コンクリートダム工事の施工方法の合理化と品質向上に関する研究
氏名 峰村 修
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第226号
学位授与の日付 平成13年3月26日
学位論文題目 コンクリートダム工事の施工方法の合理化と品質向上に関する研究
論文審査委員
主査 教授 丸山 久一
副査 助教授 下村 匠
副査 教授 海野 隆哉
副査 教授 丸山 暉彦
副査 助教授 宮木 康幸
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第1章 序論
1.1 研究の背景
1.1.1 我国の現状 p.1
1.1.2 ダム工事における合理化省力化の必要性 p.2
1.1.3 コンクリートダムにおける合理化施工の現状 p.2
1.1.4 合理化施工の問題点 p.3
1.2 既往の研究 p.4
1.3 本論文の目的と構成 p.5
第2章 ダム工事の歴史と現状
2.1 概説 p.11
2.2 ダム工事の歴史
2.2.1 ダムの始り p.11
2.2.2 我国における近代的ダム建設の始り p.12
2.2.3 第二次世界大戦まで p.13
2.2.4 第二次世界大戦から高度経済成長期 p.15
2.2.5 昭和の終りから平成 p.17
2.3 ダム設計施工技術の歴史的発展
2.3.1 海外における合理化施工技術 p.19
2.3.2 我国における合理化施工技術の発展 p.20
2.3.3 コンクリート配合面からの変化 p.22
2.4 ダム計測技術の現状と課題
2.4.1 ダムにおける計測 p.27
2.4.2 計測技術の歴史と概要 p.29
2.4.3 ダム工事における計測の問題点 p.35
2.5 第2章のまとめ p.37
第3章 ダムコンクリートの温度応力対策の合理化およびコスト低減を目的とした検討
3.1 概要 p.40
3.2 温度応力抑制に関する検討
3.2.1 単位セメント量の低減方法の検討 p.40
3.2.2 新しい材料を使用する実験的検討 p.47
3.2.3 実施工への適用 p.53
3.3 パイプクーリングによる合理的な冷却方法に関する検討
3.3.1 1次クーリングの合理的な施工に関する検討 p.56
3.3.2 2次クーリングの合理的な方法に関する検討 p.62
3.4 第3章のまとめ p.71
第4章 高流動コンクリートによる埋設物周辺の合理化施工法に関する検討
4.1 概説 p.76
4.2 検討対象構造物
4.2.1 アーチダム放流管周りの施工方法と現状 p.76
4.2.2 対象構造物の概要 p.77
4.3 事前検討
4.3.1 ダムコンクリートに要求される性能 p.80
4.3.2 配合条件の検討 p.80
4.4 コンクリート配合検討
4.4.1 充てん性の観点からの配合検討 p.81
4.4.2 実物大模型による充てん性確認 p.82
4.4.3 温度応力の観点からの配合検討 p.85
4.5 実施工への適用
4.5.1 施工概要 p.92
4.5.2 施工結果 p.93
4.6 事後解析
4.6.1 目的 p.98
4.6.2 温度計測結果 p.98
4.6.3 解析モデル p.98
4.6.4 同定解析結果 p.99
4.6.5 温度応力解析モデル p.100
4.6.6 温度応力解析結果 p.101
4.7 第4章のまとめ p.103
第5章 ダム付属工事の合理的施工法に関する検討
5.1 概説 p.107
5.2 高流動コンクリートを用いた調査横坑閉塞工事
5.2.1 目的 p.107
5.2.2 施工概要 p.108
5.2.3 施工結果 p.109
5.3 高性能軽量骨材を用いた仮排水路閉塞工事合理化の検討
5.3.1 目的 p.111
5.3.2 プレキャスト型枠適用の経緯 p.112
5.3.3 材料とコンクリート配合 p.114
5.3.4 製造・運搬・据付 p.116
5.4 第5章まとめ p.120
第6章 堤体監視方法の改良に関する検討
6.1 概説 p.124
6.2 ダム堤体施工中における計測の現状 p.124
6.3 AE法によるダム堤体の監視
6.3.1 AE法の概要 p.126
6.3.2 監視構造物 p.127
6.3.3 AE計測法 p.128
6.3.4 AE法解析の原理 p.131
6.4 キャリブレーション AE発生源位置標定の校正 p.135
6.5 2次クーリング時のAE監視
6.5.1 パラメータ解析 p.137
6.5.2 モーメントテンソル解析 p.138
6.6 ジョイントグラウチング時のAE監視
6.6.1 パラメータ解析 p.140
6.6.2 位置標定 p.143
6.7 考察 p.144
6.8 第6章のまとめ p.145
第7章 施工合理化の効果
7.1 概説 p.150
7.2 工事費用算出の方法 p.150
7.3 施工の合理化の評価 p.151
7.4 第7章のまとめ p.154
第8章 結論
