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超伝導ジョセフソンデバイスの低周波ノイズ特性に関する研究

氏名 石田 弘樹
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第345号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 超伝導ジョセフソンデバイスの低周波ノイズ特性に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 濱崎 勝義
 副査 教授 赤羽 正志
 副査 教授 小松 高行
 副査 教授 小野 浩司
 副査 助教授 石黒 孝

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目次

第1章 序論 p.1

1.1 はじめに p.1
1.2 超伝導ジョセフソン接合の準粒子電流特性
 (1) 金属系超伝導体を用いたトンネル接合の準粒子電流特性 p.3
 (2) 銅酸化物系超伝導体を用いたトンネル接合の準粒子電流特性 p.8
1.3 超伝導トンネル型素子のノイズ特性に関する研究 p.14
1.4 本研究の目的と本論文の構成 p.23
1.5 第1章の参考文献 p.24

第2章 超伝導トンネル接合の作製法、及び準粒子電流特性

2.1 Nb/Al-AlOx/Nbトンネル接合 p.26
2.2 エピタキシャルNbN/AlN,or MgO/NbNトンネル接合 p.32
2.3 Bi2Sr2CaCu2Oyスタック
 (固有ジョセフソン接合)
 (1) 大きな面接合積をもつBi-2212スタック p.41
 (2) 大きな面接合積をもつBi-2212スタック p.48
2.4 第2章のまとめ p.50
2.5 第2章の参考文献 p.51

第3章 超伝導トンネル接合の低周波ノイズ特性

3.1 NbN/AlN,or MgO/NbNトンネル接合の低周波ノイズスペクトル p.53
3.2 ノイズスペクトルの解析モデル
 (1) 1/fノイズモデル p.59
 (2) 大きいなバンプをもつローレンツ型スペクトルのモデル p.61
3.3 大きなバンプをもつローレンツ型スペクトルの解析 p.63
3.4 特性時間τeffのバイアス電圧依存性及び、温度依存性 p.66
3.5 ローレンツ型スペクトルの熱サイクル依存性 p.69
3.6 Bi-2212スタックの低周波ノイズスペクトル
 (1) Bi-2212/Auコンタクト抵抗から発生するノイズ p.76
 (2) ノイズスペクトルSv(f)の温度依存性 p.78
 (3) 1/fノイズパラメータηの接合数依存性 p.82
 (4) 大きなバンプをもつローレンツ型スペクトルの解析 p.84
3.7 第3章のまとめ p.85
3.8 第3章の参考文献 p.86

第4章 エピタキシャルNbN NbN/AlN, or MgO/NbN接合の1/fノイズ特性

4.1 NbN/AlN,or MgO/NbN三層膜の断面TEM像 p.87
4.2 1/fノイズパラメータηのバリヤ膜厚d依存性 p.89
4.3 1/fノイズパラメータηの臨界電流密度Jc依存性 p.93
4.4 第4章のまとめ p.95
4.5 第4章の参考文献 p.96

第5章 Andreev反射確率と1/fノイズの関係

5.1 1/fパラメータηの接合品質Q、及びAndreev反射確率A(E)依存性 p.97
5.2 1/fパラメータηの温度依存性 p.100
5.3 サブギャップ電圧領域における余剰1/fノイズ p.105
5.4 第5章のまとめ p.113
5.5 第5章の参考文献 p.114

総括 p.115

付録.A ノイズの表式
A.1 熱・量子ノイズモデル p.118
A.2 Machlupモデル p.121
A.3 付録Aの参考文献 p.124

付録.B Bi-2212/Auのコンタクト抵抗
B.1 コンタクト抵抗率の報告例、及び評価法 p.125
B.2 Au成膜条件の最適化 p.129
B.3 付録Bの参考文献 p.134

