガン系化成膜の作製方法の確立およびその耐食性評価から成る。本論文は,これらの研究を章立てとし,それに緒論,総括を加えている。以下に各章の概要を記す。
 第1章「緒論」では,研究の背景としてのマグネシウム合金の特性と応用,マグネシウム及びマグネシウム合金の腐食特性と表面処理について述べるとともに本研究の目的,意義,構成について述べた。
 第2章「AZ91Dマグネシウム合金ダイカスト塗装材の塩水噴霧試験による耐食性評価」では,耐食性評価の促進試験方法として現在使われている塩水噴霧方法を用いてAZ91Dマグネシウム合金ダイカスト塗装材の耐食性について述べた。試料は一般的に使用されている化成処理及び陽極酸化処理の下地表面処理を行い,さらに塗装を施した実用的な塗装材を使用した。その結果4000時間後でもマグネシウム合金ダイカスト塗装材の外観はほとんど変化なく,塗膜の密着性も優れており,アルミニウムダイカスト塗装材と同程度あるいはそれ以上の優れた耐食性を示すことを明らかにした。特に塗装下地処理皮膜としてはJIS-1,JIS-3種浴からの化成皮膜,Dow17,HAE,U-5の陽極酸化皮膜が優れていることを示した。さらに耐食性に優れていたクロメート系化成処理膜については各種表面分析装置を用いてその皮膜構造を分析し,その構造を明らかにした。
 第3章「AZ91Dマグネシウム合金ダイカスト塗装材の大気暴露腐食」では,マグネシウム合金に種々の下地表面処理と塗装を施した試料について,実際の使用環境に最も近い屋外大気暴露試験を銚子と沖縄の宮古島において実施し,これら下地表面処理皮膜と塗膜の耐食性について述べた。下地表面処理材の耐食性は,陽極酸化処理材が優れており,また塗装材は,全般的にアルミニウムダイカスト塗装材と同程度の耐食性を有することを明らかにした。塗装材の耐食性に及ぼす下地表面処理としては,わずかな差ではあるがクロメート系化成処理皮膜および陽極酸化処理皮膜が耐食性に優れていることを示した。これらの表面処理材は塩水噴霧試験においても耐食性に優れていたものであり,塩水噴霧試験との相関があることを明らかにした。
 第4章「AZ91Dマグネシウム合金の大気中における異種金属接触腐食挙動」では,マグネシウム合金の腐食にとっての最大の課題である異種金属との接触腐食について,異種金属として軟鋼,ステンレス鋼,アルミニウムを対象に一般的な表面処理を施したものをマグネシウム合金(AZ91D)と接触させ大気中で暴露した結果について述べた。無処理の鋼板やステンレス鋼板(SUS304)はマグネシウム合金との接触腐食を進行させるが,亜鉛めっき等の表面処理を行うことで接触腐食をある程度抑制することができ,また大気暴露における異種金属との接触腐食の及ぶ範囲は,接触部およびその周辺部に限られることを明らかにした。陽極酸化処理したアルミニウム合金は,皮膜自体が絶縁性を有し,耐食性があるためマグネシウム合金の接触腐食を抑制することが分かり,このことから防食処理を施した鋼材とマグネシウム合金の間に中間材として陽極酸化処理を施したアルミニウム材料を挿入することによって,マグネシウム合金の異種金属との接触腐食を抑制することが可能であることを示した。また,マグネシウム合金および異種金属材料の塩素イオンを含む溶液中における電気化学的挙動を測定し,実際の接触腐食試験結果との比較検討を行った。
 第5章「マグネシウム合金へのマンガン系化成膜の作製とその耐食性」では,マグネシウムおよびその合金への化成皮膜形成法として,従来から用いられているクロム酸塩(6価クロム)を使用しない,環境問題を考慮したクロムフリー化成処理浴の組成としてマンガンに着目し,過マンガン酸カリウムを主成分とした比較的単純な浴からの化成皮膜を試み,各種表面分析装置を用いて得られた皮膜の組成や構造を解析した。また,皮膜の電気化学的特性を評価し,その耐食性について述べた。塩水噴霧試験の結果からマンガン系の化成膜の耐食性は,従来のクロメート皮膜に匹敵する耐食性を有することを示した。
 第6章「総括」では,第5章までの結果をまとめるとともに,マグネシウム合金が構造材として今後発展するためには,機械的特性などの向上とともに耐久性に優れた表面処理方法を確立する必要があること,そのためには素材表面や種々の表面処理法によって得られる表面の物理,化学的特性の正確な把握,またこれらの基礎的な現象に対する詳細な解析が必要であることを示し,総括とした。

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