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アスファルト舗装の中温化施工技術に関する研究

氏名 根本 信行
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第167号
学位授与の日付 平成13年3月26日
学位論文の題目 アスファルト舗装の中温化施工技術に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 宮木 康幸
 副査 助教授 下村 匠
 副査 日進化成株式会社 社長室付技術顧問 山之口 浩

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目次

第1章 序論
1.1 本研究の背景 p.1
1.2 本研究の目的 p.3
1.3 本論文の構成 p.4
参考文献 p.5

第2章 中温化施工技術の開発
2.1 総説 p.6
2.2 開発の概要 p.12
2.2.1 開発目標 p.12
(1) 混合温度条件の低減幅 p.12
(2) 効果の持続時間 p.12
2.2.2 定義 p.14
2.2.3 開発の進め方 p.15
2.3 中温化施工技術の概念の構築 p.16
2.4 特殊添加剤 p.17
2.4.1 開発経緯 p.17
2.4.2 発泡剤のみによる発泡特性 p.17
2.4.3 発泡強化剤の効果 p.19
2.4.4 特殊添加剤の添加量の設定 p.20
2.5 アスファルト混合物への適用 p.23
2.5.1 ストレートアスファルトを用いた場合 p.23
(1) 実験概要 p.23
(2) 締固め温度と締固め度 p.24
(3) 時間経過に伴う締固め度の変化 p.25
(4) 力学性状 p.26
(5) 締固め方法と締固め度 p.27
2.5.2 改質アスファルトを用いた場合 p.29
(1) 実験概要 p.29
(2) 締固め温度と締固め度 p.30
(3) 力学性状 p.31
2.6 中温化施工技術の用途 p.32
2.7 まとめ p.33
参考文献 p.34

第3章 プラントの製造エネルギー削減による環境対策
3.1 総説 p.35
3.2 アスファルトプラントの機構と省エネルギー対策の現状 p.38
3.2.1 アスファルトプラントの機構と製造エネルギー p.38
3.2.2 省エネルギー対策の現状 p.40
3.3 中温化による製造エネルギーの削減およびCO2排出量の抑制 p.41
3.3.1 製造エネルギーの削減効果 p.41
3.3.2 CO2排出量の抑制効果 p.42
3.4 まとめ p.44
参考文献 p.45

第4章 アスファルト舗装の補修における施工効率の改善
4.1 総説 p.46
4.2 高速道路における舗装修繕の現状 p.53
4.3 適用工事の概要 p.54
4.3.1 施工現場の状況 p.54
4.3.2 施工区割と舗設断面 p.55
4.4 アスファルト混合物の配合 p.57
4.5 施工結果 p.61
4.5.1 アスファルトプラントにおける混合条件 p.61
4.5.2 舗設機械および転圧状件 p.62
4.5.3 施工性および締固め性 p.64
4.5.4 舗装体温度の低減効果および路面性状 p.66
4.6 まとめ p.70
参考文献 p.71

第5章 再生アスファルト混合物のリサイクル率の向上
5.1 総説 p.72
5.2 再生骨材増量化の課題と中温化施工技術の利用目的 p.74
5.3 室内における基本検討 p.80
5.3.1 実験概要 p.80
5.3.2 予測値と実測値との温度比較 p.81
5.3.3 締固め温度と締固め度 p.82
5.3.4 再生アスファルト混合物の力学性状 p.83
5.3.5 アスファルトの組成分析および考察 p.84
5.4 現場での適用検討 p.87
5.4.1 再生アスファルト混合物の配合と製造条件 p.87
5.4.2 製造時および舗設時の状況 p.87
5.4.3 施工結果および考案 p.89
5.5 まとめ p.91
参考文献 p.92

第6章 アスファルト舗装の舗設機械編成の簡略化
6.1 総説 p.93
6.2 転圧ローラの削減に関する基本検討 p.95
6.2.1 検討方針 p.95
6.2.2 実験概要 p.95
6.2.3 実験結果および考案 p.97
6.3 現場での施工結果 p.98
6.3.1 施工概要および検討方法 p.98
6.3.2 アスファルト混合物の配合および性状 p.99
6.3.3 舗装体性状および考案 p.100
6.4 舗設におけるCO2排出量の削減効果 p.102
6.5 まとめ p.104
参考文献 p.105

第7章 中温化施工技術の各種舗装への適用
7.1 総説 p.106
7.2 排水性舗装への適用 p.108
7.2.1 適用目的 p.108
7.2.2 舗装体温度の経時変化 p.110
7.2.3 締固め温度の混合物特性に及ぼす影響 p.112
7.3 半たわみ性舗装への適用 p.115
7.3.1 適用目的 p.115
7.3.2 混合温度の低減化 p.117
7.3.3 養生期間の短縮効果 p.120
7.4 着色舗装への適用 p.121
7.4.1 適用目的 p.121
7.4.2 脱色バインダを用いたカラー混合物への適用性 p.121
7.4.3 特殊添加剤の色調に及ぼす影響 p.124
7.5 砕石マスチックアスファルト舗装への適用 p.126
7.5.1 適用目的 p.126
7.5.2 締固め性の向上 p.128
7.5.3 混合物特性 p.131
7.6 まとめ p.132
参考文献 p.133

