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Molecular Cloning and Characterization of Cathepsin K: A Novel Lysosomal Cysteine Proteinase That Plays a Key Role in Osteoclastic Bone Resorption (破骨細胞依存性骨吸収に関与する新規システインプロテアーゼであるカテプシンKの遺伝子クローニングと解析)

氏名 石橋 宰
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第164号
学位授与の日付 平成12年12月13日
学位論文の題目 Molecular Cloning and Characterization of Cathepsin K: A Novel Lysosomal Cysteine Proteinase That Plays a Key Role in Osteoclastic Bone Resorption (破骨細胞依存性骨吸収に関与する新規システインプロテアーゼであるカテプシンKの遺伝子クローニングと解析)

論文審査委員
 主査 教授 森川 康
 副査 教授 福本 一朗
 副査 教授 福田 雅夫
 副査 助教授 解良 芳夫
 副査 助教授 岡田 宏文
 副査 明海大学 教授 久米川 正好

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CONTENTS

BACKGROUND p.3

CHAPTER 1 p.10
Molecular Cloning of cDNA for Cathepsin K-A Novel Cysteine Proteinase Predominantly Expressed in Bone

CHAPTER 2 p.22
Quantitative Determination of Cathepsin K Expression Level in Osteoclasts
PART1 Development of a Method to Rapidly Synthesize Competitor RNAs for Accurate Analyses by Competitive RT-PCR p.23
PART2 Comparison of Expression Levels of Lysosomal Cysteine Proteinases in Human Osteoclastic Cells. p.29

CHAPTER 3 p.48
Lack of Importance of Cathepsin K in Breast Cancer Cells

CHAPTER 4 p.62
Localization of Cathepsin K mRNA and Protein in Bone Tissue

CHAPTER 5 p.82
Physiological Importance of Cathepsin K in Bone Resorption-Cathepsin K Antisense Deoxyoligonucleotides Inhibit Osteoclastic Bone Resorption
CONCLUSION p.97

LIST OF PUBLICATIONS p.103

ACKNOWLEDGMENT p.105

 骨組織の代謝は、その吸収および形成という相反するプロセスが互いに関連しあい、微妙な調節を受けながら行われており、結果として健常な成人の骨量は一定に保たれている。しかしながら、両者のバランスが崩れ相対的に骨吸収が骨形成より過多になると、骨量が失われ、最終的に骨粗鬆症という病的な状態に至る。したがって、骨吸収を特異的に抑制するような阻害剤は骨粗鬆症の治療薬として極めて有望であり、実際にエストロジェン(あるいはその類縁体)、ビスフォスフォネート、あるいはカルシトニンといった破骨細胞の活性を抑制するような薬剤が、現在臨床医療で用いられている。骨組織において専らその吸収をつかさどる細胞は、破骨細胞とよばれる巨大多核細胞である。システインプロテアーゼの阻害剤が破骨細胞による骨吸収を強く抑制するという多くの知見から、従来より破骨細胞由来の何らかのシステインプロテアーゼが、I型コラーゲンをはじめとする骨基質蛋白質の分解に深く関わっていることが示唆されていた。しかしながら、具体的にどのシステインプロテアーゼが骨吸収の鍵を握っているのかという点に関しては、長い間結論が出ないままであった。
 一方、手塚らは、それまで困難であった純化破骨細胞の単離を、幼若ウサギ大腿骨を材料として用いることで成功させ、さらに本細胞のmRNAから作製したcDNAライブラリーを用いたディファレンシャルスクリーニングにより破骨細胞に特異的に発現される遺伝子をクローニングした。興味あることに、それらの遺伝子の中の1つ(OC-2)は新規のシステインプロテアーゼをコードすると思われるものであった。しかし、ウサギの遺伝子については既知の情報が極めて限られていることから、新規遺伝子であることを正確に証明するため、本研究ではまずOC-2のヒト相同遺伝子のクローニングを試みた。破骨細胞様細胞を豊富に含む腫瘍であるヒト巨細胞腫(GCT)のcDNAライブラリーをスクリーニングすることで得たクローンは、ウサギOC-2同様329 aaからなる蛋白質をコードし、OC-2とアミノ酸レベルで94%の相同性を有していた。またこの蛋白質はヒトカテプシンLおよびヒトカテプシンSとそれぞれ42%、48%の相同性を有する新規システインプロテアーゼであることが確認され、これをカテプシンKと命名した。Northern解析により、本遺伝子は破骨細胞に極めて特異的に発現していることが明らかになった。さらにCompetitive RT-PCR法を用いた定量解析により、カテプシンKはGCTより精製したヒト破骨細胞様細胞において、他のシステインプロテアーゼに比して圧倒的に高いレベルで発現されることが示された。一方、破骨細胞の他に、骨に転移した後骨破壊を行うことが示唆されている乳癌細胞においては、カテプシンKの発現は認められず、むしろカテプシンBやLの発現が高かった。次に、カテプシンKの骨組織における局在を詳細に検討するため、ヒト骨組織切片を用いた免疫組織化学的解析およびin situ hybridizationを行った。抗カテプシンK抗体は、大腸菌発現系を用いて調整した組換蛋白質を鶏に免疫することにより作製した。これらの実験より、骨組織の中でカテプシンKのmRNAおよび蛋白質はともに破骨細胞のみに局在しており、他の細胞、すなわち骨芽細胞や骨細胞にはほとんど存在しないことが示された。さらに、破骨細胞におけるカテプシンK蛋白質が実際に骨吸収活性に関わっていることを示すため、カテプシンKの蛋白合成を阻害するアンチセンスオリゴDNAを作製しその効果を検討した。その結果、本アンチセンスオリゴDNAは、in vitro実験系で破骨細胞による象牙片上のピット形成(骨吸収活性の指標)を濃度依存的に抑制することが明らかになった。また、このときの最大抑制レベルは、システインプロテアーゼ全般に対する阻害剤であるE-64を用いたときに認められる最大の抑制効果とほぼ等しかった。
 以上のことから、カテプシンKは破骨細胞において極めて特異的かつ高レベルで発現されるシステインプロテアーゼであり、破骨細胞による骨吸収に重要な役割を果たしていることが明らかになった。一方、カテプシンB、L、Sといった他の代表的なシステインプロテアーゼの寄与は全くないか、あるいはあるとしても極めて小さいことが示された。本研究の結果は、カテプシンKが骨粗鬆症治療薬開発に際して有望なターゲットになりうることを強く示唆するものである。

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