本文ここから

架設系を考慮した吊形式橋梁の設計支援システムの開発研究

氏名 山野 長弘
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第169号
学位授与の日付 平成13年3月26日
学位論文の題目 架設系を考慮した吊形式橋梁の設計支援システムの開発研究
論文審査委員
 主査 教授 林 正
 副査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 長井 正嗣
 副査 助教授 宮木 康幸
 副査 助教授 岩崎 英治

平成12(2000)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次

記号

第1章 序論
1.1 研究の背景 p.1
1.2 研究の目的 p.6
1.3 本論文の構成 p.7
参考文献 p.9

第2章 骨組構造の有限変位解析
2.1 概説 p.13
2.2 立体有限変位解析 p.14
2.3 はり要素 p.22
2.4 ケーブル要素 p.25
2.5 特殊要素 p.29
2.6 まとめ p.35
参考文献 p.36

第3章 吊構造形式橋梁の初期形状解析
3.1 概説 p.37
3.2 吊橋の初期形状解析 p.39
3.3 斜めハンガー形式吊橋の初期形状解析 p.46
3.4 斜張橋の初期形状解析 p.51
3.5 まとめ p.54
参考文献 p.55

第4章 構造解析システム
4.1 概説 p.57
4.2 解析システム p.60
4.3 情報技術の適用 p.67
4.4 架設管理システム p.73
4.5 形状管理システム p.83
4.6 まとめ p.85
参考文献 p.86

第5章 実橋モデルの数値計算例
5.1 概説 p.89
5.2 吊橋の初期形状解析 p.91
5.3 接触要素の検証 p.100
5.4 剛体要素の検証 p.104
5.5 曲線ケーブル要素の検証 p.111
5.6 まとめ p.114
参考文献 p.115

第6章 明石海峡大橋
6.1 概説 p.117
6.2 解析モデル p.119
6.3 地震後の初期形状解析 p.124
6.4 地震後完成系の応力解析 p.136
6.5 架設系の応力解析 p.144
6.6 非線形固有振動解析 p.159
6.7 まとめ p.163
参考文献 p.165

第7章 結論 p.167

謝辞 p.170

 構造物の大型化、性能照査型設計の導入、建設コスト削減の社会的な要請などによって、低コストで精度の高い設計計算が要求されている。また、吊形式橋梁の分野では、支間の長大化に伴い、耐風性の観点から様々なケーブルシステムを有する吊形式橋梁が研究されている。以上のような背景を踏まえ、本論文は吊橋、斜張橋のみならず、吊材が斜めに配置される場合、主ケーブル形状が3次元的に変化する場合などの橋梁形式にも配慮し、吊形式橋梁の設計計算における解析システムの合理性と効率性を目的として、架設系を考慮した吊構造橋梁の設計支援システムの開発研究を行うものである。本設計支援システムは、解析対象や解析目的に応じて改良を加えることができる解析システムと、最新の情報技術を活用した前後処理システムとによって構成される。すなわち、高度な解析理論と高度な計算技術が必要な吊形式橋梁の設計計算業務を支援するための統合的な多機能システムといえる。本研究は、汎用性と使用性という相反する要求の実現に主眼を置き、システム全般の実用性を考究する。
 そのために、構造解析に間接的な構造モデルを採用することなく、直接的に実際の挙動を評価できるように、実橋を忠実にモデル化する場合にも解析対象や解析目的に応じて柔軟に改良を加えることができる解析システムを開発し、また、一方では、情報技術を適用した入出力データ処理のための前後処理システムによって、システム運用の効率性と実用性に配慮している、特に、設計支援システムの中核を成す解析システムは立体有限変位理論を基礎とし、有限回転を厳密に扱った座標変換とこれから導かれる非線形剛性行列とが組み込まれているため、解の収束安定性に優れている。また、吊形式橋梁特有の初期形状解析の他に、種々の解析機能と構造要素によって、実橋の架設計算などで要求される特殊な非線形構造解析を効率的に行うことができる。
 本論文は、架設系を考慮した吊形式橋梁の設計支援システムの開発研究について論じたものであるが、このために、以下に示すシステム開発に関する研究を行っている。
(1)解析システムの開発に関しては、設計計算や架設計算などで要求される特殊な非線形構造解析に柔軟に対応するために、一般の汎用ソフトにはみられない種々の解析要素を開発し、解析対象や解析目的に応じて効率的、かつ実用的な非線形構造解析が可能であることを検証するとともに、収束性に優れた数値計算法により大規模構造解析を行う場合でも実構造物のモデル化において2次的な解析モデルへの置換作業を排除し、直接的に実橋の挙動を把握することで、合理的かつ効率的な構造解析が可能であることを検証している。
(2)前後処理システムの開発に関しては、Windows 機能、図化機能、GUI (GraphicalUser Interface) 手法、データベースシステム、ファイル管理システム、およびネットワークシステムなどの情報技術を適用し、解析システムの活用を支援するシステムを開発するとともに、計算結果を設計資料として利用する場合の効率化を図っている。
(3)設計支援システムを応用した架設支援システムの開発に関しては、非線形構造解析システムと高度な情報技術を適用した前後処理システムとの融合によって構築された架設管理システムや形状管理システムを各種構造解析に適用し、特殊かつ多大な労力を要する非線形構造解析手順と解析作業を簡易化することで、一般の設計者がこのシステムを運用する場合でも効率化が促進できることを検証している。
(4)最後に、本研究の成果を実際の吊橋の架設計算などに適用し、得られた結果に基づいて開発された非線形要素の妥当性、有用性、およびシステムの有効性を検証している。

 本研究にて開発された設計支援システムは、実用性と汎用性、応用性を兼ね備えており、実橋を忠実にモデル化する場合でも解析結果を効率的に設計資料として用いることができる。さらに、設計支援システムの応用として構築した架設管理システムによって、架設時に行われる種々の構造解析に立体有限変位解析法の適用の可能性を大きく広げることができ、実際の挙動を定量的に把握することで、構造物の信頼性の確保やコストダウンに繋がるものと考えられる。また、システムの価値を持続させるためには、新しい機能の追加やコンピュータ環境の変化への対応が不可欠であるが、本システムは、システムの中核である解析システムが開発環境に柔軟に対応できるので、システムメンテナンスの面においても適応性に優れているといえる。

平成12(2000)年度博士論文題名一覧

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る