8.1 本論文の結論 p.158
8.2 今後の課題 p.163
謝辞
題目 「コンクリートダム工事の施工方法の合理化と品質向上に関する研究」
本論文は、コンクリートダム工事の内、ブロック柱状打設工法(以下柱状工法)によって施工されるダムについて、施工の合理化と品質の向上について研究したものである。コンクリートダム工事において柱状工法は古来から採用されてきた工法である。近年、合理化施工として面状工法が開発され、多くのダムが施工されてきたが、面状工法の採用できるダムには大きさなどの制約があり、中小規模のダムを中心に柱状工法が採用されている。また、面状工法で施工されるダムにおいても堤体の上部(高さにして約20m)は、柱状工法で施工している。このことから、本研究は、柱状工法の施工合理化や品質向上を目的とし、従来の施工技術を改良、新しい施工方法や材料の適用、また、新しい計測技術の適用について検討した。
本論文は、第1章~第7章からなり、その構成は次のとおりである。
第1章では、ダム事業を含む公共事業の現状と課題について述べるとともに、本論文の目的と構成について述べている。
第2章では、コンクリートダム工事におけるコンクリートの配合面と施工方法の歴史的発展と現状について資料を収集し、整理することでコンクリートダム工事における技術の現状と課題について述べている。また、コンクリートダム工事における計測技術について資料を収集し整理することで計測技術の現状について述べている。
第3章では、温度応力対策の合理的な方法についての検討結果を述べている。温度応力対策の合理的な方法は、コンクリートの配合や冷却方法について検討した。コンクリート配合の検討では、新しい材料の適用性を実験的に検討し、コストを増加させないで同等以上の品質を確保しながら水和熱の小さな配合が可能であることを述べている。また、冷却方法の検討では、柱状工法について一般的に採用されるパイプクーリングについて有限要素法による解析を実施し、パイプクーリングの条件と温度応力の関係について述べている。さらに、この検討結果を建設中のダム工事に適用した。これにより品質を向上させながらコストを同等にすることが明らかになった。
第4章では、コンクリートダム工事に新しい施工方法や材料を採用した合理的施工法についての検討結果を述べている。ダム本体埋設構造物である建設中のダムの常用洪水吐き周辺に高流動コンクリートの適用を検討した。コンクリートダム工事に必要な性能を持つ高流動コンクリートについて検討し、施工実験、室内実験と三次元有限要素法による解析を行い、要求性能を満足する高流動コンクリートを選定した。また、この選定した高流動コンクリートの温度応力対策の一つとして液化窒素による施工実験を行い、高流動コンクリートの性能が冷却により変化しないことを確認した。さらに選定された高流動コンクリートを用いて、検討対象とした常用洪水吐き周辺を実際に施工し、施工結果をまとめている。この検討により、コンクリートの締固めが出来ないほど高密度の鉄筋が配筋された埋設構造物周辺や従来では施工できなかった複雑な形状をした構造物について、高流動コンクリートにより施工することで施工の合理化と高い品質の確保ができることが判明した。
ダム本体工事に付属する工事の合理的な施工法の検討では、調査横坑閉塞工事に高流動コンクリートを適用する施工実験を実施し、工事期間が大幅に短縮できることを述べている。また、新しい材料の採用としては、仮排水路トンネル閉塞工事に高性能軽量コンクリートの適用を検討した。そして、高性能軽量コンクリートによるプレキャスト型枠を用いて実際に施工を実施することで、その結果について述べている。この結果、ダム付属工事の工事期間の短縮が判明した。
第5章では、コンクリートダムのように大きなコンクリート構造物を立体的に監視する方法としてAE法の適用性について述べている。従来の計測装置では、センサーの設置された点の情報しか得られていない。AE法によりコンクリートダムの立体的な計測を建設中のダムにおいて試みた。計測対象は、建設中のアーチダムにおける二次クーリングとジョイントグラウチングである。計測範囲には、コンクリートの打設中に発見された温度ひび割れがあり、二次クーリングやジョイントグラウチングによるひび割れの進行が懸念されていた部分である。計測の結果、コンクリートダムの立体的監視としてAE法による計測の適用性が確認されると共に、懸念されたひび割れの進行は認められなかった。
第6章では、本研究で検討した施工の合理化について、その効果を建設工事費から検討した結果について述べている。検討は、高流動コンクリートを用いた常用洪水吐き工事と調査横坑閉塞工事、および軽量コンクリートを用いた仮排水路トンネル閉塞工事を検討対象とした。その結果、常用洪水吐き工事と調査横坑閉塞工事では、コストの縮減が確認され、仮排水路トンネル閉塞工事では、コストがほぼ同等であることが確認された。
第7章では、本論文のまとめとして、本研究で得られた成果と今後の課題について述べている。