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氷水利用式地域冷房システムの実用化研究

氏名 廣地 武郎
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第231号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 氷水利用式地域冷房システムの実用化研究
論文審査委員
 主査 教授 白樫 正高
 副査 教授 青木 和夫
 副査 教授 東 信彦
 副査 助教授 高橋 勉
 副査 講師 上村 靖司
 副査 長岡工業高等専門学校教授 北原 拓夫

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目次

第1章 緒言 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 地域冷房システムとこれまでの研究 p.6
 1.3 技術開発センタープロジェクトとその成果 p.8
 1.4 要素技術とシステムの概要 p.10
 1.5 本研究の目的 p.14
 1.6 本論文の概要 p.15
[参考文献] p.17

第2章 氷粒子とその付着力 p.18
 2.1 はじめに p.18
 2.2 実験試料 p.19
 2.3 等加重圧縮試験 p.20
 2.3.1 実験方法 p.20
 2.3.2 実験結果 p.22
 2.3.3 等加重圧縮試験まとめ p.23
 2.4 段階加重試験 p.24
 2.5 等速度圧縮試験 p.25
 2.5.1 実験装置概略 p.25
 2.5.2 実験方法 p.26
 2.5.3 実験結果と考察 p.26
 2.5.4 等速度圧縮試験まとめ p.29
 2.6 まとめ p.29
[参考文献] p.30

第3章 輸送管内の氷水混相流の流動様式と圧力損失 p.31
 3.1 はじめに p.31
 3.1.1 これまでの研究 p.31
 3.1.2 本章研究の目的 p.31
 3.2 実験装置および方法 p.32
 3.2.1 実験装置概略 p.32
 3.2.2 実験方法および実験条件 p.33
 3.3 氷水混相流の管内流動状態 p.36
 3.3.1 管内流動様式の観察 p.36
 3.3.2 管内流動様式を支配する因子 p.40
 3.4 水平円管における氷水混相流の圧力損失 p.43
 3.4.1 測定方法の検定 p.43
 3.4.2 流動様式と圧力損失 p.43
 3.4.3 小口径水平管における圧力損失 p.44
 3.5 まとめ p.50
[参考文献] p.51

第4章 オリフィスにおける閉塞 p.52
 4.1 はじめに p.52
 4.1.1 これまでも研究 p.52
 4.1.2 本章研究の目的 p.53
 4.2 管路から独立したオリフィスにおける閉塞 p.53
 4.2.1 実験装置,方法,試料 p.53
 4.2.2 閉塞現象の観察 p.56
 4.2.3 閉塞発生に対するオリフィス形状・寸法および粒子の性質の影響 p.67
 4.2.4 閉塞発生時の圧力損失および分率の変化 p.72
 4.2.5 オリフィスにおける閉塞の発生条件および機構についての考察 p.87
 4.3 管路のオリフィスにおける閉塞 p.91
 4.3.1 実験の概要 p.91
 4.3.2 チップアイスの閉塞 p.91
 4.3.3 新雪の閉塞 p.93
 4.4 考察 p.95
 4.5 まとめ p.96
[参考文献] p.97

第5章 直接接触式熱交換器の開発 p.98
 5.1 はじめに p.98
 5.1.1 直接接触式熱交換器の重要性と課題 p.98
 5.1.2 本章の目的 p.99
 5.2 氷水直接接触式熱交換器(DCHE)の構造 p.100
 5.2.1 DCHE内の氷融解特性についてのこれまでの研究 p.100
 5.2.2 DCHEの試作 p.103
 5.3 実験装置,方法および試料 p.106
 5.3.1 実験装置概要 p.106
 5.3.2 実験概要と測定方法 p.107
 5.3.3 実験手順 p.107
 5.3.4 条件設定 p.112
 5.3.5 伝熱特性の評価法 p.114
 5.4 実験結果と考察 p.117
 5.4.1 氷粒子(チップアイス)の氷充填層における融解課程 p.117
 5.4.2 定常運転の動作確認と採用データの評価法 p.118
 5.4.3 伝熱特性 p.119
 5.4.4 熱交換器の伝熱性能からの寸法評価 p.130
 5.4.5 DCHEにおける圧力損失 p.134
 5.5 所要動力からの性能評価 p.137
 5.5.1 条件設定 p.137
 5.5.2 性能評価 p.138
 5.5.3 最適設計 p.144
 5.6 まとめ p.148
[参考文献] p.149

第6章 パイロットランプによる実証試験 p.150
 6.1 はじめに p.150
 6.2 パイロットランプの構築 p.151
 6.2.1 パイロットランプの設計 p.151
 6.2.2 パイロットランプの個々の要素機器 p.158
 6.2.3 測定器 p.162
 6.2.4 試験粒子 p.163
 6.3 蓄熱槽からの安定した氷取り出し p.164
 6.3.1 装置の改良 p.164
 6.3.2 実験方法 p.166
 6.3.3 実験結果 p.166
 6.4 配管内の供給冷熱量の制御 p.171
 6.4.1 主管での冷熱量の制御 p.171
 6.4.2 枝管分率を主管分率と一致させる制御 p.172
 6.5 プラントの運転 p.177
 6.5.1 実験方法 p.177
 6.5.2 実験条件 p.178
 6.5.3 実験結果および考察 p.179
6.6 まとめ p.184
[参考文献] p.185

