高力率コンバータとその波形改善法に関する研究
氏名 藤原 憲一郎
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第157号
学位授与の日付 平成12年9月20日
学位論文題目 高力率コンバータとその波形改善法に関する研究
論文審査委員
主査 教授 高橋 勲
副査 教授 近藤 正示
副査 助教授 大石 潔
副査 助教授 野口 敏彦
副査 NPE研究所 代表 難波江 章
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第1章 序論
1.1 研究の背景 p.1
1.2 研究の目的 p.3
1.3 論文の概要 p.6
参考文献 p.9
第2章 整流回路の波形改善法とその分類
2.1 緒言 p.11
2.2 単相整流回路の波形改善法 p.12
2.2.1 パッシブフィルタによる波形改善 p.13
2.2.2 アクティブフィルタによる波形改善 p.15
2.3 三相整流回路の波形改善 p.19
2.3.1 多重化による波形改善 p.20
2.3.2 PWM制御による波形改善 p.25
2.3.3 フィルタと併用による波形改善 p.27
2.4 本研究の位置づけ p.29
2.5 結言 p.33
参考文献 p.35
第3章 倍電圧整流回路の高力率・低ひずみ化
3.1 緒言 p.37
3.2 基本回路と特性 p.39
3.2.1 基本回路と動作原理 p.39
3.2.2 回路の簡易解析 p.42
3.2.3 回路定数と入出力特性 p.44
3.3 倍電圧整流回路への適用 p.47
3.3.1 倍電圧整流回路の構成 p.48
3.3.2 倍電圧整流回路の特性 p.48
3.3.3 電圧制御形倍電圧整流回路 p.53
3.4 200V入力整流回路 p.57
3.4.1 200V入力整流回路の回路定数と特性 p.57
3.4.2 サイリスタの位相制御と高調波特性 p.60
3.5 結言 p.66
参考文献 p.68
第4章 多重サイリスタコンバータの高力率制御
4.1 緒言 p.69
4.2 多重コンバータの電圧分担比と制御法 p.71
4.2.1 単位コンバータの電圧分担比と力率 p.71
4.2.2 転流余裕角を考慮した場合の電圧分担比 p.76
4.3 多重コンバータの特性 p.78
4.3.1 不等電圧形多重コンバータの動作波形 p.78
4.3.2 不等電圧形多重コンバータの静特性 p.85
4.3.3 動作モード切り替えとゲート制御法 p.88
4.4 結言 p.92
参考文献 p.94
第5章 多重サイリスタコンバータの高速無効電力制御
5.1 緒言 p.95
5.2 三相交流の瞬時有効電力pと瞬時無効電力q p.96
5.3 多重コンバータの瞬時有効電力pと瞬時無効電力q p.100
5.4 無効電力制御形多重コンバータ p.103
5.4.1 2重コンバータの無効電力一定制御 p.103
5.4.2 2重コンバータの無効電力ステップ応答 p.107
5.5 多重コンバータの無効電力特性 p.109
5.5.1 高調波電流特性 p.109
5.5.2 制御角と制御領域 p.111
5.5.3 多重コンバータのアクティブフィルタ特性 p.116
5.5.4 無効電力制御領域の改善 p.123
5.6 結言 p.127
参考文献 p.129
第6章 大容量整流回路の高力率・高効率化
6.1 緒言 p.131
6.2 単相電圧形整流回路の高効率化 p.133
6.2.1 ブリッジ形ロスレス・スナバ p.133
6.2.2 昇圧形用ロスレス・スナバの動作原理 p.137
6.2.3 ロスレス・スナバを用いたアクティブ整流回路 p.142
6.2.4 アクティブ整流回路の実験結果 p.144
6.3 電流形サイリスタコンバータの転流回路 p.148
6.3.1 コンデンサ転流方式の問題点 p.149
6.3.2 補助電源転流回路 p.151
6.3.3 補助電源転流回路の転流動作 p.152
6.3.4 補助電源転流の1電源化と問題点 p.163
6.3.5 補助電源転流を用いた整流回路の実験結果 p.166
