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ポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルク

氏名 金津 将幸
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第326号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 ポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルク
論文審査委員
 主査 助教授 太田 浩之
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 金子 覚
 副査 新潟大学 工学部教授 新田 勇

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目次

第1章 緒論 p.1
 1.1 本研究の動機および目的 p.1
 1.2 ポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクに関する これまでの研究 p.6
 1.2.1 佐藤,麻生,梅本の研究 p.6
 1.2.2 中田の研究 p.7
 1.2.3 矢部,星,反町の研究,および矢部,相原の研究 p.7
 1.2.4 角田の研究,および菊谷,角田の研究 p.8
 1.2.5 まとめ p.8
 1.3 本研究の方針 p.9
 1.4 記号 p.11
第2章 回転トルクに及ぼす潤滑剤の封入形態の影響 p.18
 2.1 緒言 p.18
 2.2 実験 p.18
 2.2.1 試験軸受 p.18
 2.2.2 実験方法 p.26
 2.3 実験結果 p.30
 2.4 解析および考察 p.34
 2.4.1 1個の玉とポリマ潤滑油(または保持器)の間の摩擦モーメントの測定 p.34
 2.4.2 玉とポリマ潤滑剤の間の摩擦の解析 p.39
 2.4.2.1 1個の玉とポリマ潤滑剤の間のx軸まわりの摩擦モーメント p.39
 2.4.2.2 玉とポリマ潤滑剤の間の摩擦による玉軸受の回転トルク p.43
 2.4.3 玉と保持器の間の摩擦の解析 p.48
 2.4.4 各試験軸受の回転トルクの差とポリマ潤滑剤の封入形態の関係 p.49
 2.5 結言 p.49
第3章 回転トルクと温度の関係,および玉-軌道面間の油膜の形成状態 p.51
 3.1 緒言 p.51
 3.2 実験 p.51
 3.2.1 試験軸受 p.51
 3.2.2 実験方法 p.51
 3.3 実験結果 p.53
 3.4 解析及び考察 p.58
 3.4.1 回転トルクとポリマ潤滑剤の温度の関係 p.58
 3.4.2 ポリマ潤滑剤の温度に及ぼすポリマ潤滑剤の封入形態の影響 p.60
 3.4.2.1 比例定数Kに及ぼすポリマ潤滑剤の封入形態の影響 p.60
 3.4.2.2 回転トルクMに及ぼすポリマ潤滑剤の封入形態の影響 p.63
 3.4.2.3 ポリマ潤滑剤の温度に及ぼすポリマ潤滑剤の封入形態の影響 p.65
 3.4.3 玉-軌道面間の油膜の形成状態 p.67
 3.5 結言 p.73
第4章 回転トルクの計算式 p.75
 4.1 緒言 p.75
 4.2 試験軸受 p.75
 4.3 回転トルクの計算式 p.76
 4.3.1 軌道論とポリマ潤滑剤間の鉱油のせん断抵抗による回転トルク p.76
 4.3.2 弾性ヒステリシス,差動すべり,玉のスピン摩擦,EHL転がり粘性抵抗による回転トルク p.82
 4.3.2.1 弾性ヒステリシスによる回転トルク p.83
 4.3.2.2 差動すべりによる回転トルク p.83
 4.3.2.3 玉のスピン摩擦による回転トルク p.84
 4.3.2.4 EHL転がり粘性抵抗による回転トルク p.84
 4.3.3 玉とポリマ潤滑剤(または保持器)の間の摩擦による回転トルク p.86
 4.3.4 ポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクの計算式 p.86
 4.4 油潤滑された玉軸受の回転トルクの計算式の整合性の確認,ポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクの計算式の有効性の検証,および回転トルクに及ぼす軌道論とポリマ潤滑剤間の鉱油せん断抵抗,弾性ヒステリシス,差動すべり,玉のスピン摩擦,EHL転がり粘性抵抗,および玉とポリマ潤滑剤(または保持器)の間の摩擦の影響 p.87
 4.4.1 油潤滑された玉軸受の回転トルクの計算式の整合性の確認,およびポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクの計算式の有効性の検証 p.87
 4.4.1.1 油潤滑された玉軸受の回転トルクの計算式の整合性 p.87
 4.4.1.2 ポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクの計算式の有効性 p.91
 4.4.2 回転トルクに及ぼす軌道論とポリマ潤滑剤間の鉱油のせん断抵抗,弾性ヒステリシス,差動すべり,玉のスピン摩擦,EHL転がり粘性抵抗,および玉とポリマ潤滑剤(または保持器)の間の摩擦の影響 p.93
 4.5 結言 p.96
第5章 結論 p.97
 5.1 緒言 p.97
 5.2 回転トルクに及ぼすポリマ潤滑剤の封入形態の影響 p.97
 5.3 回転トルクと温度の関係,および玉-軌道面間の油膜の形成状態 p.97
 5.4 回転トルクの計算式 p.98
 5.5 結言 p.99
謝辞 p.100
参考文献 p.101