記号及び略語表 p.135

本研究に関する発表論文 p.137

謝辞 p.138

 近年、地球環境計測のため高い応答周波数(THz)をもつ超伝導ミクサの開発が求められている。既に応用段階にあるNb系トンネル接合型超伝導ミクサのノイズ温度(TN)は、量子限界(hω/kB)付近まで達しているが、ギャップ周波数fg(=2Δ/h:Δは超伝導ギャップエネルギー)が約700 GHzであるためTHz帯では使えない。NbN系トンネル接合は、fgが約1.4 THzでありTHz帯での使用が可能である。しかし、Nb系トンネル接合に比べサブギャップ領域でのリーク電流が大きく、ノイズ温度も高いためデバイスの高品質化が求められている。また、Bi2Sr2CaCu2O8+δ(Bi-2212)固有トンネル接合は、fgが約10 THzであり更に高い周波数帯での動作が期待されるが、電流輸送機構等の基礎物理に不明な点が多く、ミクサへの応用には多くの課題が残されている。
 本論文は、NbN系トンネル接合、およびBi-2212固有トンネル接合の準粒子電流特性、および低周波ノイズ特性について論じたものである。
 第1章の序論に続き、第2章では、エピタキシャルNbN/AlN, or MgO/NbNトンネル接合の 微分抵抗(dV/dI-V)特性をMultiple Andreev-Reflection (MAR) 現象を基礎とするOTBK理論を用いたシミュレーションにより詳細に解析し、dV/dI-V特性上のサブギャップ電圧領域に現われるピーク・ディップ構造の発現機構を明らかにしている。
 続いて第3章では、NbN系トンネル接合の低周波ノイズ特性を調べ、Two Level Fluctuation(TLF)が観測される場合のデバイス内の欠陥準位モデルを提案するとともに、NbN/MgO/NbN接合の低周波ノイズスペクトルが、1/fノイズとMachlupの表式の和で解析できることを示している。このローレンツ型スペクトルの発生起源としては、(1) NbN/MgO界面の不純物層(NbOX)、(2) 反応性イオンエッチング(RIE)プロセスにより発生する接合側面のダメージ層(AlNX、MgOX)、(3) NbN/MgO界面の格子不整合による欠陥が考えられる。
 Bi-2212固有トンネル接合の低周波ノイズ特性に関しては、Bi-2212/Au界面から発生する1/fノイズを測定し、ノイズスペクトル密度(SV)とコンタクト抵抗(RC)との相関関係を明らかにしている。さらに、Bi-2212固有トンネル接合のもつ固有のノイズ特性を評価するために必要となるコンタクト抵抗率(ρc<6×10-4Ω-cm2)の値を得るために、Au薄膜の成膜方法・条件についても検討している。その他に、Bi-2212固有トンネル接合における1/fノイズパラメータ(η)の温度、および接合数依存性よりスタック内の接合が独立に動作していること、ノイズに関係するキャリヤ数が、ほぼ同程度であるという知見を得ている。
 第4章では、エピタキシャルNbN/AlN, or MgO/NbNトンネル接合におけるηのバリヤ膜厚(d)および、臨界電流密度(JC)依存性とNbN/AlN, or MgO/NbN三層膜の透過型電子顕微鏡 (TEM)像からバリヤ層のエピタキシーの不完全性が1/fノイズをもたらすことを初めて明らかにしている。
 第5章では、エピタキシャルNbN系接合のηと接合品質パラメータ(Q)、およびAndreev反射確率(A(E))との相関関係を明らかにし、η-Q-1、およびη- A(E)特性が熱・量子ノイズを与えるPlanckの輻射式と同形に従うことを見出している。また、η-Q-1特性よりNbN系トンネル接合の1/fノイズレベルを更に軽減させるためには、トンネルリミット(A(E)≒0)に近い高品質な接合を開発する必要があることを指摘している。ノイズ低減化の一つの有用な方法として、Nb/Al-AlOX/Nb接合の作製に広く用いられている選択性Nb陽極酸化法が考えられることを述べている。その他に、NbN/AlN/NbN接合におけるηのバイアス電圧(Vbias)依存性を測定し、ギャップ電圧以内で余剰1/fノイズ(ηsg-ηag)が発生していることを初めて明らかにしている。さらに、余剰1/fノイズ(ηsg-ηag)-Vbias特性に観られるピーク・ディップ構造とSubharmonic-energy Gap Structure (SGS)との相関関係から、余剰1/fノイズの発生起源がMAR現象に関係したものであると結論づけている。
 本研究で明らかとなった以上の知見は、高品質な超伝導デバイス開発上有用なものであるといえる。

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