第8章 結論 p.134

謝辞 p.136

 わが国の道路舗装の主流となっているアスファルト舗装は、その時折の社会的な要請や交通の情勢などに応じた技術開発が行われ、これまで目覚ましい進展を遂げてきた。舗装材料として一般的に用いられるアスファルト混合物は、加熱溶融された粘性域にあるアスファルトの状態によってその性質が変わるという特性を持っており、アスファルトプラントにおける混合物の製造時には適切な温度に加熱することが要求される。
 現在、アスファルト混合物は年間おおよそ7000万ton製造されており、骨材の乾燥過熱のために多量のエネルギーが消費され、温室効果ガスであるCO2を排出している。また、舗設においては、混合物の締固め性が温度に依存し、敷均し後の温度低下が早い条件では耐久性に影響する十分な締固め度の確保が難しいこと、逆に交通開放するためには温度低下のための養生時間が必要となること、また現状の締固め性では複数の転圧機械が必要なこと、などの改善を要すべき事項があることも実状である。これらについて、アスファルト混合物の混合性と締固め性とを同時に向上できる技術があれば、改善のための有効な対策技術となりうる。
 そこで、本研究は、アスファルト混合物の製造時の混合温度を、従来一般的に設定されている温度条件よりも低減した場合でも混合性と締固め性の確保ができ、しかも従来の温度条件とした場合には高い締固め性が得られる中温化技術の開発を行い、そしてこの技術をアスファルト舗装の構築における各種の課題への適用性の検証を行って実用化を図ることを目的とした。
 本研究では、まずアスファルト中に微細泡を持続的に発生させるという新しい観点にたった特殊な添加剤を開発し、それをアスファルト混合物に添加した場合に得られる品質特性から微細泡による混合性や締固め性に関する効果の確認を行って適用性の方向を見出した。さらに、実際に適用した場合の、製造時エネルギーの削減とそれによるCO2排出量の抑制、補修工事における交通規制時間の短縮、再生アスファルト混合物の再生骨材率の増量化、舗設における機械編成の簡略化とそれによるCO2排出量の抑制、特殊なアスファルト混合物の施工問題の改善、などに効果があることを明らかにした。
 本研究は、第1章から第8章で構成される。以下に、各章の概要と得られた知見を述べる。
 第1章では、研究の背景として、アスファルト舗装に使用されているアスファルト混合物の種類、それを製造するためのアスファルトプラント、および舗設における機械化施工の実態などを概括して示し、それからアスファルト舗装の構築において現在かかえている各種の課題を述べ、本研究の目的を明確にしている。
 第2章では、中温化技術に用いる微細泡形成のための特殊添加剤の開発を行い、さらにアスファルト混合物に添加して効果の検証を行った。その結果、混合温度を従来の温度条件よりも30℃程度低減しても十分な締固め性が混合後2時間程度まで得られ、混合物の品質も確保できることなどを明らかにし、そして本技術の適用の方向も示唆した。
 第3章では、製造時の混合温度を低減した場合のアスファルトプラントにおけるエネルギーの削減とそれに伴うCO2排出量の抑制効果を検討した。その結果、30の温度低減によって混合物1ton当りの製造燃料を約1l削減でき、CO2の排出を14%程度抑制できることを明らかにした。
 第4章では、温度低減による修繕工事の交通規制時間の短縮化の検討を行った。その結果、従来の温度条件の場合よりも、施工厚10cmで約50分、施工厚14cmで約70分の養生時間の短縮が図れることを明らかにした。
 第5章では、間接加熱方式による再生アスファルト混合物の再生骨材使用量の増量化について検討した。その結果、従来の方法では再生骨材率が20%程度までが限界とされていたが、これを40%まで増量化が図れることを明らかにした。
 第6章では、舗設における転圧ローラの削減化を図り、舗設機械の簡略化とそれに伴うCO2排出量の抑制効果を検討した。その結果、従来の混合温度条件として締固め性の向上を図ることによって、1台のローラ転圧で締固め度の確保ができ、通常の機械編成よりも舗設時のCO2を約50%抑制できることを明らかにした。
 第7章では、各種の特殊なアスファルト混合物への適用検討を行った。その結果、排水性舗装の寒冷期施工における締固め度の確保、厚層半たわみ性舗装の施工効率の改善、カラーアスファルト混合物の色調確保、および防水用の砕石マスチックアスファルト混合物の高い締固め度の確保に効果があることを明らかにした。
 第8章では、本研究の結論を述べている。
 以上、本研究の目的としたアスファルト舗装の中温化技術を開発することができ、そして実際の適用検討から実用化への目処を立てることができた。

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