 近年,油またはグリースを樹脂材料で固化したポリマ潤滑剤およびこれを封入した転がり軸受が開発され,実用化されている.これに伴い,ポリマ潤滑剤の特性およびポリマ潤滑剤を封入した転がり軸受の性能の研究が盛んに行われている.ポリマ潤滑剤の特性については,これまでに,潤滑剤供給機構,潤滑剤供給性能,熱的挙動および機械的性質が良く研究されている.そして,ポリマ潤滑剤は,水のかかる場所やほこりの多い場所など従来の油やグリースが使用できない環境下でも使用できるという特長があることが明らかとなっている.一方,ポリマ潤滑剤を封入した転がり軸受の基本性能については,これまでに,回転速度限界,寿命,耐水性能,耐久性能,潤滑剤漏れ性能および回転トルクが研究されている.そして,ポリマ潤滑剤を封入した転がり軸受は,グリースを封入した転がり軸受に比べて劣悪な環境下における性能が優れていることが明らかとなっている.しかし,回転トルクについては,いくつかの研究が行われているが,転がり軸受にポリマ潤滑剤を封入した場合は,回転トルクの大きいことが問題とされその低減が望まれてきた.
 これまでに,ポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクは,ポリマ潤滑剤の封入形態の影響を受けることが実験的に示されている.しかしながら,これまでの研究においてポリマ潤滑剤の封入形態の詳細を明確に示した例はなく,回転トルクに及ぼすポリマ潤滑剤の封入形態の影響を実験と解析の両面から検討したものは見当たらない.また,回転トルクと密接に関連すると考えられる軸受の温度上昇および玉-軌道面間の油膜の形成状態については全く研究されていない.さらに,回転トルクに関する解析的な検討は行われておらず,現在のところポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクを計算によって求めることもできない.
 そこで,本論文では,転がり軸受の中で最も代表的な形式であり用途が広い深溝玉軸受にポリマ潤滑剤を封入したものを試験軸受とし,回転トルク,回転トルクと温度の関係,および玉-軌道面間の油膜の形成状態について実験と解析の両面から解明することを目的とした.本論文は全5章からなり,各章の概略は以下のとおりである.
 第1章「緒論」では,ポリマ潤滑剤を封入した転がり軸受の回転トルクに関するこれまでの研究を概観して解明すべき事項を整理し,本研究の目的について述べた.
 第2章「回転トルクに及ぼすポリマ潤滑剤の封入形態の影響」では,まず,実験によりポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクがポリマ潤滑剤の封入形態の影響を受けることを明らかにした.また,ポリマ潤滑剤の封入形態の異なる玉軸受間の回転トルクの差は,回転速度およびアキシアル荷重によらずほぼ一定となることも示した.次に,解析によりポリマ潤滑剤の封入形態の異なる玉軸受間の回転トルクの違いが玉とポリマ潤滑剤の間の摩擦,および玉と保持器の間の摩擦の違いに起因することを明らかにした.
 第3章「回転トルクと温度の関係,および玉-軌道面間の油膜の形成状態」では,まず,実験によりポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルク,温度,玉-軌道面間の油膜の形成状態を調べた.次に,実験結果に基づいて回転トルクとポリマ潤滑剤の温度の関係,ポリマ潤滑剤の温度に及ぼすポリマ潤滑剤の封入形態の影響,および玉-軌道面間の油膜の形成状態について解析および考察を行った.そして,ポリマ潤滑剤の温度は,ポリマ潤滑剤の封入形態の影響を受け,回転トルクの大きいものほど高くなることを示した.また,軸受回転中,玉-軌道面間は油膜で完全に分離されていることを実験と油膜パラメータを用いた考察の両面から確認した.
 第4章「回転トルクの計算式」では,アキシアル荷重が加わる場合のポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクが,軌道輪とポリマ潤滑剤間の鉱油のせん断抵抗による回転トルク,弾性ヒステリシスによる回転トルク,差動すべりによる回転トルク,玉のスピン摩擦による回転トルク,EHL転がり粘性抵抗による回転トルク,および玉とポリマ潤滑剤(または保持器)の間の摩擦による回転トルクの和になるとして回転トルクの計算式を提案した.そして,提案した回転トルクの計算式による回転トルクの計算値と第2章の実験で得た測定値との比較を行い,提案した回転トルクの計算式の有効性を検証した.さらに,提案した回転トルクの計算式に基づいて,回転トルクに及ぼす軌道輪とポリマ潤滑剤間の鉱油のせん断抵抗,弾性ヒステリシス,差動すべり,玉のスピン摩擦,EHL転がり粘性抵抗,および玉とポリマ潤滑剤(または保持器)の間の摩擦の影響を明らかにした.
 第5章「結論」では,以上の各章で得られたポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルクに関する結言をまとめて述べた.
 以上により,ポリマ潤滑剤を封入した玉軸受の回転トルク,回転トルクと温度の関係,および玉ー軌道面間の油膜の形成状態について実験と解析の両面から解明することができた.

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