第7章 総括 p.186

第8章 今後の展望と課題 p.188
 8.1 今後の課題 p.188
 8.2 展望 p.189

本研究に関する発表論文および学会発表 p.190

謝辞 p.192

 省エネルギー,環境保全,電力平準化/安定供給,省スペースなどに数多くの利点を有するものとして開発され,また事業化もされて,ある程度の実績もある地域冷暖房システムに関して,新規建設費の削減と,在来施設のまま冷熱輸送能力の増化を図るために,氷の潜熱を利用する氷水輸送式地域冷房システムが提案されている.本研究では,高密度冷熱供給つまり高分率氷水輸送の際に問題となる閉塞現象/流動様式の解明を行った.また,今日までに開発されている各種要素技術を統合したパイロットプラントによる実証試験を行い,氷水輸送式地域冷房システムが十分実地導入可能であることを示した.
 本研究で扱うシステムは,(1) 冷熱輸送媒体として水以外の物質を添加剤として使用しないので環境汚染の危険性がない,(2) 供給する氷水混相流の氷分率と流量を冷熱需要量に応じて制御できる,(3) 供給した冷熱は潜熱だけでなく顕熱も需要家側で使い切る,という特徴を持つ.このシステムの実現を目指して,以下のような課題の研究を実施した.

[1] 地域冷房システム
・緒言(第1章)地域冷房システムの社会的意義,その適用における問題点,およびそれを解決するための新しい方法としての氷水利用式地域冷房システムの有利性と実用化における課題を明らかにし,本研究の目的と論文の概要を述べた.

[2] 氷水混相流の流動様式
・氷粒子の付着力(第2章)
管内氷水混相流特有の流動状態や管路の閉塞現象,さらに伝熱などにはいずれも氷粒子の付着性が深く関与していると考えられる.まず,この氷粒子の付着性を定量的に評価した.
 0℃の水中で円筒形試験粒子塊にステップ状に一定圧縮荷重を加える等荷重圧縮試験により圧縮応力を測定して,その降伏応力により粒子間の付着力を評価した.それにより,付着力は粒子の形状・大きさによって異なり,粒子が小さくなるに連れて大きくなり,また,小さな荷重が徐々に加わって行くとき,より強固な塊ができることが明らかになった.さらに,等速度圧縮試験を行い,低速度の圧縮により粒子塊強度が増加し強固な塊となる「圧密強化」の現象を確認した.
・管内氷水混相流の流動状態(第3章)
氷水混相流の流動状態は氷粒子が互いに付着する性質を持っているため,通常の付着性のない粒子と水との混相流の流動状態とは異なっており,これが圧力損失や閉塞現象にも影響を与えると考えられる.そこで管内氷水混相流の流動状態の特徴をビデオ撮影により調べた.この観察により氷水の流動様式が特異な3種類に分類できることを示し,さらに,流速,氷分率,粒子径および付着力,管内径を考慮した無次元数を導入することにより,流動様式を予測する一般的方法を提案した.また,氷水混相流の圧力損失は清水のものと比べあまり変わらず,地域冷房システム末端で実用されている小口径管についても大口径管で得られた実験式が適用できることを明らかにした.

[3] 閉塞現象
・管路の閉塞現象(第4章)
氷水混合体の管路輸送を実用化する上での最大の障害である管路の閉塞を防止する方法を確立するため,閉塞が発生しやすいと考えられる管路要素の代表としてオリフィスをとりあげ,そこにおける閉塞の発生過程と発生条件について調べた.管路から管路要素だけを取り出した要素実験の結果と,管路における実験の結果が良く対応することを確認するとともに,氷水混相流に特有の現象として,第2章で述べた「圧密強化」に起因する「圧密型閉塞」が発生することを示し,この発生条件を与える流速,氷分率,および氷粒子の付着力の関係を明らかにした.

[4] 地域冷房システムの実証試験
・熱交換器(第5章)
一般に供給側と需要側の配管は,管理上の理由からプレート式熱交換器(PHE)によって隔離される.氷水混相流のシステムでこの熱交換器を利用する場合,PHEの流路は非常に狭いため,氷粒子のような固形物が流入すると閉塞を起こす可能性がある.それを回避するために,送られてきた氷水を冷水に変換する氷水直接接触式熱交換器DCHEを提案し,その伝熱特性を明らかにした.そして,これと既存のプレート型熱交換器を組み合わせた方法が,従来の冷水輸送・プレート型熱交換器方式に較べ効率的であることを示して,その実用的設計手法を提示した.
・パイロットプラントによる実証試験(第6章)
一連の研究により開発された要素機器/技術にもとづきパイロットプラントを構築し,システム全体としての機能の検証とその有効性の確認を行った.要素技術に改良を加え,貯蔵した氷を連続的に取り出し,配管内での分率を一定に保ちながら,需要側へ安定して冷熱量を供給できることを連続運転実験により実証した.これにより,氷水輸送式地域冷房システムが十分に実地導入可能であることを示した.

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