6.4 結言 p.172
参考文献 p.176
第7章 結論
7.1 研究の要約 p.179
7.2 今後の課題 p.188
謝辞
発表論文
本研究は、整流回路の電流波形を改善する場合、主回路や制御回路を複雑化することなく波形改善を実現し、経済性や信頼性に富む整流回路を開発することを目的とした。
単相整流回路は、1~数kW容量の整流回路を想定し、パッシブ回路で高調波抑制ガイドラインを満足する回路構成を提案した。提案回路は、従来の倍電圧整流回路を基本とし、倍電圧用として用いられていたコンデンサを小容量に選び、電源側に挿入したリアクトルとのフィルタ作用により波形改善を実現した。このような回路構成とすることにより、フィルタ用コンデンサとして電解コンデンサの使用を可能とし、従来のLーCフィルタと比較して、小型・軽量化、および、低価格化が可能となる。容量1.8[kW]のパッシブ方式整流回路を試作し、高調波ガイドラインが満足されるとともに、効率98%、力率97%が実現されることを確認した。整流回路をさらに大容量化する場合、高調波抑制ガイドラインを満足させることが困難となる。この場合、ダイオードブリッジの1アームをサイリスタで置き換え、位相制御を採用することが高調波低減の面で有効であることも示した。
大容量電流形サイリスタコンバータの力率改善には、一般的に多重化が採用される。多重化の目的としては、装置容量の増大、多相化による波形改善、非対称制御による力率改善があげられる。従来、多重化されるコンバータの電圧分担は等しかったが、本論文では、効果的に力率改善をはかる多重化方式として、n多重の場合、それぞれの電圧分担を2n-1/(2n-1){n=1,2…}とし、電圧分担比の最小のコンバータ{1/(2n-1)}のみ位相制御し、他のコンバータは無効電力の発生を最小とする制御角、または、バイパス動作させる。このような構成と制御の組み合わせにより、提案の2段多重は従来の3段に、3段多重は7段に相当する力率改善が実現できる。これらの基本特性と、制御切り換え時のゲート制御法について実験結果を示し、動作を確認した。
多重コンバータはそのゲート制御により、発生する基本波有効電力、無効電力の特性が決定される。また、そのゲート信号を変調することにより正相・逆相の低次高調波電流を発生させることができる。本論文では、これらの動作原理を示し、その特性を応用した大容量アクティブフィルタシステムを提案した。また、無効電力を制御しながら出力調整を行う、無効電力制御形コンバータを提案した。さらに、これらの諸特性を実現するゲート制御を、ワンボードマイコンを用いて実現するハード、ソフトの開発も行った。実験結果によれば、装置容量の24%の低次高調波電流の発生が可能であり、アクティブフィルタとして基本的な特性を有していることが実証された。
近年、整流回路の電流を高周波スイッチング動作により正弦波状に改善する方式が提案されている。単相の場合、アクティブ方式と呼ばれ、装置の小型化のためにスイッチングがますます高周波化される傾向にある。この場合、高効率化のためにスイッチング損失やスナバ損失の低減が課題となる。本論文では、主スイッチがオフの時、スイッチに並列に接続されスナバ回路として動作し、スイッチがオンすればそのコンデンサ電圧が負荷に直列に接続され、スナバエネルギー回生回路として動作するロスレススナバを提案する。容量約800[W]の試作装置を用いた実験より、提案のロスレススナバ回路の回生効率は97%であることが確認された。
三相PWMサイリスタコンバータを用いて波形改善をはかる場合、その転流回路が課題となる。ここでは、この転流に電圧重畳転流法を用い、電源インダクタンスに蓄えられるエネルギーを電流重なりの形で回生するとともに、転流時間の最適化が可能な転流方法を提案した。提案回路を採用したPWMコンバータを試作し、安定な転流動作を確認するとともに、効率95%が得られることを示した。
以上のとおり、単相整流回路、および、三相整流回路の波形改善において、大容量化をはかる上で、経済的で信頼性に富み実用的な高力率整流回路を開発することができた。