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高配向MgO薄膜の成膜法とJosephsonデバイスへの応用

氏名 三崎 幸典
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第228号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 高配向MgO薄膜の成膜法とJosephsonデバイスへの応用
論文審査委員
 主査 教授 濱崎 勝義
 副査 教授 八井 浄
 副査 教授 小松 高行
 副査 助教授 石黒 孝
 副査 教授 末松 久幸

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目次

第1章 序論
 1-1 本研究の背景 p.1
 1-2 本研究の目的と内容 p.4
 第1章 参考文献 p.6

第2章 高配向MgO薄膜の成膜法 p.7
 2-1 単結晶ターゲットによる成膜法 p.7
 2-1-1 基板温度依存性 p.10
 2-1-2 N2ガス流量及び到達圧力依存性 p.12
 2-1-3 オージェ電子分光による組成分析 p.15
 2-1-4 プラズマ発光分析 p.16
 2-1-5 AFMによる表面形状測定 p.26
 2-2 焼結ターゲットによる成膜法 p.33
 2-2-1 N2ガス流量及び到達圧力依存性 p.33
 2-2-2 プラズマ発光分析 p.38
 2-3 複合ターゲットによる成膜法 p.42
 2-3-1 複合ターゲット開発の目的及び作製方法 p.42
 2-3-2 N2ガス流量及び到達圧力依存性 p.44
 2-3-3プラズマ発光分析 p.47
 第2章 参考文献 p.49

第3章 NbN/MgOエピタキシャル薄膜の成膜
 3-1 MgO及びNbN薄膜の成膜条件 p.50
 3-2 NbN薄膜のTc、ρの下地MgO膜厚依存性 p.53
 3-3 NbN薄膜のTc、ρのNbN膜厚依存性 p.55
 3-4 NbN/MgO or Al2O3/NbN積層膜の成膜 p.61
 第3章 参考文献 p.64

第4章 エピタキシャルNbN/MgO薄膜のJosephsonデバイスへの応用 p.65
 4-1 準一次元量子細線構造を持つ量子ポイントコンタクトの作製 p.65
 4-2 SWLの準粒子電流及び超伝導電流とショットノイズ特性 p.69
 4-2-1 SWLの準粒子電流及び超伝導電流 p.69
 4-2-2 Liu and Yamamoto理論(LY理論) p.77
 4-3 ノイズ測定系 p.79
 4-4 実験結果と考察 p.81
 4-4-1 準粒子特性の解析 p.81
 4-4-2 電圧ノイズ特性 p.84
 4-5 現象論的なショットノイズの表式 p.88
 4-6 クロスオーバー電圧Vcの評価 p.93
 第4章 参考文献 p.99

第5章 総括 p.100

 超伝導NbNを電極に用いたJosephsonデバイスの利点は,高い動作温度(超伝導転移温度:Tc~16K)と高い応答周波数(ギャップ周波数fg=1.4 THz)をもつことである。高い超伝導転移温度は,10K程度の小型冷凍機での使用を可能とする。また、高い応答周波数は,電波天文学用デバイスとして有用である。現在,Nb系トンネル接合の実用化は軌道に乗り、次に実用化に近い材料としてNbN系が研究されているが,シリコン基板上に成膜したNbN膜は品質が悪く、MgO単結晶が基板として用いられている。デバイス集積化の上で汎用性のあるシリコン基板上に単結晶MgOをバッファ層として成膜できれば,その上に超伝導NbN膜をエピタキシャル成長させることができるので,単結晶MgOバッファ層の成膜技術はデバイス作製の要素技術として重要である。
 本論文は,「高配向MgO薄膜の成膜法とJosephsonデバイスへの応用」と題し,シリコン基板上へのMgOバッファ層の成膜法に関する研究を中心にまとめたものであり,その成膜条件について詳細に調べている。また,このMgOバッファ層の応用としてNbN/MgO/NbN超伝導メソスコピックデバイスを作製し,高周波デバイス応用上最も重要な問題であるショットノイズ特性について論じている。
 第1章の「序論」では,Josephsonデバイスに用いられる超伝導電極材料に関する研究の現状について概説し,続いて本研究の目的と内容について述べている。
 第2章の「高配向MgO薄膜の成膜法」では,シリコン基板上への高配向MgO膜の成膜法について検討している。まず,単結晶ターゲットと焼結ターゲットという製法の異なる2種類のMgOターゲットを使用した場合について,その製法の違いがMgO膜の配向性に及ぼす影響を,質量分析,プラズマ発光分析により詳細に調べている。特に,スパッタ時のArガスにN2ガスを混入させた場合,MgO薄膜の(200)配向性が著しく向上することを見出し,配向性とN2ガス圧依存性との関係を明らかにするとともに,その効果についてのモデルを提唱している。さらにこれらの結果を応用してMgO複合ターゲットを提案し,得られたMgO薄膜の配向性,およびその窒素ガス圧依存性等が,単結晶ターゲットの場合と比較しても遜色が無いことを明らかにしている。
 第3章の「NbN/MgOエピタキシャル薄膜の成膜」では,2章で得られたMgOバッファ層上に超伝導NbN膜がエピタキシャル成長可能であることを示し,NbN膜厚と超伝導転移温度との関係をCooper理論を用いて解析している。また,常伝導状態でのNbN膜厚と抵抗率との関係をMayadas and Shatzkes理論(MS理論)を用いて論じている。さらに,Josephsonデバイスを作製する上で必要となるNbN/MgO or Al2O3/NbN積層膜の配向性についても調べ,トンネルバリアとなる絶縁層材の結晶性が上部NbN膜の配向性に及ぼす影響についても考察している。特に,結晶構造の異なるAl2O3バリア層でも膜厚が4nmと薄ければNbN/ MgO on silicon 膜上にエピタキシャル成長可能であることを初めて見出している。
 第4章の「エピタキシャルNbN/MgO薄膜のJosephsonデバイスへの応用」では,得られたNbN/MgO/NbN on MgO/silicon膜を用いた超伝導メソスコピックデバイスの作製法とその諸特性について論じている。高周波デバイスでは超伝導臨界電流密度の高い(JC>10kA/cm2)接合が不可欠となっているが,このとき接合内の電子透過率は大きくなるのでAndreev反射特性が重要な電流輸送機構になってくる。本論文では,現在トピック的な研究テーマとなっているAndreev電流とショットノイズ特性について詳細に論じ,その関連性について初めて明らかにしている。
 第5章の「総括」では,本研究で得られた結果を総括的にまとめるとともに今後の課題について述べている。

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